世界を救え?うるせぇバーカ!! 〜転生して勇者になれと言われたが命が惜しかったので断った結果〜

一☆一

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全力全開

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 俺じゃん。
 森荒らしたのってどう考えても俺じゃん。

『どうした』
「……何でもな……くはねぇけど」

 ドラゴンが怪訝そうに見つめてくる。
 疑われてない? 疑われてるよねこれ。
 そりゃ、そうか。逆な立場なら俺でも怪しいと思うわ。

「はぁ……それやったの俺だわ……」

 ……仕方ない。此処で誤魔化したりすると、後々の交流にも影響する。バレるバレないは置いておいて、俺のせいで徒労を強いるのも申し訳ない。

 せっかく話せる奴と会えたのだ。正直に言うのが人としていいだろう。俺的に仕方ない事ではあったけど、他の人から見たらただの環境破壊の迷惑行為であることに変わりはないしな。

 とても後ろめたくて顔は上げられないのだが、それでもドラゴンの視線を強く感じる。

 やばいなぁ。俺もしかしたら転生して早々死ぬかもしれない。かといって魔法で抵抗するのも気がひけるし……そもそも全力でやった所で倒せるのか?

 ドラゴンは鉤爪を顎のあたりに当て、少し考えるようにして言った。

『…………ふむ。貴様、名は』
「名前? えっと、若神子 蒼士だけど」

 何でいきなりそんな事を聞くのだろう、と小首を傾げる俺の脳内に、小さな声が流れ込んでくる。

『やはり、似ているな……』
「え、何が?」
『……魔法を使えるか?』
「つ、使えるけど……」
『我に向かって、全力で撃ってみろ』

 なんで?
 なんか俺の知らないところで話しが勝手に進んでる上説明もないのだが。
 というか魔法撃つのかよ。全力と言われても家作ったので大分消耗しているし、そもそもこの優しいドラゴンにそんな事するの自体、随分気が引けるんだが。

『……どうした、やらないのか』
「いや、何でやらないといけないんだよ……俺、あんた傷つけるのそこそこ嫌だぞ」
『それならば安心しろ。ただの魔法では我に傷一つつけることは叶わん。貴様の実力を測りたいだけだ』

 うーん、まぁそれなら……
 俺は考える。
 どうすれば全力をぶつけた事になるのか?
 前にも考えた事だが、俺はまだ自分の全力を測れていない。魔法は想像のパワーだ。俺が目一杯と考えた事象にすら、まだ上がある可能性だってあるのだ。

 さて、どうするか…………。
 俺は暫く唸りながら考え、そして一つの発想に至った。

 ──そうだ。何も、最初から全力である必要は無いんだ。

 俺は腕を上げて掌を上に向け、手元に小さな火の玉を作る。
 それを見たドラゴンが訝しげに眉をひそめるが、今は無視だ。何分初めての試みで、随分な集中を強いられる。
 その火の玉を、一回り、二回り。
 少しずつ、しかし確実に大きく成長させていく。

 限界がわからないというのなら。限界に至るまで想像を膨らませ続ければいい。
 それが俺の結論だった。

 ピンボール程度の大きさしかなかった火の玉は、野球ボールサイズになり、バスケットボールサイズになり、やがて俺の身体のサイズも超えて、大玉ころがしの玉のように巨大になっていく。

 ──まだ、まだ。
 まだ、いける。

 火の玉は俺の想像を全く裏切る事なく、どんどんと成長していく。
 やがて目の前の巨大なドラゴンの体躯すら超え、圧倒的熱量に自らの肌が焼け始める。
 それでもまだ、火の玉は成長をやめない。

『貴様、何処まで──!?』

 ドラゴンの驚愕したような声が脳裏に響く。見れば、その琥珀の眼は大きく見開かれていた。予想外だったのだろうか?

 だが、今更やめるなんてとんでもない。
 感情がハイになっていく。
 目眩がするのは魔法の使いすぎか、滝のように出る汗のせいで脱水症状でも起きているのか。
 この昂りは、この火の玉をぶっぱなさないことには絶対に収まらない!

 火の玉が成長をやめる。
 そのサイズはもはや小さな太陽と言えるほどで、山が小さく見えるほど。俺が建築に使った事で周りから木が無くなっていたからよかったが、そうでなければ山火事に発展していただろう。此処が尾根で、すこし山から出っ張っていることも功を奏したといえる。
 ドラゴンはその圧力に押され、俺との距離を当初よりも随分と離している。

「…………お望み通り、いくぜ」

 ドラゴンは、鋭い眼光で黙って俺を見つめている。
 俺はそれを、承諾と受け取った。

 しかしこのまま腕を振り下ろしたのでは、ドラゴンはともかく山は粉々になってしまうだろう。
 俺は膨大な熱量を内包したそれを、その熱量を全く損なわないままに最初のごく小さなサイズにまで圧縮した。
 俺は腕を前に突き出す。
 そして。

「はあああぁぁぁぁ!!!」

 雄叫びとともに、その熱量を一筋のレーザーのように収束させてドラゴン目掛け一息に放出した。
 刹那。轟音と目を焼く閃光が、辺りを埋め尽くした。
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