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滴る不安
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朝がやってきた。王城が大変なことになっている事実を微塵も知らないライリーは、なぜか船の中で目を覚ました。
ライリーは焦った。なぜここにいるのか、という疑問が頭の中を駆け巡った。横の席を見てみると、予想通りエレットがむにゃむにゃと眠っている。
「ちょ、ちょっとエレットさん!起きて!」
「え、え~?」
寝ぼけているエレットは、何も分からないといった素振りで目を開けた。
終点まで到着すれば、乗組員が起こしてくれそうなものだ。しかし、二人が端の席に座っていたことや、終点に着く際に船内を探されなかったことが起因して起こされなかったのだろう。
外を見るとまだ日は昇りかけで、空には紫とオレンジのグラデーションがかかっている。ライリーはエレットをなんとか起こし、荷物を持って外へ出た。幸いこの船は始発便に充当されていなかったらしく、まだ乗組員も乗っていなかった。
まずはライリーが船から岸へと、足元に気をつけながら降り、次にエレットの手を掴み、彼女を降ろす。
「いやぁ、危ない危ない。あのまま戻ってたらまたお城に戻っちゃうところだったね」
そんな呑気なことを言っているが、ライリーにはなんの見通しも立っていなかった。お金はないので宿には泊まれず、風呂にも入れない。野宿しようにも、どこにスペースがあるかなどは探さなければ見つからない。
「とりあえず、寝るところだけでも探そうか」
「えっ、宿ってことですか?」
「まあ、このお金で泊まれるところがあったら、ね」
その一言を聞き、エレットは付いてきたことを後悔する。街中で寝るくらいなら叱られていた方が良かった……かもしれない。
二人の持ち物には大したものがなかった。あるのはせいぜい数着の着替えだけだが、それを着る以外に使おうだなんて発想も子供ゆえにない。つまり、何も持っていないのと一緒。変わらないのだ。
今のライリーは、その事実を前にして漠然とした不安を抱えるが、まあ何とかなるだろうという楽観的な考えで過ごしている。少なくとも、大人のように計画立てて行動することは出来ないのであった。
ライリーは街へ向けてテクテクと歩き、色々な建物を見て回る。しかし、それは観光気分ではなく、あくまで泊まれる場所を探すため。彼女はいたって真剣な表情で街中を探索していく。
運河の終点がある街は、河川と海洋と運河、この三つが交わる水の街であった。どの方向からも船がやってくるし、どの水路を見ても治水は万全。まさに交通の要所といった雰囲気で、商店も多く立ち並んでいた。
ライリーはある水路の河川敷に降り、橋の下へ歩いてみた。野宿する場所としては正直ありきたりではあるが、ありきたりということは無難ということ。多く選ばれるにはそれ相応の理由があるのだ。
ライリーは橋が雨風を防いでくれるのではないかと考えていたが、実際に防げるのは雨と日光だけで、風に関しては全く防げず、むしろ水辺ということもあってか常に一定の風が吹く。ライリーは「イメージと違うものだな」、と思いながらその場を後にし、次は路地裏へ向かう。
二人は、背の高い商業施設の間にある小さな路地裏にやってきた。しかし、路地裏は橋の下以上に酷いものだった。まず、先程は防げていた日光と雨が防げない。もちろん風も防げない。それに加え、大きい虫とネズミがいる。正直に言って、環境としては最低クラスであった。
ライリーはその場をそそくさと離れたが、エレットはその様子を見てうんざりしていた。「わたくし、王女なのに」……その言葉を口にする訳ではないが、心の中ではそんな考えが芽生え始める。しかし、このような現実を知ることも社会勉強!と考えて前向きにやろうと努力した。
二人は気分を入れ替えるために商業施設へと入った。そこはこの街の商業の中心地らしく、様々な業種の店が出ていた。食料品、衣料品、サービス業など、とにかくたくさん。お金をもっていれば間違いなく楽しいのだろうが、二人は金欠。ライリーはそんな店たちに目もくれず、入口付近に置かれた巨大な掲示板を確認した。
しっかりと観察しているうちに、ライリーは小さな広告を目にした。
『激安宿泊施設』
という文言と共に、値段が書かれている。そこには、激安の名に恥じぬ驚愕の料金が書かれていた。その価格、なんとあの乗合船の二分の一以下!ライリーとエレットはそこに書かれた場所へと直接向かい、本当にその値段で泊まれるのかを確認しようとした。
その宿は、先程の商業施設から川上へ、足が疲れかけるほどに歩いた場所にあった。
そこに到着すると、中年男性のオーナーが出迎えてくれた。他に人はいなかったので、彼に宿代を尋ねると、本当にとんでもない安さで泊まれるようだった。
これに喜んだのはライリーよりもエレットの方であった。なにより、少なくとも今日は屋根のある場所で寝れるのである。その事実がとにかく嬉しかった。
ライリーがすぐに泊まれるかを訊くと、オーナーは三回頷いて代金を要求した。どうやら、この宿は館内サービスなどを行っていないようで、先払いでも問題がないらしかった。
お金を渡すと、そのまま部屋に案内され、扉を開けた二人はいい意味で驚く。
これほどの安さなのだから、てっきり粗悪な部屋が提供されるのかと思いきや、意外なことにそこはある程度整えられた部屋だった。綺麗とまでは行かないまでも、そこで過ごす分には大きな問題がない、そんなような部屋。エレットは正直不満かもしれないが、ライリーにとっては十分であった。
二人は荷物を置き、ゆっくりとくつろぎ始めた。
◆ ◆ ◆
その頃、王城では重責者による会議が行われていた。誘拐なのか、はたまた別の犯罪なのか、誘拐ならば犯人はどのような人物か。そのような会議であった。
もしも誘拐ならば、犯行声明文や身代金の要求などがあっても良いように思われるが、それらはなにもなく、会議は難航を極めた。
犯人はどちらかと言えば痩せ型、だとか、動きのすばやさから男性、だとか、恐らく二十代から五十代――などという憶測だけで話が広がり、全くもってまとまらない。
昨日の夜は庭園に駄々をこねる客がおり、その客の対応で門番がいなかった、となればその客を呼び出すが、その客はただワガママなだけ、というように、とにかく会議が軌道に乗っていなかった。
そんな中、会議の参加者がある仮説を立てた。それは、「王女を誘拐したのは、予想されていた誘拐犯ではなく、ライリー・ブレイバーである」というものだった。
その仮説が立った途端、彼らはまだ捜査が手薄だったライリーの部屋へと押しかけ、様々な調査を行なっていった。なにが無くなった、なにがある、そのようなことを丁寧に調べあげられ、まとめられる。
二人のカバンや、エレットの服が無くなっていることは、捜査が入るうちに明らかになっていった。
ルサークは、犯人がライリーであるという論調をなんとか止めるために、上司へ「真犯人は自分である」と直談判しようとした。しかし、捜索の忙しさもあって全く聞き入れて貰えない。ルサークは粘り強く話そうとするも、上司はあの意地の悪い中年使用人。小娘であるルサークの話など、ハナから聞くつもりがなかったのだ。
この情勢には、当然エイドも焦る。自分の処罰についても考えなくてはならないが、それ以上にライリーが捕まるという可能性を恐れていたのだ。
しかし、ライリーを犯人だと仮定すると、あまりにも辻褄が合いすぎてしまう。それゆえ、重責者たちはライリーを犯人だと断定し、似顔絵を描かせて『指名手配犯』として公布した。
その日のうちに届けられる街には届けられ、多くの人が見る場所に貼られていった。
エイドとルサークは、ライリーが助かることを切に願い、冷や汗を垂らした。
◆ ◆ ◆
その日の夜。今日を凌げても、明日を凌げるとは到底思えなかったライリーは、計画を立てるために商業施設に向かった。掲示板を見れば、今日のようにヒントを得られるかもしれない、と考えたためだ。
商業施設に着くと、なにやら人だかりが出来ている。なにかあったのか?と思い野次馬気取りで近づいてみると、そこにはひとつの似顔絵があった。その絵には、一人の少女が描かれていた。茶色い長い髪、緑の瞳、平均的な顔立ち――明らかに自分であった。
絵の上を見てみると、そこには『WANTED』の六文字が踊っている。
それを見たライリーは呆然として動けなかった。
しかし、動かなければ捕まってしまうかもしれない、そうなればエレットはどうするのか、という不安感に駆られ、ライリーは急いで宿へと戻る。エレットは疲れからか眠りかけており、とてもじゃないがどこかへ出発できるような状態ではなかった。
ライリーは、どこかに逃げるよりもここでエレットを見ておくことを優先し、布団を上から被った。捕まる……捕まる、捕まる!そんな不安がひたすらに体を蝕む。
朝になったらすぐ逃げよう。その考えがずっと頭のなかにこだました。
ライリーは焦った。なぜここにいるのか、という疑問が頭の中を駆け巡った。横の席を見てみると、予想通りエレットがむにゃむにゃと眠っている。
「ちょ、ちょっとエレットさん!起きて!」
「え、え~?」
寝ぼけているエレットは、何も分からないといった素振りで目を開けた。
終点まで到着すれば、乗組員が起こしてくれそうなものだ。しかし、二人が端の席に座っていたことや、終点に着く際に船内を探されなかったことが起因して起こされなかったのだろう。
外を見るとまだ日は昇りかけで、空には紫とオレンジのグラデーションがかかっている。ライリーはエレットをなんとか起こし、荷物を持って外へ出た。幸いこの船は始発便に充当されていなかったらしく、まだ乗組員も乗っていなかった。
まずはライリーが船から岸へと、足元に気をつけながら降り、次にエレットの手を掴み、彼女を降ろす。
「いやぁ、危ない危ない。あのまま戻ってたらまたお城に戻っちゃうところだったね」
そんな呑気なことを言っているが、ライリーにはなんの見通しも立っていなかった。お金はないので宿には泊まれず、風呂にも入れない。野宿しようにも、どこにスペースがあるかなどは探さなければ見つからない。
「とりあえず、寝るところだけでも探そうか」
「えっ、宿ってことですか?」
「まあ、このお金で泊まれるところがあったら、ね」
その一言を聞き、エレットは付いてきたことを後悔する。街中で寝るくらいなら叱られていた方が良かった……かもしれない。
二人の持ち物には大したものがなかった。あるのはせいぜい数着の着替えだけだが、それを着る以外に使おうだなんて発想も子供ゆえにない。つまり、何も持っていないのと一緒。変わらないのだ。
今のライリーは、その事実を前にして漠然とした不安を抱えるが、まあ何とかなるだろうという楽観的な考えで過ごしている。少なくとも、大人のように計画立てて行動することは出来ないのであった。
ライリーは街へ向けてテクテクと歩き、色々な建物を見て回る。しかし、それは観光気分ではなく、あくまで泊まれる場所を探すため。彼女はいたって真剣な表情で街中を探索していく。
運河の終点がある街は、河川と海洋と運河、この三つが交わる水の街であった。どの方向からも船がやってくるし、どの水路を見ても治水は万全。まさに交通の要所といった雰囲気で、商店も多く立ち並んでいた。
ライリーはある水路の河川敷に降り、橋の下へ歩いてみた。野宿する場所としては正直ありきたりではあるが、ありきたりということは無難ということ。多く選ばれるにはそれ相応の理由があるのだ。
ライリーは橋が雨風を防いでくれるのではないかと考えていたが、実際に防げるのは雨と日光だけで、風に関しては全く防げず、むしろ水辺ということもあってか常に一定の風が吹く。ライリーは「イメージと違うものだな」、と思いながらその場を後にし、次は路地裏へ向かう。
二人は、背の高い商業施設の間にある小さな路地裏にやってきた。しかし、路地裏は橋の下以上に酷いものだった。まず、先程は防げていた日光と雨が防げない。もちろん風も防げない。それに加え、大きい虫とネズミがいる。正直に言って、環境としては最低クラスであった。
ライリーはその場をそそくさと離れたが、エレットはその様子を見てうんざりしていた。「わたくし、王女なのに」……その言葉を口にする訳ではないが、心の中ではそんな考えが芽生え始める。しかし、このような現実を知ることも社会勉強!と考えて前向きにやろうと努力した。
二人は気分を入れ替えるために商業施設へと入った。そこはこの街の商業の中心地らしく、様々な業種の店が出ていた。食料品、衣料品、サービス業など、とにかくたくさん。お金をもっていれば間違いなく楽しいのだろうが、二人は金欠。ライリーはそんな店たちに目もくれず、入口付近に置かれた巨大な掲示板を確認した。
しっかりと観察しているうちに、ライリーは小さな広告を目にした。
『激安宿泊施設』
という文言と共に、値段が書かれている。そこには、激安の名に恥じぬ驚愕の料金が書かれていた。その価格、なんとあの乗合船の二分の一以下!ライリーとエレットはそこに書かれた場所へと直接向かい、本当にその値段で泊まれるのかを確認しようとした。
その宿は、先程の商業施設から川上へ、足が疲れかけるほどに歩いた場所にあった。
そこに到着すると、中年男性のオーナーが出迎えてくれた。他に人はいなかったので、彼に宿代を尋ねると、本当にとんでもない安さで泊まれるようだった。
これに喜んだのはライリーよりもエレットの方であった。なにより、少なくとも今日は屋根のある場所で寝れるのである。その事実がとにかく嬉しかった。
ライリーがすぐに泊まれるかを訊くと、オーナーは三回頷いて代金を要求した。どうやら、この宿は館内サービスなどを行っていないようで、先払いでも問題がないらしかった。
お金を渡すと、そのまま部屋に案内され、扉を開けた二人はいい意味で驚く。
これほどの安さなのだから、てっきり粗悪な部屋が提供されるのかと思いきや、意外なことにそこはある程度整えられた部屋だった。綺麗とまでは行かないまでも、そこで過ごす分には大きな問題がない、そんなような部屋。エレットは正直不満かもしれないが、ライリーにとっては十分であった。
二人は荷物を置き、ゆっくりとくつろぎ始めた。
◆ ◆ ◆
その頃、王城では重責者による会議が行われていた。誘拐なのか、はたまた別の犯罪なのか、誘拐ならば犯人はどのような人物か。そのような会議であった。
もしも誘拐ならば、犯行声明文や身代金の要求などがあっても良いように思われるが、それらはなにもなく、会議は難航を極めた。
犯人はどちらかと言えば痩せ型、だとか、動きのすばやさから男性、だとか、恐らく二十代から五十代――などという憶測だけで話が広がり、全くもってまとまらない。
昨日の夜は庭園に駄々をこねる客がおり、その客の対応で門番がいなかった、となればその客を呼び出すが、その客はただワガママなだけ、というように、とにかく会議が軌道に乗っていなかった。
そんな中、会議の参加者がある仮説を立てた。それは、「王女を誘拐したのは、予想されていた誘拐犯ではなく、ライリー・ブレイバーである」というものだった。
その仮説が立った途端、彼らはまだ捜査が手薄だったライリーの部屋へと押しかけ、様々な調査を行なっていった。なにが無くなった、なにがある、そのようなことを丁寧に調べあげられ、まとめられる。
二人のカバンや、エレットの服が無くなっていることは、捜査が入るうちに明らかになっていった。
ルサークは、犯人がライリーであるという論調をなんとか止めるために、上司へ「真犯人は自分である」と直談判しようとした。しかし、捜索の忙しさもあって全く聞き入れて貰えない。ルサークは粘り強く話そうとするも、上司はあの意地の悪い中年使用人。小娘であるルサークの話など、ハナから聞くつもりがなかったのだ。
この情勢には、当然エイドも焦る。自分の処罰についても考えなくてはならないが、それ以上にライリーが捕まるという可能性を恐れていたのだ。
しかし、ライリーを犯人だと仮定すると、あまりにも辻褄が合いすぎてしまう。それゆえ、重責者たちはライリーを犯人だと断定し、似顔絵を描かせて『指名手配犯』として公布した。
その日のうちに届けられる街には届けられ、多くの人が見る場所に貼られていった。
エイドとルサークは、ライリーが助かることを切に願い、冷や汗を垂らした。
◆ ◆ ◆
その日の夜。今日を凌げても、明日を凌げるとは到底思えなかったライリーは、計画を立てるために商業施設に向かった。掲示板を見れば、今日のようにヒントを得られるかもしれない、と考えたためだ。
商業施設に着くと、なにやら人だかりが出来ている。なにかあったのか?と思い野次馬気取りで近づいてみると、そこにはひとつの似顔絵があった。その絵には、一人の少女が描かれていた。茶色い長い髪、緑の瞳、平均的な顔立ち――明らかに自分であった。
絵の上を見てみると、そこには『WANTED』の六文字が踊っている。
それを見たライリーは呆然として動けなかった。
しかし、動かなければ捕まってしまうかもしれない、そうなればエレットはどうするのか、という不安感に駆られ、ライリーは急いで宿へと戻る。エレットは疲れからか眠りかけており、とてもじゃないがどこかへ出発できるような状態ではなかった。
ライリーは、どこかに逃げるよりもここでエレットを見ておくことを優先し、布団を上から被った。捕まる……捕まる、捕まる!そんな不安がひたすらに体を蝕む。
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