欠片の軌跡⑤〜あらがう者たち

ねぎ(塩ダレ)

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第八章③「帰国裁判」

晴れた日の式典

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あぁ、とうとうこの日が来てしまった……。
王宮広場、俺は音楽隊の盛大なファンファーレを聞きながらぐったりと項垂れる。

「しゃんとしやがれ、主役だろうが。」

「好きで主役になったんじゃない……寝てる間に、皆に押し付けられた、ただの人柱じゃねぇか……。」

「どう思おうと、あそこに集まった全員がお前を総代に選んだ。これだけの手柄だ。普通は寝てたら奪われてもおかしくない。俺はそういう事だと思うがな。」

項垂れる俺を肘でどついて、ガスパーはそう言った。
うん、気を使ってくれてありがとう、ガスパー。
でもな?人を見ろ?

ギルド(マダム)→美味しいところはもらうが、政治とか面倒な事には関わりたくない。好きに生きていたい。面倒事は若いのが引き受けるべきだろ?(本当、この人は誰よりも酷い……。)

魔術本部→浮世離れしている。こっちとは感覚が違う。多分、可愛いサークに花を持たせてやろう~的な感覚。(いや気持ちはありがたいですがこんな大事任されても困ります。)

ライオネル殿下→流石は私の騎士です。これでサークを私のロイヤルガードにしても誰も文句は言いませんよね?(その話、まだ生きてるんですね……。)

フレデリカさん→良いのよ、サーク。……スカーレットが貴方に譲るのに私だけ主張するなんて……。(その因縁は何なんですか?!)

ボーンさん→政治とか大嫌い。関わりたくない。静かに余生を過ごしたい。(後100年は生きるだろう癖に)お前がどうにかしやがれ。(酷い。)

レオンハルドさん→私はしがない執事ですので……。その様な大役はサーク様がなさるべきかと。ニコリ。(ロマンスグレーの微笑でそんな事言われたら、俺は言い返せない。狡い…格好いい……。)

宮廷魔術師一同→サークさんを誤解してました!我々は貴方についていきます!(師匠…俺の事をどう話したわけ?!)

第三別宮警護部隊&第五外壁警備の面々→全体の流れに合わせる&面白がっている。(てめぇら、後で覚えてろよ……。)

……………………。

宮廷魔術師たちは何か俺を誤解しているようだが、その他の面々は、絶対、何か強い意志で俺を選んでくれたんじゃない。
間違いなく、自分にとって利になるからとか、面倒くさいから押し付けてきたんだ。
俺がこう言うの不得意なのわかってて!!

「ううっ、もうヤダ。帰りたい……。」

「お前な……式典は始まったばかりだろうが…っ!」

ガスパーが呆れてため息をついた。
そう、今日は例の一件の報告を兼ねた大々的な式典なのだ。
俺はここで皆の代表として、ジョシュア国王陛下からお言葉と爵位と報奨を賜らなければならないのだ。

あぁ、胃が痛い。
吐きそうだ。
日陰属性の人間に、こんな晴れ舞台は半ば死刑台に等しい。

事が事だし、公爵を含む貴族たちが処分された事もあり、国としては国民に王国は安泰である事を大々的に示さなければならないのはわかる。
だからといって、その式典で俺を担ぎ上げなくてもいいだろう……。
爵位とか報奨とか、適当にくれるだけでいいのに……。

広場には城下町の人たちも見に来ている。
多分、面白がって休みの第五外壁警備隊の面々も来てるだろう。
班長とかリグとか絶対、面白がってるはずだ。
なんで俺はこんなたくさんの人の前で晒し者にされないといけないんだろう……。
何も悪い事なんてしてないのに……っ!!
本当、ヤダ、泣きたい。

国民に向けた王様のお話が終わって、とうとう出番が来た。
俺は涙目でぷるぷる震えてガスパーを見る。
さすがのガスパーも俺のそんな顔を見たら可哀想に思ったのか、ちょっと赤くなって困った顔で背中を擦ってくれた。

「まぁ……頑張れ。頭を下げて陛下の言葉を聞いてれば終わるんだからよ……。」

「一緒に行ってくれよ~ガスパー~!!」

「いや、無理だ。ここに並んでやっただけでも感謝しろよ。」

そう、本当はここに俺一人で立って待っている予定だった。
だが俺があまりにも不安がるので、ガスパーがまだ体調が悪いらしいからと言って付き合ってくれたのだ。
ギルとかは離れた指定の場所に座っている。
俺もあっちに座ってたい。
本当、吐きそうだ……。

式典進行係の人が、俺にそろそろ…と声をかけに来た。
ああ!もう!わかったよ!!
たかだが10分くらい頭を下げてれば終わる!!
吐きそうだが踏ん張るしかない。

「これならギルに勝負を挑まれる方が数段マシだが、行ってくる……。」

「おう、行ってこい。」

ガスパーが気合を入れる様に背中を叩いた。
ギル達の方を見ると、シルクが興奮気味に手を振ってる。
何かそのうち横断幕でも出してきそうな勢いだ。
ウィルは静かに笑ってくれた。
やっぱ、ウィルはいい……。
安心感が凄い……。
ギルはと言うと、相変わらずの無表情で俺を見ていて、小さく頷いた。
とりあえず頷き返したけど、なんの頷きなんだろうと思う。

俺は自分が見ている景色が現実なのかわからなくなりながら、国王と王子達が並ぶ演説用テラスの下に設置された壇上に立ち、礼を尽くしてひざまづいた。

「第三別宮警護部隊所属特殊魔術師、アズマ・サーク、この場よりジョシュア・タブ・ファレル・クインサー国王陛下にご挨拶申し上げます。王国の輝ける光、我が王国の明るき未来に感謝いたします。」

とりあえずガスパーがこんな事を言えと教えてくれたものの中で一番短かった挨拶をする。
王国の光つったって、酒飲んで泣いてぐちぐち言う普通の大人だけどね。
まぁ、王様も大変なんだよな。
ジョシュア国王はあの夜とは打って変わって、威厳ある国王の顔で俺を見下ろして立ち上がった。

「よく来た。アズマ・サーク。この度の行いに深く感謝する。」

「私などには勿体無いお言葉。ライオネル殿下並びにこの国の騎士として、皆と共に当然の事をしたまででございます。」

「うむ。今後とも、息子ライオネルと我が国の為に尽して欲しい。」

「もちろんでございます。陛下。」

そこで王様が合図して、書記官が今回の俺の功績を読み上げ始めた。
簡単に言えば、ライオネル殿下を南の国から守り、そして王宮中枢で南の国と手を組んでいた者達の証拠を掴み、西の国で第二王子にかけられた呪いを解いて、クーデターを押さえ込んだと言うものだ。

う~ん、どう聞いても、俺の功績じゃない。
ライオネル殿下を守ったのはそうかもしれないが、南の国と手を組んでいた証拠を持ってきたのはレオンハルドさんだし、第二王子にかけられた呪いを解いたのはボーンさんだし、クーデターを押さえ込んだのはマダム率いるギルドの面々だし、俺の功績じゃない。
なんだって俺が槍玉に挙げられているんだって思う。

「………よって、アズマ・サーク准男爵に、男爵の爵位を与える!また、それに伴い!フライハイトの東北地域の一部を領土として与える!」

は~、やっぱり領土がつくのか~。
どこかで聞いているマダムとボーンさんがほくそ笑んでいるのが目に浮かぶ……。

でもま、遠くないし小さい領土で良かった……。
地方にでかい土地とかもらっても、どうにもできないし……。
爵位も男爵で止まってくれて良かった……。

「また、その従者である武術指導員シルク・イシュケに准男爵の爵位を与える!」

「えっ?!」

離れた場所から、シルクの素っ頓狂な声が聞こえた。
何だよ、ちゃんと話しといただろうが……。
本気にしてなかったのか??

でもウィルの事はここでは言わないんだな?
まぁ、ウィルは俺の従者ではないからな。
俺の功績には関係ないって事だろう。

「他、今回の行いに伴い、その功績を認め、グラント家・ラティーマー家・イニス家・ウォーレン家をはじめとする各家に領土を与える!また、大きな働きをしたウィリアム・ロム・クラフトの身分を復活させ!准男爵とする!」

お?!ウィルの名前も上がった!
架空のクラフト家が本物になっちゃったなぁ~。
ちょっと面白い。

今、ウィルはどんな顔をしてるだろう?
話してあったけど、実際、本当にこの国で爵位を得て、ウィルは今、何を思うだろう?

やっぱり竜の谷の事を思うだろうな……。
ここに形ができてしまった事で、ウィルが竜の谷に帰れなくなったと思って落ち込まないといいけど……。
そこが少し心配になった。

それから、授与される金品の話があったが、この辺はガスパーが適当に振り分けてくれるから聞き流した。
書記官が以上!と声を張り上げる。

やっと終わった……これで晒し者時間終了だ。
ホッとして顔をあげようとしたら、王様がにこやかに立ち上がった。
俺は慌ててまた頭を下げる。

「ご苦労、コーディ書記長。」

ん??
コーディ書記長??

コーディって……ライルの元の名字!!
って事は!!今読んでくれてたのってライルのお父さん?!
いつも迷惑かけてる、変なもの好きのとても気が合いそうなライルのお父さん?!

俺は慌ててちらりと顔を上げたが、コーディ書記長は頭を下げて、目録を畳んで下がる所だった。
うわぁ!!ちゃんと顔を見てなかった!!
結婚式でもお互いちょこまか動き回っていたせいでちゃんとご挨拶できなかったし!!
いつか色々借りたりもらったり(基本ライルが勝手に持ってきちゃってたんだけど)のお詫びとお礼と!!
変わった物好きとして話がしたいと思ってたのにっ!!

そんな俺の気持ちとは関係なく、国王が話し始める。

「今のがこの国から、アズマ・サーク並びにその仲間に贈る報奨となる。しかしアズマ・サーク、私は我が息子達を助けてくれた其方に父親として礼がしたい。」

………は??

ちょっと王様!!
何言い出してるの?!
これ以上、何をしようってんだよ?!

聞いていなかった話が出てきて、俺は壇上で焦りまくる。

「いえ!国王陛下!私は十分、身に余るものを頂きました!これ以上のものは……っ?!」

「国王としてではない。息子達の父親として礼がしたい。嫌か?」

おいおい……。
ここで国王に嫌と言える度胸のある人間がどこにいる?!
いるとしたらマダムぐらいだろうよ。

「いえ……滅相もございません……。」

あ~本当、王様って王様だよな……。
ちょっと本当、どこかズレててお花畑だ……。
これでまた誰かに睨まれたら、俺、どうすればいいんだよ……。

俺の心配通り、貴族たちの席ではひそひそとしたざわめきが起こっている。
今回の報奨は仕方ないにしろ、正直、この展開を快く思わない奴は多いだろう。
しかし王様は気にも止めずににこにこと笑って言った。


「そうか!受け取ってくれるか!実はお主が婚約者と棲む家を探していると聞いてな?心ばかりだが、それを贈らせて貰おう。良いかな?アズマ・サーク男爵?」


は??

今なんて言った??
婚約者と棲む家??


「えええええええぇぇ~っ?!」


俺は思わず叫んだ。
無礼なのも忘れて俺は王様を見上げた。
得意満面に笑った王様が、俺を満足気に見下ろしている。

………マジか。

俺はどうやら、ウィルと住む家を手に入れる事になりそうだった。

って言うか、王様が用意する家って……。
正直、不安しか残らない贈り物だった。
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