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第八章③「帰国裁判」
孤独に寄り添う
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「とは言え、私も正直、重傷者50人と言う数を聞いた時は驚きました。少し多すぎやしないかと。確かに115名に2人で対応したのですから、なりふり構っている場合ではなかったのでしょう。なのでそういう事なのだと思っていました。」
ガスパーはそこで一旦、言葉を切った。
そして俺を見て小さく頷いた。
「しかし数値的に考えて、どうしても納得がいきませんでした。これは100人ではなく、もっと兵がいたのではないかと感じていました。私の感じていた疑問はどうやら事実の様ですね。ミード伯爵のお話と先程の質疑で確信しました。あの時、アズマ・サークと従者の2人が対応したのは100人ではない。もっと多い人数であると。」
原告側の第二王子派はガスパーの能力の前にこれ以上迂闊な事が言えず、忌々しそうに俺達を見ている。
あぁ、だいぶフラストレーションが溜まっているなと思う。
今はとりあえず堪えているが、ガスパーがその手を緩める事はない。
「では何故、南軍から正式に提出された書類にも関わらす、この様な事が起きたのか?南の国が我々に嘘の書類を渡したのか?それとも別に何か原因があったのか?そこを突き詰めていくうちに、見落とされていた真実にたどり着きました。」
ガスパーが言葉を切る。
これは演出だ。
次の言葉を印象づける為の。
ガスパーは理解力、解析力に留まらず、人に効果的に訴える術を心得ている。
普段はあんなに不器用なのにと思うと、俺はちょっと笑ってしまった。
ガスパーは絶妙な間を取ってから続けた。
「この襲撃には、後に援軍が来ていると言う事実です。」
演出の効果もあって、法廷内にはどよめきが起きた。
ガスパーは皆が十分驚けるように、また少しの間を置く。
「重傷者の人数に疑問を持った私は、再度、アズマ・サークに足止めをした状況を詳しく訪ねました。そして彼らが足止めを終えようとした所で、さらに100人ほどの援軍が来ている事を知りました。」
「そんなのはでたらめだ!でっち上げに決まっている!!」
先程さんざん痛めつけられたミード伯爵が叫んだ。
だがガスパーは気に求めずに話し続ける。
「その証明は後程させて頂きます。必要でしたらアズマ・サークを証言台に立たせますので、臨時証言要求を立てて下さい。ですがまずは私の考え並びに知り得た事実をお聞き下さい。彼らが足止めを始めたのは、午前中に証言者から確認を取りました通り、だいたい正午頃でした。議長、並びに陪審員の皆様、その部分に何か疑問や異論点はございますか?」
ざわざわと陪審員席と議長席が周囲と話す。
しかし誰も手を上げなかった。
「特にないようだ。話を続けたまえ。」
「ありがとうございます。」
ガスパーはここで確認を入れ、それから話し始めた。
「彼らが足止めを行い数時間程、時間は戦闘をしていたので彼らは正確にはわかっていませんが、足止めは十分だと判断し撤退に移る事にしたそうです。しかしそこで、思わぬ事態に直面したそうです。」
「それが援軍かね。」
「はい。撤退しようとした所、同規模の軍が現れたと言っています。同規模、つまり100人規模の軍です。さすがにその規模の軍と再度交戦する事に無理を感じ、撤退も困難になると思ったそうです。」
「ふむ……。」
新しい情報をどう判断するか、議長は補佐官と話し合っている。
法廷内も困惑気味にざわつき、誰もがこの新しい情報に戸惑っていた。
う~ん。
俺、話してなかったんだな~。
話したつもりだったんだけど……。
しかもこんな重要な争点になると思わなかった。
まぁ何かバタバタしてたし、言った言わないは今問題じゃないし。
「それを証明できるのかね、ガスパー・ラティーマー?」
「完璧な証明はできません。ですがそれがあったと言う裏付けはあります。その一つが、南軍からの正式な書類の矛盾です。」
「ほう?」
「先程からの話で、アズマ・サークが交戦したのは100人よりもずっと多い数である可能性が高いです。しかし、書類上、相対したのは南軍王族警備第五部隊隊長のラッド・K・ペイトンの部隊、歩兵70人程、騎馬隊20人程に指揮官数名の役100人となっています。ですが死者・重軽傷者、並びに軽度負傷者の数を合わせると、それ以上になります。そして指揮官や衛生兵等特殊な立場の者もいた事を考えれば、その全員が何らかの負傷を負ったと考えるのはあまりにも不自然。そこから150~200程の兵がいたと推測されます。」
「そんなものはただの憶測だろう!」
「ミード伯爵、黙りなさい。退場を言い渡されたいのか?!ガスパー・ラティーマー、続けなさい。」
「はい。おそらくこれははじめに出軍した数と、死者・重軽傷者の数は援軍含む200人程の最終的な兵士の数から導き出されたものだと考えます。」
「なるほど、南の国から提出された書類はどちらの書類の数も嘘ではない。ただ、途中で援軍があった為、はじめと終わりではその数が異なると言う事だな?」
「はい議長。南の国からの書類に嘘がないのだとしたら、そう考えるのが一番、自然かと思います。」
「そうか……。」
そこでまた、議長席で話し合いが行われる。
これに反論すれば、数値の矛盾の為、南の国からの書類に不備があったとされる危険がある為、親南派である第二王子派は突っ込んだ事が言えずにいる。
しかし何も言わなければ、ガスパーの主張が有利になる。
「恐れながら議長、発言しても?」
鬱々とした表情で、フレッチャー公爵が立ち上がった。
「許可する。」
「そもそも我々は待ち伏せと言う主張自体、受け入れておりません。これはアズマ・サークが南の国に非礼を働き、それを抑える為に軍を用いたと言う話です。そして南の国からの書類に嘘はありません。書類は即死者5名、重傷者50名ほどとなっていて、軽度負傷者60名というのは、ミード伯爵が南国軍隊長から聞いたと勝手に言っているに過ぎません。聞き間違いや重軽傷者との被りも考えられます。そうなれば書類通り、100人ほどの軍だったと我々は考えています。」
当初の勢い無く、フレッチャー公爵は淡々と告げた。
その発言にどれだけの力があるかはさておき、何も言わぬままにするよりはいい。
とは言えミード伯爵は切り捨てるか。
まぁこの場合、そうするしかないよな。
すがるような目をするミード伯爵を冷たく一瞥し、フレッチャー公爵は席に座る。
あの時、おとなしく退場させられていればこんな事にならなかったのに。
目覚めた蛇蝎の牙が、人知れず静かに1匹の鼠を噛み殺した。
音もなく、誰にも気づかせずに。
俺はそれを黙って見ていた。
フレッチャー公爵の言葉は、ミード伯爵以外の人間にとってはさして重くはなかった。
誰ももう、何の証拠も勢いもない彼らの主張に信頼を置いていないからだ。
確かにこの場合こちらが真実なのだからそれでいいが、法廷は白か黒かを決める場所だ。
そして流れを掴み、場の信頼を得たものの勝ちとなる。
言い換えれば、白すら黒と社会に認めさせる事も可能なのだ。
それが前回の俺の戦犯判決だ。
そして今、その場に、一匹の若き蛇が立っている。
おそらく彼がその気になれば、白すら黒に変えることもできるだろう。
彼はそう言う男だ。
この場にいる多くの者がそれを感じ取っていた。
……蛇って孤独だな。
俺はガスパーの背を見てそう思った。
静けさと冷たさとその力とその牙と。
支配力が強い故に、誰もが畏怖し近づく事を避ける。
だから蛇はいつでも一人で穴に潜っているんだ。
そんな事を思う。
俺の手は、まだ届くだろうか?
こいつにまだ届くだろうか?
話し合いを終えた議長がガスパーを見た。
「証明は難しいと言ったな?」
「はい。」
「だが裏付けはできると?」
「はい。」
「ではそれを見てから考えよう。」
「ありがとうございます。では今朝お願いしました、臨時証言者の証言を取りたいと思います。南部国境警備隊員の入廷を求めます。」
「許可する。」
その返答に、ガスパーは小さく息を吐くと、席に戻ってきた。
開いている事が辛いのか、眼鏡を外して目頭を押さえる。
「大丈夫か?」
「ああ、問題ねぇよ。」
「ぶっ。」
「何だよ?ムカつくな?」
「いや、ごめん。あれだけ喋ってるのに戻ってくるといつものガスパーの喋り方だから、ちょっと安心した。」
思わす笑ってそう言うと、ガスパーは虚を突かれた様な顔をした後、笑ってため息をついた。
「何か、アイツの気持ちがちょっとわかったわ。」
「アイツ??」
「イヴァンだよ、いつもいい子ぶってやがる気持ち悪い張り子の偽善者。」
「お前……っ!幼馴染に酷いな?!」
「知ってんだろ?たまに化けの皮が剥がれんの。」
「化けの皮って……たまに息抜きがしたいだけだろうが。」
「だよな。俺は既に窒息しそうだ。良くやるよな~、アイツ。俺にはぜってぇ無理。」
「ははは、俺もお前がずっとあれだったらちょっと気持ち悪いわ。」
「だよな?俺らしくねぇ。」
「ああ、お前らしくない。でも、ちょっと格好いいわ。たまにならこれも有りだな~。眼鏡エロいし。」
俺がそう言うと、ガスパーは途端に顔を赤くして、アワアワと俺を睨んだ。
「……バッ!バッカじゃねぇの?!何なんだよ?!エロいって?!本当、お前、最低だなっ?!」
「はいはい、どうせ俺は最低なエロ研究者です~。それよりほら、国境警備隊の人、来てくれたぞ。」
「あ~、後、どれぐらいこれやんないとなんねぇんだよ~。全く……。」
「ごめんな~、俺、脳筋だからさ~。頼りにしてる。」
「嫌味か。」
ガスパーは俺をひと睨みすると、眼鏡をかけて深呼吸すると、資料を手に取った。
「………ありがとな、サーク。」
ガスパーはぼそっとそう言うと席を立った。
俺は笑ってそれを見送る。
俺には大した事はしてやれない。
それでも、その横にいてやる事ぐらいはとりあえずできるのだなと思った。
ガスパーはそこで一旦、言葉を切った。
そして俺を見て小さく頷いた。
「しかし数値的に考えて、どうしても納得がいきませんでした。これは100人ではなく、もっと兵がいたのではないかと感じていました。私の感じていた疑問はどうやら事実の様ですね。ミード伯爵のお話と先程の質疑で確信しました。あの時、アズマ・サークと従者の2人が対応したのは100人ではない。もっと多い人数であると。」
原告側の第二王子派はガスパーの能力の前にこれ以上迂闊な事が言えず、忌々しそうに俺達を見ている。
あぁ、だいぶフラストレーションが溜まっているなと思う。
今はとりあえず堪えているが、ガスパーがその手を緩める事はない。
「では何故、南軍から正式に提出された書類にも関わらす、この様な事が起きたのか?南の国が我々に嘘の書類を渡したのか?それとも別に何か原因があったのか?そこを突き詰めていくうちに、見落とされていた真実にたどり着きました。」
ガスパーが言葉を切る。
これは演出だ。
次の言葉を印象づける為の。
ガスパーは理解力、解析力に留まらず、人に効果的に訴える術を心得ている。
普段はあんなに不器用なのにと思うと、俺はちょっと笑ってしまった。
ガスパーは絶妙な間を取ってから続けた。
「この襲撃には、後に援軍が来ていると言う事実です。」
演出の効果もあって、法廷内にはどよめきが起きた。
ガスパーは皆が十分驚けるように、また少しの間を置く。
「重傷者の人数に疑問を持った私は、再度、アズマ・サークに足止めをした状況を詳しく訪ねました。そして彼らが足止めを終えようとした所で、さらに100人ほどの援軍が来ている事を知りました。」
「そんなのはでたらめだ!でっち上げに決まっている!!」
先程さんざん痛めつけられたミード伯爵が叫んだ。
だがガスパーは気に求めずに話し続ける。
「その証明は後程させて頂きます。必要でしたらアズマ・サークを証言台に立たせますので、臨時証言要求を立てて下さい。ですがまずは私の考え並びに知り得た事実をお聞き下さい。彼らが足止めを始めたのは、午前中に証言者から確認を取りました通り、だいたい正午頃でした。議長、並びに陪審員の皆様、その部分に何か疑問や異論点はございますか?」
ざわざわと陪審員席と議長席が周囲と話す。
しかし誰も手を上げなかった。
「特にないようだ。話を続けたまえ。」
「ありがとうございます。」
ガスパーはここで確認を入れ、それから話し始めた。
「彼らが足止めを行い数時間程、時間は戦闘をしていたので彼らは正確にはわかっていませんが、足止めは十分だと判断し撤退に移る事にしたそうです。しかしそこで、思わぬ事態に直面したそうです。」
「それが援軍かね。」
「はい。撤退しようとした所、同規模の軍が現れたと言っています。同規模、つまり100人規模の軍です。さすがにその規模の軍と再度交戦する事に無理を感じ、撤退も困難になると思ったそうです。」
「ふむ……。」
新しい情報をどう判断するか、議長は補佐官と話し合っている。
法廷内も困惑気味にざわつき、誰もがこの新しい情報に戸惑っていた。
う~ん。
俺、話してなかったんだな~。
話したつもりだったんだけど……。
しかもこんな重要な争点になると思わなかった。
まぁ何かバタバタしてたし、言った言わないは今問題じゃないし。
「それを証明できるのかね、ガスパー・ラティーマー?」
「完璧な証明はできません。ですがそれがあったと言う裏付けはあります。その一つが、南軍からの正式な書類の矛盾です。」
「ほう?」
「先程からの話で、アズマ・サークが交戦したのは100人よりもずっと多い数である可能性が高いです。しかし、書類上、相対したのは南軍王族警備第五部隊隊長のラッド・K・ペイトンの部隊、歩兵70人程、騎馬隊20人程に指揮官数名の役100人となっています。ですが死者・重軽傷者、並びに軽度負傷者の数を合わせると、それ以上になります。そして指揮官や衛生兵等特殊な立場の者もいた事を考えれば、その全員が何らかの負傷を負ったと考えるのはあまりにも不自然。そこから150~200程の兵がいたと推測されます。」
「そんなものはただの憶測だろう!」
「ミード伯爵、黙りなさい。退場を言い渡されたいのか?!ガスパー・ラティーマー、続けなさい。」
「はい。おそらくこれははじめに出軍した数と、死者・重軽傷者の数は援軍含む200人程の最終的な兵士の数から導き出されたものだと考えます。」
「なるほど、南の国から提出された書類はどちらの書類の数も嘘ではない。ただ、途中で援軍があった為、はじめと終わりではその数が異なると言う事だな?」
「はい議長。南の国からの書類に嘘がないのだとしたら、そう考えるのが一番、自然かと思います。」
「そうか……。」
そこでまた、議長席で話し合いが行われる。
これに反論すれば、数値の矛盾の為、南の国からの書類に不備があったとされる危険がある為、親南派である第二王子派は突っ込んだ事が言えずにいる。
しかし何も言わなければ、ガスパーの主張が有利になる。
「恐れながら議長、発言しても?」
鬱々とした表情で、フレッチャー公爵が立ち上がった。
「許可する。」
「そもそも我々は待ち伏せと言う主張自体、受け入れておりません。これはアズマ・サークが南の国に非礼を働き、それを抑える為に軍を用いたと言う話です。そして南の国からの書類に嘘はありません。書類は即死者5名、重傷者50名ほどとなっていて、軽度負傷者60名というのは、ミード伯爵が南国軍隊長から聞いたと勝手に言っているに過ぎません。聞き間違いや重軽傷者との被りも考えられます。そうなれば書類通り、100人ほどの軍だったと我々は考えています。」
当初の勢い無く、フレッチャー公爵は淡々と告げた。
その発言にどれだけの力があるかはさておき、何も言わぬままにするよりはいい。
とは言えミード伯爵は切り捨てるか。
まぁこの場合、そうするしかないよな。
すがるような目をするミード伯爵を冷たく一瞥し、フレッチャー公爵は席に座る。
あの時、おとなしく退場させられていればこんな事にならなかったのに。
目覚めた蛇蝎の牙が、人知れず静かに1匹の鼠を噛み殺した。
音もなく、誰にも気づかせずに。
俺はそれを黙って見ていた。
フレッチャー公爵の言葉は、ミード伯爵以外の人間にとってはさして重くはなかった。
誰ももう、何の証拠も勢いもない彼らの主張に信頼を置いていないからだ。
確かにこの場合こちらが真実なのだからそれでいいが、法廷は白か黒かを決める場所だ。
そして流れを掴み、場の信頼を得たものの勝ちとなる。
言い換えれば、白すら黒と社会に認めさせる事も可能なのだ。
それが前回の俺の戦犯判決だ。
そして今、その場に、一匹の若き蛇が立っている。
おそらく彼がその気になれば、白すら黒に変えることもできるだろう。
彼はそう言う男だ。
この場にいる多くの者がそれを感じ取っていた。
……蛇って孤独だな。
俺はガスパーの背を見てそう思った。
静けさと冷たさとその力とその牙と。
支配力が強い故に、誰もが畏怖し近づく事を避ける。
だから蛇はいつでも一人で穴に潜っているんだ。
そんな事を思う。
俺の手は、まだ届くだろうか?
こいつにまだ届くだろうか?
話し合いを終えた議長がガスパーを見た。
「証明は難しいと言ったな?」
「はい。」
「だが裏付けはできると?」
「はい。」
「ではそれを見てから考えよう。」
「ありがとうございます。では今朝お願いしました、臨時証言者の証言を取りたいと思います。南部国境警備隊員の入廷を求めます。」
「許可する。」
その返答に、ガスパーは小さく息を吐くと、席に戻ってきた。
開いている事が辛いのか、眼鏡を外して目頭を押さえる。
「大丈夫か?」
「ああ、問題ねぇよ。」
「ぶっ。」
「何だよ?ムカつくな?」
「いや、ごめん。あれだけ喋ってるのに戻ってくるといつものガスパーの喋り方だから、ちょっと安心した。」
思わす笑ってそう言うと、ガスパーは虚を突かれた様な顔をした後、笑ってため息をついた。
「何か、アイツの気持ちがちょっとわかったわ。」
「アイツ??」
「イヴァンだよ、いつもいい子ぶってやがる気持ち悪い張り子の偽善者。」
「お前……っ!幼馴染に酷いな?!」
「知ってんだろ?たまに化けの皮が剥がれんの。」
「化けの皮って……たまに息抜きがしたいだけだろうが。」
「だよな。俺は既に窒息しそうだ。良くやるよな~、アイツ。俺にはぜってぇ無理。」
「ははは、俺もお前がずっとあれだったらちょっと気持ち悪いわ。」
「だよな?俺らしくねぇ。」
「ああ、お前らしくない。でも、ちょっと格好いいわ。たまにならこれも有りだな~。眼鏡エロいし。」
俺がそう言うと、ガスパーは途端に顔を赤くして、アワアワと俺を睨んだ。
「……バッ!バッカじゃねぇの?!何なんだよ?!エロいって?!本当、お前、最低だなっ?!」
「はいはい、どうせ俺は最低なエロ研究者です~。それよりほら、国境警備隊の人、来てくれたぞ。」
「あ~、後、どれぐらいこれやんないとなんねぇんだよ~。全く……。」
「ごめんな~、俺、脳筋だからさ~。頼りにしてる。」
「嫌味か。」
ガスパーは俺をひと睨みすると、眼鏡をかけて深呼吸すると、資料を手に取った。
「………ありがとな、サーク。」
ガスパーはぼそっとそう言うと席を立った。
俺は笑ってそれを見送る。
俺には大した事はしてやれない。
それでも、その横にいてやる事ぐらいはとりあえずできるのだなと思った。
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