欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

ダンジョンにて

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探索1日目。
俺はその日進んだ分のマッピング情報を師匠に同化させた。

ダンジョンを進む役割分担として、俺がマッピングをしながら身体強化をして前列、師匠が魔術攻撃&後方支援と言う形を取った。

戦闘以外で常に魔力を消耗するようなマッピングや結界等は俺が担当する。
ただその負荷を減らすために、マッピングの情報は師匠が保管する形にした。
ずっと蓄積しながらやり続けると、情報が大きくなって魔力の消費量を増やすからだ。

「何かあれだわ~。」

「はい?」

今日はここまでで休む事になり、俺は周囲に強めの結界と探知を張った。
異空間付きバックから食料を取り出し、突っ込んでおいた食用になる魔物を捌いて食事を作る。

ちなみに師匠は調理などはほぼやった事がないらしく、食事の支度はもっぱら俺の仕事だ。
まぁ戦闘に魔術を使っている分、師匠の方が魔力の消耗があるので休んでもらった方が良いので構わないのだが。

質が悪いことに、師匠は調理をやってみたがり、昼に一度やらせて食料が無駄になった。
外なら良いが、限られたものしかないこの状況でそれはキツイ。

「こんな薄暗い中に二人きりで閉じ込められているのによ!?相手がサークちゃんだなんて~。」

師匠はそう言ってため息をついた。
ちょっと待て。何だ、その言い方は!?
俺じゃ不満ですか!?

一瞬、出来立ての魔獣の肉炒めを頭からかけてやろうかと思ったが、師匠にとって俺は食指の動かない相手なのだと言う意味なのでかえって安心した。

「なら、誰が良かったんですか~。」

俺は棒読みでそう言って、肉炒めに飯盒で炊いた米を載せ、師匠に渡した。
残りを自分の金属トレーに盛り付ける。

「レダちゃん達のパーティーは良かったわ~♡ムキムキの大男のトムちゃんとハンサムなヒースちゃんと違ったタイプが堪能できて♡」

「堪能って……。」

「手は出してないわよ!?目の保養と言うか、妄想のネタと言うか~。」

「はいはい。」

俺は右から左に聞き流して、肉炒め丼を頬張った。
ん~、意外に肉の味と癖があるな?次、この肉を使う時は、スパイスを効かせるか濃いめに味をつけた方が美味しそうだ。

「て言うかヒースさん、確かにカッコいいですけど、そこまでハンサムですかね~??」

「サークちゃん!!あんたは常に上級の美人と美形に囲まれてるからっ!!基準がおかしくなってるのよっ!!ヒースちゃんは標準的に考えたら!かなりハンサムよ!?」

「そうなんですか?と言うか、俺、別にハンサムに興味ないですし。」

「これだから!人の羨む恋人がいるヤツはっ!!ウィルちゃん、めちゃめちゃ美人なんですって!?」

「あ、はい。」

誰から聞いたのかは知らないが、そう言われて俺は頬が緩み、ニヤついてしまった。
そんな俺に、師匠がその辺の石ころを摘まんで投げてきた。

「ちょっと!!飯に入ったらどうしてくれるんですかっ!!」

「うるさい!リヤ充めっ!!小石を奥歯でギリリと噛めばいいのよっ!!」

何だそれは?地味に凄く嫌な呪いだな!?
貝などを食べていて、ふいにガリッと砂を噛んでしまった時の感覚が頭に浮かび、俺は師匠から皿を守る様にして急いで残りを口に詰めた。
師匠なら本当にそのくらいの呪いならかけてきそうで怖い。

「ウィルちゃんて、どんな子なの??」

警戒している俺に、食べ終わった師匠がのんびりと聞いてきた。
自分で紅茶を入れて飲んでいる。
使い終わった食器と一緒に、俺にも紅茶を渡してくれた。

「どんなって……。」

顔がニヤけそうになるが、足の小指をぶつける呪いをかけられそうなのでできるだけ平然として見せる。

「……俺にはもったいない人ですよ。美人だし、男前だし、カッコいいし、何より本当もう!めちゃくちゃ可愛いんです!!もう!何をしても可愛いんです!!」

「……いや、何をしても可愛いのは、サークちゃんの色眼鏡よ。愛の麻薬よ。」

「愛の麻薬……凄くいい言葉ですね~。」

食器や調理器具を魔術で綺麗にし、無限バックにしまう。
そのままそこから、倒して押し込んでおいた魔物を引っ張り出した。
戦闘後に時間がなく、処理出来なかったヤツだ。
マダムに一番、収納空間が大きいのを買わされた時は恨んだが、こうしてみるとやはり大きいので良かったと思う。
次から次へと魔物を引っ張り出す俺に、師匠が顔をしかめた。

「ちょっと!!サークちゃん!!食後にそんなもの、出さないでよ!!」

「すみません、明日もあるので片付けちゃいたくて。」

確かに悪いと思い、少し離れたところまで引っ張って行こうとしたら、結界もあるし話せなくなるからいいと言われた。

それならと俺はそこで解体を始める。
解体と言っても、角や牙、爪等をとるような簡単なものだ。

毛皮等素人が手を出したら価値が下がってしまうものはそのまま入れておく。
これ以上、ローンで首を絞められたらたまらないから、とにかくできる限り売れるところは回収したい。

「ね~?エッチしてるんでしょ~?ウィルちゃんと~??」

やることのなくなった師匠は、魔術で寝床を作ってゴロゴロしている。
友達との旅行の夜よろしく猥談をする気満々だ。
本当これで、王国を代表する魔術師なのだから信じられん。
俺は作業をしながら適当に答えた。

「してますよ~。」

「でもさ~?サークちゃんて勃たないでしょ?どうしてる訳??」

「勃つもんはありませんが、その分、色々知恵があるんで。」

「ウィルちゃん、満足してるの??」

「ん~。してると思いますけど、とりあえず俺は凄く満足してますよ~?」

「なにそれ!?」

「すみません、その部分は俺だけが知っていればいいところなので教えません。」

「やだ何~っ!?エロエロな感じ~??」

「エロエロな感じですね。」

師匠の言い方に、思わず人の悪い笑みをしてしまった。
それをどう取ったのかは知らないが、師匠は寝床でじたばたと悶え転げていた。
だが、急にピタリと止まり、真顔で言った。

「でも、サークちゃんて性欲なかったんじゃないの??」

「そうなんですよ。いまだにウィル以外には無反応なんですけどね?」

「……ウィルちゃんにはあるのね…。」

「それなんですけど……ちょっとマジな話をしても良いですか??」

俺は解体の手を止めて、真っ直ぐに師匠を見た。
師匠もふざけるのをやめて、寝床の上に起き上がる。

「どうかしたの??」

「どうかと言うか、俺、ウィルに対してだけは欲情するようになったんですよ。最近ではそれも結構強くなって、嫉妬したり、馬鹿みたいな独占欲が出たり、ちょっと異常なんですよね、俺的には。」

「……異常??正常に戻ったんじゃなくて??」

「どうなんでしょう??でも、生まれつきそういうのがないと言うのは、恐らく遺伝的欠陥か何かなので治るって事はまずないんですよ。それに正常になったなら、他の人にも同じ反応が出てもおかしくないでしょ?」

「そうね……??」

「で、色々考えて、ちょっと今、仮説をたててるんで、意見を聞かせてもらえませんか??」

師匠は黙って頷いた。
俺はそこで、誰にも話していない相談をした。
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