欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

大事なのはそこじゃない

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「……それって……。つまり、王子様はサークちゃんが好きって事よね?」

考え込む俺に、師匠がポツリと言った。
ハッとして慌てて皆に顔を向ける。

「い、いや!それはその……っ!!」

まずい事を口走ってしまったと思ったが、時、既に遅し。
皆が顔を見合わせてにやにや笑っている。

ちょっと待ってくれ!
今、そう言う話じゃないでしょうが!!
しかし、面白そうな事を見つけてしまった面々を止める手立ては俺には無い。

「いやはや、サークはモテるんだのう~。」

「ナーバル議長っ!!」

「そういや、あの子も言わなかったがサークが好きだったろう?カイナのさ。」

「あれも可愛そうだったわ~。でも心配ご無用!シルクちゃんは向こうで無事、素敵な恋人ができたみたいです♡」

「ちょっと!師匠っ!!」

「この分じゃ、何人惚れさせて泣かせてるんだろうね?この子は……。」

「いくら命を救ったとはいえ、王子様まで魅了してるとは、恐れ入ったわい。」

「こういうの、何か呼び方があったよな??」

「う~ん?貢がせてる訳ではないんだし、普通にプレイボーイかしら?!」

「こりゃまた悪そうな響だね!サーク!」

「待って下さい!俺は何も悪い事してないですっ!!」

「サーク?ウィルを泣かせては駄目だよ?」

「ロイさんまで!泣かせません!俺は浮気なんかしてません!その気もなければ、体質的にも間違いの起こしようがないんです!俺はウィル以外にそう言う感情は起こらないんです!!」

俺が力の限り叫ぶと、一瞬の静寂が降りた。
そして次の瞬間、急に皆が目を輝かせた。

「そうそう!サーク!!いいビショップを見つけたそうじゃないか!!」

「しかも、サークの生まれつきの体質が、夜の宝石が無意識で起こした奇跡で回復している可能性があるのだろう!?」

「これは恋人の彼が、魔法を使えるようになるよう願うばかりだよ!!」

やんややんやと祝福ムードに包まれる円卓。
俺は呆然とその様子を見つめる。

…………。

ちょっと待て。
何で皆がそこまで詳しく知ってるんだ?!

俺はゆっくり師匠を振り返った。
師匠はあわあわ慌てていたが、俺の無言の圧力に耐えかね口を開いた。

「だって!少しでもサークちゃんの力になりたかったの!!アタシあの時たいして力になれなかったから!皆に相談すれば!何かいい考えとか聞けるかと思ったのよ~っ!!」

「だからって!言いふらしていい内容じゃないでしょうが~っ!!」

も~~~っ!!
俺のプライバシー!!
俺のプライバシーはこの世に存在しないのか!?

俺は天を仰いで顔を覆った。
まっさか森の町の皆に、そんなデリケートな部分を知られているとは思わなかった。

「うわぁ~っ!!相談する人、間違えた~っ!!」

もういっそ殺してくれ……。
ここまで来ると涙も出やしない。

「サーク、ロナンドはお前の為を思ってな?」

「そうそう、何も悪気があった訳でなし。」

「又聞きになってしまったが、ワシらだって、可愛いサークの力になりたいんだよ。」

優しい皆はバカにしたりはしないが、いくら何でも恥ずかしすぎる。

も~本当、何なの?!
何の罰ゲームなの?!これ!?

て言うか!
こんな話で盛り上がってる場合じゃないだろ~!!

俺、王国に戦犯の濡れ衣着せられて追われてんのよ?!
王国、政治の中枢にまで南の国に入り込まれてるっぽくて、ヤバイのよ?!
あいつら、どんな手を使っても、俺と王子を我が物にしようとしてるのよ?!

おまけに王子、何かと思ったら海の王を内に抱えてんのよ?!
王子の精神も王国も、かなりヤバイのよ?!

「……なのに~っ!!色々ヤバくてそれどころじゃないのに~っ!!俺のエロ事情が暴露されてるとか!!もう!!精神崩壊すんのは!王子じゃなくて!俺だから~っ!!」

「さ、サークちゃん?!しっかり?!」

「もうヤダ~!!おうちに帰る~っ!土に還る~!!」

考えなくてはならない事が大きすぎるところに、この予想外の衝撃である。
許容量オーバーの上、防御想定を遥かに上回る攻撃に、俺の頭は崩壊した。
混乱のあまり、訳のわからない事を口走る。

「……あ~、これはまずいの~う~。」

俺の取り乱し様に驚きのあまり固まって動けない皆を尻目に、ナーバル議長がのんびりとそう言った。
そしておもむろに、テーブルに置いてあった杖を手に取ると、ひょいっと俺に魔術をかけた。
その瞬間、俺はぱたんとその場にひっくり返る。

「きゃ~っ!!サークちゃんっ!!」

師匠の悲鳴がどこか遠くで聞こえた気がした。
ロイさんが倒れた俺を覗き込んでいたが、段々とそれもぼやけて見えなくなった。
後の事は覚えていない。







サークがひっくり返って意識を失ったのを見て、叫んだロナンドとサークの両脇にいたオービーとロイ以外は、それこそ硬直してしまいピクリとも動けなかった。

「やれやれ、うまく当たって良かったわい。」

ナーバルはそう言いながら、震える手から杖を外してゆっくりテーブルに置いた。
応急処置として、ロイが魔術で出した簡易ソファーにサークを寝かせる。
ナーバルはそれを何も言わずに見つめていた。

「ナーバル議長……その……申し訳ありません……。」

「う~ん。どうもワシらはサークが可愛いもんだから、構いすぎてしまうの~う~。」

「すみませんでした……。」

「いやなに。わしもからかってしまったしな。今後は皆でやり過ぎないよう、気をつけよう。」

ナーバルの言葉に、皆、顔を見合わせ頷き合う。
その後、発狂してしまったサークのクールダウンの間、負担を減らせるよう魔術本部の円卓では、サーク抜きでの話し合いがみっちり行われたのだった。
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