幸せな勇者と残酷な現実

ミクリ21 (新)

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6◆共依存

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エリオットは思い出した。

自分が何者だったのかを……。

ラインハルトが何者だったのかを……。

「僕を恨んでるでしょ?殺していいんだよ」

「そんなことはいつでもできる。いつでもできるから、今はお前を愛してやろう」

「こんな穢れた僕なんて愛する価値も生きる価値もない」

「そうだな。だが、俺以外がお前を傷つけることは許さない。だからお前を誰かに渡す気もない」

エリオットを抱きしめるラインハルト。

生きている彼をみて、もうエリオットはわかっている。

自分が討ち取ったのは身代わりだったのだと……。

「ねぇ、僕を殺してよ」

「殺さない」

勇者なんて罪人だ。

守りたい者のために罪なき人々を殺し、守りたい者すら守れなかった罪人だ。

「ねぇ、僕を愛さないでよ」

「愛してる」

エリオットは生きる理由を失ってしまった。

「……ねぇ、僕をずっと許さないでよ」

「……あぁ、許さない」

白かった輝く聖剣は、今では真っ黒で禍々しい魔剣に姿を変えた。

エリオットの心は完全に魔に堕ちたのだ。



エリオットとラインハルト、二人は復讐をする。

互いの大切を奪った者達に、裁きの刃で命を散らすのだ。

歪に愛し合う二人は共依存する。

全ての復讐を終えた時、その共依存も終わりの時を迎えるかもしれない。

それでも今は、心を寄せ合い癒えない傷を慰めるのだった。



【□□□視点】

魔王は勇者を愛してしまった。

魔王は復讐に揺らぎながらも勇者を守り続けた。

けれど壊れてしまった勇者。

勇者の幸せの箱庭を壊しにきた悪意の魔物を、いつものように倒しただけだった。

しかし、それは勇者が唯一大切にしていた可愛い弟。

醜い姿になって、悪意と愛が入り混じるドロドロの姿だったけれど、それはあの美しく純粋だった弟。

だから、勇者の心に強く干渉したのだ。

魔王は弟を燃やしたことで、魔王が用意した幸せの箱庭を壊してしまった。

眠り姫は眠りから覚めて、残酷な現実を知ってしまった。

もう勇者は幸せな夢をみることはできない。
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