欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

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「………あれ??」

目を覚ますと、部屋は何故か暗かった。
窓のない部屋だったのか??
体を起こして斜め後ろを見ると、窓はあった。
窓はあったが、外は暗くまだ夜だった。

「??」

反対側のベッドを見ると、シルクの姿はない。
何か変だぞ??
俺は真夜中、この町に帰ってきて、マダムの好意で部屋を借りて寝かせてもらった。
数時間で起きたにしては、すっきりし過ぎている気がする。
そもそもシルクはどこに行った?
俺の耳に、数人のゲラゲラと陽気な笑い声が聞こえた。
微かに食欲をそそる香りがする気がする。

「…………あ~、マジか……。」

状況から考えて、俺はどうやら丸1日寝て過ごしたようだ。

まぁ考えてみれは、予期せぬ血の魔術による消耗があって、ボーンさんが回復してくれたとはいえ人間じゃないかもしれないとか考えてよく眠れず、次の日は野宿で、ノルに会って徹夜して、やっとベッドに横になったのだ。

しかも追われる身となった今、一番安全なのはマダムのギルドであるここなのだ。
安心しきって色々なものが一気に出たようだ。
理解した途端きゅるぐると腹の虫が鳴く。

「お前は……本当、いつでも元気だな……。」

自分の腹の虫なのだが少し笑ってしまった。
騒がしいところを見ると、まだ酒場が開いてる時間なのだろう。

俺は立ち上がって簡単に身支度を整え、酒場に降りていった。





「あっ!!主っ!!目が覚めたんだっ!!」

階段を下り始めると、シルクがいち早く気づいてブンブンと手を振ってくる。
俺は片手を軽く上げてそれに答え、何を食べようか考えていた。

シルクの回りにはヒースさん達の他に、数人の冒険者も集まっている。
階段を下り、横のカウンターのマダムを見た。

「すみません、今、起きました。」

「まぁいいさ。色々あったんだしね。ここでしばらくゆっくりするといい。」

マダムはフンッと鼻を鳴らしたが、マダムなりの気遣いなのだとわかっていた。
そうさせてもらいますとお礼を言って、酒場の方に向かう。
シルクはすでに飲んでいるらしく、満面の笑みで俺に抱きついた。

「主~!!全然起きないからびっくりしたじゃん!体調、大丈夫??」

「ん。1日寝てすっきりしたから大丈夫。」

どでかい猫のように甘えてくるシルクをハグして、俺は体を離した。
シルクは上機嫌に笑って側にくっついているが、まあいい。

「お疲れ!サーク!ロナちゃんとトート迷宮のアタック成功させたんでしょ!?話し聞かせてよっ!!」

レダが興奮ぎみに話しかけてきた。

トートのアタックは、攻略ではなく探索を進めて新たなゲートを作ったと言う形になっている。
あの冥界への通路と封じ手の地竜の守り手として、ボーンさんが下した結論だ。

最深部に行ったとはいえ、とっくのとうにあの遺跡は攻略されボーンさんが管理しているのだし、あの遺跡が何故あるのかを考えれば妥当な判断だ。

わくわくと目を輝かしているレダさんには悪いが、どこまで話して良いのやら。
俺は困って頭を掻いた。

「とりあえず、食ってからでも良いですか?腹が減りすぎて倒れそうです。」

するとタイミングよく腹の虫が大きな声を上げて、どっと笑いが起きる。
そのお陰で、俺は食べている間は誰にも邪魔されずに集中して食事をした。

とりあえずとチキンのクリーム煮とサラダとパンを頼んだが、皆があれもこれもと分けてくれるので十二分の食事をする事ができた。
食べてるのを嬉々としてヒースさんが眺めていたが気にしない。

食べながら何となく周囲の話を聞いていると、シルクは今日1日、マダムの指示で他のパーティーの助っ人等をしていたらしい。
何でそんな事をしていたかと言うと、どうやらマダムに宿代としてやらされたらしい。
悪いことをしたなと思ったが、シルクはシルクで楽しかったようだし、宿代以上の分はお小遣いのようにもらったようで、とても満足していた。

「で?そろそろトートの話はしてくれんのか??」

がたいのデカイ、大剣使いの眼帯のおっさんが俺にカップケーキをくれなから話しかけてきた。
ウィルに槍を買って上げた時、さんざんからかってきたおっさんだ。
俺はコーヒーでそのケーキを食べながら頷いた。
わらわらと人が集まりだし、今か今かと俺が話し出すのを待っている。

どうやら、トートのアタックを成功させたと言うのは、冒険者的にかなりの偉業だったようだ。

単にボーンさんを探しに行っただけなのだが、冒険者としての信頼度が上がったのなら思わぬ棚ぼただ。
今の状況ではギルドを頼るのが一番なのだから、ここで味方が増え、信頼度が上がるのはとても心強い。

俺は最深部まで攻略した事は伏せながら、ボーンさんが新しいゲートを作ると言っていた付近までの話を皆に話した。
奥に行くと死属性の強い魔物がいて、物質攻撃は効きにくいし、魔術師二人だとキツかったので帰ってきたとまとめた。

いつの間にか側に来ていたマダムが、ふ~んと納得してカウンターに帰っていく。
多分、全部わかった上で、俺がどこまで話すか、話のまとめ方に不自然さがないか確認していたんだと思う。
何も言われなかったと言うことは、マダムチェックでは合格ラインだったのだろう。

シルクが何で俺が死にかけたのか聞くんじゃないかとヒヤヒヤしたが、大ジョッキで酒を飲みながら、にこにこするだけで何も言わなかった。
なんだかんだ、俺が全部話せないのは理解しているようだ。
本当、いい相棒を持った。

話し終えると、トムさんがグリグリ俺の頭を撫で回す。
痛いけど、師匠と違って手加減してくれるので本当ありがたい。
そして、ジョッキ片手に叫んだ。

「では!サークのアタック成功を祝って!!」

陽気な面々が乾杯を叫んで宴会になっていく。

ノリが外壁警備の皆に近くて何だか安心する。
色々気を揉む事が多かったが、今は少し心身共にこの騒がしくも暖かい場所に甘えさせてもらって、短い休息をとろうと思った夜だった。
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