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第八章①「疑惑と逃亡編」
臨時ゲートの作り方
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「師匠って、移動魔術は詳しいですか?」
「詳しいって訳じゃないけど、どうして??」
簡単に食事を済ませ、出かける支度をしながら、俺は師匠に尋ねた。
この先、潜れば潜るほど難易度は上がるのだ。
どういう状況になるかはわからない。
保険はかけていった方がいい。
「いや、所々に移動ポイントを作っていった方が後々いいかな?と思いまして。」
来る時に途中までゲート、つまり半永久的に固定された移動魔術を使い、外とダンジョン内を繋いでいる。
それはこのダンジョン内で移動魔術が可能だと言うことだ。
これから先がどうかはわからないが、使用可能な場所だけでもあればかなり違う。
師匠は化粧をするために見ていた鏡をしまうと頷いた。
と言うか、ダンジョンで化粧をする意味って何だろう??
本人のモチベーションに関わるから言わないけど。
「それもそうね~。途中で魔術じゃ対応できない呪いにかかったら早めに外に出たいし。何もなくても、帰りが楽になるわよね~!」
「俺は使った事がないんですけど、魔力的にどうなんですか??」
「そうね……維持に魔力がいるから、あまりお勧めは出来ないのよね~。」
「ゲートはどうやって維持されてるんですか?」
「あれは定期的に魔力を込めた魔石を交換してるんだと思うわ~。後、ダンジョンから魔力を集める仕組みがあるか。」
なるほど。
仕組みは魔道具に近いのか。
魔道具ならそれなりに得意分野だ。
俺は考えながら、バックの中から魔石を取り出した。
高く売れる物だが、帰りに回収すればいい。
「だから……維持できる魔力を常に吸収できる状態に出来ればいいから……。」
「何してるの??サークちゃん??」
その場に残していこうとしていた、昨日解体した魔物の遺体を動かしている俺を、師匠はが不思議そうに眺める。
「多分、ここに遺体を置いておくと、それを食べに他の魔物が来るじゃないですか?そこから魔力を奪って魔石に貯めていけないかと思って。」
「……サークちゃんて、たまに機械的な思考回路になるわよね……。」
「そうですか??」
「だってそれ、遺体を食べに来た魔物から魔力を奪って倒して、またそれを食べに来た魔物から魔力を奪って……みたいな流れでしょ??」
「いや、ここはそれなりに魔物も強いですから、来た魔物を全部倒せるとは思いませんよ。」
「……言ってるのはそこじゃないけど、否定しないのね……。」
「何か不味いですかね??」
「ううん。いいの、気にしないで……?」
「はあ……。」
「でも、そんなに簡単に魔石に魔力って貯められる?そもそも誰も手出ししないで上手に魔力を吸収してくれるかしら??」
「そこは古代科学技術と魔道具の知識を使って応用します。」
少し前にノルの論文を読み返しておいて良かった。
俺は手持ちの物とダンジョン内にあるものを利用して、臨時的な魔力蓄電池とそこに上手く効率よく魔力が流れるような魔道具っぽいものを作った。
「そんでもって……。」
魔力吸収はこれでいい。
後は来た魔物の相手をする罠だ。
俺はナイフを出して、腕を切りつけた。
段々、血を出すために自分を切りつける事に慣れてきて怖い。
痛みがあるので毎回基本的には部分的に麻痺をかけてからやっているが、そのうち非常時でもないのに麻痺なして普通にやり出しそうで自分が怖い。
ひとまず流れた血から数匹の蛭と無数の蟻を作った。
う~ん、我ながらちょっと気持ち悪い。
「やだ、サークちゃん……悪趣味~。」
「仕方ないじゃないですか。吸い取るイメージで相手に気付かれ難いものが、これしか浮かばなかったんですから……。」
「蟻は??」
「世界で一番、怖い生き物ですよ。獰猛な獣も無数の蟻に襲われたらただではすみません。下手に猛獣を産み出すよりこの方がいい。全滅するって事もほぼありませんし。」
蛭は魔物の遺体の中に潜って行った。
蟻はその辺に散らばりながら、巣を作っている。
「……アタシ、サークちゃんは敵に回さないようにするわ……。」
化粧をしたはずの顔を青くして師匠が言った。
ええ~??そこまで卑劣な事をしているつもりはないんだけどな~??
来た魔物だって、魔力は吸い取れたとしてもこの罠じゃ死ぬ確率は低いし。
「サークちゃんて、凄いって言うか……やっぱりどこかずれてるわよね~。」
俺が移動魔術で臨時ゲートを作っているのを見ながら、師匠はそう呟いた。
だいぶ進んだのだろう。
マッピングをしたまま戦闘をする事が出来なくなり、一時的にマッピングを解いて戦わないと苦戦するようになってきた。
あ~!もう!
どこまで行けばいいんだ!?
これ!?
明日には帰りたいのに、迷宮の終わりは見えないし、証となるモノのヒントも痕跡も見つからない。
「金蔓だと思って頑張るしかないか~。」
倒した魔物をカバンの中に押し込んでいく。
師匠もいつもの卑猥な冗談を言っている余裕がなくなってきた。
ここで少し休憩を入れよう。
俺は糖分とミネラルを足した水を師匠に手渡した。
「思ったよりキツイ~。」
「そりゃ、アタックですからね。未開発の部分なんで、師匠が聞いていたトート迷宮の難易度よりずっと高くなってますから。」
俺も同じ水を出して口に含む。
甘味が安心を与え、吸収力も高いので体に行き渡る感覚も早い。
1日目より当たり前だが進みが悪い。
師匠のおかげで手間取ることがなく、普通のパーティーより数倍の速さで進んできたと思うが、さすがにここまで来ると厳しくなってきた。
俺はマッピングを再開し、周囲を魔力探索した。
「……あ、隠し部屋がある。」
「あら?ならまたお宝があるかしらね??」
師匠がふふふっと笑った。
それでも疲れの見える師匠に俺は申し訳なさそうに告げる。
「……本当にいいんですか?俺が全部もらって?」
「いいわよ~。その代わり!新居には絶対招いてね~!!泊まるからね~!!」
「はいはい。その時は師匠の好きそうなお酒をたくさん用意しておきますよ。」
「うふふ。出来れば好きそうな男もたくさん用意してもらえると嬉しいんだけど♡」
こういう事を言い出したと言うことは少しは回復してきたのだろう。
変な話だが、師匠のエロトークに安心する。
「師匠の好きそうな男ってどんなのですか??」
「ん~?どんな男もそれぞれ良さがあって好きだけど~。サークちゃんが準備してくれるなら、やっぱり騎士の子がいいわ~!若くて気品があって~!肉体美に溢れてて~!紳士的で~!脱いだら筋肉凄いって感じの~♡」
若くて紳士的で脱ぐとムキムキ??
あ、あ~。
少なくとも1人、適任なのがいるな~。
死ぬほど嫌がりそうだけど……。
でも年上だし、いいんじゃないか??
美人の基準は人それぞれだし。
「わかりました!期待してて下さいっ!!」
俺はハキハキとそう答えて笑った。
2日目の今日は思うように進まない。
貴重な魔物や宝も多いけど、目的はそれではない。
俺は水筒の水をグッと飲み干した。
「詳しいって訳じゃないけど、どうして??」
簡単に食事を済ませ、出かける支度をしながら、俺は師匠に尋ねた。
この先、潜れば潜るほど難易度は上がるのだ。
どういう状況になるかはわからない。
保険はかけていった方がいい。
「いや、所々に移動ポイントを作っていった方が後々いいかな?と思いまして。」
来る時に途中までゲート、つまり半永久的に固定された移動魔術を使い、外とダンジョン内を繋いでいる。
それはこのダンジョン内で移動魔術が可能だと言うことだ。
これから先がどうかはわからないが、使用可能な場所だけでもあればかなり違う。
師匠は化粧をするために見ていた鏡をしまうと頷いた。
と言うか、ダンジョンで化粧をする意味って何だろう??
本人のモチベーションに関わるから言わないけど。
「それもそうね~。途中で魔術じゃ対応できない呪いにかかったら早めに外に出たいし。何もなくても、帰りが楽になるわよね~!」
「俺は使った事がないんですけど、魔力的にどうなんですか??」
「そうね……維持に魔力がいるから、あまりお勧めは出来ないのよね~。」
「ゲートはどうやって維持されてるんですか?」
「あれは定期的に魔力を込めた魔石を交換してるんだと思うわ~。後、ダンジョンから魔力を集める仕組みがあるか。」
なるほど。
仕組みは魔道具に近いのか。
魔道具ならそれなりに得意分野だ。
俺は考えながら、バックの中から魔石を取り出した。
高く売れる物だが、帰りに回収すればいい。
「だから……維持できる魔力を常に吸収できる状態に出来ればいいから……。」
「何してるの??サークちゃん??」
その場に残していこうとしていた、昨日解体した魔物の遺体を動かしている俺を、師匠はが不思議そうに眺める。
「多分、ここに遺体を置いておくと、それを食べに他の魔物が来るじゃないですか?そこから魔力を奪って魔石に貯めていけないかと思って。」
「……サークちゃんて、たまに機械的な思考回路になるわよね……。」
「そうですか??」
「だってそれ、遺体を食べに来た魔物から魔力を奪って倒して、またそれを食べに来た魔物から魔力を奪って……みたいな流れでしょ??」
「いや、ここはそれなりに魔物も強いですから、来た魔物を全部倒せるとは思いませんよ。」
「……言ってるのはそこじゃないけど、否定しないのね……。」
「何か不味いですかね??」
「ううん。いいの、気にしないで……?」
「はあ……。」
「でも、そんなに簡単に魔石に魔力って貯められる?そもそも誰も手出ししないで上手に魔力を吸収してくれるかしら??」
「そこは古代科学技術と魔道具の知識を使って応用します。」
少し前にノルの論文を読み返しておいて良かった。
俺は手持ちの物とダンジョン内にあるものを利用して、臨時的な魔力蓄電池とそこに上手く効率よく魔力が流れるような魔道具っぽいものを作った。
「そんでもって……。」
魔力吸収はこれでいい。
後は来た魔物の相手をする罠だ。
俺はナイフを出して、腕を切りつけた。
段々、血を出すために自分を切りつける事に慣れてきて怖い。
痛みがあるので毎回基本的には部分的に麻痺をかけてからやっているが、そのうち非常時でもないのに麻痺なして普通にやり出しそうで自分が怖い。
ひとまず流れた血から数匹の蛭と無数の蟻を作った。
う~ん、我ながらちょっと気持ち悪い。
「やだ、サークちゃん……悪趣味~。」
「仕方ないじゃないですか。吸い取るイメージで相手に気付かれ難いものが、これしか浮かばなかったんですから……。」
「蟻は??」
「世界で一番、怖い生き物ですよ。獰猛な獣も無数の蟻に襲われたらただではすみません。下手に猛獣を産み出すよりこの方がいい。全滅するって事もほぼありませんし。」
蛭は魔物の遺体の中に潜って行った。
蟻はその辺に散らばりながら、巣を作っている。
「……アタシ、サークちゃんは敵に回さないようにするわ……。」
化粧をしたはずの顔を青くして師匠が言った。
ええ~??そこまで卑劣な事をしているつもりはないんだけどな~??
来た魔物だって、魔力は吸い取れたとしてもこの罠じゃ死ぬ確率は低いし。
「サークちゃんて、凄いって言うか……やっぱりどこかずれてるわよね~。」
俺が移動魔術で臨時ゲートを作っているのを見ながら、師匠はそう呟いた。
だいぶ進んだのだろう。
マッピングをしたまま戦闘をする事が出来なくなり、一時的にマッピングを解いて戦わないと苦戦するようになってきた。
あ~!もう!
どこまで行けばいいんだ!?
これ!?
明日には帰りたいのに、迷宮の終わりは見えないし、証となるモノのヒントも痕跡も見つからない。
「金蔓だと思って頑張るしかないか~。」
倒した魔物をカバンの中に押し込んでいく。
師匠もいつもの卑猥な冗談を言っている余裕がなくなってきた。
ここで少し休憩を入れよう。
俺は糖分とミネラルを足した水を師匠に手渡した。
「思ったよりキツイ~。」
「そりゃ、アタックですからね。未開発の部分なんで、師匠が聞いていたトート迷宮の難易度よりずっと高くなってますから。」
俺も同じ水を出して口に含む。
甘味が安心を与え、吸収力も高いので体に行き渡る感覚も早い。
1日目より当たり前だが進みが悪い。
師匠のおかげで手間取ることがなく、普通のパーティーより数倍の速さで進んできたと思うが、さすがにここまで来ると厳しくなってきた。
俺はマッピングを再開し、周囲を魔力探索した。
「……あ、隠し部屋がある。」
「あら?ならまたお宝があるかしらね??」
師匠がふふふっと笑った。
それでも疲れの見える師匠に俺は申し訳なさそうに告げる。
「……本当にいいんですか?俺が全部もらって?」
「いいわよ~。その代わり!新居には絶対招いてね~!!泊まるからね~!!」
「はいはい。その時は師匠の好きそうなお酒をたくさん用意しておきますよ。」
「うふふ。出来れば好きそうな男もたくさん用意してもらえると嬉しいんだけど♡」
こういう事を言い出したと言うことは少しは回復してきたのだろう。
変な話だが、師匠のエロトークに安心する。
「師匠の好きそうな男ってどんなのですか??」
「ん~?どんな男もそれぞれ良さがあって好きだけど~。サークちゃんが準備してくれるなら、やっぱり騎士の子がいいわ~!若くて気品があって~!肉体美に溢れてて~!紳士的で~!脱いだら筋肉凄いって感じの~♡」
若くて紳士的で脱ぐとムキムキ??
あ、あ~。
少なくとも1人、適任なのがいるな~。
死ぬほど嫌がりそうだけど……。
でも年上だし、いいんじゃないか??
美人の基準は人それぞれだし。
「わかりました!期待してて下さいっ!!」
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