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第三王子編
甘い夜 ☆
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ウィルが部屋に来たのは、かなり遅くなってからだった。
いつ頃とまでの約束はしていなかったので仕方ないのだが、夕食の後から待っていた俺としては、ドキドキを通り越して何かあったのかと冷や汗をかいた。
部屋をノックされて顔を確認した時は、安堵で座り込んでしまった。
ウィルが驚いて駆け寄った。
「サーク!?大丈夫か!?」
「何かあったのかと思った……。」
「ごめん、最後だから馬達の様子を確認してたんだ。」
「なら、俺の様子も確認してください……。」
何か、これだけの事でへたり込むとは思わなかった。
慣れない警護体制で、思ったより精神が張りつめているようだ。
気が抜けて座り込んだ俺に、ウィルが部屋に入り、腕を回して立たせてくれる。
すんっと鼻に微かな香りを感じた。
抱きついてそれを確認する。
「ウィル、いい香りがする……。」
「あ……うん……。馬屋に行ったから、臭うといけないと思って……。」
「お風呂入ってきたの?」
「それぐらいの礼儀はある……。」
抱きしめながら、すんすんと匂いを嗅いだ。
石鹸の香りなのかとても安心する。
俺がしばらくそうしている間、ウィルは何も言わずに好きにさせてくれた。
「……大丈夫か?」
「駄目みたい。」
「……平気そうだな。」
なかなか顔を上げない俺を、ウィルが心配したが、俺の返答に軽く息を吐き出すとぽんぽんと背中を撫でてくれた。
「座って?」
ウィルが言った。
顔を覗くと、真剣な眼差しで俺を見ている。
座ってってどういう意味合いだろう?
気づかってなのか、リードされてるのか……。
どうしようか悩んだが、ソファーでなくてベッドに座った。
ウィルは特に何も言わず、俺の前に立った。
腰の辺りを両手で包む。
ウィルは俺の顔を両手が包み込み、覗き込んだ。
ブローチを外している青い深い色に見つめられて、ちょっとドキドキした。
「……口開けて、舌を出して?」
囁くようにそう言った。
何だろう?積極的だな。
そう思いながら、言われた通りにする。
ウィルは口の中をじっと見た。
ちょっとどぎまぎする。
そして両手の親指で俺の下瞼を引っ張り、あかんべーをしている状態にされた。
ん?何か思ってたのと違う……。
「……あの?ウィルさん??」
「ちゃんと寝てるか?目下が鬱血しはじめてる。充血傾向だし……。食事も片手間に済ませてるだろ?唾液の量が減ってる感じだ……。」
「……もしかして、健康チェックしてます?ウィルさん……。」
「俺の様子も確認しろと言ったのは、サークだろ。」
「あ、うん。」
まぁ、そうなんだけど……。
期待した分、ちょっとショックだ。
でもウィルの方は真剣なようだった。
「仕方ないけど、交感神経が優位になりすぎてると思うよ。意識的にリラックスできる時間を作ること。食事はちゃんと座ってゆっくり食べて。食べるの好きだろ?そう言う時間は大事にしないと。後、涙も唾液も減ってるっぽいから、水分も意識してたくさんとって。わかったか?」
「……はい、先生。」
ちょっとおかしくて笑ってしまった。
本当に俺の事を一生懸命考えてくれてるんだなと思ったら、凄く幸せな気持ちになった。
目の前に立つウィルをぎゅっと抱きしめる。
「……何してるんだよ?」
「意識してリラックスする時間を作ってんの。」
「あ、そ。」
ウィルはそう言いながら、抱きしめ返してくれた。
優しく髪を撫でてくれる指先が気持ちいい。
少しずつ早くなるウィルの心音が心地良かった。
ウィルがぎゅっと俺の頭を強めに抱きしめる。
「サーク…本当に大丈夫なのか?あの頭痛も気になるし……。仕事的にも責任が増えて、気を張ってるのはわかるよ……。でも、少し無理し過ぎてないか?」
「ん~。そうかも。」
確かにバタバタ追われるまま、あれもこれもと抱えすぎているのかもしれない。
自分にやれる事があって、それをしたいとがむしゃらになる。
悪いことじゃない。
自分の中が活気づいて活動的になる。
でもそう言ったプラスの要因だって、気付きにくいが一種のストレスなのだ。
そこにこの友好訪問が重なって、気が張りつめているのだろう。
副隊長代理の初の大仕事ってだけじゃなくて、前途多難な失敗が許されないミッションだから。
ウィルが頭にキスしてくれる。
「……今日くらい、ゆっくり休んだらどうだ?」
「ウィルは嫌なの?」
「……嫌じゃないけど…それより、体が心配なんだ……。」
ウィルの言いたいこともわかる。
そう言ってくれるのも嬉しい。
俺はウィルの背に腕を回して、その胸に顔を埋めた。
「……頭痛は森の町に行った時、ちょっと見てもらったけど、頭の中に滞りがあったりする訳じゃないって。ただ興奮状態を見てもらった訳じゃないから、はっきりとは言えないみたいだけど……。」
「うん。」
「……しなくてもいいから、脱いで抱き合いたい。ウィルをたくさん感じたい。」
「うん。いいよ。」
ウィルは体を離し、俺を見つめた。
そしてほんのりと頬を染めて、俺に口付ける。
名残惜しく唇が離れると、躊躇なく服を脱ぎはじめた。
相変わらず男前でカッコいい。
「下も脱いでね?」
「……いいけど…。」
上だけで終わりそうだったので、笑ってそう声をかけた。
そんな上だけで許すほど俺は甘くないですよ?
ウィルさん?
にこにこ見守る。
ウィルは不服そうに顔を赤らめた。
可愛い。
ウィルだけに脱がしてばかりなのは悪いので、俺も服を脱いだ。
ぽいぽい脱ぎ捨てると、ウィルが呆れた顔でそれを拾ってサイドテーブルに置いた。
「子供か、お前は。」
「……ウィルはお母さんみたいだね?」
「お母さんとか言われたくない。」
前に立った何も身につけていないウィルを抱きしめて、倒れるようにベッドに連れ込んだ。
諦めているのか覚悟ができていたのか、ウィルは何も言わない。
そのまま上に覆い被さって、見下ろした。
「…本当にしない方がいい?ウィル?」
「それは……。」
恥ずかしそうに視線を反らすウィルに、にっこり笑いかける。
体を重ねて、手を恋人繋ぎに繋いだ。
体温が手から体から伝わってくる。
ただ肌がふれ合っているだけでも、とても気持ちがいい。
どちらからともなく見つめあって、キスをする。
だんだん深く求めあって、腕が体に回される。
「ウィル……いいよね?」
「……うん…。」
顔を覗き込んで尋ねると、そう答えた。
ウィルは結局、折れてくれた。
もう一度口付けだ後、可愛い胸の突起に吸い付く。
ぴくりと体が震え、軽い抵抗を受けた。
「あっ…あのさ……っ。」
「なに?」
「持ってきてるのか……?」
「何を?」
「その……竿…。」
「あはは、さすがに持ってきてないよ!」
「……そうか。」
「残念?」
「別に……。」
「大丈夫だよ。俺、あれがなくても、ウィルを満足させる自信はあるから。」
にっこりとそう言うと、ウィルはますます赤くなった。
ウィルにとったら、むしろその方が何をされるのかわからなくてどぎまぎするのだ。
おかしな事をさせられなければいいが……。
拒む事も出来ずに、ただ赤くなる。
「……お手柔らかに頼む…。」
ウィルが諦めてそう言うと、サークは無邪気に笑って見せた。
むちゅっとばかりに口付けられる。
そして笑顔でこう言った。
「とりあえず、これ、つけてくれる?」
「え!?ちょっと待て!サークっ!!」
「大丈夫、変な事は絶対しないからっ。ね?」
サークが出したのは、何の変哲もない布だ。
だが、それを目に被せてきた。
つまり目隠しをしろ、と言うことだ。
固まったウィルにサークは手早く目隠しを着けた。
「待て!いいなんて言ってな……っ!!あっっ!!」
「大丈夫、今日は変な事はしないから。」
「やっ!……あっ…!あああぁっ!?」
「好きなだけ乱れてね?ウィル?」
何をされるかわからない中、愛撫されてウィルは悶えた。
サークは約束通り、おかしな事は何一つしなかった。
それでもウィルを辱しめて淫らにするには十分すぎる刺激だった。
南の国への友好訪問の初日の夜は、こうしてふけていった。
いつ頃とまでの約束はしていなかったので仕方ないのだが、夕食の後から待っていた俺としては、ドキドキを通り越して何かあったのかと冷や汗をかいた。
部屋をノックされて顔を確認した時は、安堵で座り込んでしまった。
ウィルが驚いて駆け寄った。
「サーク!?大丈夫か!?」
「何かあったのかと思った……。」
「ごめん、最後だから馬達の様子を確認してたんだ。」
「なら、俺の様子も確認してください……。」
何か、これだけの事でへたり込むとは思わなかった。
慣れない警護体制で、思ったより精神が張りつめているようだ。
気が抜けて座り込んだ俺に、ウィルが部屋に入り、腕を回して立たせてくれる。
すんっと鼻に微かな香りを感じた。
抱きついてそれを確認する。
「ウィル、いい香りがする……。」
「あ……うん……。馬屋に行ったから、臭うといけないと思って……。」
「お風呂入ってきたの?」
「それぐらいの礼儀はある……。」
抱きしめながら、すんすんと匂いを嗅いだ。
石鹸の香りなのかとても安心する。
俺がしばらくそうしている間、ウィルは何も言わずに好きにさせてくれた。
「……大丈夫か?」
「駄目みたい。」
「……平気そうだな。」
なかなか顔を上げない俺を、ウィルが心配したが、俺の返答に軽く息を吐き出すとぽんぽんと背中を撫でてくれた。
「座って?」
ウィルが言った。
顔を覗くと、真剣な眼差しで俺を見ている。
座ってってどういう意味合いだろう?
気づかってなのか、リードされてるのか……。
どうしようか悩んだが、ソファーでなくてベッドに座った。
ウィルは特に何も言わず、俺の前に立った。
腰の辺りを両手で包む。
ウィルは俺の顔を両手が包み込み、覗き込んだ。
ブローチを外している青い深い色に見つめられて、ちょっとドキドキした。
「……口開けて、舌を出して?」
囁くようにそう言った。
何だろう?積極的だな。
そう思いながら、言われた通りにする。
ウィルは口の中をじっと見た。
ちょっとどぎまぎする。
そして両手の親指で俺の下瞼を引っ張り、あかんべーをしている状態にされた。
ん?何か思ってたのと違う……。
「……あの?ウィルさん??」
「ちゃんと寝てるか?目下が鬱血しはじめてる。充血傾向だし……。食事も片手間に済ませてるだろ?唾液の量が減ってる感じだ……。」
「……もしかして、健康チェックしてます?ウィルさん……。」
「俺の様子も確認しろと言ったのは、サークだろ。」
「あ、うん。」
まぁ、そうなんだけど……。
期待した分、ちょっとショックだ。
でもウィルの方は真剣なようだった。
「仕方ないけど、交感神経が優位になりすぎてると思うよ。意識的にリラックスできる時間を作ること。食事はちゃんと座ってゆっくり食べて。食べるの好きだろ?そう言う時間は大事にしないと。後、涙も唾液も減ってるっぽいから、水分も意識してたくさんとって。わかったか?」
「……はい、先生。」
ちょっとおかしくて笑ってしまった。
本当に俺の事を一生懸命考えてくれてるんだなと思ったら、凄く幸せな気持ちになった。
目の前に立つウィルをぎゅっと抱きしめる。
「……何してるんだよ?」
「意識してリラックスする時間を作ってんの。」
「あ、そ。」
ウィルはそう言いながら、抱きしめ返してくれた。
優しく髪を撫でてくれる指先が気持ちいい。
少しずつ早くなるウィルの心音が心地良かった。
ウィルがぎゅっと俺の頭を強めに抱きしめる。
「サーク…本当に大丈夫なのか?あの頭痛も気になるし……。仕事的にも責任が増えて、気を張ってるのはわかるよ……。でも、少し無理し過ぎてないか?」
「ん~。そうかも。」
確かにバタバタ追われるまま、あれもこれもと抱えすぎているのかもしれない。
自分にやれる事があって、それをしたいとがむしゃらになる。
悪いことじゃない。
自分の中が活気づいて活動的になる。
でもそう言ったプラスの要因だって、気付きにくいが一種のストレスなのだ。
そこにこの友好訪問が重なって、気が張りつめているのだろう。
副隊長代理の初の大仕事ってだけじゃなくて、前途多難な失敗が許されないミッションだから。
ウィルが頭にキスしてくれる。
「……今日くらい、ゆっくり休んだらどうだ?」
「ウィルは嫌なの?」
「……嫌じゃないけど…それより、体が心配なんだ……。」
ウィルの言いたいこともわかる。
そう言ってくれるのも嬉しい。
俺はウィルの背に腕を回して、その胸に顔を埋めた。
「……頭痛は森の町に行った時、ちょっと見てもらったけど、頭の中に滞りがあったりする訳じゃないって。ただ興奮状態を見てもらった訳じゃないから、はっきりとは言えないみたいだけど……。」
「うん。」
「……しなくてもいいから、脱いで抱き合いたい。ウィルをたくさん感じたい。」
「うん。いいよ。」
ウィルは体を離し、俺を見つめた。
そしてほんのりと頬を染めて、俺に口付ける。
名残惜しく唇が離れると、躊躇なく服を脱ぎはじめた。
相変わらず男前でカッコいい。
「下も脱いでね?」
「……いいけど…。」
上だけで終わりそうだったので、笑ってそう声をかけた。
そんな上だけで許すほど俺は甘くないですよ?
ウィルさん?
にこにこ見守る。
ウィルは不服そうに顔を赤らめた。
可愛い。
ウィルだけに脱がしてばかりなのは悪いので、俺も服を脱いだ。
ぽいぽい脱ぎ捨てると、ウィルが呆れた顔でそれを拾ってサイドテーブルに置いた。
「子供か、お前は。」
「……ウィルはお母さんみたいだね?」
「お母さんとか言われたくない。」
前に立った何も身につけていないウィルを抱きしめて、倒れるようにベッドに連れ込んだ。
諦めているのか覚悟ができていたのか、ウィルは何も言わない。
そのまま上に覆い被さって、見下ろした。
「…本当にしない方がいい?ウィル?」
「それは……。」
恥ずかしそうに視線を反らすウィルに、にっこり笑いかける。
体を重ねて、手を恋人繋ぎに繋いだ。
体温が手から体から伝わってくる。
ただ肌がふれ合っているだけでも、とても気持ちがいい。
どちらからともなく見つめあって、キスをする。
だんだん深く求めあって、腕が体に回される。
「ウィル……いいよね?」
「……うん…。」
顔を覗き込んで尋ねると、そう答えた。
ウィルは結局、折れてくれた。
もう一度口付けだ後、可愛い胸の突起に吸い付く。
ぴくりと体が震え、軽い抵抗を受けた。
「あっ…あのさ……っ。」
「なに?」
「持ってきてるのか……?」
「何を?」
「その……竿…。」
「あはは、さすがに持ってきてないよ!」
「……そうか。」
「残念?」
「別に……。」
「大丈夫だよ。俺、あれがなくても、ウィルを満足させる自信はあるから。」
にっこりとそう言うと、ウィルはますます赤くなった。
ウィルにとったら、むしろその方が何をされるのかわからなくてどぎまぎするのだ。
おかしな事をさせられなければいいが……。
拒む事も出来ずに、ただ赤くなる。
「……お手柔らかに頼む…。」
ウィルが諦めてそう言うと、サークは無邪気に笑って見せた。
むちゅっとばかりに口付けられる。
そして笑顔でこう言った。
「とりあえず、これ、つけてくれる?」
「え!?ちょっと待て!サークっ!!」
「大丈夫、変な事は絶対しないからっ。ね?」
サークが出したのは、何の変哲もない布だ。
だが、それを目に被せてきた。
つまり目隠しをしろ、と言うことだ。
固まったウィルにサークは手早く目隠しを着けた。
「待て!いいなんて言ってな……っ!!あっっ!!」
「大丈夫、今日は変な事はしないから。」
「やっ!……あっ…!あああぁっ!?」
「好きなだけ乱れてね?ウィル?」
何をされるかわからない中、愛撫されてウィルは悶えた。
サークは約束通り、おかしな事は何一つしなかった。
それでもウィルを辱しめて淫らにするには十分すぎる刺激だった。
南の国への友好訪問の初日の夜は、こうしてふけていった。
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