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第八章②「敵地潜入」
面倒事
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シルキーがVIPルームに現れると、すかさず彼がエスコートした。
「もう会えないかと思ったよ。」
「そうね。声は早めに録音した方が良いわよ?」
「手厳しいな。私はちゃんと君を紳士淑女として扱ってるつもりなんだけど、それでも駄目かい?」
「ふふふ。わかってるわよ、ヘンリー。でもアタシはイライザじゃないわ。自由な翼を持つジプシーなの。わかるでしょ?」
くすりと笑いながら言ったシルキーの言葉に、仮名の彼は真剣な顔をした。
その顔を見て、シルキーは少し驚いた。
彼とは商売的な付き合いだと思っていたからだ。
「……本気かい?」
「ええ。翼を折られるなら、死んだ方がマシだもの。」
彼は何も言わなかった。
でもその瞳の奥がとても傷ついた色をしたのをシルキーは見逃さなかった。
案外、こっちも本気なのかもしれない。
彼は黙ってシルキーを見つめたまま、その指先に口付けた。
いつもどこが謎を含んだいい男なんだけどね、とシルキーは思う。
「やぁ、シルキー!体調はもう大丈夫なのかい?」
そこに他の男が近づいた。
シルキーはすぐに華としての笑顔を作り、小首をかしげた。
「ごめんなさいね、ボイドさん。旅の疲れが出たみたいで……。天気も悪かったでしょ?気圧のせいか熱だけじゃなくて、頭痛が収まらなかったのよ。」
「それは大変だったね。おや?今日は一段と綺麗だと思ったら、素敵な髪飾りをつけているね?」
「ありがとう。綺麗でしょ?素敵な方がお見舞いに下さったの。」
そう言われ、ボイド氏は満足そうに笑った。
彼の褒めた髪飾りは、ボイド氏本人が贈ったものだ。
「立ち話も何だろう?さぁ、こっちにおいで。座って話そう。」
ボイド氏はシルキーの手を取り、スペースの一角に座らせた。
そこに他に贈り物をした者たちがさり気なく近づく。
シルキーはその対応をしながら、横目で彼をちらりと見た。
彼はここに送る華の斡旋役だ。
VIPルームに入ってしまえば、付かず離れずの距離にいて、余程の事がない限り大きくは出てこない。
それはそう言う役割だからでもあり、ここでの彼の立場がそこまで強くない事を示していた。
今日の華はシルキー1人ではない。
他に華が2人いた。
前回一人だったのは、新人の顔見せと採用試験だったのだろう。
VIPルームがそれなりに広いからと言って、他に2人もいると少しやりにくい。
そしてその華の1人を見て、シルキーはちょっと驚いた。
さっき、ぶつかりそうになった相手だったからだ。
貫禄があったので、下手に目をつけられないようにと平謝りしておいて良かった。
VIPルームの華になるような相手なら、関わらないに越した事はない。
謎の監視者の事もある。
これ以上の面倒事は避けたいのが正直なところだ。
「あら?新人さん??」
しかし、そうも上手く行かなかった。
相手はシルキーに気がつくと、優雅に微笑んで近づいてきた。
まずいな、とシルクは思う。
こう言う我こそが女王と言うタイプに目をつけられるほど面倒な事はない。
すぐに立ち上がり、頭を下げる。
「ご挨拶が遅れましてすみません。ダンサーのシルキー・フェンです。よろしくお願いします。オーソリティ、歌姫モリカ・ベルギルさん。」
「あら、私を知っているのね?」
「もちろんです。このカジノの舞台に立つもので、歌姫の名を知らぬ者などいないでしょう。」
「ふ~ん。まぁいいわ。」
モリカはひとまずはよしとしたようだった。
シルキーはホッと胸を撫で下ろす。
気に入られる必要はないが、目をつけられたら心底厄介だ。
周囲はこの新人と大御所のやり取りを、興味深げに眺めている。
1人がわざと刺激を与えた。
「こらこら、モリカ。新人を虐めるもんじゃないよ。」
「嫌ですわ、バシェル。私、そんな事しておりませんわ。ねぇ?シルキー?」
シルキーは内心、死ぬほど面倒くさい事になったなと思った。
だが表面上はとてもフレッシュにそしてにこやかに対応した。
「もちろんです!オーソリティから私のような流れの踊り子に声をかけて頂き、とても感動しています!」
少し声を震わせ、早口でそう答える。
おお、と周囲から声が漏れる。
感嘆とも嘲笑ともとれるそれに、シルキーは何も知らぬ生娘の様に笑って応えた。
その場にいる多くのものが、この一連の事を狸芝居をわかっていて楽しんでいる。
反吐が出そうだ、とシルキーは思った。
「いい踊り子だと聞いてるわ。頑張ってね。」
「ありがとうございます!オーソリティも立たれる舞台に立ててとても光栄です!前座ですが、場を汚さぬよう頑張りますっ!!」
「そうね。あなたは大道具なども使わないから、スケジュールを乱す事も無いでしょうし。期待してるわ。」
そう言ってモリカはゆっくりと去っていった。
もう一人の華がすかさず側に駆け寄る。
そしてひそひそと何か言葉を交わした。
どうやらもう一人の華は、モリカの腰巾着のようだ。
ちらりと見ただけで、キッと睨まれる。
あぁ、面倒くさいな、と思う。
周囲に促され、シルキーは笑って席についた。
「ははは、モリカは相変わらずだね。」
「まぁ、ここの洗礼だよ、シルキー。」
終わってしまえば興も冷め、彼らは酒を舐め始める。
シルキーは愛想笑いを浮かべてそれに付き合った。
だが終わったのは彼らの中でだけだ。
シルキーにとっては、これは始まりでしかない。
面倒な相手の視界に入ってしまった。
何事もなく興味を失ってくれれば良いのだけれど……。
シルキーは少しだけ顔を顰めた。
「シルキー?向こうにウォーカー氏が来ている。先日いなかった男だ。挨拶に行ってはどうだい?」
仮名の彼が、そう声をかけてきた。
ちらりとその顔を見る。
彼が声をかけてきたと言う事は、一旦、この場を離れて立て直せと言う事だ。
「おや、ウォーカーが来てるのか?久しぶりだな?」
「ははは。浮気して奥さんに外出禁止にされてたんだよな?やっとお許しが出たみたいだな?」
「どうせすぐまた会えなくなるさ、あいつは懲りない男だからね。」
「まぁ、行っておいで。シルキー。挨拶をして損はない男だ。」
「ただ、お誘いには乗るなよ?五体満足でいたければ。」
「怖~い奥さんと顔を合わせたら一貫の終わりだよ?」
冗談とも本気ともとれない笑いがどっとその場に湧いた。
シルキーは困ったように笑いながら立ち上がった。
ずり落ちそうになるショールを肩にかけ直す。
彼がエスコートとして手を差し伸べてきたので、その手を取った。
「なら、ご挨拶をしてくるわ。」
「ああ、行っておいで?」
「終わったら真っ直ぐここに帰ってくるんだよ?誰かに捕まって他の席に座ったら駄目だよ?」
「そうそう、特にパーマーには気をつけて。十分わかっているだろうけどね?」
「あの後よく言って聞かせたけど、大佐は君が部屋に入ってからずっと、目を爛々とさせて見ているからね?」
シルキーはその言葉にゾッとした。
どうやら周りはそれにいち早く気付き、気を使ってくれていたようだ。
シルクはさりげない気遣いに、同じくさり気なくお礼を言った。
周りもわかっているのでそれとなく流す。
パーマーとは例のエロじじいだ。
位の高い退役軍人で、皆からパーマー大佐と呼ばれている。
具合が悪くて休んだ事になっているシルキーにエロ下着を送り付けて来るような変態だ。
捕まったら何をされるかわからない。
乾いた笑いを浮かべてその場を離れる。
歩きながら、エスコートする彼がシルキーの手を強く握った。
「大丈夫。今度は守るよ。」
ちらりと見た彼の顔は真剣で、それはそれで問題だと思った。
あっちもこっちも面倒だなぁ、と思う。
「そうね。期待してるわ。」
「全く信じてないね?シルキー?」
「そりゃね、短い付き合いだけど、あなたの立場は理解してるつもりよ?ヘンリー?」
場に飾られる華と、その搬入を斡旋する責任者。
当然、華の飾られた場に招かれるゲストの方が立場が強い。
彼は少し言葉に詰まった。
「……イギーだ。」
「え?」
「私の名前は、イグナチウス・B・T・エズラ。ヘンリー・ヒギンズじゃない。」
「どういう風の吹き回し?」
「別に。君にこれ以上、ヘンリーだのヒギンズ教授だの呼ばれるのが嫌になっただけさ。」
「ふ~ん。マイ・フェア・レディごっこも飽きたって訳ね?」
「飽きたんじゃない。イライザのヒギンズ教授になりたくなかった。君がイライザではなく、ジプシーの踊り子だと名乗るなら、私も自分の名を名乗りたかっただけだ。」
イギーは表情を崩さず淡々とそう言った。
その横顔を見て、シルキーはため息をつく。
「それは……困ったわね。」
「ああ。とても困ってる。」
これは大変だとシルキーはまた、深くため息をついた。
「もう会えないかと思ったよ。」
「そうね。声は早めに録音した方が良いわよ?」
「手厳しいな。私はちゃんと君を紳士淑女として扱ってるつもりなんだけど、それでも駄目かい?」
「ふふふ。わかってるわよ、ヘンリー。でもアタシはイライザじゃないわ。自由な翼を持つジプシーなの。わかるでしょ?」
くすりと笑いながら言ったシルキーの言葉に、仮名の彼は真剣な顔をした。
その顔を見て、シルキーは少し驚いた。
彼とは商売的な付き合いだと思っていたからだ。
「……本気かい?」
「ええ。翼を折られるなら、死んだ方がマシだもの。」
彼は何も言わなかった。
でもその瞳の奥がとても傷ついた色をしたのをシルキーは見逃さなかった。
案外、こっちも本気なのかもしれない。
彼は黙ってシルキーを見つめたまま、その指先に口付けた。
いつもどこが謎を含んだいい男なんだけどね、とシルキーは思う。
「やぁ、シルキー!体調はもう大丈夫なのかい?」
そこに他の男が近づいた。
シルキーはすぐに華としての笑顔を作り、小首をかしげた。
「ごめんなさいね、ボイドさん。旅の疲れが出たみたいで……。天気も悪かったでしょ?気圧のせいか熱だけじゃなくて、頭痛が収まらなかったのよ。」
「それは大変だったね。おや?今日は一段と綺麗だと思ったら、素敵な髪飾りをつけているね?」
「ありがとう。綺麗でしょ?素敵な方がお見舞いに下さったの。」
そう言われ、ボイド氏は満足そうに笑った。
彼の褒めた髪飾りは、ボイド氏本人が贈ったものだ。
「立ち話も何だろう?さぁ、こっちにおいで。座って話そう。」
ボイド氏はシルキーの手を取り、スペースの一角に座らせた。
そこに他に贈り物をした者たちがさり気なく近づく。
シルキーはその対応をしながら、横目で彼をちらりと見た。
彼はここに送る華の斡旋役だ。
VIPルームに入ってしまえば、付かず離れずの距離にいて、余程の事がない限り大きくは出てこない。
それはそう言う役割だからでもあり、ここでの彼の立場がそこまで強くない事を示していた。
今日の華はシルキー1人ではない。
他に華が2人いた。
前回一人だったのは、新人の顔見せと採用試験だったのだろう。
VIPルームがそれなりに広いからと言って、他に2人もいると少しやりにくい。
そしてその華の1人を見て、シルキーはちょっと驚いた。
さっき、ぶつかりそうになった相手だったからだ。
貫禄があったので、下手に目をつけられないようにと平謝りしておいて良かった。
VIPルームの華になるような相手なら、関わらないに越した事はない。
謎の監視者の事もある。
これ以上の面倒事は避けたいのが正直なところだ。
「あら?新人さん??」
しかし、そうも上手く行かなかった。
相手はシルキーに気がつくと、優雅に微笑んで近づいてきた。
まずいな、とシルクは思う。
こう言う我こそが女王と言うタイプに目をつけられるほど面倒な事はない。
すぐに立ち上がり、頭を下げる。
「ご挨拶が遅れましてすみません。ダンサーのシルキー・フェンです。よろしくお願いします。オーソリティ、歌姫モリカ・ベルギルさん。」
「あら、私を知っているのね?」
「もちろんです。このカジノの舞台に立つもので、歌姫の名を知らぬ者などいないでしょう。」
「ふ~ん。まぁいいわ。」
モリカはひとまずはよしとしたようだった。
シルキーはホッと胸を撫で下ろす。
気に入られる必要はないが、目をつけられたら心底厄介だ。
周囲はこの新人と大御所のやり取りを、興味深げに眺めている。
1人がわざと刺激を与えた。
「こらこら、モリカ。新人を虐めるもんじゃないよ。」
「嫌ですわ、バシェル。私、そんな事しておりませんわ。ねぇ?シルキー?」
シルキーは内心、死ぬほど面倒くさい事になったなと思った。
だが表面上はとてもフレッシュにそしてにこやかに対応した。
「もちろんです!オーソリティから私のような流れの踊り子に声をかけて頂き、とても感動しています!」
少し声を震わせ、早口でそう答える。
おお、と周囲から声が漏れる。
感嘆とも嘲笑ともとれるそれに、シルキーは何も知らぬ生娘の様に笑って応えた。
その場にいる多くのものが、この一連の事を狸芝居をわかっていて楽しんでいる。
反吐が出そうだ、とシルキーは思った。
「いい踊り子だと聞いてるわ。頑張ってね。」
「ありがとうございます!オーソリティも立たれる舞台に立ててとても光栄です!前座ですが、場を汚さぬよう頑張りますっ!!」
「そうね。あなたは大道具なども使わないから、スケジュールを乱す事も無いでしょうし。期待してるわ。」
そう言ってモリカはゆっくりと去っていった。
もう一人の華がすかさず側に駆け寄る。
そしてひそひそと何か言葉を交わした。
どうやらもう一人の華は、モリカの腰巾着のようだ。
ちらりと見ただけで、キッと睨まれる。
あぁ、面倒くさいな、と思う。
周囲に促され、シルキーは笑って席についた。
「ははは、モリカは相変わらずだね。」
「まぁ、ここの洗礼だよ、シルキー。」
終わってしまえば興も冷め、彼らは酒を舐め始める。
シルキーは愛想笑いを浮かべてそれに付き合った。
だが終わったのは彼らの中でだけだ。
シルキーにとっては、これは始まりでしかない。
面倒な相手の視界に入ってしまった。
何事もなく興味を失ってくれれば良いのだけれど……。
シルキーは少しだけ顔を顰めた。
「シルキー?向こうにウォーカー氏が来ている。先日いなかった男だ。挨拶に行ってはどうだい?」
仮名の彼が、そう声をかけてきた。
ちらりとその顔を見る。
彼が声をかけてきたと言う事は、一旦、この場を離れて立て直せと言う事だ。
「おや、ウォーカーが来てるのか?久しぶりだな?」
「ははは。浮気して奥さんに外出禁止にされてたんだよな?やっとお許しが出たみたいだな?」
「どうせすぐまた会えなくなるさ、あいつは懲りない男だからね。」
「まぁ、行っておいで。シルキー。挨拶をして損はない男だ。」
「ただ、お誘いには乗るなよ?五体満足でいたければ。」
「怖~い奥さんと顔を合わせたら一貫の終わりだよ?」
冗談とも本気ともとれない笑いがどっとその場に湧いた。
シルキーは困ったように笑いながら立ち上がった。
ずり落ちそうになるショールを肩にかけ直す。
彼がエスコートとして手を差し伸べてきたので、その手を取った。
「なら、ご挨拶をしてくるわ。」
「ああ、行っておいで?」
「終わったら真っ直ぐここに帰ってくるんだよ?誰かに捕まって他の席に座ったら駄目だよ?」
「そうそう、特にパーマーには気をつけて。十分わかっているだろうけどね?」
「あの後よく言って聞かせたけど、大佐は君が部屋に入ってからずっと、目を爛々とさせて見ているからね?」
シルキーはその言葉にゾッとした。
どうやら周りはそれにいち早く気付き、気を使ってくれていたようだ。
シルクはさりげない気遣いに、同じくさり気なくお礼を言った。
周りもわかっているのでそれとなく流す。
パーマーとは例のエロじじいだ。
位の高い退役軍人で、皆からパーマー大佐と呼ばれている。
具合が悪くて休んだ事になっているシルキーにエロ下着を送り付けて来るような変態だ。
捕まったら何をされるかわからない。
乾いた笑いを浮かべてその場を離れる。
歩きながら、エスコートする彼がシルキーの手を強く握った。
「大丈夫。今度は守るよ。」
ちらりと見た彼の顔は真剣で、それはそれで問題だと思った。
あっちもこっちも面倒だなぁ、と思う。
「そうね。期待してるわ。」
「全く信じてないね?シルキー?」
「そりゃね、短い付き合いだけど、あなたの立場は理解してるつもりよ?ヘンリー?」
場に飾られる華と、その搬入を斡旋する責任者。
当然、華の飾られた場に招かれるゲストの方が立場が強い。
彼は少し言葉に詰まった。
「……イギーだ。」
「え?」
「私の名前は、イグナチウス・B・T・エズラ。ヘンリー・ヒギンズじゃない。」
「どういう風の吹き回し?」
「別に。君にこれ以上、ヘンリーだのヒギンズ教授だの呼ばれるのが嫌になっただけさ。」
「ふ~ん。マイ・フェア・レディごっこも飽きたって訳ね?」
「飽きたんじゃない。イライザのヒギンズ教授になりたくなかった。君がイライザではなく、ジプシーの踊り子だと名乗るなら、私も自分の名を名乗りたかっただけだ。」
イギーは表情を崩さず淡々とそう言った。
その横顔を見て、シルキーはため息をつく。
「それは……困ったわね。」
「ああ。とても困ってる。」
これは大変だとシルキーはまた、深くため息をついた。
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