異世界にてドヤ顔で現代知識TUEEEEしてたらいつの間にか最高位軍師にされてました!?

一☆一

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第一章

思考

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 隊の中に緊張が走っていた。
 いつ、何処から敵が来るのか。それが最も早くわかるのはテメーユの五感をおいて他ににない。
 テメーユが腕を上げている。この腕が振り下ろされた時が斉射の合図という事だ。
 しかし。

「(おかしいにゃ……幾ら何でも動きがにゃさすぎる)」

 テメーユの五感は、敵の兵たちが後退した其処から全く動いていないという事実を感じ取っていた。
 確かに、テメーユが尋常ならざる五感を持ち、それ故に敵の接近にいち早く気づいたのは敵にとって想定外の事実だっただろう。その事実が敵に二の足を踏ませていたり、テメーユの迅速な対応が多少敵に動揺を与えていたりしても何らおかしくはない。だから敵指揮官は対応に追われて動かない、という説明は出来なくもないか。
 だが、それなら予想外の事が起き、計画に少しでも影響を及ぼす可能性有りという事で多少の動きはあっていい筈だ。それこそ一度後退するなりしてもおかしくない。だが、兵たちの間には動揺も見られず、計画に支障なしと言わんばかりに堂々としている。となると……

「(元々動くつもりがにゃかった……? いる筈の別働隊の動きは流石に感知できにゃいけどにゃ……)」

 テメーユは考える。つまり、先ほど見えた兵たちの受けた命令は、『反撃の早さ如何に関わらず此方に敵の存在を認知させた後に後退して動かない』というものだったのではないか? と。

「(でも、意図が読めにゃい……睨めっこしていても無意味に時間が過ぎるだけにゃのに……?)」

 夜が来るのを待っているのか。いや、それは考えにくい。日が傾いて来たとはいえ、まだ完全に日が落ちるには随分と間がある。敵はなんらかの方法で此方の場所を把握しているのだから、それが狙いなら進行のタイミングはもう少し後にすべきだろう。
 別働隊が何らかのアクションを起こすのを待っている、としか思えないが……しかし、それがどんなものかまでは分かりかねた。何より、別働隊はテメーユの進行先を塞いでいると予想されている。もし別働隊が此方に攻めて来たとしても、なら前方はガラ空きという事になるのだから全力で前に進めば突破は容易だろう。

「(まぁ、それも敵が三小隊くらいいたら今警戒している敵、後で強襲してくる敵、進行方向を塞ぐ敵の三つにわけても事足りるから駄目なんだけどにゃー。それはそんなのにまぁ見つかったのが運のツキ? 開き直って全速後退したら突破だけなら出来そうだけどにゃ)」

 流石に四小隊以上で協力しているという事は考えにくい。そこまで数の差があったら力押しで来ても損傷は無視できるほど軽微になる筈で、それをしていないという事はこちらから全力で反抗を受けたら厳しい数の兵しかいないのだろう。二小隊が有力。あって三小隊迄だ。論理的に考えればの話だが。
 三小隊しかいないという事は三方向くらいしか防ぎきるには難しいという事で、つまりまぁ一方はガラ空きになっていておかしくない。

「(まぁそこら辺は考えてもしょうがにゃいけど……取り敢えず、別方向から攻められたら全力後退だにゃ)」

 兵たちの警戒をそらしたくはないので、現時点では命令を飛ばしてはおかないが。

「今木の影から姿が見えたぞ!! 撃て、撃てぇ!!」

 あまりに緊張していたのか、テメーユの指示も待たずに矢を放ち始める兵士達。それを見て、テメーユは司令の方向性を変える。

「やっぱり斉射はやめるにゃ! 敵が見え次第各自の判断で撃ってよし!」

 兵達がゴクリと唾を飲んだ。
 判断を各自に任せた事を受けて、より一層テメーユが敵の狙いについて黙々と思考を張り巡らせていると、ダクレスがテメーユに小声で声をかけた。

「……失礼ながら。やはり何らかの動きは見せた方が良いかと思います。このまま動かないでいるのは、まさしく敵の思うツボかと」
「うーん……一理あるにゃー。しかしどうしたものかにゃ。前に進むのは多分不味いから反転して後退するか、もしくは右に進むかにゃけど……それはそれで想定されてにゃいとは思えにゃいからにゃー。特に右はダメにゃよね。今見えてる敵に背中を見せるとか論外にゃし」
「かといって動かないでいるのは緩やかに死を待つようなものです。別働隊の存在もあります。何かを狙ってきているというのは明らかなのですから……」
「そも、敵は根比べを狙ってるのかもしれないにゃ。こっちが根をあげた時を狙って一網打尽にする作戦かもしれにゃい。『待つ』か『動く』という二つの可能性。どっちが正しいとかはわからにゃいが、『動く』方は『どう動くのか』『何処に動くのか』にゃどで多様に分岐して、可能性をすり減らしていくにゃ。にゃら『待つ』の方を選択した方がいいのではにゃいかにゃ?」
「それは……いや、そうかもしれませんな……」

 ダクレスが引き下がり、その時にテメーユは初めて気づいた。周囲の異常を。
 兵達が、明らかに疲労している。
 いや、此処まで殆ど休みなしで来たのだ。疲れている事自体は当然だ。だけど、今テメーユの視界に飛び込んできた兵達の疲労度合いは、今まさに急行軍でもしてきたのではと錯覚させるほどのそれ。

「……しまったにゃ!?」

 同時、隊の右手側から高速の部隊が忍び寄るのを、テメーユは聞いた。
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