幸せな勇者と残酷な現実

7◆物語のまとめ

まず、エリオットは二重人格ではない。

エリオットが冒険者の世界も本当の世界じゃない。

それは偽りの世界で、エリオットのための幸せな箱庭という夢の世界だった。



現実で純粋な美しい弟と穏やかに暮らす本好きの兄エリオット。

しかし、弟は美しかったせいで残忍な国王に攫われてしまった。

返してほしいとエリオットが訴えたら、一人で魔族を滅ぼし魔王を討ち取れば返してやると約束されてしまう。

無力だった本好きのエリオットだったが、人間を愛する神が勇者としての力を与えて、エリオットの清らかな心からできた聖剣を握り戦いに向かう。

過酷な日々を支えたのは、弟を助けるという気持ちだけだった。



魔王を討ち取ったエリオット。

しかし、それは身代わりになった側近だった。

それを知らないエリオットは、国王に討ち取ったことを報告したのだ。

しかし、弟は惨い死に方をした遺体になって目の前に投げ捨てられた。

国王は拷問が趣味で、特に美しい者を痛めつけるのが大好きだったのだ。

絶望に染まるエリオット。

用済みとなったエリオットは国王の騎士達に刃を向けられ、殺されるところだった。



しかし、生きていた本物の魔王ラインハルトがエリオットを助け攫っていく。

ラインハルトは大切だった側近を殺したエリオットに復讐するためにつけてきていたのだ。

だが、エリオットのあの絶望の場面をみていたから復讐したいのにできない。



結界を張った場所で、エリオットを眠らせる。

ラインハルトの魔法で、エリオットにとっての幸せな夢をずっとみせていた。

エリオットの幸せな夢……その箱庭にラインハルトはエリオットの身体を利用して入り、エリオットに不自然に思われないように、箱庭の人々……つまり人形達にはエリオットが二重人格と言う設定にしていたのだ。

人間達や神はエリオットをまた利用するために、取り戻すため悪意を飛ばしてきて、それらは悪意の魔物としてラインハルトが燃やしていた。



ラインハルトは眠るエリオットを何度殺そうとして、寸前でやめたかわからない。

そんなある日、悪霊と成り果てた弟がエリオットを取り戻すために現れる。

エリオットが助けてくれると信じながら地獄を味わって、壊されながら死んでいった可哀想な被害者。

今ではエリオットを愛する気持ちと恨む気持ちを抱え、エリオットも壊さないと許せなくなった弟。

エリオットの幸せなんて、壊れてしまった弟には許せなかった。



弟の悪霊が現れて、強くエリオットの心に干渉した。

その弟の悪霊がラインハルトに燃やされ、エリオットは弟を二度失ってしまう。

そのショックに偽りの幸せの世界は壊れ、エリオットは夢から覚めてしまった。

傷つき心が壊れてしまったエリオットを、現実ではラインハルトが抱きしめる。

死を願うエリオットだが、復讐を願うラインハルトは愛を囁いた。

ずっと守っていたエリオットを愛してしまったからだった。



そして二人は歪に愛し合い共依存する。

魔に染まったエリオットとラインハルトは人間達と神に復讐することを決めた。

……これは、誰も幸せになれない物語だ。