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第八章①「疑惑と逃亡編」
女帝の帰還
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目覚めると何かとてもいい匂いがした。
体を起こすと、どこから出てきたのかわからないアウトドア用の簡易ベッドソファーに寝かされていて、何で自分が寝てるのかよくわからなかった。
ズズズズーッという音がする。
この匂い。
この音。
間違いない…。
「………何で皆でラーメン食べてるんです??」
会議場のはずの円卓は、どこかの料理屋みたいに見えた。
小柄なフィンさんと大柄なオービーさん、そしてアンさんが店でもやっているかのように調理して、小ぶりなどんぶりを皆に配ってる。
しかも行列が出来そうな旨そうな匂いだ。
「そろそろ小腹が空いたんでのう~。」
「いや、オヤツにしては食べすぎでしょっ!!」
「何を言っているんだい?サーク?点心はお茶請けだろう??」
……確かにラーメンは点心の1つだし、点心は本来、メイン料理でなく箸休めと言うかお茶請け扱いだ。
ロイさんに手招きされて、俺も円卓に座り直す。
食べれる事が元気の秘訣とは言うが、本当にここの人達は元気だしよく食べる。
俺の前にアンさんがどんぶりを置いてくれた。
箸とフォークを差し出され、俺は迷わず箸を取る。
さすがは東の国育ちとロイさんが笑った。
けれどよく見れば、何故だか俺のだけどんぶりが普通の大きさだ。
そんなに食べれないと言おうか悩んだが、綺麗に澄んだスープとお腹に優しそうな野菜、極めつけに見事なチャーシューが3枚も乗っていて、ゴクリと唾を飲む。
「サークは特別!チャーシュー麺にしてアゲたよ!」
フィンさんが独特の訛でそう言った。
お礼を言って、ラーメンもといチャーシュー麺を見つめる。
サービスしてもらったなら、無碍にはできまい。
俺は手を合わせて感謝した。
美味しいラーメンを頂き、うっかり幸せ気分に浸りそうになったが俺ははたと気がついた。
「……って!それどころじゃないっ!!」
ロイさんの報告から王子の中には海の王がいる事がわかったのだ。
これで南の国が何故、あそこまで執拗にライオネル殿下にこだわったかわかった。
本来は南の国の守護者でありかつては兵器とした海の王を取り返したかったのだ。
本当、あの暑苦しいほどの王太子のアプローチが王子への愛じゃないと証明され、複雑な気分になる。
「……ライオネル殿下は……あのままで大丈夫なんでしょうか……。」
俺は存在にブレを生じさせている殿下を思い出し、ボソリとつぶやいた。
俺が眠っている間、ある程度話を進めてくれていたのだろう。
皆と顔を見合わせてから、ブラハムさんが口を開いた。
「正直、わからないとしか言えない。何しろ、魔術師であるワシらにすらずっと秘密にされていた事なんだからね。……ただ、遥か昔のあの戦争の後から今日までの長い間、これまで何の事故も起こさずに受け継いできたのだから、保てる何らかの方法を持っているのだと思うよ。」
ブラハムさんにそう言われ、確かにその通りだと思った。
王子のあのブレと、いくら器として高い素質があったからと言って、1人の人間にずっと精霊の王を封じ込めているなんて無茶苦茶だと思ったが、古代史に近い戦争からずっと、周囲に気づかれるような問題を何も起こさず保って来たのならば、それなりの対応策と維持の方法を持っているのだろう。
「だからそれについては、サークは心配しなくていい。ワシらが調査と対応策を検討していくからね。」
「……ですが、俺がやらないと行けないと言われてる事は何なんでしょうか……?」
「恐らくそれが、海の王を維持していく為の方法の1つなんじゃろう。その辺もこちらで追ってみるからの、ひとまずこっちで預かってもええかい??」
「はい……。」
魔術本部の皆は、俺の負担を減らす為に色々考えてくれたようだ。
確かに殿下の事は気になるし何とかしたいが、精霊の王の事など俺の手に余るのは明白だ。
ここは重鎮の面々にお任せした方が良いだろう。
「わかりました。よろしくお願い致します。」
俺は皆に深く頭を下げた。
魔術本部の皆は、いつものように優しく笑ってくれた。
「でも…彼らが王子を欲しがった理由はわかりましたけど、何で俺まで欲しがったんですかね??」
そこでふと、突然、王太子が俺を欲しがった理由がわかっていない事が気になった。
多分、俺が血の魔術を使うからなんだろうけど、だからって何で必要なんだ??
確かに今の所、血の魔術が使えるのは俺だけだみたいだけど、別に血の魔術でなくても同等の魔術を使える人間なら他にもいる。
俺は今でも魔術では師匠に勝てない。
だからこの場にいる人達なんて、恐らく俺が血の魔術を駆使したって敵わないだろう。
そこについては、皆も憶測が建てられなかったのだろう。
顔を見合わすばかりだ。
「そこは私が預かっていいかしら?」
ババンッと会議室のドアが開き、フレデリカさんが颯爽と入ってきた。
コツコツコツと早い速度で鳴り響くヒールの音。
何だろう?メチャクチャ有能なキャリアウーマンな感じがビシバシ漂ってる。
いや、フレデリカさんは元々凄い人だったんだけども、何だか気迫が違う。
「おや、フレデリカ。何かわかったのかい?」
ブラハムさんはそう言いながら、自分の椅子をずらす。
ロイさんがスッと立ち上がり、空いたスペースに立ったフレデリカさんの後ろに静かに椅子を置いた。
「今までの話は、アンの耳を借りて聞いていたから大丈夫よ?」
フレデリカさんはブラハムさんとロイさんにお礼を言い、座らないまま円卓に手をついてそう言った。
何か凄い。
気迫が凄い。
と言うか、耳を借りてたって、何?!
皆がちらりと視線を向けると、ナーバル議長の隣に座っているアンさんはにっこり笑って会釈した。
多分、フレデリカさんの魔女ネットワークというのは、こう言うものなのだろう。
何人そのネットワークに入っているのか、規模がどれくらいなのかはわからないが、正直、これはヤバイものだ。
「彼女が何で女帝と呼ばれているか、これでわかっただろう?」
椅子に座り直すのに合わせて、ロイさんがさり気なく俺に耳打ちした。
俺は頷く事もできずに固まっていた。
本気になったフレデリカさんを敵に回したらヤバい。
俺の生存本能が、そう訴えていた。
体を起こすと、どこから出てきたのかわからないアウトドア用の簡易ベッドソファーに寝かされていて、何で自分が寝てるのかよくわからなかった。
ズズズズーッという音がする。
この匂い。
この音。
間違いない…。
「………何で皆でラーメン食べてるんです??」
会議場のはずの円卓は、どこかの料理屋みたいに見えた。
小柄なフィンさんと大柄なオービーさん、そしてアンさんが店でもやっているかのように調理して、小ぶりなどんぶりを皆に配ってる。
しかも行列が出来そうな旨そうな匂いだ。
「そろそろ小腹が空いたんでのう~。」
「いや、オヤツにしては食べすぎでしょっ!!」
「何を言っているんだい?サーク?点心はお茶請けだろう??」
……確かにラーメンは点心の1つだし、点心は本来、メイン料理でなく箸休めと言うかお茶請け扱いだ。
ロイさんに手招きされて、俺も円卓に座り直す。
食べれる事が元気の秘訣とは言うが、本当にここの人達は元気だしよく食べる。
俺の前にアンさんがどんぶりを置いてくれた。
箸とフォークを差し出され、俺は迷わず箸を取る。
さすがは東の国育ちとロイさんが笑った。
けれどよく見れば、何故だか俺のだけどんぶりが普通の大きさだ。
そんなに食べれないと言おうか悩んだが、綺麗に澄んだスープとお腹に優しそうな野菜、極めつけに見事なチャーシューが3枚も乗っていて、ゴクリと唾を飲む。
「サークは特別!チャーシュー麺にしてアゲたよ!」
フィンさんが独特の訛でそう言った。
お礼を言って、ラーメンもといチャーシュー麺を見つめる。
サービスしてもらったなら、無碍にはできまい。
俺は手を合わせて感謝した。
美味しいラーメンを頂き、うっかり幸せ気分に浸りそうになったが俺ははたと気がついた。
「……って!それどころじゃないっ!!」
ロイさんの報告から王子の中には海の王がいる事がわかったのだ。
これで南の国が何故、あそこまで執拗にライオネル殿下にこだわったかわかった。
本来は南の国の守護者でありかつては兵器とした海の王を取り返したかったのだ。
本当、あの暑苦しいほどの王太子のアプローチが王子への愛じゃないと証明され、複雑な気分になる。
「……ライオネル殿下は……あのままで大丈夫なんでしょうか……。」
俺は存在にブレを生じさせている殿下を思い出し、ボソリとつぶやいた。
俺が眠っている間、ある程度話を進めてくれていたのだろう。
皆と顔を見合わせてから、ブラハムさんが口を開いた。
「正直、わからないとしか言えない。何しろ、魔術師であるワシらにすらずっと秘密にされていた事なんだからね。……ただ、遥か昔のあの戦争の後から今日までの長い間、これまで何の事故も起こさずに受け継いできたのだから、保てる何らかの方法を持っているのだと思うよ。」
ブラハムさんにそう言われ、確かにその通りだと思った。
王子のあのブレと、いくら器として高い素質があったからと言って、1人の人間にずっと精霊の王を封じ込めているなんて無茶苦茶だと思ったが、古代史に近い戦争からずっと、周囲に気づかれるような問題を何も起こさず保って来たのならば、それなりの対応策と維持の方法を持っているのだろう。
「だからそれについては、サークは心配しなくていい。ワシらが調査と対応策を検討していくからね。」
「……ですが、俺がやらないと行けないと言われてる事は何なんでしょうか……?」
「恐らくそれが、海の王を維持していく為の方法の1つなんじゃろう。その辺もこちらで追ってみるからの、ひとまずこっちで預かってもええかい??」
「はい……。」
魔術本部の皆は、俺の負担を減らす為に色々考えてくれたようだ。
確かに殿下の事は気になるし何とかしたいが、精霊の王の事など俺の手に余るのは明白だ。
ここは重鎮の面々にお任せした方が良いだろう。
「わかりました。よろしくお願い致します。」
俺は皆に深く頭を下げた。
魔術本部の皆は、いつものように優しく笑ってくれた。
「でも…彼らが王子を欲しがった理由はわかりましたけど、何で俺まで欲しがったんですかね??」
そこでふと、突然、王太子が俺を欲しがった理由がわかっていない事が気になった。
多分、俺が血の魔術を使うからなんだろうけど、だからって何で必要なんだ??
確かに今の所、血の魔術が使えるのは俺だけだみたいだけど、別に血の魔術でなくても同等の魔術を使える人間なら他にもいる。
俺は今でも魔術では師匠に勝てない。
だからこの場にいる人達なんて、恐らく俺が血の魔術を駆使したって敵わないだろう。
そこについては、皆も憶測が建てられなかったのだろう。
顔を見合わすばかりだ。
「そこは私が預かっていいかしら?」
ババンッと会議室のドアが開き、フレデリカさんが颯爽と入ってきた。
コツコツコツと早い速度で鳴り響くヒールの音。
何だろう?メチャクチャ有能なキャリアウーマンな感じがビシバシ漂ってる。
いや、フレデリカさんは元々凄い人だったんだけども、何だか気迫が違う。
「おや、フレデリカ。何かわかったのかい?」
ブラハムさんはそう言いながら、自分の椅子をずらす。
ロイさんがスッと立ち上がり、空いたスペースに立ったフレデリカさんの後ろに静かに椅子を置いた。
「今までの話は、アンの耳を借りて聞いていたから大丈夫よ?」
フレデリカさんはブラハムさんとロイさんにお礼を言い、座らないまま円卓に手をついてそう言った。
何か凄い。
気迫が凄い。
と言うか、耳を借りてたって、何?!
皆がちらりと視線を向けると、ナーバル議長の隣に座っているアンさんはにっこり笑って会釈した。
多分、フレデリカさんの魔女ネットワークというのは、こう言うものなのだろう。
何人そのネットワークに入っているのか、規模がどれくらいなのかはわからないが、正直、これはヤバイものだ。
「彼女が何で女帝と呼ばれているか、これでわかっただろう?」
椅子に座り直すのに合わせて、ロイさんがさり気なく俺に耳打ちした。
俺は頷く事もできずに固まっていた。
本気になったフレデリカさんを敵に回したらヤバい。
俺の生存本能が、そう訴えていた。
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