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第八章②「敵地潜入」
高嶺の花の素顔
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俺とシルク、もとい、話題の踊り子シルキー・フェンと付き人のユウ・ハーマンは迎えの馬車を断って、今日は早めに歩いてカジノに向かった。
前の派手派手な衣装ではなく、ちょっと控えめな装いで歩くと、街の人達がその美しさに注目した。
無理もない。
衣装でなくて美しさで目を引いて俺を隠すと言う事に本気になってるシルクが演じているシルキーなのだから、そりゃ、二度見三度見で振り返るくらいの威力がある。
貢物でもらったつばのでかい帽子を被り、いつもの大きなサングラス姿だが、身のこなしや綺麗な体のライン、隠せぬカリスマ性のせいか、多くの人がそれがシルキーだと気づいた。
シルキーはそれに、軽く手を振って応える。
皆、お忍びなんだなみたいなものを感じたのか、表立って声をかけてくる強者はそんなにいなかった。
まぁ、熱烈な人が花束を抱えて呼び止めて来た時はちょっとびっくりしたけど。
シルキーはそれもふわりと笑っていなしてしまった。
大物だよな、こいつ。
「カジノのステージからあなたが見えたら、ご褒美をあげるわ。」
なんて、唇に指を当てながら言うもんだから、卒倒しちゃってたよ、その人。
つか、ご褒美って何だよって小声で聞いたら、見つけたら投げキッスしてあげるの~と笑っていた。
本当にそんな事したら多分死んじゃうぞ、あの人。
だいたい俺の事、人タラシとか文句言ってたけど、お前はどうなんだって感じだ。
まぁシルクの場合、たらし込んでるというより信仰対象みたいに崇められる感じになってるけどさ。
やっぱりこのカジノ潜入調査計画が駄目だったら、女神信仰として宗教で押そう、うん。
そんな感じでカジノまで歩いてきた。
多分、客寄せ効果はそれなりにあっただろう。
昨日の休みのマイナス分は、これで多少は補えたんじゃないかと思う。
カジノにつくと、シルキーがトルティーヤの店に行きたいと言い出し、まだ控室に入るにも少し早かったので、カジノのメインラウンジをフラフラする事になった。
その間もシルキーは注目を集め、人々の目を釘付けにしている。
「……あれ??」
トルティーヤの売店につくと、何故か小さな行列が出来ていた。
前はこんな行列なかったのに??
よく見ると、店の看板に加えて「話題の踊り子、シルキー・フェン御用達!」の煽り文句がついている。
マジか……商売が上手いな。
流行りモノには乗る主義なのは流石だとしか言いようがない。
「凄~い!大人気~!」
シルキーはそれを見てけらけら笑っている。
並んでいる人や周囲の人がシルキーに気づいてざわつき始める。
「あっ!!ハーマンさん!!それにシルキーちゃんもっ!!」
店の人が気づいて大声で叫んだ。
こんな時でも宣伝効果を忘れない商売根性は凄いと思う。
店主のおじさんの大声で、途端にシルキーに注目が集まる。
「ささっ!どうぞ前にっ!!」
お店の人が順番関係なくシルキーを呼んだ。
普通はこういう時、有名人は前に出るものだが、シルキーは何分、中身はシルクだ。
呼ばれた事にキョトンとして、首を振った。
「駄目よ。お客さんが並んでるじゃない?アタシもちゃんと並ぶから気にしないで?」
その言葉に、周囲がざわついた。
普通、注目の人物ならそれを鼻にかけて行動してもおかしくないのに、シルキーはそれをしなかった。
シルクとしては当たり前の対応だったのだろうが、カジノの華がそれをやったのだ、騒然となるのも無理はない。
「……シルキーって、庶民的なんだな?!」
「ああ、話題のステージの華だし、もっと高慢ちきなのかと思ってた……。」
「私、シルキー好きかも!」
「何か身近だよな?!」
思わぬところで、シルキーはファンを獲得したようだ。
にこにこと列に並んでいる姿は、一般客に好印象を与える。
それもあってか、前の人が笑って「お先にどうぞ」「なら私も」「ステージもあって時間もないでしょう」と進んで先を譲ってくれ、結局、一番前に来てしまった。
「え?!ええっ?!悪いわよ?!皆、並んでるのに?!」
「いえいえ、どうぞシルキーさん。」
シルキーは戸惑ってしまっていたが、皆はにこにこしている。
有名人だからと割り込まれるのは腹が立つが、自分が譲ったとなると気分がいいもので、誰も文句は言わない。
「どうしよう、ユウくん……。」
「う~ん。ここはお礼を言ってご好意に甘えましょう。そしてシルキーさんが早く買ってあげた方が、皆さんも待たずに済みます。」
「そうね……わかったわ。」
シルキーは譲ってくれた人達に頭を下げてお礼を言った。
そして早く注文を済まそうと、売店に向き直した。
おじさんは何故か半泣きだ。
「ヤダ!おじさん?!どうしたの?!」
「いや……シルキーちゃんが本当に俺のタコスとかブリトーとか食っててくれてたんだと思ったら……何か泣けてきて……しかもこんなに良い子で……便乗して売上あげようとしてた自分が情けなくてなぁ……。」
「おじさんがトルティーヤ作ってたのよね??いつもありがとう!!アタシ、初めて食べたんだけど、とっても美味しかったわ!!手をほとんど汚さずに忙しくても簡単に食べれるし!!良いわよね!トルティーヤ!いつもの辛いのと、チーズのと……そうね、おじさんのお薦めのをアタシとユウくんの分で2個ずつ頂戴!!いいかしら??」
「もちろん!!すぐ作るから待っててね!シルキーちゃん!!」
店のおじさんは感動して半泣きになりながら、手早く注文の品を作ってくれた。
包を受け取って、シルキーはにこにこ笑う。
俺が代金を支払おうとすると、おじさんは断ってきたが、シルキーはそれを少し怖い顔で怒った。
「駄目よ、おじさん!踊り子だからって依怙贔屓したら!それに商売なのよ?!お金は大事!!アタシは美味しいから買ったの!だからちゃんとお代を受け取って!ね?」
そう諭され、おじさんはまた半泣きになった。
まぁ、話題の踊り子でVIPルームにも招かれるような華がこんな事言うとは思わないよな?
どこか高貴な華になりきれない庶民感覚のシルキーは、トルティーヤを抱えて店前を離れると、もう一度譲ってくれた人達にお礼を言った。
俺もその脇で頭を下げる。
完全に高感度爆上げだ。
ここまでの事は意図していなかったが、何というか幸運な事故と言う感じだな。
周りで見ていた人達は、男女問わず、シルキーの人柄の良さに、すっかり虜になっていた。
空いていたベンチに座り、人目も気にせず「熱いうちに食べないと!」とか言ってチーズブリトーにかぶりつく姿は、全てわかってる俺ですら好感が持てた。
シルクってこういう奴なんだよな。
小悪魔なのに何か憎めないっていうか。
昨日1日、シルキーではなく素のシルクとして過ごしたせいか、いい意味で肩の力が抜け、自由に振る舞うその様は楽しげで、何者にも囚われていなくて、誰もが好印象を受けた。
トルティーヤを食べ終わった後も、軽くスロットで遊んだりして、周りから微笑ましく眺められた。
だが、さすがは話題の踊り子。
VIPルームの華としても使うシルキーが、一般客に混ざって売店の物を食べたりスロットで遊んだりしていると聞きつけて、とうとう慌てたように従業員が飛んできて俺達は早々に控室に押し込まれた。
そしてすぐにケビンさんが来て、「自覚を持ってくれ」と俺達はしばらく怒られた。
確かにやりすぎた感は否めないが、カジノ的にはプラスになったと思うんだよな?
そう思いながら俺は平謝りしていた。
シルキーの方はと言うと、怒られている間もにこにこ笑っていて、最終的にはスロットで儲けたメダルのかごをケビンさんに差し出し、「従業員さんと舞台裏の皆に何か差し入れしてあげて?」と言った。
さすがのケビンさんもこれには深く深くため息をついたが、「ありがたく頂戴します」と言って、メダルを抱えて出て行った。
本当、大物だよな、こいつ。
にこにこ笑うシルキー、いやシルクを見つめて、俺はそう思った。
前の派手派手な衣装ではなく、ちょっと控えめな装いで歩くと、街の人達がその美しさに注目した。
無理もない。
衣装でなくて美しさで目を引いて俺を隠すと言う事に本気になってるシルクが演じているシルキーなのだから、そりゃ、二度見三度見で振り返るくらいの威力がある。
貢物でもらったつばのでかい帽子を被り、いつもの大きなサングラス姿だが、身のこなしや綺麗な体のライン、隠せぬカリスマ性のせいか、多くの人がそれがシルキーだと気づいた。
シルキーはそれに、軽く手を振って応える。
皆、お忍びなんだなみたいなものを感じたのか、表立って声をかけてくる強者はそんなにいなかった。
まぁ、熱烈な人が花束を抱えて呼び止めて来た時はちょっとびっくりしたけど。
シルキーはそれもふわりと笑っていなしてしまった。
大物だよな、こいつ。
「カジノのステージからあなたが見えたら、ご褒美をあげるわ。」
なんて、唇に指を当てながら言うもんだから、卒倒しちゃってたよ、その人。
つか、ご褒美って何だよって小声で聞いたら、見つけたら投げキッスしてあげるの~と笑っていた。
本当にそんな事したら多分死んじゃうぞ、あの人。
だいたい俺の事、人タラシとか文句言ってたけど、お前はどうなんだって感じだ。
まぁシルクの場合、たらし込んでるというより信仰対象みたいに崇められる感じになってるけどさ。
やっぱりこのカジノ潜入調査計画が駄目だったら、女神信仰として宗教で押そう、うん。
そんな感じでカジノまで歩いてきた。
多分、客寄せ効果はそれなりにあっただろう。
昨日の休みのマイナス分は、これで多少は補えたんじゃないかと思う。
カジノにつくと、シルキーがトルティーヤの店に行きたいと言い出し、まだ控室に入るにも少し早かったので、カジノのメインラウンジをフラフラする事になった。
その間もシルキーは注目を集め、人々の目を釘付けにしている。
「……あれ??」
トルティーヤの売店につくと、何故か小さな行列が出来ていた。
前はこんな行列なかったのに??
よく見ると、店の看板に加えて「話題の踊り子、シルキー・フェン御用達!」の煽り文句がついている。
マジか……商売が上手いな。
流行りモノには乗る主義なのは流石だとしか言いようがない。
「凄~い!大人気~!」
シルキーはそれを見てけらけら笑っている。
並んでいる人や周囲の人がシルキーに気づいてざわつき始める。
「あっ!!ハーマンさん!!それにシルキーちゃんもっ!!」
店の人が気づいて大声で叫んだ。
こんな時でも宣伝効果を忘れない商売根性は凄いと思う。
店主のおじさんの大声で、途端にシルキーに注目が集まる。
「ささっ!どうぞ前にっ!!」
お店の人が順番関係なくシルキーを呼んだ。
普通はこういう時、有名人は前に出るものだが、シルキーは何分、中身はシルクだ。
呼ばれた事にキョトンとして、首を振った。
「駄目よ。お客さんが並んでるじゃない?アタシもちゃんと並ぶから気にしないで?」
その言葉に、周囲がざわついた。
普通、注目の人物ならそれを鼻にかけて行動してもおかしくないのに、シルキーはそれをしなかった。
シルクとしては当たり前の対応だったのだろうが、カジノの華がそれをやったのだ、騒然となるのも無理はない。
「……シルキーって、庶民的なんだな?!」
「ああ、話題のステージの華だし、もっと高慢ちきなのかと思ってた……。」
「私、シルキー好きかも!」
「何か身近だよな?!」
思わぬところで、シルキーはファンを獲得したようだ。
にこにこと列に並んでいる姿は、一般客に好印象を与える。
それもあってか、前の人が笑って「お先にどうぞ」「なら私も」「ステージもあって時間もないでしょう」と進んで先を譲ってくれ、結局、一番前に来てしまった。
「え?!ええっ?!悪いわよ?!皆、並んでるのに?!」
「いえいえ、どうぞシルキーさん。」
シルキーは戸惑ってしまっていたが、皆はにこにこしている。
有名人だからと割り込まれるのは腹が立つが、自分が譲ったとなると気分がいいもので、誰も文句は言わない。
「どうしよう、ユウくん……。」
「う~ん。ここはお礼を言ってご好意に甘えましょう。そしてシルキーさんが早く買ってあげた方が、皆さんも待たずに済みます。」
「そうね……わかったわ。」
シルキーは譲ってくれた人達に頭を下げてお礼を言った。
そして早く注文を済まそうと、売店に向き直した。
おじさんは何故か半泣きだ。
「ヤダ!おじさん?!どうしたの?!」
「いや……シルキーちゃんが本当に俺のタコスとかブリトーとか食っててくれてたんだと思ったら……何か泣けてきて……しかもこんなに良い子で……便乗して売上あげようとしてた自分が情けなくてなぁ……。」
「おじさんがトルティーヤ作ってたのよね??いつもありがとう!!アタシ、初めて食べたんだけど、とっても美味しかったわ!!手をほとんど汚さずに忙しくても簡単に食べれるし!!良いわよね!トルティーヤ!いつもの辛いのと、チーズのと……そうね、おじさんのお薦めのをアタシとユウくんの分で2個ずつ頂戴!!いいかしら??」
「もちろん!!すぐ作るから待っててね!シルキーちゃん!!」
店のおじさんは感動して半泣きになりながら、手早く注文の品を作ってくれた。
包を受け取って、シルキーはにこにこ笑う。
俺が代金を支払おうとすると、おじさんは断ってきたが、シルキーはそれを少し怖い顔で怒った。
「駄目よ、おじさん!踊り子だからって依怙贔屓したら!それに商売なのよ?!お金は大事!!アタシは美味しいから買ったの!だからちゃんとお代を受け取って!ね?」
そう諭され、おじさんはまた半泣きになった。
まぁ、話題の踊り子でVIPルームにも招かれるような華がこんな事言うとは思わないよな?
どこか高貴な華になりきれない庶民感覚のシルキーは、トルティーヤを抱えて店前を離れると、もう一度譲ってくれた人達にお礼を言った。
俺もその脇で頭を下げる。
完全に高感度爆上げだ。
ここまでの事は意図していなかったが、何というか幸運な事故と言う感じだな。
周りで見ていた人達は、男女問わず、シルキーの人柄の良さに、すっかり虜になっていた。
空いていたベンチに座り、人目も気にせず「熱いうちに食べないと!」とか言ってチーズブリトーにかぶりつく姿は、全てわかってる俺ですら好感が持てた。
シルクってこういう奴なんだよな。
小悪魔なのに何か憎めないっていうか。
昨日1日、シルキーではなく素のシルクとして過ごしたせいか、いい意味で肩の力が抜け、自由に振る舞うその様は楽しげで、何者にも囚われていなくて、誰もが好印象を受けた。
トルティーヤを食べ終わった後も、軽くスロットで遊んだりして、周りから微笑ましく眺められた。
だが、さすがは話題の踊り子。
VIPルームの華としても使うシルキーが、一般客に混ざって売店の物を食べたりスロットで遊んだりしていると聞きつけて、とうとう慌てたように従業員が飛んできて俺達は早々に控室に押し込まれた。
そしてすぐにケビンさんが来て、「自覚を持ってくれ」と俺達はしばらく怒られた。
確かにやりすぎた感は否めないが、カジノ的にはプラスになったと思うんだよな?
そう思いながら俺は平謝りしていた。
シルキーの方はと言うと、怒られている間もにこにこ笑っていて、最終的にはスロットで儲けたメダルのかごをケビンさんに差し出し、「従業員さんと舞台裏の皆に何か差し入れしてあげて?」と言った。
さすがのケビンさんもこれには深く深くため息をついたが、「ありがたく頂戴します」と言って、メダルを抱えて出て行った。
本当、大物だよな、こいつ。
にこにこ笑うシルキー、いやシルクを見つめて、俺はそう思った。
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