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第八章②「敵地潜入」
三人三様
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「え??え??何??……つまり?師父が?主の初恋の執事さんで??主の初恋の執事さんが??俺の師父……っ?!」
再会の喜びも一段落して、俺は訳がわからなくなっているシルクに説明した。
レオンハルドさんが以前はライオネル殿下の執事長をしていて、俺の遅い初恋の相手である事を。
シルクは俺の初恋が執事さんである事は知っていたが、それが自分の師父だとは思わなかったらしい。
いや、俺もお前の師匠がレオンハルドさんだとは思わなかったけど。
「え?!待って?!理解できない!!1000歩…いや!5000歩譲って!師父が主の初恋の人だとして……執事って?!…え??師父が執事さん?!冗談でしょ?!どんだけ猫かぶったって、そんなの無理だからっ!!」
どうやら俺の中にあるレオンハルドさんのイメージと、シルクの中にある師父のイメージはかなりの差があるようだ。
どんなんなんだ??シルクの中のレオンハルドさんのイメージって??
「……シルク。お前、会わない間に随分と威勢が良くなったようだな?あまりサーク様に誤解を招く様な『嘘』は控えてもらえるか?」
レオンハルドさんはにっこりと笑う。
シルクがヒッと叫んで俺の後ろで小さくなった。
何がそんなに怖いんだ??
こんなにカッコイイのにっ!!
ちなみにレオンハルドさんは覆面をとってくれたので、あのダンディなお顔を拝む事ができた。
あ~色々大変だったけど、頑張ってきて良かった~。
生きていれば、頑張っていれば、こんないい事も起こるんだな~。
俺がキラキラした目でレオンハルドさんのご尊顔を拝んでいるのを、シルクが冷たい目で見ている。
「主っ!!目にフィルターかかりすぎっ!!師父はねっ!!ヤバい人なんだからねっ!!マジだからねっ!!」
「お前こそ、小さい時の記憶で、混乱してるんじゃないか??レオンハルドさんは王国一、いや!世界一!ダンディでカッコよくて!おちゃめで!可愛くて!スマートで!優しくて!男前なんだぞっ?!」
「これはこれは、ありがとうございます。サーク様。このような老いぼれにもったいないお言葉、恐れ入ります。」
「~~~っ!!絶っ対っ!!主の認識!おかしいからっ!!師父は鬼で!悪魔でっ!!常識かっ飛ばしてるような!ヤバい人だからっ!!」
「……シルク?いくら修行が厳しかったからとはいえ、私を侮蔑するのはおかしかろう??ん??」
「ぎゃぁぁっ!!主!殺されるっ!!助けてっ!!」
「……何言ってるんだ?シルク??レオンハルドさんがそんな事をする訳がないだろう??」
さっきからずっとこんな感じである。
三人三様、全く話が噛み合わない。
何が正しいか、気にはなるがこの際ちょっとおいて置かなければ……。
俺はひっついて怯えるシルクを無視して、レオンハルドさんに訪ねた。
「レオンハルドさん。俺達は追われています。すぐにここを離れなければなりません。」
「存じております。サーク様。全くあのハゲには困ったものです。」
まるで全てを知っているかの様な口振りだ。
いや、うん。
ここで会った時からそうなのかなとは思ってたんだけど……。
「あの……カジノで俺達を見ていたのって……。もしかして……。」
「師父だよ主。俺も今日まで気づかなかったけど……。とっくに死んでると思ってたから、廊下で声をかけられた時は心臓が止まるかと思った……。」
シルクが大きくため息をついた。
そう、ずっと俺達が傍観者と呼んでいた謎の人物は、何とレオンハルドさんだった。
でも、何となく今ならわかる。
あれはレオンハルドさんだったと。
俺は何か言葉にならなくて、ただその人を見つめた。
そんな俺にレオンハルドさんはにっこり微笑む。
「別の仕事に加え、実は私の主人からそれとなくお二人を見守るようにと言われまして。ま、主人の命でなくとも、こんな近くにサーク様がいるのであれば見守らせて頂きましたが。」
何か、凄くドキドキした。
見守っていてくれたのが嬉しかったからだけじゃない。
前はとらえどころが無くてその背中すら追えなかったその人を、俺は今は見つけることができるんだと思った。
「それよりご提案がございます。」
レオンハルドさんはスッと表情を消してそう言った。
俺とシルクはそれをじっと見つめる。
「この国を出るには、国境を越える必要がございます。今からすぐに向かえば、まだ連絡は行っておらず、出られるかもしれません。しかし確証はありません。パーマーは軍を用いてしくじりました故、この件はすぐに王宮に知られましょう。その為、王国の早馬との競争となります。」
その通りだ。
予定ではパーマーに動かれる前に、ここを離れるつもりだった。
だから少なくとも数時間の猶予があるつもりで動いていた。
こんなに早く動くとは思わなかったのだ。
おそらく俺達が今日来ていて、そして今日でやめそうだと誰かが洩らしたのだろう。
だからパーマーも十分な準備も終わらぬまま強行に及んだのだろう。
その結果、自分の首を締めるとも知らずに。
「正直、苦しい状況です。揉め事は起こしたくはありませんが、最終手段としては仕方ないかと思っています。」
俺の答えに、レオンハルドさんは小さく頷く。
「もしよろしければ、私めと一緒に行きませんか??数日後に、仲間の助けを受けて南の国を出るつもりなのです。もちろん、別に方法がお有りでしたらこちらの事は気にせず行って下さって大丈夫です。」
それはとても有り難い申し出だった。
状況が変わった手前、できるだけ安全な方法を取りたい。
それに、レオンハルドさんの戦力と知識があるのはとても心強い。
「いえ、とても有り難いです。こちらこそご一緒させて頂いて大丈夫でしょうか?」
シルクはえっ?!という顔をしたが、それが一番いい事は理解しているので、ぶすぅ~としつつ、文句は言わなかった。
「もちろんです。サーク様。では今動くのは危険てすので、今夜は私の隠れ家でお過ごしいただいても??」
「隠れ家、ですか??」
「はい。実はもう、ついているも同然なのですが……。」
クスッとレオンハルドさんが笑う。
ついていると同然と言う事は、ここという事だろうか??
俺とシルクは顔を見合わせる。
レオンハルドさんはにっこりと微笑むと、くるりと向きを変えて、先程まで担いでいた大きなズタ袋の所に向かった。
俺達は首を捻りながら、その後に続く。
すると、その壁にあった魔術灯を突然無理やり消し、それをグイッと引っ張ってぐるりと1回転させる。
引き出した部分をぐっと押して元に戻すと、ガコンッとくぐもった音がした。
何かの仕掛けが動いた様だった。
「では、こちらへ。」
レオンハルドさんはそう言うと、また袋を担いで俺達を誘導した。
近くにあった重そうな彫刻を、何ヶ所か叩いてからぐっと横に圧した。
「えっ?!」
「わっ!!」
俺とシルクは思わず声を上げた。
壁に埋め込まれているかと思ったその彫刻は横に少しスライドし、止められた箇所を軸に、ドアの様に開いたのだ。
「凄い!隠し部屋だ!!」
「色々調べているうちに見つけましてね?もう、この礼拝堂を管理している者はこの部屋の事を知らないようでしたので、勝手に使わせてもらっています。散らかっていますが、どうぞお入り下さい。」
俺達は促されるまま中に入った。
レオンハルドさんは最後に入り、不思議な手順でそのドアを閉めた。
すぐに螺旋階段になっており、そこを登ると、明かりとりの窓もある小さな書斎の様な場所に出た。
「うわ~、凄いですね!!」
「中々良い部屋でしょう?入った時は埃と蜘蛛の巣だらけでしたが、今は身を休める分には問題ない状態には出来ました。」
見回すと、確かに使われていない様な場所はまだ埃を被っている。
このままの状態でも問題ないが、流石に3人では狭いかもしれないと思い、俺は魔術を使って部屋を掃除した。
ゴミや埃、蜘蛛の巣などをギュッとひと塊にしてカバンから出した袋に入れる。
「おや、これは助かります。サーク様。」
「いえいえ、お世話になるのでこれぐらいは。」
そう言って笑った。
ついでだったので、カバンからアウトドアグッズをいくつか取り出す。
簡易ソファーベッドを出すと、シルクが慣れた調子で組み立て始めた。
「サーク様、それは異空間付バックでございますか??」
「はい。お世話になっているギルドマスターが売ってくれました。……かなりの高値で。」
「それはそれは。しかし異空間付バックは中々手に入らぬもの。それを持っているギルドマスターとなると、中々の人物でしょう。良い買い物をされましたね。」
レオンハルドさんにそう言われ、何だか照れてしまう。
ありがとう、マダム!無理矢理買わされたけど、レオンハルドさんに褒められたから俺は幸せですっ!!
「それから、せっかくお出し頂いたそのソファーベッド、大変恐縮ですがお貸し頂いても宜しいでしょうか??」
「構いませんが……??」
作り終わったシルクは、何で?!という顔をしたが、己の師父に文句を言えるはずもなく、近づいてきたレオンハルドさんから逃げるようにぴょんぴょん飛び跳ねて俺の後ろに回り込んだ。
こいつ、怖いのは飛ぶものだけじゃなかったんだな……。
レオンハルドさんは担いでいたズタ袋をソファーベッドの上に置いた。
それをジトっと見つめていたシルクは物凄く嫌な顔をする。
「……師父……ソレ、死体?」
「え?!死体?!」
言われてみれば、その大きくて長いズタ袋にはそう言ったものが入っているようにも見える。
「馬鹿を言うな。死体など持ち歩いてどうする。教えただろう。特別な場合を除き、その者の死を確認するものが必要なら、故人を特定できる部位、又は耳や鼻、大きくても首だけ持っていけば十分だと。」
ええと……??
いや、聞かなかった事にしよう。
うん。
シルクが俺の顔を見て『ほらね、変人でしょ?!』と訴えてきたが俺は何も聞いていない。
「愚弟子が余計な事を言って心配をお掛けしましたね。そんなに身構えないで下さい。サーク様。これはお二人がよく知っているものですので、ご安心ください。」
おそらく顔が強ばっていたのだろう。
レオンハルドさんは優しくそう微笑んだ。
それを見てほっとする。
そうだよな、レオンハルドさんがそんな事をする訳がない。
でも、俺達が知っているものって何だろう??
不思議がって顔を見合わせた俺達をくすりと笑い、レオンハルドさんは袋の口を開いて中を見せてくれた。
何だろうと俺達は近づいて中を覗いた。
「※◎□◇♭☆~っっ?!」
「ぎゃぁぁ~っっ!!この変質者~っっ!!」
俺は口から訳のわからない言葉が飛び出し、シルクは絶叫した。
「死体ではございません。生きておりますよ??」
パニックでわちゃわちゃする俺達を尻目に、レオンハルドさんはいつも通りにっこり笑う。
あ、うん……。
何かシルクの言う事が薄っすら解り始めたかもしれないけど、きっと気のせいだ。
ただ、レオンハルドさん……。
ひとつだけ言わせてください……。
これは知ってるものではなく、
知っている者。
つまり知っている人です………。
再会の喜びも一段落して、俺は訳がわからなくなっているシルクに説明した。
レオンハルドさんが以前はライオネル殿下の執事長をしていて、俺の遅い初恋の相手である事を。
シルクは俺の初恋が執事さんである事は知っていたが、それが自分の師父だとは思わなかったらしい。
いや、俺もお前の師匠がレオンハルドさんだとは思わなかったけど。
「え?!待って?!理解できない!!1000歩…いや!5000歩譲って!師父が主の初恋の人だとして……執事って?!…え??師父が執事さん?!冗談でしょ?!どんだけ猫かぶったって、そんなの無理だからっ!!」
どうやら俺の中にあるレオンハルドさんのイメージと、シルクの中にある師父のイメージはかなりの差があるようだ。
どんなんなんだ??シルクの中のレオンハルドさんのイメージって??
「……シルク。お前、会わない間に随分と威勢が良くなったようだな?あまりサーク様に誤解を招く様な『嘘』は控えてもらえるか?」
レオンハルドさんはにっこりと笑う。
シルクがヒッと叫んで俺の後ろで小さくなった。
何がそんなに怖いんだ??
こんなにカッコイイのにっ!!
ちなみにレオンハルドさんは覆面をとってくれたので、あのダンディなお顔を拝む事ができた。
あ~色々大変だったけど、頑張ってきて良かった~。
生きていれば、頑張っていれば、こんないい事も起こるんだな~。
俺がキラキラした目でレオンハルドさんのご尊顔を拝んでいるのを、シルクが冷たい目で見ている。
「主っ!!目にフィルターかかりすぎっ!!師父はねっ!!ヤバい人なんだからねっ!!マジだからねっ!!」
「お前こそ、小さい時の記憶で、混乱してるんじゃないか??レオンハルドさんは王国一、いや!世界一!ダンディでカッコよくて!おちゃめで!可愛くて!スマートで!優しくて!男前なんだぞっ?!」
「これはこれは、ありがとうございます。サーク様。このような老いぼれにもったいないお言葉、恐れ入ります。」
「~~~っ!!絶っ対っ!!主の認識!おかしいからっ!!師父は鬼で!悪魔でっ!!常識かっ飛ばしてるような!ヤバい人だからっ!!」
「……シルク?いくら修行が厳しかったからとはいえ、私を侮蔑するのはおかしかろう??ん??」
「ぎゃぁぁっ!!主!殺されるっ!!助けてっ!!」
「……何言ってるんだ?シルク??レオンハルドさんがそんな事をする訳がないだろう??」
さっきからずっとこんな感じである。
三人三様、全く話が噛み合わない。
何が正しいか、気にはなるがこの際ちょっとおいて置かなければ……。
俺はひっついて怯えるシルクを無視して、レオンハルドさんに訪ねた。
「レオンハルドさん。俺達は追われています。すぐにここを離れなければなりません。」
「存じております。サーク様。全くあのハゲには困ったものです。」
まるで全てを知っているかの様な口振りだ。
いや、うん。
ここで会った時からそうなのかなとは思ってたんだけど……。
「あの……カジノで俺達を見ていたのって……。もしかして……。」
「師父だよ主。俺も今日まで気づかなかったけど……。とっくに死んでると思ってたから、廊下で声をかけられた時は心臓が止まるかと思った……。」
シルクが大きくため息をついた。
そう、ずっと俺達が傍観者と呼んでいた謎の人物は、何とレオンハルドさんだった。
でも、何となく今ならわかる。
あれはレオンハルドさんだったと。
俺は何か言葉にならなくて、ただその人を見つめた。
そんな俺にレオンハルドさんはにっこり微笑む。
「別の仕事に加え、実は私の主人からそれとなくお二人を見守るようにと言われまして。ま、主人の命でなくとも、こんな近くにサーク様がいるのであれば見守らせて頂きましたが。」
何か、凄くドキドキした。
見守っていてくれたのが嬉しかったからだけじゃない。
前はとらえどころが無くてその背中すら追えなかったその人を、俺は今は見つけることができるんだと思った。
「それよりご提案がございます。」
レオンハルドさんはスッと表情を消してそう言った。
俺とシルクはそれをじっと見つめる。
「この国を出るには、国境を越える必要がございます。今からすぐに向かえば、まだ連絡は行っておらず、出られるかもしれません。しかし確証はありません。パーマーは軍を用いてしくじりました故、この件はすぐに王宮に知られましょう。その為、王国の早馬との競争となります。」
その通りだ。
予定ではパーマーに動かれる前に、ここを離れるつもりだった。
だから少なくとも数時間の猶予があるつもりで動いていた。
こんなに早く動くとは思わなかったのだ。
おそらく俺達が今日来ていて、そして今日でやめそうだと誰かが洩らしたのだろう。
だからパーマーも十分な準備も終わらぬまま強行に及んだのだろう。
その結果、自分の首を締めるとも知らずに。
「正直、苦しい状況です。揉め事は起こしたくはありませんが、最終手段としては仕方ないかと思っています。」
俺の答えに、レオンハルドさんは小さく頷く。
「もしよろしければ、私めと一緒に行きませんか??数日後に、仲間の助けを受けて南の国を出るつもりなのです。もちろん、別に方法がお有りでしたらこちらの事は気にせず行って下さって大丈夫です。」
それはとても有り難い申し出だった。
状況が変わった手前、できるだけ安全な方法を取りたい。
それに、レオンハルドさんの戦力と知識があるのはとても心強い。
「いえ、とても有り難いです。こちらこそご一緒させて頂いて大丈夫でしょうか?」
シルクはえっ?!という顔をしたが、それが一番いい事は理解しているので、ぶすぅ~としつつ、文句は言わなかった。
「もちろんです。サーク様。では今動くのは危険てすので、今夜は私の隠れ家でお過ごしいただいても??」
「隠れ家、ですか??」
「はい。実はもう、ついているも同然なのですが……。」
クスッとレオンハルドさんが笑う。
ついていると同然と言う事は、ここという事だろうか??
俺とシルクは顔を見合わせる。
レオンハルドさんはにっこりと微笑むと、くるりと向きを変えて、先程まで担いでいた大きなズタ袋の所に向かった。
俺達は首を捻りながら、その後に続く。
すると、その壁にあった魔術灯を突然無理やり消し、それをグイッと引っ張ってぐるりと1回転させる。
引き出した部分をぐっと押して元に戻すと、ガコンッとくぐもった音がした。
何かの仕掛けが動いた様だった。
「では、こちらへ。」
レオンハルドさんはそう言うと、また袋を担いで俺達を誘導した。
近くにあった重そうな彫刻を、何ヶ所か叩いてからぐっと横に圧した。
「えっ?!」
「わっ!!」
俺とシルクは思わず声を上げた。
壁に埋め込まれているかと思ったその彫刻は横に少しスライドし、止められた箇所を軸に、ドアの様に開いたのだ。
「凄い!隠し部屋だ!!」
「色々調べているうちに見つけましてね?もう、この礼拝堂を管理している者はこの部屋の事を知らないようでしたので、勝手に使わせてもらっています。散らかっていますが、どうぞお入り下さい。」
俺達は促されるまま中に入った。
レオンハルドさんは最後に入り、不思議な手順でそのドアを閉めた。
すぐに螺旋階段になっており、そこを登ると、明かりとりの窓もある小さな書斎の様な場所に出た。
「うわ~、凄いですね!!」
「中々良い部屋でしょう?入った時は埃と蜘蛛の巣だらけでしたが、今は身を休める分には問題ない状態には出来ました。」
見回すと、確かに使われていない様な場所はまだ埃を被っている。
このままの状態でも問題ないが、流石に3人では狭いかもしれないと思い、俺は魔術を使って部屋を掃除した。
ゴミや埃、蜘蛛の巣などをギュッとひと塊にしてカバンから出した袋に入れる。
「おや、これは助かります。サーク様。」
「いえいえ、お世話になるのでこれぐらいは。」
そう言って笑った。
ついでだったので、カバンからアウトドアグッズをいくつか取り出す。
簡易ソファーベッドを出すと、シルクが慣れた調子で組み立て始めた。
「サーク様、それは異空間付バックでございますか??」
「はい。お世話になっているギルドマスターが売ってくれました。……かなりの高値で。」
「それはそれは。しかし異空間付バックは中々手に入らぬもの。それを持っているギルドマスターとなると、中々の人物でしょう。良い買い物をされましたね。」
レオンハルドさんにそう言われ、何だか照れてしまう。
ありがとう、マダム!無理矢理買わされたけど、レオンハルドさんに褒められたから俺は幸せですっ!!
「それから、せっかくお出し頂いたそのソファーベッド、大変恐縮ですがお貸し頂いても宜しいでしょうか??」
「構いませんが……??」
作り終わったシルクは、何で?!という顔をしたが、己の師父に文句を言えるはずもなく、近づいてきたレオンハルドさんから逃げるようにぴょんぴょん飛び跳ねて俺の後ろに回り込んだ。
こいつ、怖いのは飛ぶものだけじゃなかったんだな……。
レオンハルドさんは担いでいたズタ袋をソファーベッドの上に置いた。
それをジトっと見つめていたシルクは物凄く嫌な顔をする。
「……師父……ソレ、死体?」
「え?!死体?!」
言われてみれば、その大きくて長いズタ袋にはそう言ったものが入っているようにも見える。
「馬鹿を言うな。死体など持ち歩いてどうする。教えただろう。特別な場合を除き、その者の死を確認するものが必要なら、故人を特定できる部位、又は耳や鼻、大きくても首だけ持っていけば十分だと。」
ええと……??
いや、聞かなかった事にしよう。
うん。
シルクが俺の顔を見て『ほらね、変人でしょ?!』と訴えてきたが俺は何も聞いていない。
「愚弟子が余計な事を言って心配をお掛けしましたね。そんなに身構えないで下さい。サーク様。これはお二人がよく知っているものですので、ご安心ください。」
おそらく顔が強ばっていたのだろう。
レオンハルドさんは優しくそう微笑んだ。
それを見てほっとする。
そうだよな、レオンハルドさんがそんな事をする訳がない。
でも、俺達が知っているものって何だろう??
不思議がって顔を見合わせた俺達をくすりと笑い、レオンハルドさんは袋の口を開いて中を見せてくれた。
何だろうと俺達は近づいて中を覗いた。
「※◎□◇♭☆~っっ?!」
「ぎゃぁぁ~っっ!!この変質者~っっ!!」
俺は口から訳のわからない言葉が飛び出し、シルクは絶叫した。
「死体ではございません。生きておりますよ??」
パニックでわちゃわちゃする俺達を尻目に、レオンハルドさんはいつも通りにっこり笑う。
あ、うん……。
何かシルクの言う事が薄っすら解り始めたかもしれないけど、きっと気のせいだ。
ただ、レオンハルドさん……。
ひとつだけ言わせてください……。
これは知ってるものではなく、
知っている者。
つまり知っている人です………。
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