異世界陰陽師 〜最強陰陽師が異世界を救うまで〜

一☆一

文字の大きさ
4 / 7

陰陽術と符

しおりを挟む
「うぅぅ……すみません……」
「……いいよ。気にしてもしょうがないし」

 進行方向を空から街が見えた方向に漠然と定めつつ、道のない森の中を手探り状態で進む二人。
 足元は整地されておらずガタガタで歩きにくく、先の見通しもつきにくい。方向感覚も油断すると直ぐに失われるし、そもそも今向いている方が正しい向きなのかすら、尊には確信が持てなかった。何にせよ、森から出ない事には始まらないのだが。
 ともあれ、リズベットが悪いと断じて、責める気も尊にはなかった。確かに落胆はしたが、それは初めて会ったばかりの彼女に求めるところが大きすぎただけだろう。誰にだって失敗はある。

「……失敗してしまった身で厚かましいのですけど……尊さんの陰陽術で空を飛んだりとかって出来ないんですか?」

 恐る恐る、と言った様子でリズベットが尊に尋ねる。
 尊は少し考えて、首を横に振った。

「……出来なくはないけど、やりたくない、かな。無限に使える力じゃないから」

 尊は一度立ち止まって、懐から二枚の札を取り出す。
 一枚は短冊形の薄く滑らかな紙で、墨で文字らしきものがビッシリと書き込まれている。
 もう一枚は人形の凧を縮小したような形で、胸に当たる部位に紅い印が付けてあった。

「陰陽術を発動する為に必要なものは、大まかに分けて二つ。体内に流れている《道力どうりょく》と、この《符》という触媒なんだけど」
「《道力》?」
「ゲームのMPみたいな感じのものだよ」
「へぇ……というか、尊さんゲームなんてやるんですね!」
「こう説明するとわかりやすいって言われたから引用してる。話を戻すよ」

 尊は短冊形の札を取り上げる。

「こっちが《術符》。これを使うと陰陽術が安定して出やすくなる。僕くらいになると発動自体には必要ってわけじゃないけど、質のいい《術符》だと術の効果を底上げしてくれあり、《道力》の消費を抑えてくれるから貴重なの。僕が今持ってるこれは最上級品。これをこっちで作ろうと思っても無理だろうから、あんまり使いたくないんだよね。紙くらい作れるけど、材料がないし」
「成る程……今、どれくらい持ってるんですか?」
「百二十二枚。多く感じるかも知れないけど、使っちゃうとあっという間になるなるから温存したい訳で」

 因みに、尊はその如何にも嵩張りそうな符の束をそのまま持っているわけではない。使わない時は術で小さくしている。これはこれで有事の時に取り出しにくいという難点があるのだが、尊程の実力者の妨げになる程ではない。

「それで、空を飛ぼうと思ったら、さっき僕が落下の時に使った一章七節【其土不踏そのつちふまず】を符で強力にして使う必要があるんだ。あの術、単体だと落下速度を軽減するくらいが限度だから。勿論どうしようもなくなったら使うけど……納得してもらえた?」
「あ、はい! ありがとうございます。では、そっちの人形ひとがたの符は何なんですか?」
「あぁ、これは……」

 ドゴォォン!!

 尊は言葉を続けようとしたが、それは背後から突如として発生した轟音によって遮られた。
 バキ、バキと落ちた枯れ木を踏みしめる乾いた音。
 近づいてくる何かの気配。
 尊は片手でリズベットを下がらせつつ、まだ見えないそれの方を鋭く睨んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...