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陰陽術と符
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「うぅぅ……すみません……」
「……いいよ。気にしてもしょうがないし」
進行方向を空から街が見えた方向に漠然と定めつつ、道のない森の中を手探り状態で進む二人。
足元は整地されておらずガタガタで歩きにくく、先の見通しもつきにくい。方向感覚も油断すると直ぐに失われるし、そもそも今向いている方が正しい向きなのかすら、尊には確信が持てなかった。何にせよ、森から出ない事には始まらないのだが。
ともあれ、リズベットが悪いと断じて、責める気も尊にはなかった。確かに落胆はしたが、それは初めて会ったばかりの彼女に求めるところが大きすぎただけだろう。誰にだって失敗はある。
「……失敗してしまった身で厚かましいのですけど……尊さんの陰陽術で空を飛んだりとかって出来ないんですか?」
恐る恐る、と言った様子でリズベットが尊に尋ねる。
尊は少し考えて、首を横に振った。
「……出来なくはないけど、やりたくない、かな。無限に使える力じゃないから」
尊は一度立ち止まって、懐から二枚の札を取り出す。
一枚は短冊形の薄く滑らかな紙で、墨で文字らしきものがビッシリと書き込まれている。
もう一枚は人形の凧を縮小したような形で、胸に当たる部位に紅い印が付けてあった。
「陰陽術を発動する為に必要なものは、大まかに分けて二つ。体内に流れている《道力》と、この《符》という触媒なんだけど」
「《道力》?」
「ゲームのMPみたいな感じのものだよ」
「へぇ……というか、尊さんゲームなんてやるんですね!」
「こう説明するとわかりやすいって言われたから引用してる。話を戻すよ」
尊は短冊形の札を取り上げる。
「こっちが《術符》。これを使うと陰陽術が安定して出やすくなる。僕くらいになると発動自体には必要ってわけじゃないけど、質のいい《術符》だと術の効果を底上げしてくれあり、《道力》の消費を抑えてくれるから貴重なの。僕が今持ってるこれは最上級品。これをこっちで作ろうと思っても無理だろうから、あんまり使いたくないんだよね。紙くらい作れるけど、材料がないし」
「成る程……今、どれくらい持ってるんですか?」
「百二十二枚。多く感じるかも知れないけど、使っちゃうとあっという間になるなるから温存したい訳で」
因みに、尊はその如何にも嵩張りそうな符の束をそのまま持っているわけではない。使わない時は術で小さくしている。これはこれで有事の時に取り出しにくいという難点があるのだが、尊程の実力者の妨げになる程ではない。
「それで、空を飛ぼうと思ったら、さっき僕が落下の時に使った一章七節【其土不踏】を符で強力にして使う必要があるんだ。あの術、単体だと落下速度を軽減するくらいが限度だから。勿論どうしようもなくなったら使うけど……納得してもらえた?」
「あ、はい! ありがとうございます。では、そっちの人形の符は何なんですか?」
「あぁ、これは……」
ドゴォォン!!
尊は言葉を続けようとしたが、それは背後から突如として発生した轟音によって遮られた。
バキ、バキと落ちた枯れ木を踏みしめる乾いた音。
近づいてくる何かの気配。
尊は片手でリズベットを下がらせつつ、まだ見えないそれの方を鋭く睨んだ。
「……いいよ。気にしてもしょうがないし」
進行方向を空から街が見えた方向に漠然と定めつつ、道のない森の中を手探り状態で進む二人。
足元は整地されておらずガタガタで歩きにくく、先の見通しもつきにくい。方向感覚も油断すると直ぐに失われるし、そもそも今向いている方が正しい向きなのかすら、尊には確信が持てなかった。何にせよ、森から出ない事には始まらないのだが。
ともあれ、リズベットが悪いと断じて、責める気も尊にはなかった。確かに落胆はしたが、それは初めて会ったばかりの彼女に求めるところが大きすぎただけだろう。誰にだって失敗はある。
「……失敗してしまった身で厚かましいのですけど……尊さんの陰陽術で空を飛んだりとかって出来ないんですか?」
恐る恐る、と言った様子でリズベットが尊に尋ねる。
尊は少し考えて、首を横に振った。
「……出来なくはないけど、やりたくない、かな。無限に使える力じゃないから」
尊は一度立ち止まって、懐から二枚の札を取り出す。
一枚は短冊形の薄く滑らかな紙で、墨で文字らしきものがビッシリと書き込まれている。
もう一枚は人形の凧を縮小したような形で、胸に当たる部位に紅い印が付けてあった。
「陰陽術を発動する為に必要なものは、大まかに分けて二つ。体内に流れている《道力》と、この《符》という触媒なんだけど」
「《道力》?」
「ゲームのMPみたいな感じのものだよ」
「へぇ……というか、尊さんゲームなんてやるんですね!」
「こう説明するとわかりやすいって言われたから引用してる。話を戻すよ」
尊は短冊形の札を取り上げる。
「こっちが《術符》。これを使うと陰陽術が安定して出やすくなる。僕くらいになると発動自体には必要ってわけじゃないけど、質のいい《術符》だと術の効果を底上げしてくれあり、《道力》の消費を抑えてくれるから貴重なの。僕が今持ってるこれは最上級品。これをこっちで作ろうと思っても無理だろうから、あんまり使いたくないんだよね。紙くらい作れるけど、材料がないし」
「成る程……今、どれくらい持ってるんですか?」
「百二十二枚。多く感じるかも知れないけど、使っちゃうとあっという間になるなるから温存したい訳で」
因みに、尊はその如何にも嵩張りそうな符の束をそのまま持っているわけではない。使わない時は術で小さくしている。これはこれで有事の時に取り出しにくいという難点があるのだが、尊程の実力者の妨げになる程ではない。
「それで、空を飛ぼうと思ったら、さっき僕が落下の時に使った一章七節【其土不踏】を符で強力にして使う必要があるんだ。あの術、単体だと落下速度を軽減するくらいが限度だから。勿論どうしようもなくなったら使うけど……納得してもらえた?」
「あ、はい! ありがとうございます。では、そっちの人形の符は何なんですか?」
「あぁ、これは……」
ドゴォォン!!
尊は言葉を続けようとしたが、それは背後から突如として発生した轟音によって遮られた。
バキ、バキと落ちた枯れ木を踏みしめる乾いた音。
近づいてくる何かの気配。
尊は片手でリズベットを下がらせつつ、まだ見えないそれの方を鋭く睨んだ。
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