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第三王子編
ソード&シールド
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撤退準備は慌ただしく進んだ。
ほとんどの者が朝食前だったので、同行した食堂の職員さんたちがすぐに口に入れられるようにサンドイッチ等を取りやすい場所においてくれた。
それを数人分掴んで俺は王子の部屋に戻る。
「サンドイッチとか持ってきました!殿下もメイドさんも少し食べて下さい!ほら!イヴァンも遠慮すんな!」
「僕はいいですよ!」
「馬鹿!体力勝負になるんだぞ!?お前が動けなくなったら、誰が皆を守るんだ!?ほら!毒味だ!口開けろ!!」
「だからっ……もがっ!!」
遠慮するイヴァンの口に無理矢理ホットドッグをねじ込んだ。
それを見て、王子とメイドさんが笑う。
こんな状況でも笑うことができるのは良いことだ。
「何だか楽しいですね。あの時みたいです。」
王子がくすくすと笑った。
ああ、王宮を抜け出してきたあれか。
思わず苦笑する。
あの頃はウィルの名前も知らなかったな。
そしてこんな未来が待っているなんて、考えもしなかった。
「あの時は追っ手も危険もありませんでしたが、今回はどちらもあります。楽しんでばかりはいられませんよ?」
「わかっています。でも守ってくれますよね?私の騎士?」
「もちろんです。殿下。」
俺は笑って答えた。
メイドさんたちは、水差しの水を水筒に移したりしている。
さすがは王子付きのメイドさん達だ。
そう言った教育も受けているのか、落ち着いて必要な事をしている。
自分の荷物もあるだろうから、だいたい終わったら詰め所に戻ってもらおう。
俺は行き来している隊員に声をかけ、荷物と一緒にメイドさんたちを送ってもらった。
「準備が出来次第、出発となります。殿下。」
「ええ、ありがとう。」
こういう時に肝が座っているのは、さすがは一国の王子だなと思う。
本当、やるとなった時の王子はいつもとは別人のようだ。
「………!?」
感覚に何か引っ掛かった。
反射的に辺りを見渡す。
俺はイヴァンに視線を送り、無言のまま王子の手を握って素早くドアの方に移動した。
「サーク!?」
「イヴァンっ!!来るぞ!!」
「はいっ!!」
俺はドアを開け、そこにいた南の国の兵士を眠らせ、風で壁の方に押しやった。
これで退路は確保した。
乱暴にドアが開く音を聞いて、近くにいた仲間が二人、こちらに駆けてくる。
俺はロイヤルシールドの制服を脱ぎ捨て、武術着みたいな警護部隊の制服になった。
俺がドアを開けたのと同時に、ドンッと大きな音がして、王子の部屋の壁と天井の一部が壊れた。
隠し通路の罠を解除したか、無理矢理突破したか、数人の戦闘員がそこから現れる。
「殿下は動かないで下さい!!」
「わかりました!」
王子の周囲にシールド結界を張る。
駆けつけた隊員に王子の側にと指示する。
イヴァンはサッと前に出て、いつの間にか相手のひとりをすでに取り押さえていた。
「1人確保っ!!」
そう叫んで、何か紐のようなもので素早く相手を縛り付けた。
何だ?あれ?便利だな??
俺はそんな事を思いながら、向かってきた戦闘員の刃をシールドで受けた。
力で押してくる相手を受け流し、身体強化状態で思い切り蹴飛ばしてやった。
う~ん?
だいぶ廊下の奥までぶっ飛んで動かなくなったのだが、大丈夫だろうか?
うっかり本気で蹴ってしまったが、死んでないよな??
「サークさん!後ろ!!」
「あ、すまん!ありがとな!」
ぼんやりしていた俺にイヴァンの声がかかる。
俺は後ろから斬りかかってきた相手の腕を掴んで懐に入り、そのまま床に叩きつけた。
「なぁ!イヴァン!お前のそれ!何!?」
「結束バンドです!便利ですよ!!」
また1人拘束していたイヴァンにそう声をかけると、一束、結束バンドを投げて寄越した。
ああ、これか!!
色々まとめるのにも便利なんだよな。
俺はイヴァンに習って、叩きつけた男を結束バンドで縛り上げた。
イヴァンと俺は残る1人に顔を向ける。
「サーク!!イヴァン!!」
そこに騒ぎを聞き付けたらしく、ギルが数人の隊員とこちらに駆けてくる。
部が悪いと思ったのか、戦闘員の残り1人は素早く廊下を走って行った。
追うか迷ったが、追ったところで意味はない。
ここはどうせ王太子の手中なのだから。
「お~!ギル!遅いぞ~!!」
へらへら笑ってそう言うと、ギルは惨状を見て無表情に固まった。
イヴァンは縛り上げたやつらや寝ていた兵士、廊下に吹っ飛んでいたやつをずるずる部屋の中に運び、まとめてロープで縛っている。
「……お前ら……。」
「何だよ?」
ギルが何故か頭を抱えている。
ここはもう安全ではないと判断され、王子は隊員達に囲まれながら詰め所の方に向かった。
後処理に残った俺たちに、ギルはため息混じりに言った。
「……お前らは何だ?」
「ロイヤルソードですね?臨時ですが。」
「シールドだな?臨時の。」
「……剣と盾だよな?」
「そうだな?」
「そうですね?」
何だ?何の文句があるんだ??
ちゃんと王子を守ったし?
俺とイヴァンは顔を見合わせる。
「……なら何なんだ?この状況は?……お前たち、騎士じゃなかったのか?剣と魔術はどうした?……何で肉弾戦を行ってるんだ……。」
言われて見ればそうなのか??
別に良いじゃないか、手段なんか何でも??
「何でって……。なぁ?」
「はい!殿下の前で血を流すのは良くないと思いました!」
イヴァンがいつもの爽やかな笑顔で言い放つ。
一応、考えがあったようだ。
…いや?どうだろう?
こいついい性格してるからな、この爽やかな笑顔に騙されたらいけない。
きっと今、思い付いた言い訳だ。
俺は怪訝な顔でギルを見た。
「え?何がいけないんだよ??別に魔術を使う程の事でもなかったし。ちゃんと殿下にはシールド張ったぞ??」
まぁ騎士というより、武術士の戦い方だったかもしれないけどそれが何なんだ??
目的はちゃんと果たしたし??
「……もういい。この、筋肉馬鹿どもが……。」
ギルの心境はよくわからない。
そんなに衝撃だったのか?
この状況が?
とりあえず何とかロイヤルソードとシールドの役目を果たしたので、俺とイヴァンは片手を上げて、パンッと打ち合わせた。
ほとんどの者が朝食前だったので、同行した食堂の職員さんたちがすぐに口に入れられるようにサンドイッチ等を取りやすい場所においてくれた。
それを数人分掴んで俺は王子の部屋に戻る。
「サンドイッチとか持ってきました!殿下もメイドさんも少し食べて下さい!ほら!イヴァンも遠慮すんな!」
「僕はいいですよ!」
「馬鹿!体力勝負になるんだぞ!?お前が動けなくなったら、誰が皆を守るんだ!?ほら!毒味だ!口開けろ!!」
「だからっ……もがっ!!」
遠慮するイヴァンの口に無理矢理ホットドッグをねじ込んだ。
それを見て、王子とメイドさんが笑う。
こんな状況でも笑うことができるのは良いことだ。
「何だか楽しいですね。あの時みたいです。」
王子がくすくすと笑った。
ああ、王宮を抜け出してきたあれか。
思わず苦笑する。
あの頃はウィルの名前も知らなかったな。
そしてこんな未来が待っているなんて、考えもしなかった。
「あの時は追っ手も危険もありませんでしたが、今回はどちらもあります。楽しんでばかりはいられませんよ?」
「わかっています。でも守ってくれますよね?私の騎士?」
「もちろんです。殿下。」
俺は笑って答えた。
メイドさんたちは、水差しの水を水筒に移したりしている。
さすがは王子付きのメイドさん達だ。
そう言った教育も受けているのか、落ち着いて必要な事をしている。
自分の荷物もあるだろうから、だいたい終わったら詰め所に戻ってもらおう。
俺は行き来している隊員に声をかけ、荷物と一緒にメイドさんたちを送ってもらった。
「準備が出来次第、出発となります。殿下。」
「ええ、ありがとう。」
こういう時に肝が座っているのは、さすがは一国の王子だなと思う。
本当、やるとなった時の王子はいつもとは別人のようだ。
「………!?」
感覚に何か引っ掛かった。
反射的に辺りを見渡す。
俺はイヴァンに視線を送り、無言のまま王子の手を握って素早くドアの方に移動した。
「サーク!?」
「イヴァンっ!!来るぞ!!」
「はいっ!!」
俺はドアを開け、そこにいた南の国の兵士を眠らせ、風で壁の方に押しやった。
これで退路は確保した。
乱暴にドアが開く音を聞いて、近くにいた仲間が二人、こちらに駆けてくる。
俺はロイヤルシールドの制服を脱ぎ捨て、武術着みたいな警護部隊の制服になった。
俺がドアを開けたのと同時に、ドンッと大きな音がして、王子の部屋の壁と天井の一部が壊れた。
隠し通路の罠を解除したか、無理矢理突破したか、数人の戦闘員がそこから現れる。
「殿下は動かないで下さい!!」
「わかりました!」
王子の周囲にシールド結界を張る。
駆けつけた隊員に王子の側にと指示する。
イヴァンはサッと前に出て、いつの間にか相手のひとりをすでに取り押さえていた。
「1人確保っ!!」
そう叫んで、何か紐のようなもので素早く相手を縛り付けた。
何だ?あれ?便利だな??
俺はそんな事を思いながら、向かってきた戦闘員の刃をシールドで受けた。
力で押してくる相手を受け流し、身体強化状態で思い切り蹴飛ばしてやった。
う~ん?
だいぶ廊下の奥までぶっ飛んで動かなくなったのだが、大丈夫だろうか?
うっかり本気で蹴ってしまったが、死んでないよな??
「サークさん!後ろ!!」
「あ、すまん!ありがとな!」
ぼんやりしていた俺にイヴァンの声がかかる。
俺は後ろから斬りかかってきた相手の腕を掴んで懐に入り、そのまま床に叩きつけた。
「なぁ!イヴァン!お前のそれ!何!?」
「結束バンドです!便利ですよ!!」
また1人拘束していたイヴァンにそう声をかけると、一束、結束バンドを投げて寄越した。
ああ、これか!!
色々まとめるのにも便利なんだよな。
俺はイヴァンに習って、叩きつけた男を結束バンドで縛り上げた。
イヴァンと俺は残る1人に顔を向ける。
「サーク!!イヴァン!!」
そこに騒ぎを聞き付けたらしく、ギルが数人の隊員とこちらに駆けてくる。
部が悪いと思ったのか、戦闘員の残り1人は素早く廊下を走って行った。
追うか迷ったが、追ったところで意味はない。
ここはどうせ王太子の手中なのだから。
「お~!ギル!遅いぞ~!!」
へらへら笑ってそう言うと、ギルは惨状を見て無表情に固まった。
イヴァンは縛り上げたやつらや寝ていた兵士、廊下に吹っ飛んでいたやつをずるずる部屋の中に運び、まとめてロープで縛っている。
「……お前ら……。」
「何だよ?」
ギルが何故か頭を抱えている。
ここはもう安全ではないと判断され、王子は隊員達に囲まれながら詰め所の方に向かった。
後処理に残った俺たちに、ギルはため息混じりに言った。
「……お前らは何だ?」
「ロイヤルソードですね?臨時ですが。」
「シールドだな?臨時の。」
「……剣と盾だよな?」
「そうだな?」
「そうですね?」
何だ?何の文句があるんだ??
ちゃんと王子を守ったし?
俺とイヴァンは顔を見合わせる。
「……なら何なんだ?この状況は?……お前たち、騎士じゃなかったのか?剣と魔術はどうした?……何で肉弾戦を行ってるんだ……。」
言われて見ればそうなのか??
別に良いじゃないか、手段なんか何でも??
「何でって……。なぁ?」
「はい!殿下の前で血を流すのは良くないと思いました!」
イヴァンがいつもの爽やかな笑顔で言い放つ。
一応、考えがあったようだ。
…いや?どうだろう?
こいついい性格してるからな、この爽やかな笑顔に騙されたらいけない。
きっと今、思い付いた言い訳だ。
俺は怪訝な顔でギルを見た。
「え?何がいけないんだよ??別に魔術を使う程の事でもなかったし。ちゃんと殿下にはシールド張ったぞ??」
まぁ騎士というより、武術士の戦い方だったかもしれないけどそれが何なんだ??
目的はちゃんと果たしたし??
「……もういい。この、筋肉馬鹿どもが……。」
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