拝啓、いつかの僕達へ ~枯澄高校天文学部活動記録~

一☆一

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はじまり

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 『愛は有限の資源である』、というのが俺の持論だった。
 人が持つ愛という感情は、無限のように見えて本当は限りがある。
 付き合いたてのカップルなんかは互いに精一杯の愛を与え続けるが、急激に熱く熱しすぎたそれは、同じような傾斜を描きながら冷めてしまうだろう。愛が尽きてしまうから。
 結婚を経て老いるまで共にいるような男女は、愛を無闇に浪費することはしない。ただありのまま、冷め過ぎることなく熱せられ過ぎることなく続いていく。
 時に憎み、争いながらも。離れようと考えても、行動に移すことだけは決してなく。
 そういう恋愛を俺はしたいと、常々考えてきた。短絡的な、燃え尽きる前の蝋燭の様な恋は真っ平ごめんだと、そう思っていた。

「そういうのを、達観したみたいに語っちゃうのがゆーくんの悪いとこじゃないかな?」
「気にしてるんだから言うなよな……」
「そ? まぁ僕は好きだから……直されちゃっても、困るけどね」

 面白そうに顔を綻ばせながらそう言う彼女。
 歳上で、俺より背も高い。高校こそは一緒だけど頭も、俺なんかより全然いい。
 優しくて、顔も凄く可愛くて──有り体に言えば学校のアイドルみたいな彼女が、今俺の隣に彼女──分かりにくいから言い直すなら、ガールフレンドとして座っているのは、ただ俺が彼女の隣に住んでいたというだけの、運以外の何物でもないような理由だった。少なくとも、俺はそう思っていた。

「僕は……例えば隣街とか、他県とか──なんなら国外にゆーくんがいたんだとしても、こうして一緒に隣に座って、ゆっくりしてるとおもうんだけどなぁ。ううん、きっとそうに違いない!」
「元気いいよなぁ、あきねえは」
「そりゃ、元気が無くていい事なんてないってね! それに、無かった可能性の事をうじうじ考えたって不毛でしょー?」

 まぁ、それは言う通りなんだけれど。

「僕はゆーくんの事、大好きだよ?」
「…………そ、っか」
「…………じーーーー」

 擬音を口に出しながら、ジト目で俺を見つめる彼女。
 はぁ、と俺は溜息を一つ吐いて。
 本当は、満更でもない──けれど、恥ずかしくて余り言いたくない気障な台詞を。

「……好きだよ、俺も。大好きだ」
「うん、よろしい! やっぱりそういうのは素直に言うゆーくんが、僕は大好きだよ!」

 ご褒美とばかりに俺を頭を胸に抱きしめるあき姉。
 ああ、くそ。こう言う事をされると、信じてしまうのだ。
 この蝋燭の最後の灯火のような、刹那に立ち昇る業火のような恋心は。
 きっと永遠に続いてくれるんじゃないかって。俺が老いても。彼女が老いても。一緒に寄り添って、その束の間の筈の火は消えることが無いんじゃないかって。

 そんな幻想が無いことくらい、俺は知っていた筈だったのに──
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