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第八章②「敵地潜入」
彼は何でも知っている
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俺もこれをどう捉えて良いのか解らず、発狂するシルクを宥めすかし、落ち着くためにお茶を入れた。
シルキー人気のせいであまり外には買い物に出れなかったので、ホテル内店舗で買った現地のハーブティーだ。
南の国でしか扱ってないと言うのでウィルへのお土産に買ったんだけど、この際仕方がない。
ハーブティーは酸っぱかったり癖が強かったりであまり飲まないが、これは大丈夫と店員さんが言っていた通り飲みやすかった。
シルクは落ち着きはしたが、俺にひっついてじと~とした目でレオンハルドさんを見ている。
毛を逆立てて警戒している猫みたいでちょっと面白い。
「ええと……どうしてレオンハルドさんは、この方を運んでいるんですか??」
遠回しにしても仕方ないので、さっくり聞いた。
正直、俺の知っているレオンハルドさんからは突き抜けすぎていて、これが現実なのか理解できない。
けれどレオンハルドさんは至って変わらずにこにこしていた。
「とても美味しいお茶をありがとうございます。サーク様。」
そうやって優雅にお茶を嗜む姿は、紛れもなく俺のレオンハルドさんなんだよな~。
その後ろに見えるソファーベッドの中身が見えなければ、何の違和感もないのに……。
「お二人は、彼の名をご存じですか??」
「ええ、イグナチウス・B・T・エズラ氏です。」
そう、レオンハルドさんが気絶させて持ち運んでいたのは、エズラ氏だった。
仲の良かったシルクはもう、そりゃびっくりだし、危害を加えられているのかと大騒ぎだった。
魔力探査で調べたが、ちょっと当身でショックを与えられているが、それ以外は目覚めない様薬を嗅がされているだけで健康状態に異常は無かった。
レオンハルドさんは紳士の微笑みを浮かべたまま言った。
「はい。ですが、もっと正確に言いますとこうなります。イグナチウス・バフル・ティーナン・エズラ。」
「……えっ?!」
俺はその名を聞いて少し固まった。
似た名前を知っていたからだ。
そしてもしその名前と繋がりがあるのだとしたら……。
「まさか……。」
「はい。バフルは現王が生まれた息子全てに識別の為に与えたミドルネームです。最も今、その名を持っているのは、こちらのイグナスと現南国王太子のお二人だけですが。」
そこでやっとシルクも状況がわかったようで、俺の横から大きく身を乗り出した。
「ちょっと待って?!師父?!ならイギーは……イギーは王様の息子なの?!あの王太子と兄弟なの?!」
「左様。イグナスは異母兄弟で王太子の弟にあたる。」
「え?!ですが王太子の兄弟は、殆ど流行り病で亡くなったのでは?!今は歳の離れた妹のみと聞いています!!」
「はい。そうなっております。現南の国、国王の子供は、正式な発表では男子4人、女子3人。しかしそれ以外に男子3人、女子1人おりました。」
確かに王に隠し子がいる事は何気に珍しくない。
血を途絶えさせない為に、保険として遠くの辺境貴族の家にあえて作る場合もある。
跡取りとしていた者が不慮の事故で死んだ際、王に子を残す余力が無かった時の為に隠されているのだ。
そしてその多くは事実を知らぬまま生涯を終える。
「辺境貴族の家に男子2人、庶民人との間に男女1人ずつ。貴族の子はいわば保険。民間人との子は王が乱暴を働いた際に出来た子で、その存在は宮廷内でもほぼ知られていませんでした。」
「……イギーはどっちなの?」
「民間人の子だ。だから発見が遅れて助かったのだ。」
「助かった??」
「そう、グレゴリウス王太子がその頭角を表し、事実上南の国の実権を握ると、彼は危険因子である兄弟を殺し始めた。」
「なら!流行り病で無くなったというのは嘘なのですね?!」
まぁよくある話だ。
覇権争いで兄弟を殺す等と言う事は。
だから中央王国の第二王子は早々に政治から距離を置き、第一王子が王太子である事に賛成を示したのだ。
平和な中央王国であっても気を使う部分だ。
血気盛んな南の国では、服従を示したとしても無事ではいられなかったのだろう。
「本来なら女王を立てる事は稀なので、女性まで手にかける事は少ない。けれど頭の良かった姉を見ていたグレゴリウスは女性にも容赦はしなかった。全員殺せばあらぬ噂が立つためなのか王との取り決めなのか、幼い王女を残して9人とも何らかの方法でこの世から消しました。イグナスの母親は、彼を身篭ってすぐに身の危険を考え辺境の田舎に隠れ住んだ為、すぐには見つかりませんでした。」
「その彼が、何故、カジノで富豪たちに混じっていたのですか??」
「彼らが保護していたからです。南の国は商業国家でございます。軍が大きくなれたのも、商業が発展したからにほかなりません。つまり、経済を回している富豪たちは、南の国のもう一つの政府と言っても過言ではないのです。……そう思われたから、サーク様は王宮ではなくカジノを探られたのでしょう?」
その通りだった。
南の国の国を探るのに、王宮に乗り込むには顔が知られすぎていた。
だからもう一つの顔である、経済を回す富豪たちから探ろうとしたのだ。
お互い独立しているが密接に繋がっている。
王政が規律を強めれば彼らの活動は抑えられるが、彼らが協力を拒めば王政は資金難に陥る。
どちらも持ちつ持たれつ、相手のする事には首を突っ込んだりせずに傍観する。
だが、自分達に不利益が及ばないよう、確実に見ているのだ。
「いくら秘密裏に行われていたからと言って、勘付くものはいます。そしてその独裁性、残忍性に危険を覚えた豪族たちは、もしものことを考え、その保険を確保する事にしました。それがイグナスです。」
ああ、と思う。
あの夜の浜辺で彼が言った「そう見えるように教育を受けたから」と言うのは、そういう事だったのだ。
彼の存在がいつも希薄で危うく謎めいていたのは、こういう事だったのだろう。
「……イギーの家族は?お母さんは?」
シルクがギュッと俺の服の裾を掴んだ。
青い顔をしている。
その答えを知っているからだ。
レオンハルドさんも、無言のまま首を振る。
俺はシルクの手を軽く握ってやった。
「大体の事はわかりました。しかしその保護されていたエズラ氏を、どうしてレオンハルドさんが連れてきてしまったのですか??」
問題はそこだ。
彼は保護されていた。
おそらく、彼の家族と共に死んだ事にされ、富豪の誰かの養子か何かと言う形で隠されてここにいたのだ。
灯台下暗し、そして木を隠すなら森の中だ。
人の少ない遠くの村より、他の国からの人も集まるここはかえって安全だったとも思う。
「グレゴリウスの粘着性は、サーク様もよくご存知のはずです。イグナスの死にどこか疑問を持っていたのでしょう。彼は今でもイグナスをも探しております。そしてその矛先は、富豪の彼らにも向けられていました。時間の問題なのです、サーク様。」
「……エズラ氏にここを離れる様に勧めていた人物と言うのは、レオンハルドさん、あなたですね?」
「はい。今はまだその素性は知られていません。そして今なら、彼を保護した富豪たちを守る事ができます。もしもイグナスが生きている事を王太子が知り、それが富豪たちに匿われているとわかったなら、どうなると思いますか?」
そうなれば、今は持ちつ持たれつのバランスを保っているが、彼らはグレゴリウスに潰される。
それはこの国にとって良い事とは言えない。
「彼らが潰されれば、王国は経済も牛耳るでしょう。グレゴリウスは長い事ずっと戦争を目論んできました。彼が軍事、経済、その両方を手中に収めれば、軍事的独裁政権が始まるのです。この国は一見活気あふれる平和な国に見えますが、それを辛うじて守っているのは経済権を握る富豪たちなのです。彼らにはいい面も悪い面もございます。しかし、国内でグレゴリウスにブレーキをかけられるのは彼らだけなのです。」
「だから、彼を連れ去るんですね。この国のバランスを保つ為に……。」
だとしたら、エズラ氏の人生とは何なのだろう?
言葉にできなかった。
「そんなの……そんなのイギーが可哀想だよっ!!周りにずっと振り回されて!家族も失って!助かったと思ったら!国のバランスの為に連れ去るなんてっ!!」
俺が飲み込んだものをシルクは吐き出した。
とても悲しそうに、とても怒って震えていた。
政治に振り回され帰る場所を失った痛みを知るシルクは、彼の現状を他人事とは思えなかったのだろう。
「本人からの了承は得ている。こちらも軍の介入によって、あのままイグナスをあそこには置いておけなかったのでな。」
確かに軍があそこに来たからには、その回収も軍が行う。
その際カジノ内も調べられ、内部を軍人がうろつく事になる。
そうなればエズラ氏を誰かが見かけるかもしれない。
すぐにバレる事はないだろうが、それはエズラ氏と彼を匿う豪族たちにとって大きな危険を背負う事になる。
パーマーの強行は、俺達だけに影響したのでは無かったようだ。
「だからって……イギーはこれからどうすればいいんだよ……可哀想だよ……。」
「そこは考えてある。……サーク様。」
「……はい??」
突然話を振られ、俺はきょとんとした。
レオンハルドさんは何故かとてもいい笑顔をしている。
このパターンは……嫌な予感しかしない。
「え?ええ??まさかと思いますけど……っ?!」
「はい。そのまさかでございます、サーク様。私はイグナスをサーク様にお預けしようと考えております。」
「嘘ですよねっ?!」
「イグナスから、いい友達になれそうな人がいると聞いています。はい。」
「いや!俺の方は思ってないんでっ!!と言うか!そんな政治的に狙われてる人を俺は守りきれる自信はないですっ!!」
「おやおや?カイナの民であるシルクを守り、多方面に事情のある恋人をしっかりお守りなさってると聞いておりますよ??一人くらい増えても大丈夫でございますよ、サーク様。」
「いや!増えたら増えただけ大変なんですっ!……て言うかっ!!何でそんな色々知ってるんですか?!向こうにいなかったのに?!レオンハルドさんは俺の事、どこまでご存知なのですかっ?!」
「ふふっ。サーク様の事でしたら、このレオンハルド、それなりに良く存じておりますよ?」
レオンハルドさんはそう言って、お茶目にウインクしてきた。
………………。
も~!
相変わらずズルい!
可愛いっ!格好いいっ!!
え??マジ??
それなりによく知ってるとか、ちょっと照れるんだけど……?!
「主~っ!!照れてる場合じゃな~いっ!!」
場違いに赤くなって照れまくる俺を、シルクがグーで殴った。
シルキー人気のせいであまり外には買い物に出れなかったので、ホテル内店舗で買った現地のハーブティーだ。
南の国でしか扱ってないと言うのでウィルへのお土産に買ったんだけど、この際仕方がない。
ハーブティーは酸っぱかったり癖が強かったりであまり飲まないが、これは大丈夫と店員さんが言っていた通り飲みやすかった。
シルクは落ち着きはしたが、俺にひっついてじと~とした目でレオンハルドさんを見ている。
毛を逆立てて警戒している猫みたいでちょっと面白い。
「ええと……どうしてレオンハルドさんは、この方を運んでいるんですか??」
遠回しにしても仕方ないので、さっくり聞いた。
正直、俺の知っているレオンハルドさんからは突き抜けすぎていて、これが現実なのか理解できない。
けれどレオンハルドさんは至って変わらずにこにこしていた。
「とても美味しいお茶をありがとうございます。サーク様。」
そうやって優雅にお茶を嗜む姿は、紛れもなく俺のレオンハルドさんなんだよな~。
その後ろに見えるソファーベッドの中身が見えなければ、何の違和感もないのに……。
「お二人は、彼の名をご存じですか??」
「ええ、イグナチウス・B・T・エズラ氏です。」
そう、レオンハルドさんが気絶させて持ち運んでいたのは、エズラ氏だった。
仲の良かったシルクはもう、そりゃびっくりだし、危害を加えられているのかと大騒ぎだった。
魔力探査で調べたが、ちょっと当身でショックを与えられているが、それ以外は目覚めない様薬を嗅がされているだけで健康状態に異常は無かった。
レオンハルドさんは紳士の微笑みを浮かべたまま言った。
「はい。ですが、もっと正確に言いますとこうなります。イグナチウス・バフル・ティーナン・エズラ。」
「……えっ?!」
俺はその名を聞いて少し固まった。
似た名前を知っていたからだ。
そしてもしその名前と繋がりがあるのだとしたら……。
「まさか……。」
「はい。バフルは現王が生まれた息子全てに識別の為に与えたミドルネームです。最も今、その名を持っているのは、こちらのイグナスと現南国王太子のお二人だけですが。」
そこでやっとシルクも状況がわかったようで、俺の横から大きく身を乗り出した。
「ちょっと待って?!師父?!ならイギーは……イギーは王様の息子なの?!あの王太子と兄弟なの?!」
「左様。イグナスは異母兄弟で王太子の弟にあたる。」
「え?!ですが王太子の兄弟は、殆ど流行り病で亡くなったのでは?!今は歳の離れた妹のみと聞いています!!」
「はい。そうなっております。現南の国、国王の子供は、正式な発表では男子4人、女子3人。しかしそれ以外に男子3人、女子1人おりました。」
確かに王に隠し子がいる事は何気に珍しくない。
血を途絶えさせない為に、保険として遠くの辺境貴族の家にあえて作る場合もある。
跡取りとしていた者が不慮の事故で死んだ際、王に子を残す余力が無かった時の為に隠されているのだ。
そしてその多くは事実を知らぬまま生涯を終える。
「辺境貴族の家に男子2人、庶民人との間に男女1人ずつ。貴族の子はいわば保険。民間人との子は王が乱暴を働いた際に出来た子で、その存在は宮廷内でもほぼ知られていませんでした。」
「……イギーはどっちなの?」
「民間人の子だ。だから発見が遅れて助かったのだ。」
「助かった??」
「そう、グレゴリウス王太子がその頭角を表し、事実上南の国の実権を握ると、彼は危険因子である兄弟を殺し始めた。」
「なら!流行り病で無くなったというのは嘘なのですね?!」
まぁよくある話だ。
覇権争いで兄弟を殺す等と言う事は。
だから中央王国の第二王子は早々に政治から距離を置き、第一王子が王太子である事に賛成を示したのだ。
平和な中央王国であっても気を使う部分だ。
血気盛んな南の国では、服従を示したとしても無事ではいられなかったのだろう。
「本来なら女王を立てる事は稀なので、女性まで手にかける事は少ない。けれど頭の良かった姉を見ていたグレゴリウスは女性にも容赦はしなかった。全員殺せばあらぬ噂が立つためなのか王との取り決めなのか、幼い王女を残して9人とも何らかの方法でこの世から消しました。イグナスの母親は、彼を身篭ってすぐに身の危険を考え辺境の田舎に隠れ住んだ為、すぐには見つかりませんでした。」
「その彼が、何故、カジノで富豪たちに混じっていたのですか??」
「彼らが保護していたからです。南の国は商業国家でございます。軍が大きくなれたのも、商業が発展したからにほかなりません。つまり、経済を回している富豪たちは、南の国のもう一つの政府と言っても過言ではないのです。……そう思われたから、サーク様は王宮ではなくカジノを探られたのでしょう?」
その通りだった。
南の国の国を探るのに、王宮に乗り込むには顔が知られすぎていた。
だからもう一つの顔である、経済を回す富豪たちから探ろうとしたのだ。
お互い独立しているが密接に繋がっている。
王政が規律を強めれば彼らの活動は抑えられるが、彼らが協力を拒めば王政は資金難に陥る。
どちらも持ちつ持たれつ、相手のする事には首を突っ込んだりせずに傍観する。
だが、自分達に不利益が及ばないよう、確実に見ているのだ。
「いくら秘密裏に行われていたからと言って、勘付くものはいます。そしてその独裁性、残忍性に危険を覚えた豪族たちは、もしものことを考え、その保険を確保する事にしました。それがイグナスです。」
ああ、と思う。
あの夜の浜辺で彼が言った「そう見えるように教育を受けたから」と言うのは、そういう事だったのだ。
彼の存在がいつも希薄で危うく謎めいていたのは、こういう事だったのだろう。
「……イギーの家族は?お母さんは?」
シルクがギュッと俺の服の裾を掴んだ。
青い顔をしている。
その答えを知っているからだ。
レオンハルドさんも、無言のまま首を振る。
俺はシルクの手を軽く握ってやった。
「大体の事はわかりました。しかしその保護されていたエズラ氏を、どうしてレオンハルドさんが連れてきてしまったのですか??」
問題はそこだ。
彼は保護されていた。
おそらく、彼の家族と共に死んだ事にされ、富豪の誰かの養子か何かと言う形で隠されてここにいたのだ。
灯台下暗し、そして木を隠すなら森の中だ。
人の少ない遠くの村より、他の国からの人も集まるここはかえって安全だったとも思う。
「グレゴリウスの粘着性は、サーク様もよくご存知のはずです。イグナスの死にどこか疑問を持っていたのでしょう。彼は今でもイグナスをも探しております。そしてその矛先は、富豪の彼らにも向けられていました。時間の問題なのです、サーク様。」
「……エズラ氏にここを離れる様に勧めていた人物と言うのは、レオンハルドさん、あなたですね?」
「はい。今はまだその素性は知られていません。そして今なら、彼を保護した富豪たちを守る事ができます。もしもイグナスが生きている事を王太子が知り、それが富豪たちに匿われているとわかったなら、どうなると思いますか?」
そうなれば、今は持ちつ持たれつのバランスを保っているが、彼らはグレゴリウスに潰される。
それはこの国にとって良い事とは言えない。
「彼らが潰されれば、王国は経済も牛耳るでしょう。グレゴリウスは長い事ずっと戦争を目論んできました。彼が軍事、経済、その両方を手中に収めれば、軍事的独裁政権が始まるのです。この国は一見活気あふれる平和な国に見えますが、それを辛うじて守っているのは経済権を握る富豪たちなのです。彼らにはいい面も悪い面もございます。しかし、国内でグレゴリウスにブレーキをかけられるのは彼らだけなのです。」
「だから、彼を連れ去るんですね。この国のバランスを保つ為に……。」
だとしたら、エズラ氏の人生とは何なのだろう?
言葉にできなかった。
「そんなの……そんなのイギーが可哀想だよっ!!周りにずっと振り回されて!家族も失って!助かったと思ったら!国のバランスの為に連れ去るなんてっ!!」
俺が飲み込んだものをシルクは吐き出した。
とても悲しそうに、とても怒って震えていた。
政治に振り回され帰る場所を失った痛みを知るシルクは、彼の現状を他人事とは思えなかったのだろう。
「本人からの了承は得ている。こちらも軍の介入によって、あのままイグナスをあそこには置いておけなかったのでな。」
確かに軍があそこに来たからには、その回収も軍が行う。
その際カジノ内も調べられ、内部を軍人がうろつく事になる。
そうなればエズラ氏を誰かが見かけるかもしれない。
すぐにバレる事はないだろうが、それはエズラ氏と彼を匿う豪族たちにとって大きな危険を背負う事になる。
パーマーの強行は、俺達だけに影響したのでは無かったようだ。
「だからって……イギーはこれからどうすればいいんだよ……可哀想だよ……。」
「そこは考えてある。……サーク様。」
「……はい??」
突然話を振られ、俺はきょとんとした。
レオンハルドさんは何故かとてもいい笑顔をしている。
このパターンは……嫌な予感しかしない。
「え?ええ??まさかと思いますけど……っ?!」
「はい。そのまさかでございます、サーク様。私はイグナスをサーク様にお預けしようと考えております。」
「嘘ですよねっ?!」
「イグナスから、いい友達になれそうな人がいると聞いています。はい。」
「いや!俺の方は思ってないんでっ!!と言うか!そんな政治的に狙われてる人を俺は守りきれる自信はないですっ!!」
「おやおや?カイナの民であるシルクを守り、多方面に事情のある恋人をしっかりお守りなさってると聞いておりますよ??一人くらい増えても大丈夫でございますよ、サーク様。」
「いや!増えたら増えただけ大変なんですっ!……て言うかっ!!何でそんな色々知ってるんですか?!向こうにいなかったのに?!レオンハルドさんは俺の事、どこまでご存知なのですかっ?!」
「ふふっ。サーク様の事でしたら、このレオンハルド、それなりに良く存じておりますよ?」
レオンハルドさんはそう言って、お茶目にウインクしてきた。
………………。
も~!
相変わらずズルい!
可愛いっ!格好いいっ!!
え??マジ??
それなりによく知ってるとか、ちょっと照れるんだけど……?!
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場違いに赤くなって照れまくる俺を、シルクがグーで殴った。
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