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第三王子編
フライドチキン
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俺はぼんやりと昼飯を食っていた。
話し合いの結論は出ず、ひとまず解散した。
チタニアさんとイヴァンが交代して一緒に飯を食っているのだが、イヴァンはイヴァンで浮かない顔だ。
ちらりと俺を見てはため息をつく。
「サークさん。食べる時は集中して食べた方が良いですよ?」
「ん?ああ……。」
「いつものあの可愛い食べっぷりはどうしたんですか!?」
「ん~?どうしたっけな~?」
「……しっかりしてくださいよ!サークさん!王国に帰ったら、町の肉屋のフライドチキン、奢ってあげますからっ!!」
「…………。フライドチキン!?」
その単語を聞いて、あの香ばしい香りと、口に広がるスパイスと肉汁が甦る。
熱々なのを頬張りたいっ!!
何か急に目が覚めた気がした。
「イヴァン!フライドチキンだ!」
「はいはい、帰ってからですよ?」
「うわ~!!今食べたい~!!」
急に腹が減ってきて、目の前のミートパスタを口に入れた。
何だ、これもこれで美味しいじゃんか。
久しぶりに食べ物を食べている気がして、もごもごと口を動かした。
「……やっぱりサークさんはそうやって食べてないと変ですよ。」
イヴァンがほっとしたように笑った。
何か心配かけたなと少し反省する。
食べ終えて片付けを済ますと、俺たちは夜番に向けて仮眠を取った。
起きたら交代前にもう一度話すことになっている。
だが、王太子が殿下の代わりに俺を要求するのは何故だ?
頭に浮かんだ、王の種。
魔術本部の見解では、俺は王の種と関わりがあるようだ。
もしその理由で俺を要求したならば、王太子、いや南の国は王の種を知っている事になる。
だが考え過ぎかもしれない。
王太子が俺の血の魔術の力を匂いで知ったとしても、それから王の種には結び付かない。
そもそも王太子はどうして王子を欲しがるんだ?
もし強い魔力に惹かれてという噂話が本当なら、王太子は王子に惚れているから欲している訳ではなくなる。
そうすると、好きで求婚しているという根底が崩れるのだ。
それが崩れれば、王子を手に入れるのに求婚という形が最も良かったからと言う事になる。
そう思うと何だか虚しい。
あの熱烈なアタックも、目的を果たすためのうわべに過ぎないのなら残念だ。
邪魔しかしていないが、それだけ王子を愛していたのなら、俺はむしろ好ましくさえ思う。
ひとりの人をそれだけ想うと言うのは、やはり凄いと思うからだ。
けれどそうでないのなら悲しい事だ。
もしも王子があの熱烈な求愛を純粋に受け止めていたなら、うわべだけの愛ほどショックな事はないだろうから。
王太子は何で王子が必要なんだ?
王子の中の強い魔力って何だ?
どうしてそれが必要なんだ?
どれもこれも情報が少なすぎて答えが出ない。
ならまず、王子の事を考えてみよう。
俺の知っている王子は、マイペースで純粋で、ちょっと世間ずれしていて、でも結構やると決めたらやり通す強さのある人だ。
俺は今まで王子に魔力があることは知らなかったし、気づかなかった。
簡単には気づけない強い魔力。
ウィルの場合は夜の宝石だ。
その力に魔力が引っ張られているから、表立って魔力は見えないし、使えない。
王子はどうだろう?
やはり何かに引っ張られて、魔力は見えないし使えないのだろうか?
だとしたらそれは何だ??
王の種??
もしかして、王子も王の種と関わりがあるのか?
どういう事だ??
「……痛っ!!」
ベッドに横になって延々と考えていた俺の頭を、イヴァンが丸めた書類の束で叩いた。
「何すんだよ!」
「サークさん……僕、言いましたよね?この仕事は、休む時にきちんと休むのも仕事だって……?」
「ちょっと考えてただけだろ……。」
「サークさん。言い訳してるなら添い寝しますよ?」
「何だ!その脅しは!?」
「添い寝して、腕枕して、お腹トントンして、眠るまで子守唄を歌われたくなかったら、さっさと一眠りしてください!!」
「……そこまで言われると、逆にやってみろと言いたくなるな?」
「わかりました。なら詰めて下さい?添い寝しますから。」
「ごめんなさい、ちゃんと寝ます。」
「解れば良いです。」
イヴァンはそう言うと、何故か椅子に座ってしまった。
何だ?イヴァンは寝ないのか??
「……何してんだ??」
「寝るまで見張ってます。」
そしていつの間に用意したのか、濡れたおしぼりを俺の目の上に乗せて、程よい力加減で押さえた。
文句を言おうと思ったが、心地が良いので言えなかった。
「……何か気持ちいいな、これ。」
「母が眠れない時にやってくれたんです。寒い日は温かいタオルでしたけど。」
「ふ~ん。」
「いいから寝て下さい。まったく。」
そうされながら、イヴァンはもしかしたらオカン体質なのかもしれないと思った。
恋人が出来ないのはそのせいかなどと、どうでも良いことを考えている内に俺は眠ってしまった。
「サーク!無事か!?」
目が覚めて話し合いをするために詰め所に入ると、いきなりそう詰め寄られた。
俺はびっくりして目を丸くした。
「ガスパー!?何でここにいるんだよ!?」
「ああ、重要案件だから俺が呼んだ。」
ギルが無表情にぼそりと言った。
ガスパーはどうしたのか、泣きそうな顔で俺に迫ってくる。
「お前があのクソ王太子に襲われたって聞いて……俺……っ!!」
「落ち着け!ガスパー!?何ともなかったから!!」
俺が慌ててそう言うと、勢いが止まらなかったのか、ガバッとガスパーが俺を抱きしめてきた。
え??ガスパー!?
どうしちゃったんだよ!?お前!?
「……良かった……何もなくて本当に良かった……。」
あのガスパーが、何かしおらしくそんな事を言う。
ええと……??
どうしちゃったんだ??ガスパー??
お前、こんな可愛いキャラじゃなかったよな??
何かどぎまぎするんですけど!?
「……ガ、ガスパー??その……あ、ありがとな??」
何を言っていいかわからず、すべてが疑問系になる。
抱き締める訳にもいかず、その両肩に手を置いた。
「……サーク君て……モテるのね……。」
チタニアさんの意外そうな呟きが、妙に部屋の中に響いていた。
話し合いの結論は出ず、ひとまず解散した。
チタニアさんとイヴァンが交代して一緒に飯を食っているのだが、イヴァンはイヴァンで浮かない顔だ。
ちらりと俺を見てはため息をつく。
「サークさん。食べる時は集中して食べた方が良いですよ?」
「ん?ああ……。」
「いつものあの可愛い食べっぷりはどうしたんですか!?」
「ん~?どうしたっけな~?」
「……しっかりしてくださいよ!サークさん!王国に帰ったら、町の肉屋のフライドチキン、奢ってあげますからっ!!」
「…………。フライドチキン!?」
その単語を聞いて、あの香ばしい香りと、口に広がるスパイスと肉汁が甦る。
熱々なのを頬張りたいっ!!
何か急に目が覚めた気がした。
「イヴァン!フライドチキンだ!」
「はいはい、帰ってからですよ?」
「うわ~!!今食べたい~!!」
急に腹が減ってきて、目の前のミートパスタを口に入れた。
何だ、これもこれで美味しいじゃんか。
久しぶりに食べ物を食べている気がして、もごもごと口を動かした。
「……やっぱりサークさんはそうやって食べてないと変ですよ。」
イヴァンがほっとしたように笑った。
何か心配かけたなと少し反省する。
食べ終えて片付けを済ますと、俺たちは夜番に向けて仮眠を取った。
起きたら交代前にもう一度話すことになっている。
だが、王太子が殿下の代わりに俺を要求するのは何故だ?
頭に浮かんだ、王の種。
魔術本部の見解では、俺は王の種と関わりがあるようだ。
もしその理由で俺を要求したならば、王太子、いや南の国は王の種を知っている事になる。
だが考え過ぎかもしれない。
王太子が俺の血の魔術の力を匂いで知ったとしても、それから王の種には結び付かない。
そもそも王太子はどうして王子を欲しがるんだ?
もし強い魔力に惹かれてという噂話が本当なら、王太子は王子に惚れているから欲している訳ではなくなる。
そうすると、好きで求婚しているという根底が崩れるのだ。
それが崩れれば、王子を手に入れるのに求婚という形が最も良かったからと言う事になる。
そう思うと何だか虚しい。
あの熱烈なアタックも、目的を果たすためのうわべに過ぎないのなら残念だ。
邪魔しかしていないが、それだけ王子を愛していたのなら、俺はむしろ好ましくさえ思う。
ひとりの人をそれだけ想うと言うのは、やはり凄いと思うからだ。
けれどそうでないのなら悲しい事だ。
もしも王子があの熱烈な求愛を純粋に受け止めていたなら、うわべだけの愛ほどショックな事はないだろうから。
王太子は何で王子が必要なんだ?
王子の中の強い魔力って何だ?
どうしてそれが必要なんだ?
どれもこれも情報が少なすぎて答えが出ない。
ならまず、王子の事を考えてみよう。
俺の知っている王子は、マイペースで純粋で、ちょっと世間ずれしていて、でも結構やると決めたらやり通す強さのある人だ。
俺は今まで王子に魔力があることは知らなかったし、気づかなかった。
簡単には気づけない強い魔力。
ウィルの場合は夜の宝石だ。
その力に魔力が引っ張られているから、表立って魔力は見えないし、使えない。
王子はどうだろう?
やはり何かに引っ張られて、魔力は見えないし使えないのだろうか?
だとしたらそれは何だ??
王の種??
もしかして、王子も王の種と関わりがあるのか?
どういう事だ??
「……痛っ!!」
ベッドに横になって延々と考えていた俺の頭を、イヴァンが丸めた書類の束で叩いた。
「何すんだよ!」
「サークさん……僕、言いましたよね?この仕事は、休む時にきちんと休むのも仕事だって……?」
「ちょっと考えてただけだろ……。」
「サークさん。言い訳してるなら添い寝しますよ?」
「何だ!その脅しは!?」
「添い寝して、腕枕して、お腹トントンして、眠るまで子守唄を歌われたくなかったら、さっさと一眠りしてください!!」
「……そこまで言われると、逆にやってみろと言いたくなるな?」
「わかりました。なら詰めて下さい?添い寝しますから。」
「ごめんなさい、ちゃんと寝ます。」
「解れば良いです。」
イヴァンはそう言うと、何故か椅子に座ってしまった。
何だ?イヴァンは寝ないのか??
「……何してんだ??」
「寝るまで見張ってます。」
そしていつの間に用意したのか、濡れたおしぼりを俺の目の上に乗せて、程よい力加減で押さえた。
文句を言おうと思ったが、心地が良いので言えなかった。
「……何か気持ちいいな、これ。」
「母が眠れない時にやってくれたんです。寒い日は温かいタオルでしたけど。」
「ふ~ん。」
「いいから寝て下さい。まったく。」
そうされながら、イヴァンはもしかしたらオカン体質なのかもしれないと思った。
恋人が出来ないのはそのせいかなどと、どうでも良いことを考えている内に俺は眠ってしまった。
「サーク!無事か!?」
目が覚めて話し合いをするために詰め所に入ると、いきなりそう詰め寄られた。
俺はびっくりして目を丸くした。
「ガスパー!?何でここにいるんだよ!?」
「ああ、重要案件だから俺が呼んだ。」
ギルが無表情にぼそりと言った。
ガスパーはどうしたのか、泣きそうな顔で俺に迫ってくる。
「お前があのクソ王太子に襲われたって聞いて……俺……っ!!」
「落ち着け!ガスパー!?何ともなかったから!!」
俺が慌ててそう言うと、勢いが止まらなかったのか、ガバッとガスパーが俺を抱きしめてきた。
え??ガスパー!?
どうしちゃったんだよ!?お前!?
「……良かった……何もなくて本当に良かった……。」
あのガスパーが、何かしおらしくそんな事を言う。
ええと……??
どうしちゃったんだ??ガスパー??
お前、こんな可愛いキャラじゃなかったよな??
何かどぎまぎするんですけど!?
「……ガ、ガスパー??その……あ、ありがとな??」
何を言っていいかわからず、すべてが疑問系になる。
抱き締める訳にもいかず、その両肩に手を置いた。
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