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14◆暗殺者……暗殺者とは?

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「おっと、残念。じっとしていてくれたら楽に殺せたのに」

男はナイフを持っていて、もしもリューレンが玉座に座ったままだったなら今頃首を切られていただろう。

リューレンは俺を背に庇うようにして男に向き合った。

「何者だ!」

男を睨みつけるリューレンに対し、男は余裕そうに微笑む。

「俺?俺はラティス。ジゼルを迎えに来たんだ」

「?……初対面ですよね?」

俺を迎えに来たとか言うラティスに見覚えないのだけれど、忘れてるだけだろうか?

そうキョトンとしている俺に対して、ラティスはちょっと慌て始めた。

「おっと、人化してたら俺のことわからないか。これならわかるか?」

ラティスは目の前で、雷炎黒豹という魔物の姿に変わる。

その姿とラティスという名前で、俺は昔飼っていた猫のことを思い出して戸惑ってしまった。

「昔飼っていた猫のラティス?」

「ゴロゴロゴロゴロ!」

「めちゃくちゃ喉鳴ってる!というか、やっぱり魔物だったんですね」

「あれ?もしかして俺が魔物だって忘れてた感じ?ジゼルのマスターが魔物だってちゃんと言ってただろ」

「そうでしたっけ………?」

「あ、これ本当に忘れてるな」

そういえば、ラティスを拾った最初にそんなこと言ってた気がする。

でもずっと猫扱いしてたから、忘れてしまったようだ。

それにしても、あんなに小さかった猫がこんなに大きな黒豹になるとは……95%のカッコイイと5%の可愛いといったところか。

昔は可愛い99%で、カッコイイ1%だったのに。

「………成長しましたね」

「なんかすごく残念そうなのなんで?」

気の所為だよ。



それはともかく。

「どうしてリューレンの命を!?」

俺は、ラティスに聞いた。

思いっきり話が脱線していた気がするからね。

「俺はいなくなったジゼルを探してたんだ。そしたら、ミレイユって女がジゼルの暗殺を俺に依頼したんだ。俺の職業、暗殺者だからね」

なんてことだ!

あんなに可愛かった猫(今は人型細マッチョ)が、闇社会の住人になっていたなんて………。

飼い主的にはちょっと悲しい………。

そこにリューレンが吠える。

「ジゼルの暗殺だと!?公開処刑レベルの大罪じゃないか!!」

「そこは同意だね!!」

ラティスよ、職業的に同意して大丈夫なのかい?

「………暗殺者とは一体」

暗殺者って……なんだっけ……?

「でさ、ミレイユは俺をこの城まで連れてきてくれたんだ。だけどさ、俺はジゼルを愛してるからさ、ジゼルを殺すわけないじゃん。でも、ジゼルを誘拐したリューレンのことは許せない。だから、殺すのさ」

仕事なのにターゲット変わってるじゃん。

「なるほど、理解した」

「いや、理解しないで?」

リューレンは何故か理解してしまったらしい。

意味がわからないと思ってしまった。

龍神であるリューレンの命は尊くて、オートマタである俺の命なんて宝玉抜いたら終わるもの。

価値がまったく異なるのだから、リューレンの命は絶対に守らないといけないものなのだ。

なのに、その大事なリューレンの命を粗末に扱わないでほしい。
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