欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第三王子編

夜を待つ

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サークがロイヤルシールドの制服に袖を通していると、ガチャリと部屋のドアが開いた。

「ただいま戻りました~。」

「お~、お帰り~。」

王宮からイヴァンが帰ってきた。
サークの格好を見て、くすりと笑った。

「サークさん、シールドやるんですね。」

「お前もだろ。」

「ええ。ソードですが。……似合ってますよ、それ。」

「嫌味かよ。て言うか、めちゃめちゃ動きづらいのな、これ。」

「ははは。魔術師の方は、普通、動き回ったりしませんから。」

「俺が変人みたいな言い方するなよ!魔術兵はみんな動き回るぞ?じゃないと死ぬ。」

サークはそう言って、ローブを脱いだ。
同じく部屋着に着替えようとしていたイヴァンが苦笑する。

「直にローブ着てたんですか?」

「着替えてる途中だったんだよ。で、なんとなく着てみた。」

ローブを脱いだサークは上半身何も身につけておらず、そのままローブをハンガーに吊るした。
その後ろ姿を見て、イヴァンは思わず声をかけた。

「だいぶ筋肉付いてきましたよね、サークさん。」

「サボるとシルクがぶん投げてくるから仕方ないだろ。」

「どう見ても魔術師の体じゃないですよ。」

「うるさいな~。お前だって、脱ぐとムキムキな癖に、人の事ああだこうだ言ってんじゃねぇよ!」

「僕は一応、重装兵寄りの騎士ですからね。もう少し鍛えないと……。」

そう言って少しポージングして自分の筋肉を確認していた。
詳しくは知らないが、剣術騎士にも色々あって、イヴァンはその中の軽装重装兵というタイプらしい。
軽装なんだか重装なんだかよくわからないネーミングだ。
サークはポーズするイヴァンを見てニヤリとした。

「よっ!ナイスバルク!」

「いやいや、ナイスと言われるほど、仕上がってませんから、僕の筋肉。」

イヴァンは少し照れたようにニカッと笑った。
いつも通り爽やかな笑顔だが、どこか少年のような純朴さが含まれていた。
仕上がってないとは言ったが、悪ノリしてさらにポージングをする。
サークが掛け声をかけた。

「お~!キレてる!キレてる!」

「あははっ!!どこで覚えたんですか!!その掛け声っ!!」

「いや、外壁警護って暇な時は暇じゃん?そうすると筋肉バカどもがポージングはじめるんだよ。で、皆でそれに掛け声かけて遊ぶんだよ。」

「面白そうですね、それ。」

そんな事を言って、サークとイヴァンがポージングと掛け声をかけてふざけていると、ガチャリとドアが開いた。
何だろうとふたりがそれを見る。

「……何してるんだ?……半裸で?」

残業していたらしいギルが、書類を片手に入るなり、固まってそう言った。
サークとイヴァンは顔を見合わせる。

「何って……。」

「……ボディービルごっこ??」

きょとんとした顔でそう答えた。
ギルは頭を押さえた。
いや、終業後に部屋で何をしていても何の問題はないのだが……。
衝撃で自分が何をしに来たのか忘れそうになった。

「いいから、上を着ろ、二人とも……。」

男子部屋は今日も通常運転である。












あれよあれよという間に、南の国への出発日になった。
別宮には数名残し、殆どがついて行く形になる。
多すぎると俺は言ったが、拠点拠点に少しずつ人を残す形を取りたいらしく、ギルはこれでいいと言った。
何だか物凄い警戒してるなと思う。
ちなみに留守番のまとめ役として、ライルさんが残った。
新婚さんに出張は可哀想だもんな。
むしろ、ガスパーがついてくると言ったのには驚いた。
中継地点のひとつで指揮をとるらしい。
何か本当、両国の友好を深める為の訪問の警護体制じゃないよな、これ??
変な感じだとサークは思った。

「サーク?どうかしましたか?」

「いえ、何でもありませんよ。殿下。」

「なら良かったです。」

「お疲れはありませんか?」

「ええ、ありがとう。大丈夫です。」

馬車の窓から王子に声をかけられ、サークはにっこり笑って会話する。
サークはいつも通り王子のご指名で、馬車の真横に馬をつけていた。
横についてから、ずっと王子はサークを眺めていて、何だかむず痒い。
もしかしたら退屈なのかもしれない。

「退屈ですか?」

「少し。でも大丈夫です。」

「良ければ何か話しましょうか?」

「聞きたいです。」

サークはそう言われ、外壁警護であったおかしかった事や、東の国の話をした。
王子は面白そうに聞いていた。
ふと見ると、ウィルが列を避けて道の脇に馬で立っていた。
横まで来ると、馬を並べて歩き出した。

「どうした?」

「隊長からの伝言です。もうじき今日の宿場に着くので、先に行って魔力探査して欲しいとの事です。」

ウィルは畏まってそう言った。
立場的に今は俺が上になるからだ。
わかっているが、なんとなくくすぐったい。

「わかった。ついて来れるか?」

「しかし……。」

「ここは変わってもらう。……カーターっ!!」

俺は馬を下げ、後ろについていた隊員に声をかけた。
カーターは列を外れ、すぐに後ろについた。

「宿場に近づいた。先に行って警護する。ここを頼めるか?」

「わかりました。」

その返事を聞いてから、俺は王子に目を向けた。

「殿下、もうじき宿に着くそうです。先に行って、警護いたします。」

「……はい。気をつけて。」

「失礼します。」

挨拶して、ウィルを見た。
ウィルは無言で頷いた。
そのまま列の脇を馬に走らせる。

「失礼します。殿下。」

ウィルもそう挨拶し、俺の後に続いた。
列の先頭に来ると、ギルと目が合った。
片手を上げて挨拶しておく。
列を抜けると、俺とウィルは馬を並走させた。

「良かったのか?俺を連れてきて……。」

「だって、ここまでだろ?ウィルがついてくるの?」

「そうだが……。」

歯切れ悪く言うわりに、ウィルは少し赤くなっていて可愛かった。
今日は南の国との国境に宿場がある。
正式な隊員でないウィルは、ここまでしかついて来れない。
なら、少しでも一緒にいたかった。

「職権乱用かな?」

「ちょっとね。」

ウィルは笑った。
宿場につき、馬をウィルに任せて魔力探査を行う。
まぁ、まだ国内だし、そこまで心配する事もないのだが。

「どう?」

「問題ないよ。」

「そうか。」

「ねぇ、ウィル?」

「何だ?」

「今日、俺の部屋に来て。」

ウィルは言葉に詰まって、真っ赤になった。
少し俯いて、考えている。
俺は言った。

「今日は夜の警護はないよ、俺。それから自腹切ってちょっといい部屋を取ったから。ちゃんとギルにも許可はとってある。」

「……わかった。」

何かスゴくストレートな言い方になってしまったが、これからしばらく会えないのだ。
その上、ここから先は基本、王子に24時間密着勤務になる。
これぐらい許して欲しい。
伝えたい事は伝えたので、ふたりで手分けして、宿等の利用施設への連絡や、部屋と馬屋の確認・受け入れ準備などを行う。

ここはウィルと谷から戻った場所に近い。
どこか遠くに、海の気配を感じながら、俺は日が暮れるのを心待ちにしていた。
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