欠片の軌跡⑤〜あらがう者たち

ねぎ(塩ダレ)

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第八章②「敵地潜入」

明日の支度は今日のうちに

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突然のシルクの回復により、カジノ潜入調査計画は続行と言う事になった。

まぁVIPルームにまで入れたので、続投でありがたいと言えばありがたいが、本当に大丈夫なのか心配なところはある。
こいつはどこか、本当に俺の為ならどんな犠牲も厭わないような節があるからなぁ。

だがシルク本人が無理そうならちゃんと言うと約束してくれたので、ひとまずそれを信じようと思う。

そんな訳で、届いた貢物の開封の儀を執り行っているのだが……。

シルクがある箱を開けて無言になっている。

「どうしたんだ?シルク……ってっ!!おいっ!!」

シルクが開けて死んだ魚のような目をしていた箱の中身は……まぁ、あれだ……。
これでシルクも俺がギルからのカバンの中に例のブツを見つけた時の気持ちがわかっただろう……。
シルクはパタンと箱を閉めると、ポイッと後ろに投げ捨てた。

「誰から……?」

「エロじじい。」

「あ~。……元気だね、現役なのかな?」

「知らんっ!!あのジジイっ!あいつとどっこいどっこいの気色悪さだな?!」

元気になったシルクは、あの男の事を口にしても意外と平然としている。
何となく過去と現在の混乱は治まったようだ。

そして次の箱をビリビリと無造作に開けていく。
俺はシルクがひっちゃぶいた包装紙を集めてゴミ箱に入れた。

「あ……っ。」

急にそんな声を出す。
覗き込むと上品な感じのショールが入っていた。

「……彼かね?」

「うん、彼だね。」

箱の中のカードを手に取りシルクは笑った。
シルクの手元のカードを覗き込むと『君の声を保存しておけば良かった』と書いてあった。

「声を保存??どういう意味だ??」

「ん~?巡り巡ってつまるところ多分、俺を失って後悔してるって感じの意味だろうね。おっかし~の。」

「え??どういう事??」

「帰ったらウィルに『ピグマリオン』もしくは『マイ・フェア・レディ』ってどんな話って聞いてみてよ。そうしたらわかるよ。」

「あ、物語をなぞってるのか。」

「うん。俺が休むって言うから、昨日の事で辞めちゃうんじゃないかと思ったんだろうね、きっと。ふふっ、慌てちゃって可愛い~。」

「可愛いってお前……。」

シルクは上機嫌になって他の箱も開けた。
他の箱は、靴やスカーフ、髪留めなどの小物が多かった。
聞けばVIPルームにいたその他の人達からの様だった。
VIPに気を使われるとか凄いなお前。
花束等は他のファンからのようだ。

最後に一番大きな箱が残った。
シルクはその箱を前に、ちょっと複雑な顔をしている。

「……ヤバそうなのか?魔力探査するか?」

「ん~ん、大丈夫。ただ俺の思った人だった場合、受け取っていいのかなって思っただけ。」

「誰??」

「ゴードンさん。」

「あ~。」

確かに箱の大きさといい、高見えする包装といい、それっぽい気がする。
確かに受け取ったら受け取ったで面倒くさそうだな?
機嫌損ねたら、返せとか言われそうだし。

「どうする??」

「とりあえず開けるだけ開けるよ。誰からとかも書いてないし。」

シルクはそう言って丁寧に箱を開けた。
中は意外な事に思ったより品の良いものだった。
黒のスーツタイプの踊り子の衣装。

「え??これ、ゴードンから??」

シルクの踊りの特質をよく見た上で、考えぬいて選んだようなシックな感じの衣装だ。

これ、あの何となく粗雑なゴードンが選んだものだろうか??
俺にはわからなかった。

もらったプレゼントは相手が匿名を希望していなければ、一応誰からと言うメモがついている。
でもこの箱にはそれがなかった。
中にカードも入っていない。
誰からとわかるものは一切なかった。

「……うん、ゴードンさんだと思う。」

「どうして?」

「勘。そうとしか言えないけど、ゴードンさんだよ、贈り主。あえて名前を明かさなかったんだ。」

どうして、と言おうと思ったがやめた。
シルクには思う所があるのだろう。

俺は直接関わっていないから、その微妙な部分はわからない。
仮名の彼の事も、ゴードンの事も、シルクに任せるしかない。

あ、VIPなエロじじいの事もね。

「……わかった。お前に任せた部分だし俺は口を出さない。それよりカジノに行くなら、きちんと話しておかないとな。」

シルクは箱から衣装を取り出しながら、俺の顔を見た。

「何かの件だよね?」

「ああ。」

シルクはもらったものを使うものと使わないものに分けながら、散らばった箱を片付けていった。
使うものの方に黒の衣装もショールも入っている。

「むしろ俺が気になるのはそっちだよ。俺のジジイ問題より、そっちが大事でしょ?大丈夫なの?続けて??避けた方がいい相手なんじゃないの??」

避けた方がいい相手。
確かにそうかもしれない。

「正直わからない。とりあえず油断ならない相手なのは確かだな。」

「なら……。」

どんな相手でどんな目的かもわからないけれど、血の魔術の鼠を一撃で仕留めるような相手だ。
関わらないと言う選択肢もあると思う。

「だが特に危害を加えられた訳でもない。殺気がある訳でも、悪意がある訳でもない。」

「鼠が殺されたんでしょ??」

「シルクは自分を探っている気配があったらどうする??」

「う~ん、探し出して裏をかいてとっちめるかな??」

「……存外、容赦ないよな、お前。」

「それ程でも~。」

「褒めてないって!……でも、それと同じ反応だったんだと思うんだよ。何かが探ってる気配があったから攻撃した。俺達を標的に攻撃しようとした訳じゃないんだと思う。ただそれを攻撃したら俺達に反応があったから、向こうもびっくりしたんじゃないかな?」

「何で??」

「こっそり見てたんだよ、俺達の事。多分、気づかれてないと思ってたんじゃないかな?向こうは?」

「あ~、それで何かが探ってると思って攻撃したら、俺達が反応した。つまり気づかれてないと思ってたのに、自分が見ている事に俺達が気づいてるって向こうもわかったんだね。」

「そう。おそらくそんな状態なんじゃないかと思ってる。だから、逆にこれからどう出てくるのかが見たい。向こうがどう反応してくるかで対応を考えたい。もちろん危険だと思ったら、即時撤退も視野に入れる。」

「了解。とりあえず、ひとまず向こうの出方を確認しないと何とも言えないって事だね。」

「そういう事。だからお前も前より意識してて欲しい。向こうも慎重になって前より気づかれにくくしてくるかもしれないし、逆にわかっているならと、隙をついて何かして来るかもしれない。目的がわからないから、何をどうしてくるのかさっぱりだけど、とにかく一度様子を見たい。いいな?」

「わかった。」

シルクは納得したように頷いた。
俺達はその後もしばらく、これからの事についてや今わかっている事などについて話し合い、夕飯はルームサービスでパスタやガパオライスなどを頼んで、1日部屋から出ないでだらだらと過ごしたのだった。
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