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第八章②「敵地潜入」
知人以上友達未満
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シルキーがその場を離れた後、その後ろ姿を見送りながら男達は顔を見合わせた。
「上手くやったね、あの子は。」
「ああ。相当場数を踏んでる。」
「それだけじゃない。頭もいいし、度胸もある。そして運もね。」
「そうだな、だが……。」
にこにことシルキーを褒めていた彼らだが、そこで一度、言葉を切った。
長年このVIPルームで華たちの生存競争を見ていた彼らだからこそ、見えるものがあった。
「あの子は上手くやり過ぎた。」
「ああ、かえってモリカの注意を引いた。」
「ステージを見たか?何の大道具も小道具もないまっさらなステージで踊る彼を?」
「ああ。何もないのに、ただそこで踊っているシルキーに誰もが引き込まれる。むしろ邪魔なものが何一つなくて、彼に集中できるんだ。」
「優雅で美しく、そして艶かしくエロティックだ。それでいて力強く野性的で、誰にも捕らえさせない険しい自由さがある。」
「踊り子としては完璧だ。」
「そして厄介な人間に対する対応もね。」
「ああ、完璧だ。だからこそ憎まれる。」
「モリカも難儀な性格だよ。未熟なら未熟さを許せずに責め、完璧なら自分を脅かすものとして敵意を抱く。」
「あの子に好かれるのは、ギリギリ合格点だが未熟な子か、完璧ではないが完成に近く、自分を崇拝する者だけだ。……あの子みたいにね。」
彼らはちらりと3人目の華を見た。
モリカにベッタリと依存している。
「そう言う意味では、可哀想な子だよ、モリカは。」
「何かに縋り、また何かに縋られていないと自分を保てない気の弱い子だ。」
「その点シルキーは強い子だ。例えどんなに痛めつけられようとも、揺るがない何かを自分の中に持っている。モリカももう少しそう言うものを持てれば良いんだけどね。」
「だがそれがモリカの魅力でもある。」
「さて、王子様は自由を愛するジプシーの踊り子を守りきれるかな?」
「どうかな?そもそもシルキーは彼を自分の王子様だとは思っていないようだしね?」
「はははっ!あの子は王子様なんかに頼らず、自ら剣を握りそうだからな。」
「確かに。野生の山猫は傷を負っても人の手には頼らないだろうからね。」
「そんな危うい強さがあの子の魅力でもある。そう思うだろう?」
彼らは何か話しながら奥の席に向かっていく2人を見つめた。
そして黙って酒を飲み、傍観していた。
ウォーカー氏に挨拶を終え席に戻ろうと歩き出すと、イギーが何故かシルキーの前側に立ち、歩きにくくした。
何をしているんだと少しムッとしたが、前から聞こえた声に庇われているのだと理解する。
「おや、シルキーじゃないか?来ているならどうして私の所に挨拶に来てくれないんだい?」
ヌルっとしたニヤついた声を聞き、やっぱりこの男はあの男に似ているとシルキーは思った。
本当にねちっこくてしつこくて好きになれない。
「今晩は、大佐。申し訳ありません。お越しになっているのに気づかなくて。」
気色悪いと言う気持ちが顔に出ないよう、細心の注意をしながらシルキーは愛想笑いを浮かべた。
そして後ろに隠れていては失礼になり、そこを突っ込まれるとわかっていたので、するりとイギーと腕を組むように絡ませて前に出た。
前に出たがイギーと密着した状態を作ったのだ。
やんわりと彼にもたれ掛かり、取り込み中の2人である事をアピールする。
ハッキリ言ってお呼びでないからさっさと去れと言うアピールなのだが、出会ったばかりの踊り子に際どい下着を贈るような男だ。
そんな事で空気を読んだりしない。
隠しもしないギラギラした目で、シルキーを上から下まで舐めるように見つめる。
「皆からの贈り物は受け取ったのかい?」
「ええ、素敵な物ばかりだったので使わせて貰ってるわ。」
「そうかそうか。私が送った物ももちろん使ってくれているね?シルキー?どれ、ちょっと使っている所を見せておくれ?」
パーマーはニヤニヤ笑ってそう言うと、シルキーに手を伸ばした。
虫唾が走るとはこの事だ。
シルキーは無意識にイギーの腕をぎゅっと掴んだ。
イギーはパーマーが何を贈ったのかはわからなかったが、シルキーの強張った表情とパーマーの性格から大体の予想をつけた。
このエロじじいめ!
そう思ってやんわりとパーマーの手の先に自分の体を持っていった。
途端、ギロリとした軍人の目がイギーを睨む。
「若いの……。自分の立場を忘れたのか?」
「いえ、滅相もありません。ですが華の安全については支配人から頼まれていますので……。」
苛立ちを殺し、努めて穏やかにイギーは言った。
シルキーは随分頑張るな、と思ってそれを黙って見守る。
下手にこちらが行動しては、イギーの心意気を踏みにじる事になるからだ。
しかし、穏便に済まそうとしたイギーの言葉は、かえってパーマーの逆鱗に触れた。
「小僧……っ!!この私が危険だとでも言うのかっ?!」
「いえ、決してその様なつもりはありません。しかしシルキーはまだ、VIPルームどころかこの国に慣れておりませんので……。」
「ならばワシが教えてやるわっ!!引っ込んとれっ!!礼儀知らずの若造がっ!!」
大差の大声に、周囲も遠巻きにそれを眺め始める。
助けたりはしない。
こんな事は日常茶飯事、VIPルームのちょっとしたスパイスにすぎない。
この状況でこれ以上は、イギーの立場では庇うのが難しいだろう。
それでもどこうとしないイギーに、シルキーは危険を感じた。
イギーはいい男だ。
多少優男な面もあるが、知的で品があり静かで少し謎めいてる。
程よい知性と遊び心もある。
そんな男を情報を探る為に潜入しているだけの自分の為に、身を滅ぼさせる訳にはいかない。
シルキーはイギーがパーマーに押されたタイミングで、わざと彼の体幹をずらした。
途端ガクッと体が揺れ、勢いづいたパーマーに押された彼は尻もちをつく。
おう…と周りから小さな悲鳴が上がった。
倒れ込んだイギーにパーマーは上機嫌になり、乱暴にシルキーの腕を掴む。
誰もがこの先の展開を思い描き、ため息をつく者もいた。
「シルキーっ!!」
しまったとばかりに悲痛な表情で見上げていたイギー。
シルキーはそれに対して、こっそりといたずらっぽく笑ってみせた。
それを見たイギーの顔がキョトンとする。
「ほらっ!!来るんだシルキーっ!!」
パーマーは力づくでシルキーを連れて行こうと引っ張る。
そう、引っ張ったのだ。
「?!」
「どうしました?パーマー大佐??」
シルキーはにっこり笑った。
パーマーはもう一度強く引っ張った。
だが、体どころか、掴んでいる腕でさえ動かす事ができなかった。
皆がそれとなく見守る中、パーマーはシルキーを動かす事ができない。
シルキーが暴れたり叫んだりと強く抵抗を示していないにも関わらずにだ。
舐めんな、馬鹿。
てめぇごときの力技で、俺を動かそうなど一億年早いっ!!
シルキーは笑ったまま、微動だにしなかった。
パーマーは必死だ、必死でシルキーを引っ張っている。
それなのに、全く歯が立たなかった。
どうしてそうなっているのかわからない。
何故、引退したとはいえ軍人だった自分に、線の細い踊り子を動かす事ができないのか全く理解できなかった。
「何で……?!」
呆気に取られ、パーマーの腕から力が抜けた。
シルキーはその手にやんわりと触れ、自分の腕から剥す。
そしてふんわりと笑って、穏やかな声でパーマーに言った。
「うふふ。大佐はお優しいのですね。」
「何っ?!」
「口ではそんな乱暴な事を仰られてても、アタシを無理に連れて行こうとなさらないんですもの。」
そう言ってにっこり笑う。
そこでどこかから失笑が漏れた。
パーマーはカッとなって振り向いたが、それが誰かはわからなかった。
そして思った。
これは分が悪い、と。
自分が少々力で揉め事を起こす事はいつもの事としてここでは通っている。
誰もそれにとやかく言わない。
だがこの状況は、力づくで押し通そうとしたにも関わらず、それが何故か上手く行かなかったのを皆が見ているのだ。
シルキーはにっこり微笑んでいる。
何をされたのかわからないが、誰がどう見てもシルキーの勝ちだ。
「不慣れなアタシに気を使って下さって、ありがとうございます。パーマー大佐。」
そう穏やかに言われてしまえば、これ以上、揉めれば立場が危うくなる。
例えどんなに気に入らない事態でも、ここはシルキーの話に合わせるしかない。
「……ふん。わかってるならいい。次は私の誘いを断るんじゃないぞ、シルキー。」
パーマーはそう言って、足早にその場を離れて行った。
横目でそれを眺めていた者たちも、終わってしまったならもう興味はない。
自分の目の前の雑談に花を咲かせはじめた。
「……かっこ悪いな、これでは。」
助け起こすのに差し出されたシルキーの手を掴み、イギーは困ったように笑う。
その手を掴んで立ち上がらせると、シルキーは埃を払うのを手伝いながら、にっこり笑った。
「そんな事はないわよ?あなたが頑張ってくれたから、アタシも頑張って我慢したの。」
「頑張って我慢した??何をだい??」
「あなたが庇ってくれたから、大佐の残り少ない髪の毛は無事だったのっ!そうじゃなかったら、全部引っこ抜いた上、ケツの穴に植毛してやったわっ!!」
ハンッとばかりに言い切ったシルキーに、イギーは一瞬ぽかんとした後、声を上げて笑ってしまった。
「はははっ!シルキー!君!それはやり過ぎだろうっ!!」
「何でよ?!それぐらい良いじゃない?!」
平然と答えるシルキーがおかしくて、イギーは笑い続けた。
やぁね、とシルキーはむくれる。
笑いが一段落したイギーは、気を取り直して、シルキーに手を差し出した。
シルキーは黙ってそのエスコートを受ける。
「ねぇ、シルキー?あればどうやって動かなかったんだい?魔術か何かかい??」
「違うわよイギー。言うなれば、踊り子の筋力を舐めないでってところよ。」
「君は本当にいつも予想外だなぁ。」
2人は随分打ち解けたように話しながら、もといた席に戻って行った。
「上手くやったね、あの子は。」
「ああ。相当場数を踏んでる。」
「それだけじゃない。頭もいいし、度胸もある。そして運もね。」
「そうだな、だが……。」
にこにことシルキーを褒めていた彼らだが、そこで一度、言葉を切った。
長年このVIPルームで華たちの生存競争を見ていた彼らだからこそ、見えるものがあった。
「あの子は上手くやり過ぎた。」
「ああ、かえってモリカの注意を引いた。」
「ステージを見たか?何の大道具も小道具もないまっさらなステージで踊る彼を?」
「ああ。何もないのに、ただそこで踊っているシルキーに誰もが引き込まれる。むしろ邪魔なものが何一つなくて、彼に集中できるんだ。」
「優雅で美しく、そして艶かしくエロティックだ。それでいて力強く野性的で、誰にも捕らえさせない険しい自由さがある。」
「踊り子としては完璧だ。」
「そして厄介な人間に対する対応もね。」
「ああ、完璧だ。だからこそ憎まれる。」
「モリカも難儀な性格だよ。未熟なら未熟さを許せずに責め、完璧なら自分を脅かすものとして敵意を抱く。」
「あの子に好かれるのは、ギリギリ合格点だが未熟な子か、完璧ではないが完成に近く、自分を崇拝する者だけだ。……あの子みたいにね。」
彼らはちらりと3人目の華を見た。
モリカにベッタリと依存している。
「そう言う意味では、可哀想な子だよ、モリカは。」
「何かに縋り、また何かに縋られていないと自分を保てない気の弱い子だ。」
「その点シルキーは強い子だ。例えどんなに痛めつけられようとも、揺るがない何かを自分の中に持っている。モリカももう少しそう言うものを持てれば良いんだけどね。」
「だがそれがモリカの魅力でもある。」
「さて、王子様は自由を愛するジプシーの踊り子を守りきれるかな?」
「どうかな?そもそもシルキーは彼を自分の王子様だとは思っていないようだしね?」
「はははっ!あの子は王子様なんかに頼らず、自ら剣を握りそうだからな。」
「確かに。野生の山猫は傷を負っても人の手には頼らないだろうからね。」
「そんな危うい強さがあの子の魅力でもある。そう思うだろう?」
彼らは何か話しながら奥の席に向かっていく2人を見つめた。
そして黙って酒を飲み、傍観していた。
ウォーカー氏に挨拶を終え席に戻ろうと歩き出すと、イギーが何故かシルキーの前側に立ち、歩きにくくした。
何をしているんだと少しムッとしたが、前から聞こえた声に庇われているのだと理解する。
「おや、シルキーじゃないか?来ているならどうして私の所に挨拶に来てくれないんだい?」
ヌルっとしたニヤついた声を聞き、やっぱりこの男はあの男に似ているとシルキーは思った。
本当にねちっこくてしつこくて好きになれない。
「今晩は、大佐。申し訳ありません。お越しになっているのに気づかなくて。」
気色悪いと言う気持ちが顔に出ないよう、細心の注意をしながらシルキーは愛想笑いを浮かべた。
そして後ろに隠れていては失礼になり、そこを突っ込まれるとわかっていたので、するりとイギーと腕を組むように絡ませて前に出た。
前に出たがイギーと密着した状態を作ったのだ。
やんわりと彼にもたれ掛かり、取り込み中の2人である事をアピールする。
ハッキリ言ってお呼びでないからさっさと去れと言うアピールなのだが、出会ったばかりの踊り子に際どい下着を贈るような男だ。
そんな事で空気を読んだりしない。
隠しもしないギラギラした目で、シルキーを上から下まで舐めるように見つめる。
「皆からの贈り物は受け取ったのかい?」
「ええ、素敵な物ばかりだったので使わせて貰ってるわ。」
「そうかそうか。私が送った物ももちろん使ってくれているね?シルキー?どれ、ちょっと使っている所を見せておくれ?」
パーマーはニヤニヤ笑ってそう言うと、シルキーに手を伸ばした。
虫唾が走るとはこの事だ。
シルキーは無意識にイギーの腕をぎゅっと掴んだ。
イギーはパーマーが何を贈ったのかはわからなかったが、シルキーの強張った表情とパーマーの性格から大体の予想をつけた。
このエロじじいめ!
そう思ってやんわりとパーマーの手の先に自分の体を持っていった。
途端、ギロリとした軍人の目がイギーを睨む。
「若いの……。自分の立場を忘れたのか?」
「いえ、滅相もありません。ですが華の安全については支配人から頼まれていますので……。」
苛立ちを殺し、努めて穏やかにイギーは言った。
シルキーは随分頑張るな、と思ってそれを黙って見守る。
下手にこちらが行動しては、イギーの心意気を踏みにじる事になるからだ。
しかし、穏便に済まそうとしたイギーの言葉は、かえってパーマーの逆鱗に触れた。
「小僧……っ!!この私が危険だとでも言うのかっ?!」
「いえ、決してその様なつもりはありません。しかしシルキーはまだ、VIPルームどころかこの国に慣れておりませんので……。」
「ならばワシが教えてやるわっ!!引っ込んとれっ!!礼儀知らずの若造がっ!!」
大差の大声に、周囲も遠巻きにそれを眺め始める。
助けたりはしない。
こんな事は日常茶飯事、VIPルームのちょっとしたスパイスにすぎない。
この状況でこれ以上は、イギーの立場では庇うのが難しいだろう。
それでもどこうとしないイギーに、シルキーは危険を感じた。
イギーはいい男だ。
多少優男な面もあるが、知的で品があり静かで少し謎めいてる。
程よい知性と遊び心もある。
そんな男を情報を探る為に潜入しているだけの自分の為に、身を滅ぼさせる訳にはいかない。
シルキーはイギーがパーマーに押されたタイミングで、わざと彼の体幹をずらした。
途端ガクッと体が揺れ、勢いづいたパーマーに押された彼は尻もちをつく。
おう…と周りから小さな悲鳴が上がった。
倒れ込んだイギーにパーマーは上機嫌になり、乱暴にシルキーの腕を掴む。
誰もがこの先の展開を思い描き、ため息をつく者もいた。
「シルキーっ!!」
しまったとばかりに悲痛な表情で見上げていたイギー。
シルキーはそれに対して、こっそりといたずらっぽく笑ってみせた。
それを見たイギーの顔がキョトンとする。
「ほらっ!!来るんだシルキーっ!!」
パーマーは力づくでシルキーを連れて行こうと引っ張る。
そう、引っ張ったのだ。
「?!」
「どうしました?パーマー大佐??」
シルキーはにっこり笑った。
パーマーはもう一度強く引っ張った。
だが、体どころか、掴んでいる腕でさえ動かす事ができなかった。
皆がそれとなく見守る中、パーマーはシルキーを動かす事ができない。
シルキーが暴れたり叫んだりと強く抵抗を示していないにも関わらずにだ。
舐めんな、馬鹿。
てめぇごときの力技で、俺を動かそうなど一億年早いっ!!
シルキーは笑ったまま、微動だにしなかった。
パーマーは必死だ、必死でシルキーを引っ張っている。
それなのに、全く歯が立たなかった。
どうしてそうなっているのかわからない。
何故、引退したとはいえ軍人だった自分に、線の細い踊り子を動かす事ができないのか全く理解できなかった。
「何で……?!」
呆気に取られ、パーマーの腕から力が抜けた。
シルキーはその手にやんわりと触れ、自分の腕から剥す。
そしてふんわりと笑って、穏やかな声でパーマーに言った。
「うふふ。大佐はお優しいのですね。」
「何っ?!」
「口ではそんな乱暴な事を仰られてても、アタシを無理に連れて行こうとなさらないんですもの。」
そう言ってにっこり笑う。
そこでどこかから失笑が漏れた。
パーマーはカッとなって振り向いたが、それが誰かはわからなかった。
そして思った。
これは分が悪い、と。
自分が少々力で揉め事を起こす事はいつもの事としてここでは通っている。
誰もそれにとやかく言わない。
だがこの状況は、力づくで押し通そうとしたにも関わらず、それが何故か上手く行かなかったのを皆が見ているのだ。
シルキーはにっこり微笑んでいる。
何をされたのかわからないが、誰がどう見てもシルキーの勝ちだ。
「不慣れなアタシに気を使って下さって、ありがとうございます。パーマー大佐。」
そう穏やかに言われてしまえば、これ以上、揉めれば立場が危うくなる。
例えどんなに気に入らない事態でも、ここはシルキーの話に合わせるしかない。
「……ふん。わかってるならいい。次は私の誘いを断るんじゃないぞ、シルキー。」
パーマーはそう言って、足早にその場を離れて行った。
横目でそれを眺めていた者たちも、終わってしまったならもう興味はない。
自分の目の前の雑談に花を咲かせはじめた。
「……かっこ悪いな、これでは。」
助け起こすのに差し出されたシルキーの手を掴み、イギーは困ったように笑う。
その手を掴んで立ち上がらせると、シルキーは埃を払うのを手伝いながら、にっこり笑った。
「そんな事はないわよ?あなたが頑張ってくれたから、アタシも頑張って我慢したの。」
「頑張って我慢した??何をだい??」
「あなたが庇ってくれたから、大佐の残り少ない髪の毛は無事だったのっ!そうじゃなかったら、全部引っこ抜いた上、ケツの穴に植毛してやったわっ!!」
ハンッとばかりに言い切ったシルキーに、イギーは一瞬ぽかんとした後、声を上げて笑ってしまった。
「はははっ!シルキー!君!それはやり過ぎだろうっ!!」
「何でよ?!それぐらい良いじゃない?!」
平然と答えるシルキーがおかしくて、イギーは笑い続けた。
やぁね、とシルキーはむくれる。
笑いが一段落したイギーは、気を取り直して、シルキーに手を差し出した。
シルキーは黙ってそのエスコートを受ける。
「ねぇ、シルキー?あればどうやって動かなかったんだい?魔術か何かかい??」
「違うわよイギー。言うなれば、踊り子の筋力を舐めないでってところよ。」
「君は本当にいつも予想外だなぁ。」
2人は随分打ち解けたように話しながら、もといた席に戻って行った。
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