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第八章③「帰国裁判」
人間であるということ
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「……がはっ…がはっ!!」
俺はむせ込みながら血を吐いた。
硬い結界に強くブチ当たった全身がギシギシする。
体中を殴られた様な痛みがある。
俺は信じられないものを見るように呪いを見上げた。
大きくそびえ立つようにそれは禍々しく、少しでも希望を失ったら飲み込まれてしまうと思った。
呪いの周りには、小石のような氷の塊が無数に浮いている。
俺が空気中の水分を氷の粒子に変えたのを逆手に取って、それを集めて小さな氷の塊に変えたのだ。
ブン…ッと微かな音がする。
氷の塊が魔力を帯びる。
その瞬間、無数の小石の礫の様に、それが俺めがけて猛スピードで飛んできた。
咄嗟にシールドを張ったが、次の瞬間には呪い本体から横向きに吹き飛ばされて、また結界の壁に強く打ち付けられた。
何なんだよ、この結界。
入る時は何の抵抗もなく中に入れたのに、これだけ強くブチ当たっても出れないとか、酷すぎないか?!
痛む体を何とか動かして立ち上がり、俺は血の垂れる口元を拭った。
何故、呪いと化しているのに魔力が使える?!
俺はグッと奥歯を噛み締めて呪いを見上げた。
シーサーペントじゃない。
シーサーペントは魔獣の一種だ。
生物・動物から変化した魔獣なら、この状態になってしまえば本能の塊になり、思考能力が残る事はない。
そして思考能力がなければ魔力を制御する事もできない。
つまりこれは魔物が神格化しているものじゃない。
元々、神に近い存在なのだ。
「あ~、何でそんなものを呪いにするんだよ……頭、おかしいだろ……。」
俺は苦しくて悲しくて悔しくて、訳もわからない涙を流した。
だってそれはあまりにも酷すぎる話だ。
呪いになった時、怒りに狂っていたがヴィオールには個としての意志があった。
俺はその声を聞いていた。
だからわかった。
これはシーサーペントじゃない。
海竜を呪いにしたものだ……。
海竜。
ヴィオール達は正しくは飛竜と呼ばれる。
風の王の生み出した、自分の分身に近い翼を持つ竜だ。
元々、神とも呼ばれる精霊の王から直接作り出されたのだ。
神格化しているのではなく、生まれが神に近い存在だ。
竜は精霊の類ではあるが、生物と同じく生まれつき肉体を持っている。
だから竜は精霊獣とも言われる。
風の王の子が飛竜、大地の王の子が地竜、そして水の王の子は海竜だ。
ただ、海竜は少し他の竜と違う。
ある時から人を襲うようになり、食べる為でも生きる為でもない殺戮を繰り返したせいで存在が穢れ、神聖な生き物の枠を外れてしまったのだ。
だから魔物と同じモンスターとされる様になった。
俺がこれをシーサーペントと勘違いしたのは、シーサーペントは魔物から神格化が進んだもので、海竜は神聖な座から落ちたものだから、とても区別がつきにくいのだ。
それに、誰が海竜を呪いにするなんて思う?!
竜の血の呪いになりかねない存在なのに!
だが、完全に呪いと化している海竜は、竜の血の呪いとは違う。
ヴィオールが呪いになっていた時とは明らかに違う。
これが穢れのない竜が呪いになった時と、一度穢れを背負ってしまった竜の差なのだろう。
だからと言ってその力が劣っている訳ではない。
俺がこれをシーサーペントと勘違いしたもう一つの理由は、ボーンさんが可能な限り浄化してくれてあったからだ。
できる限り俺の負担を減らそうと、残っている力の全てを持って浄化してくれてあったからだ。
この呪いが竜の血の呪いより弱いんじゃない。
ボーンさんの浄化によって、すでに呪いが弱められていただけなのだ。
「やっとわかった……。」
何故、海竜が呪いにされているのか?
何故呪いにされた海竜が、第二王子につけられていたのか?
何故、第二王子は呪いを身に宿していても呪われずに居たのか?
その辺の事はわからない。
だがこれがシーサーペントではなくて、海竜なのだと言う事はわかった。
何て酷い事を!
何て悍ましい事を!
俺は色々な思いが訳もなく溢れて、悲しくて哀しくて涙を流し続けた。
海竜が人を襲い始めたのは、海の王が南の国に捕まって兵器にされたからだ。
それに怒ってそうなったのだ。
自分の身を穢しても、海の王を助けようとしたのだ。
なのに人間は、穢に身を落としたとモンスターと同じ扱いをした。
元はといえば、人が手を出してはならない精霊の王に手をつけた事が原因なのに!!
たくさんいた海竜は、モンスターとされた事で討伐対象になり、今では絶滅したと言われている。
なのに……。
「あれ程の事をしておきながら……細々と生き残っていた海竜を見つけ出し……何でわざわざ呪いなんかにするんだよ………っ!!」
ヴィオールを見つけた時も思った。
何でこんなにも純真な存在に対してこんなにも酷い真似ができるのか?
呪いは苦しめられた生き物が苦痛の中で絶望し尽くして生まれるんじゃないのかもしれない。
人の持つ、他の生物にはない残忍さと冷酷さ、傲慢さが具現化しているのかもしれない。
見上げた呪いの目には正気はない。
この世の全てを憎み呪っている。
完全に呪いになっているなら、ヴィオールの様に助けてやれる部分は残っていないだろう。
だったら、早く破壊して解き放ってやるしか助ける方法がない。
俺は泣きながら覚悟を決めた。
こんな酷い事をしておきながら、助ける為とはいえ、呪いを傷つけなければならない事が本当に辛かった。
人間の慢侮さのせいでこうなっているのに、人間の俺が破壊するという形でしか救えない事が辛かった。
「ごめんな……ごめんな……。」
そんな薄っぺらい謝罪の言葉など、呪いにとっては何の意味もないのはわかっていたが、言わずにはおれなかった。
呪いとなった海竜が、怒りと憎しみに泣き叫んでいる。
俺は音消しを解いた。
その声を封じる事のおこがましさにたえられなかった。
途端に結界内は憎悪の音に満ち溢れる。
その音がどんなものでも、割り切れる事のない悲痛な感情に変わって俺の胸に響いた。
ああ、人間はこんなにも欲深くて非道で醜い。
かつてナグラロクが起きて、人間が滅びようとしたのは間違いではなかったのかもしれない。
滅びゆく人間に慈悲をかけて護り、救いの手を差し伸べた精霊の王たちまで私利私欲の為に利用し、その子らさえ死ぬより苦しい呪いにしてしまえるのだから。
俺の心に、闇が降りた。
ジリジリと呪いは俺を包む。
跳ね除けなければ、心を鬼にしてでもこの呪いを壊して開放しなければ、そう思うのに俺の心はどんどん闇に飲まれていく。
本当に?
この呪いを壊す事が、本当にこいつの救いになるのか??
むしろその呪いを開放して、少しでも多くの人間を滅ぼさせてやるのが当然なのではないか??
何故、こんな結界の中に閉じ込めてしまうんだ??
危険だと言うのは、人間側の主張じゃないか?
だってそうだろう?
この呪いを生み出したのは、他でもない人間じゃないか??
ああ、そうだろう??
「サークっ!!」
ハッとした。
呪いに飲まれそうになった俺の耳に、確かにその声は届いた。
我に返り顔を上げて結界の外を見ると、ウィルがこちらに来ようとしていた。
それをシルクやライルが必死に止めている。
結界内にいて何でその声が聞こえたのかはわからない。
でも確かに俺はウィルの声を聞いたのだ。
黒いドロドロとした呪いにまとわりつかれながら、俺の目はそれを見た。
泣きそうなウィルの顔を。
そうだ。
俺は正気に返った。
自分の中の魔力を練り、まとわり付く闇を弾き返す。
ここで俺がやらなければならない。
ウィルは夜の宝石だ。
呪いをどうにかする力は持っている。
だが本人はその方法を知らないのだ。
けれど自分が竜の血の呪いを解ける存在な事は知っている。
もしもここで俺が諦めたら、ウィルは必ず無茶をする。
自分と共にこの呪いを終わらせようとするだろう。
「ごめん……ごめんな……。」
俺は呪いを見上げた。
苦痛と絶望と憎しみに囚われ、泣き叫ぶそれを俺は見上げた。
さっきと同じ謝罪の言葉。
だが今度のそれには、俺の強い意志が宿っていた。
ああ、そうだ。
人間は身勝手で、ご都合主義で、その時に都合のいい事を並べて正義面する。
それは他人事じゃない。
俺もその人間の一人なのだ。
「憎んでくれていい。だって俺は人間だから。卑怯で醜い人間だから。お前を苦しめたヤツと同じ人間だから。卑怯だから憎んでいい。俺は人間だから、お前の苦しみに寄り添う事もせずに、自分の都合の為にお前を破壊する。だから、憎んでいい。」
助けたいなど、何ておこがましい。
結局は自分と自分の周りの都合のいいようにしたいだけだ。
俺は卑怯で醜い人間だ。
それでももがいてみっともなく生き続けるしかないんだ。
薄汚くても、愚かでも、それでも生にしがみついてもがくしかない。
「俺は、俺の為にお前を破壊する。それがどれだけ卑怯で愚かな行いだったとしても!俺は俺の都合の為に!お前を破壊するっ!!」
俺は全身に魔力を行き渡らせて高ぶらせた。
何ができるかなんてわからない。
それでも引き下がる事はできない。
「憎めばいい!俺は薄汚い人間だ!!それから逃げはしないっ!!お前の憎しみを全部俺にぶつければいいっ!!俺は俺の都合でそれを破壊するっ!!」
呪いが一際甲高く吼えた。
あまりの音に、振動で結界にヒビが入る。
俺はその中で自分の魔力を最大限に高めて練り上げた。
俺の魔力の影響もあって、結界にはさらに大きくヒビが入った。
フレデリカさんや師匠、魔術師の皆も、もうおそらく限界なのだ。
ここで全てを終わらせなければならない。
呪いが最期の咆哮とばかりに叫び、俺に向かってきた。
それを俺は飲み込むように自分の魔力の中に引き入れていた。
肉体的にも精神的にも物凄い衝撃が走り、ズドンと鋭く魂が引き裂かれる感覚がした。
俺はむせ込みながら血を吐いた。
硬い結界に強くブチ当たった全身がギシギシする。
体中を殴られた様な痛みがある。
俺は信じられないものを見るように呪いを見上げた。
大きくそびえ立つようにそれは禍々しく、少しでも希望を失ったら飲み込まれてしまうと思った。
呪いの周りには、小石のような氷の塊が無数に浮いている。
俺が空気中の水分を氷の粒子に変えたのを逆手に取って、それを集めて小さな氷の塊に変えたのだ。
ブン…ッと微かな音がする。
氷の塊が魔力を帯びる。
その瞬間、無数の小石の礫の様に、それが俺めがけて猛スピードで飛んできた。
咄嗟にシールドを張ったが、次の瞬間には呪い本体から横向きに吹き飛ばされて、また結界の壁に強く打ち付けられた。
何なんだよ、この結界。
入る時は何の抵抗もなく中に入れたのに、これだけ強くブチ当たっても出れないとか、酷すぎないか?!
痛む体を何とか動かして立ち上がり、俺は血の垂れる口元を拭った。
何故、呪いと化しているのに魔力が使える?!
俺はグッと奥歯を噛み締めて呪いを見上げた。
シーサーペントじゃない。
シーサーペントは魔獣の一種だ。
生物・動物から変化した魔獣なら、この状態になってしまえば本能の塊になり、思考能力が残る事はない。
そして思考能力がなければ魔力を制御する事もできない。
つまりこれは魔物が神格化しているものじゃない。
元々、神に近い存在なのだ。
「あ~、何でそんなものを呪いにするんだよ……頭、おかしいだろ……。」
俺は苦しくて悲しくて悔しくて、訳もわからない涙を流した。
だってそれはあまりにも酷すぎる話だ。
呪いになった時、怒りに狂っていたがヴィオールには個としての意志があった。
俺はその声を聞いていた。
だからわかった。
これはシーサーペントじゃない。
海竜を呪いにしたものだ……。
海竜。
ヴィオール達は正しくは飛竜と呼ばれる。
風の王の生み出した、自分の分身に近い翼を持つ竜だ。
元々、神とも呼ばれる精霊の王から直接作り出されたのだ。
神格化しているのではなく、生まれが神に近い存在だ。
竜は精霊の類ではあるが、生物と同じく生まれつき肉体を持っている。
だから竜は精霊獣とも言われる。
風の王の子が飛竜、大地の王の子が地竜、そして水の王の子は海竜だ。
ただ、海竜は少し他の竜と違う。
ある時から人を襲うようになり、食べる為でも生きる為でもない殺戮を繰り返したせいで存在が穢れ、神聖な生き物の枠を外れてしまったのだ。
だから魔物と同じモンスターとされる様になった。
俺がこれをシーサーペントと勘違いしたのは、シーサーペントは魔物から神格化が進んだもので、海竜は神聖な座から落ちたものだから、とても区別がつきにくいのだ。
それに、誰が海竜を呪いにするなんて思う?!
竜の血の呪いになりかねない存在なのに!
だが、完全に呪いと化している海竜は、竜の血の呪いとは違う。
ヴィオールが呪いになっていた時とは明らかに違う。
これが穢れのない竜が呪いになった時と、一度穢れを背負ってしまった竜の差なのだろう。
だからと言ってその力が劣っている訳ではない。
俺がこれをシーサーペントと勘違いしたもう一つの理由は、ボーンさんが可能な限り浄化してくれてあったからだ。
できる限り俺の負担を減らそうと、残っている力の全てを持って浄化してくれてあったからだ。
この呪いが竜の血の呪いより弱いんじゃない。
ボーンさんの浄化によって、すでに呪いが弱められていただけなのだ。
「やっとわかった……。」
何故、海竜が呪いにされているのか?
何故呪いにされた海竜が、第二王子につけられていたのか?
何故、第二王子は呪いを身に宿していても呪われずに居たのか?
その辺の事はわからない。
だがこれがシーサーペントではなくて、海竜なのだと言う事はわかった。
何て酷い事を!
何て悍ましい事を!
俺は色々な思いが訳もなく溢れて、悲しくて哀しくて涙を流し続けた。
海竜が人を襲い始めたのは、海の王が南の国に捕まって兵器にされたからだ。
それに怒ってそうなったのだ。
自分の身を穢しても、海の王を助けようとしたのだ。
なのに人間は、穢に身を落としたとモンスターと同じ扱いをした。
元はといえば、人が手を出してはならない精霊の王に手をつけた事が原因なのに!!
たくさんいた海竜は、モンスターとされた事で討伐対象になり、今では絶滅したと言われている。
なのに……。
「あれ程の事をしておきながら……細々と生き残っていた海竜を見つけ出し……何でわざわざ呪いなんかにするんだよ………っ!!」
ヴィオールを見つけた時も思った。
何でこんなにも純真な存在に対してこんなにも酷い真似ができるのか?
呪いは苦しめられた生き物が苦痛の中で絶望し尽くして生まれるんじゃないのかもしれない。
人の持つ、他の生物にはない残忍さと冷酷さ、傲慢さが具現化しているのかもしれない。
見上げた呪いの目には正気はない。
この世の全てを憎み呪っている。
完全に呪いになっているなら、ヴィオールの様に助けてやれる部分は残っていないだろう。
だったら、早く破壊して解き放ってやるしか助ける方法がない。
俺は泣きながら覚悟を決めた。
こんな酷い事をしておきながら、助ける為とはいえ、呪いを傷つけなければならない事が本当に辛かった。
人間の慢侮さのせいでこうなっているのに、人間の俺が破壊するという形でしか救えない事が辛かった。
「ごめんな……ごめんな……。」
そんな薄っぺらい謝罪の言葉など、呪いにとっては何の意味もないのはわかっていたが、言わずにはおれなかった。
呪いとなった海竜が、怒りと憎しみに泣き叫んでいる。
俺は音消しを解いた。
その声を封じる事のおこがましさにたえられなかった。
途端に結界内は憎悪の音に満ち溢れる。
その音がどんなものでも、割り切れる事のない悲痛な感情に変わって俺の胸に響いた。
ああ、人間はこんなにも欲深くて非道で醜い。
かつてナグラロクが起きて、人間が滅びようとしたのは間違いではなかったのかもしれない。
滅びゆく人間に慈悲をかけて護り、救いの手を差し伸べた精霊の王たちまで私利私欲の為に利用し、その子らさえ死ぬより苦しい呪いにしてしまえるのだから。
俺の心に、闇が降りた。
ジリジリと呪いは俺を包む。
跳ね除けなければ、心を鬼にしてでもこの呪いを壊して開放しなければ、そう思うのに俺の心はどんどん闇に飲まれていく。
本当に?
この呪いを壊す事が、本当にこいつの救いになるのか??
むしろその呪いを開放して、少しでも多くの人間を滅ぼさせてやるのが当然なのではないか??
何故、こんな結界の中に閉じ込めてしまうんだ??
危険だと言うのは、人間側の主張じゃないか?
だってそうだろう?
この呪いを生み出したのは、他でもない人間じゃないか??
ああ、そうだろう??
「サークっ!!」
ハッとした。
呪いに飲まれそうになった俺の耳に、確かにその声は届いた。
我に返り顔を上げて結界の外を見ると、ウィルがこちらに来ようとしていた。
それをシルクやライルが必死に止めている。
結界内にいて何でその声が聞こえたのかはわからない。
でも確かに俺はウィルの声を聞いたのだ。
黒いドロドロとした呪いにまとわりつかれながら、俺の目はそれを見た。
泣きそうなウィルの顔を。
そうだ。
俺は正気に返った。
自分の中の魔力を練り、まとわり付く闇を弾き返す。
ここで俺がやらなければならない。
ウィルは夜の宝石だ。
呪いをどうにかする力は持っている。
だが本人はその方法を知らないのだ。
けれど自分が竜の血の呪いを解ける存在な事は知っている。
もしもここで俺が諦めたら、ウィルは必ず無茶をする。
自分と共にこの呪いを終わらせようとするだろう。
「ごめん……ごめんな……。」
俺は呪いを見上げた。
苦痛と絶望と憎しみに囚われ、泣き叫ぶそれを俺は見上げた。
さっきと同じ謝罪の言葉。
だが今度のそれには、俺の強い意志が宿っていた。
ああ、そうだ。
人間は身勝手で、ご都合主義で、その時に都合のいい事を並べて正義面する。
それは他人事じゃない。
俺もその人間の一人なのだ。
「憎んでくれていい。だって俺は人間だから。卑怯で醜い人間だから。お前を苦しめたヤツと同じ人間だから。卑怯だから憎んでいい。俺は人間だから、お前の苦しみに寄り添う事もせずに、自分の都合の為にお前を破壊する。だから、憎んでいい。」
助けたいなど、何ておこがましい。
結局は自分と自分の周りの都合のいいようにしたいだけだ。
俺は卑怯で醜い人間だ。
それでももがいてみっともなく生き続けるしかないんだ。
薄汚くても、愚かでも、それでも生にしがみついてもがくしかない。
「俺は、俺の為にお前を破壊する。それがどれだけ卑怯で愚かな行いだったとしても!俺は俺の都合の為に!お前を破壊するっ!!」
俺は全身に魔力を行き渡らせて高ぶらせた。
何ができるかなんてわからない。
それでも引き下がる事はできない。
「憎めばいい!俺は薄汚い人間だ!!それから逃げはしないっ!!お前の憎しみを全部俺にぶつければいいっ!!俺は俺の都合でそれを破壊するっ!!」
呪いが一際甲高く吼えた。
あまりの音に、振動で結界にヒビが入る。
俺はその中で自分の魔力を最大限に高めて練り上げた。
俺の魔力の影響もあって、結界にはさらに大きくヒビが入った。
フレデリカさんや師匠、魔術師の皆も、もうおそらく限界なのだ。
ここで全てを終わらせなければならない。
呪いが最期の咆哮とばかりに叫び、俺に向かってきた。
それを俺は飲み込むように自分の魔力の中に引き入れていた。
肉体的にも精神的にも物凄い衝撃が走り、ズドンと鋭く魂が引き裂かれる感覚がした。
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