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第三王子編
旅の約束
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国王への挨拶も終わり、王子は昼食会に向かった。
ちなみに俺とイヴァンは朝に少し仮眠を取っただけで昼飯も食わずに爆走中だ。
俺たちは昼食会場までの警護で、そこで明日の朝まで本家と交代予定だ。
夜に本家の休憩の間は勤務が入るが、それだけだ。
色々とあって、本当にもうくたくただ。
イヴァンは爽やかな笑顔を崩さないが、さすがに疲れの色が見てとれる。
まぁ、ただでさえ気が抜けないのに、ついた早々あれだけトラップが仕掛けられてれば疲れるよな。
王子が会場入りし、国王や王太子たちとテーブルにつく。
場は和やかな雰囲気だ。
一応、魔力探査もしてみたが、おかしなところは見られなかった。
国王の簡単な挨拶が終わり、料理がならび始める頃、本家のロイヤルソードとシールドが来てくれた。
顔見知りらしいイヴァンが待機場所を離れ、一度彼らと外に出た。
状況を説明しているのだろう。
何にせよ、後は任せて休ませてもらおう。
まだ一日目だ、先は長い。
そんな時、ふと横を食前酒らしきお猪口みたいなグラスをトレーに乗せたメイドが通りすぎた。
何の気なしに魔力探査をする。
「!!」
それに気がつき、顔が強ばる。
メイドは普通にそれを上座からおいていったが、気になったグラスはしっかり王子の場所に置いた。
マジか……。
さすがにまだついたばかりの昼食会だし、ないと思ったが甘かったようだ。
俺はつかつかとテーブルに近づき、王子に耳打ちした。
「食前酒はアルコールが強そうなので、お飲みにならないで下さい。朝、食欲がなかったと聞いていますので、胃に負担がかかり今後のお食事に影響が出ます。」
当たり障りない言い方で、飲むなと伝える。
王子は特に気に止める事もなく、わかったと返事があった。
顔を上げると殺気を感じた。
王太子がにっこりと笑っていたが、目は笑っていない。
俺は礼を尽くし、その場を離れた。
待機場所に戻ってきていた本家とイヴァンがこちらを見ている。
何かあった事は察知している顔だった。
「……王子の場所に置かれる全ての飲食物、並びに、食器類も必ず魔力探査をしてください。今、食前酒は飲まないようお伝えしました。」
本家のロイヤルシールドさんは40代くらいの女性で、俺の言葉に少し顔をしかめた。
「ついた早々、酷いわね……。任せて。」
「お願いします。」
正直、これがあってこの場を離れるのはどうかと思ったが、後の警護に差し障っても困る。
俺はイヴァンと部屋を出た。
「本気ですね、向こうは。」
「だからって来た早々、薬盛るか!?」
「とにかく、後は任せて僕たちは休みましょう。ここで疲れさせる目的かもしれませんから。」
「なるほどな……。」
イヴァンの言うことは最もだった。
そうか、これは心理戦でもあるのか……。
俺は単にピリピリしてしまったが、それは向こうの思う壺と言うことだ。
イヴァンが何でもないようにその可能性に至ったのは、さすがだと思った。
警護部隊の詰め所で簡単に食事を済ませ、王子の部屋の横にある従者控え室で仮眠をとろうとしたが、やはり色々と気になって寝付けない。
深々とため息をつくと、隣のベッドに横になっていたイヴァンがこちらを見た。
「眠れません?」
「そりゃな。」
「気が高ぶってるのはわかりますが、休める時にちゃんと休むのも仕事ですよ。さっきも言いましたが、これは多分、こちらを疲れさせる目的だと思います。でなければここまであからさまにたくさん仕掛けては来ないでしょう。」
「わかってるけどさ~。」
「安心してください。本家で今回来たソードもシールドも、かなりのベテランです。どちらも殿下に昔から支えている方です。今回、殿下につく人員を減らされたのを受けて、腹を立てて絶対自分が行くと志願して来てくださったふたりです。」
「うん。」
「ひとりで何でも気負い込み過ぎですよ。もっとまわりを頼って下さい。」
「うん。」
「寝れないなら、添い寝してあげましょうか?」
「いや、いい。」
「そこはうんとは言わないんですね?」
「馬鹿にしてんのか?」
「いや、まだ正気そうで良かったです。」
いつもの調子で話していたら、気が緩んだのか、少しだけ眠くなってきた。
今回はイヴァンに助けられてばかりだ。
でも警護任務ではイヴァンの方が経験値が高いのだし、頼っていいと言うのだから頼ろうと思った。
「イヴァンはロイヤルソードになるのか?」
「いずれですけど。」
「子供の時からそう決めてたのか?」
「そうですね、まわりが皆そうだったので、自分もなるもんだと思っていましたから。あまり他の事は考えてなかったですね。」
「ふ~ん。」
「あ、でも!子供のころ、一時期冒険者になりたかったです!懐かしいな~。」
意外な事を言われ、顔を横に向る。
冒険者?イヴァンが?
どう見ても良質な御子息様なのに?
イヴァンはいつもの爽やかな好青年ではなくて、とても無邪気な子供みたいな顔をしていた。
そんな顔も持っていたのかとちょっと驚く。
「……なら、今度、クエスト行くか?」
「え?」
「俺、中級冒険者の資格持ってるぞ?」
「本当ですか!?」
イヴァンは無邪気な顔でちょっと体を起こし、いつ取ったのか、どんなクエストをしたのか等を聞いてきた。
その様子から、本当に冒険者に憧れた昔があったのだなと思う。
何だか嬉しかった。
「そうだな……。いつかお前がまとまった休みでも取れたら、連れてってやるよ。」
「……約束ですよ?」
「うん。」
約束、という言葉に少し笑ってしまった。
イヴァンは意外と約束をするのが好きだ。
そして冒険者になりたかったイヴァン少年を思い浮かべる。
意外とやんちゃ小僧だったのかな?
まだ始まってない冒険の話を語り合っているうちに、俺は知らぬ間に眠ってしまった。
ちなみに俺とイヴァンは朝に少し仮眠を取っただけで昼飯も食わずに爆走中だ。
俺たちは昼食会場までの警護で、そこで明日の朝まで本家と交代予定だ。
夜に本家の休憩の間は勤務が入るが、それだけだ。
色々とあって、本当にもうくたくただ。
イヴァンは爽やかな笑顔を崩さないが、さすがに疲れの色が見てとれる。
まぁ、ただでさえ気が抜けないのに、ついた早々あれだけトラップが仕掛けられてれば疲れるよな。
王子が会場入りし、国王や王太子たちとテーブルにつく。
場は和やかな雰囲気だ。
一応、魔力探査もしてみたが、おかしなところは見られなかった。
国王の簡単な挨拶が終わり、料理がならび始める頃、本家のロイヤルソードとシールドが来てくれた。
顔見知りらしいイヴァンが待機場所を離れ、一度彼らと外に出た。
状況を説明しているのだろう。
何にせよ、後は任せて休ませてもらおう。
まだ一日目だ、先は長い。
そんな時、ふと横を食前酒らしきお猪口みたいなグラスをトレーに乗せたメイドが通りすぎた。
何の気なしに魔力探査をする。
「!!」
それに気がつき、顔が強ばる。
メイドは普通にそれを上座からおいていったが、気になったグラスはしっかり王子の場所に置いた。
マジか……。
さすがにまだついたばかりの昼食会だし、ないと思ったが甘かったようだ。
俺はつかつかとテーブルに近づき、王子に耳打ちした。
「食前酒はアルコールが強そうなので、お飲みにならないで下さい。朝、食欲がなかったと聞いていますので、胃に負担がかかり今後のお食事に影響が出ます。」
当たり障りない言い方で、飲むなと伝える。
王子は特に気に止める事もなく、わかったと返事があった。
顔を上げると殺気を感じた。
王太子がにっこりと笑っていたが、目は笑っていない。
俺は礼を尽くし、その場を離れた。
待機場所に戻ってきていた本家とイヴァンがこちらを見ている。
何かあった事は察知している顔だった。
「……王子の場所に置かれる全ての飲食物、並びに、食器類も必ず魔力探査をしてください。今、食前酒は飲まないようお伝えしました。」
本家のロイヤルシールドさんは40代くらいの女性で、俺の言葉に少し顔をしかめた。
「ついた早々、酷いわね……。任せて。」
「お願いします。」
正直、これがあってこの場を離れるのはどうかと思ったが、後の警護に差し障っても困る。
俺はイヴァンと部屋を出た。
「本気ですね、向こうは。」
「だからって来た早々、薬盛るか!?」
「とにかく、後は任せて僕たちは休みましょう。ここで疲れさせる目的かもしれませんから。」
「なるほどな……。」
イヴァンの言うことは最もだった。
そうか、これは心理戦でもあるのか……。
俺は単にピリピリしてしまったが、それは向こうの思う壺と言うことだ。
イヴァンが何でもないようにその可能性に至ったのは、さすがだと思った。
警護部隊の詰め所で簡単に食事を済ませ、王子の部屋の横にある従者控え室で仮眠をとろうとしたが、やはり色々と気になって寝付けない。
深々とため息をつくと、隣のベッドに横になっていたイヴァンがこちらを見た。
「眠れません?」
「そりゃな。」
「気が高ぶってるのはわかりますが、休める時にちゃんと休むのも仕事ですよ。さっきも言いましたが、これは多分、こちらを疲れさせる目的だと思います。でなければここまであからさまにたくさん仕掛けては来ないでしょう。」
「わかってるけどさ~。」
「安心してください。本家で今回来たソードもシールドも、かなりのベテランです。どちらも殿下に昔から支えている方です。今回、殿下につく人員を減らされたのを受けて、腹を立てて絶対自分が行くと志願して来てくださったふたりです。」
「うん。」
「ひとりで何でも気負い込み過ぎですよ。もっとまわりを頼って下さい。」
「うん。」
「寝れないなら、添い寝してあげましょうか?」
「いや、いい。」
「そこはうんとは言わないんですね?」
「馬鹿にしてんのか?」
「いや、まだ正気そうで良かったです。」
いつもの調子で話していたら、気が緩んだのか、少しだけ眠くなってきた。
今回はイヴァンに助けられてばかりだ。
でも警護任務ではイヴァンの方が経験値が高いのだし、頼っていいと言うのだから頼ろうと思った。
「イヴァンはロイヤルソードになるのか?」
「いずれですけど。」
「子供の時からそう決めてたのか?」
「そうですね、まわりが皆そうだったので、自分もなるもんだと思っていましたから。あまり他の事は考えてなかったですね。」
「ふ~ん。」
「あ、でも!子供のころ、一時期冒険者になりたかったです!懐かしいな~。」
意外な事を言われ、顔を横に向る。
冒険者?イヴァンが?
どう見ても良質な御子息様なのに?
イヴァンはいつもの爽やかな好青年ではなくて、とても無邪気な子供みたいな顔をしていた。
そんな顔も持っていたのかとちょっと驚く。
「……なら、今度、クエスト行くか?」
「え?」
「俺、中級冒険者の資格持ってるぞ?」
「本当ですか!?」
イヴァンは無邪気な顔でちょっと体を起こし、いつ取ったのか、どんなクエストをしたのか等を聞いてきた。
その様子から、本当に冒険者に憧れた昔があったのだなと思う。
何だか嬉しかった。
「そうだな……。いつかお前がまとまった休みでも取れたら、連れてってやるよ。」
「……約束ですよ?」
「うん。」
約束、という言葉に少し笑ってしまった。
イヴァンは意外と約束をするのが好きだ。
そして冒険者になりたかったイヴァン少年を思い浮かべる。
意外とやんちゃ小僧だったのかな?
まだ始まってない冒険の話を語り合っているうちに、俺は知らぬ間に眠ってしまった。
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