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第八章②「敵地潜入」
華やかさとその後ろ
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ケビンに連れられて歩いていると、前からゴードンが歩いてきた。
シルキーをひと目見るなり、言葉を失う。
それほど落ち着いた装いのシルキーは美しかった。
だがすぐに切り替え、ニヤッと笑って声をかけてきた。
「よう、一晩で見違える変身ぷりだな?パトロンでもついたか?」
相変わらず少々下品な所がある男だ。
嫌がらせをするように、ジロジロとシルキーを見つめる。
だがそれは、目をつけた華が他に取られそうな事に焦りを感じている男によく見られる事だった。
可愛いところもあるものだとシルキーは思った。
「どうかしら?でも多分、パトロンはまだいないわね。だからこれから作りに行くところなのよ。」
くすっと笑い、シルキーは冗談めかしてゴードンの言葉を受け流した。
癇に障る言い方をされたって、いちいち噛み付いても仕方がない。
ケビンはそんなシルキーを黙って見ていた。
「なら、俺が連れてってやるよ。おい、アンタ、ここからは俺が連れて行くから、もういいぞ。」
ゴードンはケビンにそう言った。
ていよく、シルキーを自分の傍らに置こうとしたのだ。
だがケビンはにこやかに笑って、シルキーとゴードンの間に入る。
「おい……っ!」
「申し訳ありません、ゴードン様。シルキーは本日、上の部屋に連れて行くように言われておりまして……。」
「な……っ?!」
ゴードンの顔が強張った。
上の部屋、つまりゲストラウンジではなくVIPルームに行くと言う事だ。
VIPルームは上級会員の推薦を受け、そして会員達の賛成がなければ入る事はできない。
そこにまだ来たばかりのシルキーが行くのだ。
もちろん華として行くのだろうが、昨日の今日でいつ、彼らに目をつけられたというのか?
派手な衣装で隠していたが、本来はこれほど美しい華なのだ。
いずれ目をつけられるとは思っていたが、まさかこんなにも早くとは思っていなかった。
奥歯を噛むゴードンに、ケビンはにこやかに会釈した。
そしてシルキーに先を促す。
「待って?ケビンさん?少しだけゲストラウンジに顔を出せないかしら?昨日会った人達に挨拶をしてから行きたいわ。」
「ゲストラウンジには別の者が行ってます。顔を合わせるのはお互いあまり良い事ではない。勧めませんね。」
「そう……。ゴードンさん、昨日はありがとう。今日は行けないから、皆さんによろしく伝えてね。」
シルキーは少し戸惑ってそう言ったが、確かに別の華がある場所に押しかけるのはマナー違反だ。
ゴードンに挨拶をすると、もう用はないとばかりに歩き出したケビンについていく。
ケビンは言った。
「シルキー。ゲストラウンジの事など考えている場合じゃないんだよ、君は。このままVIPルームの華でいられるよう考えた方がいい。推薦者の顔を潰すなよ。それこそ、この国では舞台に立てなくなる。いいね?」
「……わかったわ。」
シルキーはチラリと後ろを見た。
ゴードンはまだそこにいて、硬い表情でシルキーを見つめていた。
「またあんたか。あんまりうろつくなっつってんだろ?」
大道具を確認していた従業員に挨拶すると、今日は言葉を返してくれた。
すみませんと言いながらアメを差し出すと受け取ってくれる。
この従業員だけではない。
全体的に昨日に比べて態度が軟化している。
シルキーのステージが素晴らしかったので、ここで認められ始めているようだ。
いい傾向だと思う。
「ちょっと!付き人の人だっけ?!またうろうろして!挨拶はいいから!そんなに暇ならちょっと手を貸してよっ!!」
脚立を運んでいるお姉さんとぶつかりそうになり、そのまま有無を言わさず手伝いをさせられる。
だが手伝いをさせられると言うのは、ある意味、気を許させてると言う事だ。
なんだかんだ、現場の人間とも馴染んできた。
こうやっていれば色々な噂話が耳に入る。
大半は、あの歌手は人使いが荒いだの、あのダンサーは八つ当たりが酷いだのと言う愚痴だが、そこここに人間関係が見て取れる。
その中にはチラホラと政治的有力者などとの関わりも見え隠れしている。
「……だからユウちゃん!モリカには気をつけなさいよ?!あの子は自分がのし上がる為には、何だってするからね!!」
「そうそう。何人、新人の子が泣かされたりはめられたりしたか……。あいつに蹴落とされてやめさせられた子なんて数しれないからね。」
「俺、去年の冬頃歌ってた子、好きだったんだよな~。実力はあったのにステージで事故があって足を折ってさ~。傷が残ったからって~。」
「それって……。」
「みなまで言わせんなって。」
「はぁ……そんな事までするんですか?」
「何でもありだよ、ここは。」
「シルキーは実力派だから技術には隙がないじゃん?!だから絶対、嫌がらせしてくるから!!」
すでにシルキーのステージを見てファンになってくれた裏方さん達からそんな注意を受ける。
モリカって、ここのステージを代表する一人だよな??
そんな大物が、新人にわざわざ嫌がらせしてくんのか……。
華の世界ってマジで怖いんだな~。
「気をつけます。ありがとうございます。」
作業終わりに軽くお茶をしながら聞いた話は、中々エキサイティングな内容だった。
そろそろシルキーも戻ってくるので、裏方さんたちと別れ、俺は軽食の買い出しに向かった。
シルキーがVIPルームの側まで来ると、廊下に男が待っていた。
ケビンはその男を見ると頭を下げて下がる。
残されたシルキーはため息をつき、その男に近づいた。
「あなたの仕業ね?これ?」
男はにっこり笑うだけだった。
昨日と違うのは、昨日よりずっと仕立てのいい服を着ている事だ。
後は変わりなく、物静かで品のある若者だった。
彼はシルキーの足元を見ると小さく笑って、後ろに控えていた大きなカバンを持った男に下がるように言った。
「服を贈ったけど、靴の事を忘れていてね。部屋に入る前に見立ててあげようと思ったのに、その必要はなかったね。」
「いい付き人がついてるの、アタシ。」
「そのようだね。」
ちょっとツンと言い放つと、彼は面白そうに笑った。
足を進め横に並ぶと、エスコートするように手を差し伸べられる。
シルキーはその手を取った。
「贈った服を着せて靴を見立てるなんて、どう言うつもり?」
「そのままだよ、シルキー。」
「そう?ありがとう。でもアタシ、まだあなたの名前も知らないのよ?」
「秘密にしてるつもりはなかったんだけどね。そうだな……とりあえず、ヘンリーと呼んでくれるかい?」
「……ヘンリー・ヒギンズ?」
シルキーから出たその言葉に彼は少し驚いた後、柔らかく笑った。
「君には驚かされるよ。どこでそれを?」
「友達が読んでた本。アタシは読んでないわ。どんな本か聞いたら教えてくれたの。随分、大きく出たわね?ヒギンズ教授。」
「参ったな。すでにネタバレしてるなんて。」
「運が悪かったわね。アタシに読書好きの友達がいるなんて思わなかったでしょ?今までの子は引っかかったかもしれないけど、残念ね。」
シルキーがそう言うと、ヘンリー(仮)は真面目な顔でシルキーを見つめる。
そして軽く引き寄せ、さっきよりも親密なエスコートに変えた。
「やはり君はゲストラウンジに置いておいていいような華じゃない。教養のあるなしはとても大事だ。特にこれから会わす人達は、そう言うものも見ているからね。」
「あなたはアタシをどうしたいの?」
「花を育てるのに理由がいるのかい?それと同じさ。さぁ、おいで。マイ・フェア・レディ。準備はいい?」
「……望むところよ。」
シルキーの男前な返答に彼は声を上げて笑った。
そしてひとしきり笑い終えると、シルキーにウインクする。
そしてそのまま、ゆっくりとドアマンが開けたVIPルームにシルキーをエスコートして入って行った。
シルキーをひと目見るなり、言葉を失う。
それほど落ち着いた装いのシルキーは美しかった。
だがすぐに切り替え、ニヤッと笑って声をかけてきた。
「よう、一晩で見違える変身ぷりだな?パトロンでもついたか?」
相変わらず少々下品な所がある男だ。
嫌がらせをするように、ジロジロとシルキーを見つめる。
だがそれは、目をつけた華が他に取られそうな事に焦りを感じている男によく見られる事だった。
可愛いところもあるものだとシルキーは思った。
「どうかしら?でも多分、パトロンはまだいないわね。だからこれから作りに行くところなのよ。」
くすっと笑い、シルキーは冗談めかしてゴードンの言葉を受け流した。
癇に障る言い方をされたって、いちいち噛み付いても仕方がない。
ケビンはそんなシルキーを黙って見ていた。
「なら、俺が連れてってやるよ。おい、アンタ、ここからは俺が連れて行くから、もういいぞ。」
ゴードンはケビンにそう言った。
ていよく、シルキーを自分の傍らに置こうとしたのだ。
だがケビンはにこやかに笑って、シルキーとゴードンの間に入る。
「おい……っ!」
「申し訳ありません、ゴードン様。シルキーは本日、上の部屋に連れて行くように言われておりまして……。」
「な……っ?!」
ゴードンの顔が強張った。
上の部屋、つまりゲストラウンジではなくVIPルームに行くと言う事だ。
VIPルームは上級会員の推薦を受け、そして会員達の賛成がなければ入る事はできない。
そこにまだ来たばかりのシルキーが行くのだ。
もちろん華として行くのだろうが、昨日の今日でいつ、彼らに目をつけられたというのか?
派手な衣装で隠していたが、本来はこれほど美しい華なのだ。
いずれ目をつけられるとは思っていたが、まさかこんなにも早くとは思っていなかった。
奥歯を噛むゴードンに、ケビンはにこやかに会釈した。
そしてシルキーに先を促す。
「待って?ケビンさん?少しだけゲストラウンジに顔を出せないかしら?昨日会った人達に挨拶をしてから行きたいわ。」
「ゲストラウンジには別の者が行ってます。顔を合わせるのはお互いあまり良い事ではない。勧めませんね。」
「そう……。ゴードンさん、昨日はありがとう。今日は行けないから、皆さんによろしく伝えてね。」
シルキーは少し戸惑ってそう言ったが、確かに別の華がある場所に押しかけるのはマナー違反だ。
ゴードンに挨拶をすると、もう用はないとばかりに歩き出したケビンについていく。
ケビンは言った。
「シルキー。ゲストラウンジの事など考えている場合じゃないんだよ、君は。このままVIPルームの華でいられるよう考えた方がいい。推薦者の顔を潰すなよ。それこそ、この国では舞台に立てなくなる。いいね?」
「……わかったわ。」
シルキーはチラリと後ろを見た。
ゴードンはまだそこにいて、硬い表情でシルキーを見つめていた。
「またあんたか。あんまりうろつくなっつってんだろ?」
大道具を確認していた従業員に挨拶すると、今日は言葉を返してくれた。
すみませんと言いながらアメを差し出すと受け取ってくれる。
この従業員だけではない。
全体的に昨日に比べて態度が軟化している。
シルキーのステージが素晴らしかったので、ここで認められ始めているようだ。
いい傾向だと思う。
「ちょっと!付き人の人だっけ?!またうろうろして!挨拶はいいから!そんなに暇ならちょっと手を貸してよっ!!」
脚立を運んでいるお姉さんとぶつかりそうになり、そのまま有無を言わさず手伝いをさせられる。
だが手伝いをさせられると言うのは、ある意味、気を許させてると言う事だ。
なんだかんだ、現場の人間とも馴染んできた。
こうやっていれば色々な噂話が耳に入る。
大半は、あの歌手は人使いが荒いだの、あのダンサーは八つ当たりが酷いだのと言う愚痴だが、そこここに人間関係が見て取れる。
その中にはチラホラと政治的有力者などとの関わりも見え隠れしている。
「……だからユウちゃん!モリカには気をつけなさいよ?!あの子は自分がのし上がる為には、何だってするからね!!」
「そうそう。何人、新人の子が泣かされたりはめられたりしたか……。あいつに蹴落とされてやめさせられた子なんて数しれないからね。」
「俺、去年の冬頃歌ってた子、好きだったんだよな~。実力はあったのにステージで事故があって足を折ってさ~。傷が残ったからって~。」
「それって……。」
「みなまで言わせんなって。」
「はぁ……そんな事までするんですか?」
「何でもありだよ、ここは。」
「シルキーは実力派だから技術には隙がないじゃん?!だから絶対、嫌がらせしてくるから!!」
すでにシルキーのステージを見てファンになってくれた裏方さん達からそんな注意を受ける。
モリカって、ここのステージを代表する一人だよな??
そんな大物が、新人にわざわざ嫌がらせしてくんのか……。
華の世界ってマジで怖いんだな~。
「気をつけます。ありがとうございます。」
作業終わりに軽くお茶をしながら聞いた話は、中々エキサイティングな内容だった。
そろそろシルキーも戻ってくるので、裏方さんたちと別れ、俺は軽食の買い出しに向かった。
シルキーがVIPルームの側まで来ると、廊下に男が待っていた。
ケビンはその男を見ると頭を下げて下がる。
残されたシルキーはため息をつき、その男に近づいた。
「あなたの仕業ね?これ?」
男はにっこり笑うだけだった。
昨日と違うのは、昨日よりずっと仕立てのいい服を着ている事だ。
後は変わりなく、物静かで品のある若者だった。
彼はシルキーの足元を見ると小さく笑って、後ろに控えていた大きなカバンを持った男に下がるように言った。
「服を贈ったけど、靴の事を忘れていてね。部屋に入る前に見立ててあげようと思ったのに、その必要はなかったね。」
「いい付き人がついてるの、アタシ。」
「そのようだね。」
ちょっとツンと言い放つと、彼は面白そうに笑った。
足を進め横に並ぶと、エスコートするように手を差し伸べられる。
シルキーはその手を取った。
「贈った服を着せて靴を見立てるなんて、どう言うつもり?」
「そのままだよ、シルキー。」
「そう?ありがとう。でもアタシ、まだあなたの名前も知らないのよ?」
「秘密にしてるつもりはなかったんだけどね。そうだな……とりあえず、ヘンリーと呼んでくれるかい?」
「……ヘンリー・ヒギンズ?」
シルキーから出たその言葉に彼は少し驚いた後、柔らかく笑った。
「君には驚かされるよ。どこでそれを?」
「友達が読んでた本。アタシは読んでないわ。どんな本か聞いたら教えてくれたの。随分、大きく出たわね?ヒギンズ教授。」
「参ったな。すでにネタバレしてるなんて。」
「運が悪かったわね。アタシに読書好きの友達がいるなんて思わなかったでしょ?今までの子は引っかかったかもしれないけど、残念ね。」
シルキーがそう言うと、ヘンリー(仮)は真面目な顔でシルキーを見つめる。
そして軽く引き寄せ、さっきよりも親密なエスコートに変えた。
「やはり君はゲストラウンジに置いておいていいような華じゃない。教養のあるなしはとても大事だ。特にこれから会わす人達は、そう言うものも見ているからね。」
「あなたはアタシをどうしたいの?」
「花を育てるのに理由がいるのかい?それと同じさ。さぁ、おいで。マイ・フェア・レディ。準備はいい?」
「……望むところよ。」
シルキーの男前な返答に彼は声を上げて笑った。
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