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第八章③「帰国裁判」
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南部国境警備隊員は朝に連絡を受けてすぐぶっ通しで馬を走らせてきてくれたようで、証言台に立った時にはまだ汗だくだった。
備え付けの水を一気に飲み、汗を拭いていた。
「遠い所から突然お呼び立てしまして申し訳ありません。来てくださった事を心から感謝申し上げます。」
「いえ、こちらこそついたばかりで汗だくで、このような場でお見苦しい事をお許しください。」
ガスパーはまず、来てくれた事に礼を述べ頭を下げた。
国境警備隊員もそれに答えて頭を下げる。
「証言をお願いしても?お名前は?」
「はい。私は南部国境警備隊歩兵員、オラシオ・P・ルーニーです。主に見回り警備を担当しています。」
無理なお願いに駆けつけてくれたルーニーさんは、赤毛のちょっとヒョロっとした感じの若者だった。
俺達よりちょっと若い感じで、まだ警備隊に入って数年ぐらいの真面目で素朴そうな人だった。
「ありがとうございます。ルーニー氏はライオネル第三王子殿下が南の国の友好訪問から帰国された日、警備を担当されていましたか?」
「はい。私はあの日、午後は国境正門付近の見回り担当になっており、正門東側を巡回していました。」
「正確な時間をお伺いしても?」
「はい。正門東側は13時から18時までの担当でした。」
「それは勤務表などで確認する事はできますか?」
「はい。可能です。」
ガスパーはやはりここでも時間を細かく確認していた。
後々必要になってくるからだ。
事情はわかっているのだが、俺は少し不安を持っていた。
「ありがとうございます。あの日あった事、見た事を13時からお話して頂けますか?」
「はい。まず、正門東側の警備に入る前ではありますが、午前10~12の間に早馬が来て、ライオネル殿下が急遽帰国をされると連絡を受けました。その際、私は早朝から国境壁外の見回りを担当しておりましたので、早馬を見てもいませんし、正確な時間もわかりません。ただ、緊急連絡でその様に聞きました。そしてその準備が進む中、私は13時から正門東側の巡回警備に入りました。」
「何か変わった事や、変わったものを見たりはしましたか?」
「はい。急遽帰国されると言う事で、殿下の警備隊で国境に在留されていたメンバーの方はとても忙しそうでした。私が巡回に入ってすぐ新たな早馬が来ました。帰国の徒につかれた殿下が南の国の軍に襲われた為、数名を残して緊急体制で帰国されるとの事でした。これはさすがに私達にも緊張が走り、休みの隊員も呼び出され、いざと言う時に備える為の会議などが開かれていた様です。私は緊急連絡は受けましたが、通常勤務が入っているものはひとまずそのまま勤務を続けました。慌ただしく警備を始めて1時間ほどたった14時頃、殿下の警備隊のお一人が、大きな荷物を抱えて国境壁外を登る塔を上がっていくのを見ました。殿下が緊急帰国されるのでその準備だと思いましたのでお声がけはしませんでした。国境壁内も最悪の事態に備え、武器庫から武器が出され、手の空いている隊員たちによって壁沿いに並べられていきました。」
俺は目を閉じた。
仕方がないとはいえ、これはいいのだろうか?
俺の中に不安が残っている。
たとえ自分が不利になっても、この作戦は止めるべきだろうか?
正直、判断ができない。
「他には何か見られましたか?」
「はい……これは……お話して良いことなのか分かりかねるのですが……。」
「何でしょう?どんな小さな事でも構いません。」
「はい……その……14時をだいぶ過ぎた頃……国境壁の上に大きなものが突如現れまして……皆、それに気づいてちょっとした騒ぎになりました。」
「時間としては何時頃ですか?」
「すみません、14時をだいぶ過ぎていたとしか……ですが15時よりも前だった事は確かです。」
「14時過ぎから15時前の出来事ですね?ありがとうございます。何を見て騒ぎになっていたのですか??」
「その……それは……信じて頂けないと思いますが……我々は竜を見ました。翼のある、巨大な竜です。それがいつの間にか国境壁の上にいたのです……。」
その言葉に法廷は大きくどよめいた。
あまりのざわめきに、議長が「静粛に」と止める程だった。
俺は顔の前で組んでいた手をグッと握る。
ウィルは多分、証人控室でずっと話を聞いているだろう。
だから今、証言台に立たされたら何を話さなければならないか気づいたはずだ。
俺はウィルを傷つけたくない。
ヴィオールから竜の谷までいきなりつながる事はないだろうが、忘れられて静かに暮らしている谷の人々と純粋無垢な竜達の事を思うと、不安で仕方がない。
俺がそうなのだから、当事者のウィルはもっとそうだろう。
もし嫌なら、不安を感じるなら、証言台に立つことを拒否してくれればいい。
俺はそう祈っていた。
ガスパーは竜の谷の件を知らない。
だからウィルについている精霊の竜に特別な事情があるとは思っていない。
だから何の抵抗もなくこの流れを思いついた。
それは仕方がない。
だって俺は誰にも、シルクにすらウィルの本当の事を話していないのだから。
急にふとギルに、お前は何も話してくれないと責められた事を思い出した。
考えてみれば、俺はシルクが本当はカイナの民である事も話していない。
ギルはシルクから聞いたようで知っているみたいだが、オレはここまでしてくれる仲間に何も話していないのだ。
そういった全てが、何だかんだ重苦しく申し訳なくなった。
シルクやウィルの気持ちも聞いた上で、もう、皆には話して良いのかもしれない。
ガスパーは続けた。
「14時過ぎから15時前に国境壁の上に竜を見たのですね?ルーニー氏以外に、何人ぐらいそれを見ましたか?」
「万が一の備えをしていたので、付近にはそれなりに隊員がいて、おそらく10人ぐらいは見ていると思います。」
「ありがとうございます。14時過ぎから15時前にルーニー氏を含む、10名ほどの国境警備隊員が国境壁の上に竜を見たのですね?」
「はい。その通りです。」
「その竜はどうなりましたか?」
「私達が騒いでいるうちに飛び立ちました。」
「どちらに?」
「南部です。南の国の方に飛んでいきました。1度上空を旋回してから向かったので間違いありません。」
「それを見ていたのはルーニー氏だけですか?」
「いえ、先程も申し上げた通り、私以外に少なくとも10人は見ています。飛び立ってからは、他の者も見ていると思います。」
「ありがとうございます。その後はどうなったかはご存じですか?」
「いえ、その後すぐライオネル殿下の一団が緊急事態で帰国されたので、それどころではありませんでした。」
「それは何時の事でしたか?」
「はい、殿下が国内に入られましたのが、15時過ぎです。それは記録にも残っていると思います。」
「南軍がその後、国境付近に現れたりはしていますか?」
「いえ、現在も警戒はしておりますが、軍が来た事は今の所ありません。軽度国境閉鎖命令も出ていますので、特使などの他は南の国からは誰も来ておりません。」
「わかりました。遠い所から、急遽来て頂き、ありがとうございました。」
ガスパーは話し終えると、ルーニーさんに頭を下げた。
何かを考えながらふと俺の顔を見る。
そしてひどく驚いたように目を見開いた。
何だろう?
何かあるのか??
俺はよくわからなくて、自分の後ろに何かあるのかと振り返った。
だが何もなくガスパーが何に驚いたのかわからなかった。
何だったんだろう??
「……え?!アイツ、何、怒ってるんだ?!」
顔を戻してガスパーを見ると、物凄く怒った顔をしていた。
凄く睨まれてる……。
ええええぇぇ~?!
何?!何で怒ってるの?!
何をしでかしたのか全く心当たりがなく、俺はビクビクしてしまった。
ガスパーは憤慨した様に足早に法廷人のところに向かう。
何か話していて、法廷人はすぐに外に出て行った。
法廷内はやはり竜の話でざわついていて、さすがにこれはもう、どうこうできる感じではなさそうだった。
法廷人が帰ってきてガスパーと何か話している。
そしてこちらに戻ってきたガスパーは、さっきよりは怒っていないが、それでもまだムッとした顔をしていた。
「アンタ、何しでかしたんだい??あの坊や、相当ご立腹だよ??」
マダムにもそう言われたが、心当たりがない。
俺に怒ってるんだよね??何で??
ガスパーは苛立たしげにこちらに戻ってくると、持っていた資料でいきなり俺の頭を叩いた。
「痛っ?!何怒ってんだよっ?!」
「てめぇがいつも、大事な事を隠すから怒ってんだよっ!!」
その言葉が、ズキリと胸に刺さる。
ガスパーが何に気が付き、何に怒っているのかわかった。
「……ごめん。」
「確かに俺もちゃんと説明せず突っ走ったところはあんけどよ?!気づいた段階で言えよ!そう言うのは!」
「ごめん。」
「ウィルは話すってよ。俺がいいつったけど、話すってさ。」
「……そうか……。」
「まぁ俺も先走っちまったからな。どこまで効果があるかわかんねぇけど少しは対策してやる。だから次からは大事な事は言え、絶対。黙ってんじゃねぇ。計画が狂うだろうがっ!全部じゃなくていい。それは困るなら困るって言え、わかったな?!」
「わかった。すまない、ガスパー。」
ガスパーはガシガシとセットされていた髪を掻きむしった。
何か本当に申し訳なくて言葉が出ない。
「罰として、これが終わったら全身マッサージしろよ、馬鹿野郎。」
そう言ってガスパーは手ぐしで髪を整える。
何か髪が乱れたせいか、いつものガスパーって感じでちょっと嬉しかった。
いや、本当はその気遣いが死ぬほど嬉しかった。
ガスパーは前に出ると、大きく息を吸い込み議長に言った。
「議長!次の証言者を呼ぶ前に!戒厳令、並びに情報規制法、秘密保持契約を望みますっ!!」
ガスパーの声はざわついていた法廷内によく響き、そして周囲の音を消した。
備え付けの水を一気に飲み、汗を拭いていた。
「遠い所から突然お呼び立てしまして申し訳ありません。来てくださった事を心から感謝申し上げます。」
「いえ、こちらこそついたばかりで汗だくで、このような場でお見苦しい事をお許しください。」
ガスパーはまず、来てくれた事に礼を述べ頭を下げた。
国境警備隊員もそれに答えて頭を下げる。
「証言をお願いしても?お名前は?」
「はい。私は南部国境警備隊歩兵員、オラシオ・P・ルーニーです。主に見回り警備を担当しています。」
無理なお願いに駆けつけてくれたルーニーさんは、赤毛のちょっとヒョロっとした感じの若者だった。
俺達よりちょっと若い感じで、まだ警備隊に入って数年ぐらいの真面目で素朴そうな人だった。
「ありがとうございます。ルーニー氏はライオネル第三王子殿下が南の国の友好訪問から帰国された日、警備を担当されていましたか?」
「はい。私はあの日、午後は国境正門付近の見回り担当になっており、正門東側を巡回していました。」
「正確な時間をお伺いしても?」
「はい。正門東側は13時から18時までの担当でした。」
「それは勤務表などで確認する事はできますか?」
「はい。可能です。」
ガスパーはやはりここでも時間を細かく確認していた。
後々必要になってくるからだ。
事情はわかっているのだが、俺は少し不安を持っていた。
「ありがとうございます。あの日あった事、見た事を13時からお話して頂けますか?」
「はい。まず、正門東側の警備に入る前ではありますが、午前10~12の間に早馬が来て、ライオネル殿下が急遽帰国をされると連絡を受けました。その際、私は早朝から国境壁外の見回りを担当しておりましたので、早馬を見てもいませんし、正確な時間もわかりません。ただ、緊急連絡でその様に聞きました。そしてその準備が進む中、私は13時から正門東側の巡回警備に入りました。」
「何か変わった事や、変わったものを見たりはしましたか?」
「はい。急遽帰国されると言う事で、殿下の警備隊で国境に在留されていたメンバーの方はとても忙しそうでした。私が巡回に入ってすぐ新たな早馬が来ました。帰国の徒につかれた殿下が南の国の軍に襲われた為、数名を残して緊急体制で帰国されるとの事でした。これはさすがに私達にも緊張が走り、休みの隊員も呼び出され、いざと言う時に備える為の会議などが開かれていた様です。私は緊急連絡は受けましたが、通常勤務が入っているものはひとまずそのまま勤務を続けました。慌ただしく警備を始めて1時間ほどたった14時頃、殿下の警備隊のお一人が、大きな荷物を抱えて国境壁外を登る塔を上がっていくのを見ました。殿下が緊急帰国されるのでその準備だと思いましたのでお声がけはしませんでした。国境壁内も最悪の事態に備え、武器庫から武器が出され、手の空いている隊員たちによって壁沿いに並べられていきました。」
俺は目を閉じた。
仕方がないとはいえ、これはいいのだろうか?
俺の中に不安が残っている。
たとえ自分が不利になっても、この作戦は止めるべきだろうか?
正直、判断ができない。
「他には何か見られましたか?」
「はい……これは……お話して良いことなのか分かりかねるのですが……。」
「何でしょう?どんな小さな事でも構いません。」
「はい……その……14時をだいぶ過ぎた頃……国境壁の上に大きなものが突如現れまして……皆、それに気づいてちょっとした騒ぎになりました。」
「時間としては何時頃ですか?」
「すみません、14時をだいぶ過ぎていたとしか……ですが15時よりも前だった事は確かです。」
「14時過ぎから15時前の出来事ですね?ありがとうございます。何を見て騒ぎになっていたのですか??」
「その……それは……信じて頂けないと思いますが……我々は竜を見ました。翼のある、巨大な竜です。それがいつの間にか国境壁の上にいたのです……。」
その言葉に法廷は大きくどよめいた。
あまりのざわめきに、議長が「静粛に」と止める程だった。
俺は顔の前で組んでいた手をグッと握る。
ウィルは多分、証人控室でずっと話を聞いているだろう。
だから今、証言台に立たされたら何を話さなければならないか気づいたはずだ。
俺はウィルを傷つけたくない。
ヴィオールから竜の谷までいきなりつながる事はないだろうが、忘れられて静かに暮らしている谷の人々と純粋無垢な竜達の事を思うと、不安で仕方がない。
俺がそうなのだから、当事者のウィルはもっとそうだろう。
もし嫌なら、不安を感じるなら、証言台に立つことを拒否してくれればいい。
俺はそう祈っていた。
ガスパーは竜の谷の件を知らない。
だからウィルについている精霊の竜に特別な事情があるとは思っていない。
だから何の抵抗もなくこの流れを思いついた。
それは仕方がない。
だって俺は誰にも、シルクにすらウィルの本当の事を話していないのだから。
急にふとギルに、お前は何も話してくれないと責められた事を思い出した。
考えてみれば、俺はシルクが本当はカイナの民である事も話していない。
ギルはシルクから聞いたようで知っているみたいだが、オレはここまでしてくれる仲間に何も話していないのだ。
そういった全てが、何だかんだ重苦しく申し訳なくなった。
シルクやウィルの気持ちも聞いた上で、もう、皆には話して良いのかもしれない。
ガスパーは続けた。
「14時過ぎから15時前に国境壁の上に竜を見たのですね?ルーニー氏以外に、何人ぐらいそれを見ましたか?」
「万が一の備えをしていたので、付近にはそれなりに隊員がいて、おそらく10人ぐらいは見ていると思います。」
「ありがとうございます。14時過ぎから15時前にルーニー氏を含む、10名ほどの国境警備隊員が国境壁の上に竜を見たのですね?」
「はい。その通りです。」
「その竜はどうなりましたか?」
「私達が騒いでいるうちに飛び立ちました。」
「どちらに?」
「南部です。南の国の方に飛んでいきました。1度上空を旋回してから向かったので間違いありません。」
「それを見ていたのはルーニー氏だけですか?」
「いえ、先程も申し上げた通り、私以外に少なくとも10人は見ています。飛び立ってからは、他の者も見ていると思います。」
「ありがとうございます。その後はどうなったかはご存じですか?」
「いえ、その後すぐライオネル殿下の一団が緊急事態で帰国されたので、それどころではありませんでした。」
「それは何時の事でしたか?」
「はい、殿下が国内に入られましたのが、15時過ぎです。それは記録にも残っていると思います。」
「南軍がその後、国境付近に現れたりはしていますか?」
「いえ、現在も警戒はしておりますが、軍が来た事は今の所ありません。軽度国境閉鎖命令も出ていますので、特使などの他は南の国からは誰も来ておりません。」
「わかりました。遠い所から、急遽来て頂き、ありがとうございました。」
ガスパーは話し終えると、ルーニーさんに頭を下げた。
何かを考えながらふと俺の顔を見る。
そしてひどく驚いたように目を見開いた。
何だろう?
何かあるのか??
俺はよくわからなくて、自分の後ろに何かあるのかと振り返った。
だが何もなくガスパーが何に驚いたのかわからなかった。
何だったんだろう??
「……え?!アイツ、何、怒ってるんだ?!」
顔を戻してガスパーを見ると、物凄く怒った顔をしていた。
凄く睨まれてる……。
ええええぇぇ~?!
何?!何で怒ってるの?!
何をしでかしたのか全く心当たりがなく、俺はビクビクしてしまった。
ガスパーは憤慨した様に足早に法廷人のところに向かう。
何か話していて、法廷人はすぐに外に出て行った。
法廷内はやはり竜の話でざわついていて、さすがにこれはもう、どうこうできる感じではなさそうだった。
法廷人が帰ってきてガスパーと何か話している。
そしてこちらに戻ってきたガスパーは、さっきよりは怒っていないが、それでもまだムッとした顔をしていた。
「アンタ、何しでかしたんだい??あの坊や、相当ご立腹だよ??」
マダムにもそう言われたが、心当たりがない。
俺に怒ってるんだよね??何で??
ガスパーは苛立たしげにこちらに戻ってくると、持っていた資料でいきなり俺の頭を叩いた。
「痛っ?!何怒ってんだよっ?!」
「てめぇがいつも、大事な事を隠すから怒ってんだよっ!!」
その言葉が、ズキリと胸に刺さる。
ガスパーが何に気が付き、何に怒っているのかわかった。
「……ごめん。」
「確かに俺もちゃんと説明せず突っ走ったところはあんけどよ?!気づいた段階で言えよ!そう言うのは!」
「ごめん。」
「ウィルは話すってよ。俺がいいつったけど、話すってさ。」
「……そうか……。」
「まぁ俺も先走っちまったからな。どこまで効果があるかわかんねぇけど少しは対策してやる。だから次からは大事な事は言え、絶対。黙ってんじゃねぇ。計画が狂うだろうがっ!全部じゃなくていい。それは困るなら困るって言え、わかったな?!」
「わかった。すまない、ガスパー。」
ガスパーはガシガシとセットされていた髪を掻きむしった。
何か本当に申し訳なくて言葉が出ない。
「罰として、これが終わったら全身マッサージしろよ、馬鹿野郎。」
そう言ってガスパーは手ぐしで髪を整える。
何か髪が乱れたせいか、いつものガスパーって感じでちょっと嬉しかった。
いや、本当はその気遣いが死ぬほど嬉しかった。
ガスパーは前に出ると、大きく息を吸い込み議長に言った。
「議長!次の証言者を呼ぶ前に!戒厳令、並びに情報規制法、秘密保持契約を望みますっ!!」
ガスパーの声はざわついていた法廷内によく響き、そして周囲の音を消した。
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