欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第三王子編

気付かさせること

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何か調子狂うな……。
俺は会議中のテーブルに肘をついて俯いていた。
何故かと言えば、多分、顔が赤いからだ。

気づいてしまった……。
鈍感だと皆に罵られる俺でも、さすがに気づいてしまった。
いや、今思えば、今まで何で気づかなかったかの方が不思議だ。

だがいつからだ!?
いつ、そう言う雰囲気になった!?

まったく記憶にない……。

だって、始めは苛められる対象とイビる側だった訳で。
それを俺がギャフンと言わせてからは、突っ掛かってくる度に返り討ちにして、段々、俺がからかう側になった訳で。

変化があったと言えば、ギルの件があった時か……。

ライルさんもサムも付き合いたてて頼れなくて、精神的に病んでた時だ。
あの時、気にかけてくれたのは本当にありがたかった。
あそこでああやって話せていなかったら、今の俺はいなかっただろう。

ウィルの時もだ。

俺は全部、捨てて行くつもりだった。
だから心残りがないように動いていたんだと思う。
それを見透かされて、それぐらい残していけと泣かれて、ここに帰ってきてもいいんだと思えた。

俺が無理に絶ち切ろうとしても、皆が手を差し伸べて待っていてくれていた。
だから絶ち切らなくていいんだと思えた。

思えば俺は、無意識にわざと気づかないようにしていたのかもしれない……。

「………って!聞いてんのか!?サーク!てめえの話をしてるんだよっ!!」

「うわっ!!ごめん、聞いてなかった!!」

「シバくぞ!馬鹿野郎っ!!」

いきなり悪態をつかれて、目を瞬ばたかせた。
うん、俺の知ってるガスパーだ。
俺の知ってるガスパーはこうなんだ。
少しほっとする。

「で?何だって??」

「お前な!!もっと危機感を持てよ!!」

「そうは言っても、そんなに騒ぐことか!?」

俺の言葉にバンッとガスパーは机を叩いた。
びっくりして俺は目を丸くする。

「あのな!殿下は事情があって、王国は嫁がせる事は出来ない!だが、お前はどうだ!?ただの警護隊員の1人だ!血の魔術が使える唯一の人間だとか、魔術本部に籍があるとか!そんな事は王宮の役人どもには関係ねぇんだよ!!」

ガスパーは怒っている。
さっきはあんなにしおらしかったのに、めちゃくちゃ本気で怒っている。

「お前の言う通り、事情がなきゃ殿下が南の国に嫁ぐのは王国にとって有意義なんだよ!だが殿下は渡せない。でも関係は悪化させたくない。そこに南の国から変わりにお前を欲しいと言われたら、どうなると思う!?」

「……あ~、成る程。」

「なるほどじゃねぇっ!!お前、自分がどれだけ危機的状況にあるか、本当にわかってるのか!?」

ガスパーがこんなに怒っているのは、俺が危機的状況だからだ。
言われてみれば、確かにヤバい状況だ。
そりゃ、兵士1人渡して解決するなら喜んで渡すよな。

「悪い。確かにヤバい状況だな。」

まるで他人事のように笑う俺を、ガスパーが苦々しい顔で睨んだ。

うん、でもさ?
お前がそんなに怒ってくれたらさ~。
俺は何も言えないじゃないか……。

ガスパーは飄々としている俺の顔をしばらく睨んでいたが、やがて諦めたように深くため息をついた。

「……サーク、てめえ、すぐに魔術本部と連絡取れたりするか?」

「すぐに?」

「そうだよ。何か魔術でぱぱっとできたりしねぇよかよ!?」

「う~ん、できなくはないんだけど……。」

出来ないどころか、今すぐ魔術本部に行けるんだけどさ。
鍵の事は公には出来ないからな~。
確かに俺もちょっと向こうに相談したい。
王子の事や王太子の事を。

「だったら今すぐとれ!!」

「簡単に言うなよ。」

「出来るんだろ!?ならやれよ!!……悔しいが、今の俺達じゃお前を守れない。可能性があるのは魔術本部の方だ。だから連絡をとれ。今すぐに!!」

多分、ガスパーはあらゆる方法を模索した上でこう言ってるんだろう。
俺なんかの為に必死になってくれたんだな。
そう思うと、チクリと胸が傷んだ。

「……シルク、使えそうな部屋はないか?」

今までの話を聞いて、俺が危ない状況だと理解したのだろう。
不安そうな顔でギルに引っ付いているシルクに、俺は声をかけた。
シルクは俺が何を求めているかすぐにわかったようだ。
俺の目をまっすぐ見つめ、頷く。

「……ギルの部屋。ギルが隊長室みたいにしてる部屋がいいと思う。いいよね、使っても。」

シルクはギルの顔を見た。
ギルはシルクを見つめ返し、頭を撫でる。

「構わない。使ってくれ。」

こんな状況でもブレなくラブラブだなぁ、おい。
プロポーズを断ってから、このふたりはかえって絆が深まった感じがする。
何か、結婚だけが答えじゃないんだなと思わされる。

「でも、結構時間がかかるんだよ……半日は欲しいんだが、そうすると警護に穴が開くだろ?」

「お前の代わりに俺が入る。俺は昔から、ロイヤルソードに混じって警護をしていた。だから大丈夫だ。問題ない。」

「悪い。助かる。チタニアさん、負担をお掛けしてしまいますが構いませんか?」

「ええ。大丈夫。私が何年ロイヤルシールドをやってると思ってるのよ?半日なんて1人で楽勝よ?だから安心してね?」

「ありがとうございます。」

「シルク、お前はサークについていろ。」

「言われなくてもそのつもりだし。」

「シルクには一緒にいてもらう。連絡をとっている間は、俺は無防備になるから。」

「わかってるよ、主。ちゃんと俺が守るよ。」

シルクは話を合わせてくれた。
誰にも見られる訳にはいかないから、見張っててもらわないと困るのだ。
ギルもロイヤルの警護を変わってくれると言うし、チタニアさんも任されてくれた。
本当に助かる。

いつもの事だが、本当に俺はひとりじゃないんだなと気づかされる。
だから大丈夫。

思ったよりも、話は大きな事態になった。
それでも俺は1人じゃない。

その想いに応える為にも、俺は魔術本部に行って出来る限りの事をするしかないのだ。
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