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第八章③「帰国裁判」
宮廷晩餐会
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ウィルが俺の襟首を整えてくれた。
「ん。これでよし。」
「ありがと。」
俺はそう返事をしながらウィルを見つめ、にやにやしそうなのを必死に堪えた。
でも見抜かれたのか、ウィルの頬が薄っすら紅色に染まり、ツンとそっぽを向かれた。
「……変な事、考えるの止めろ。」
「あ、うん。ごめん。」
ウィルはライルとサムの結婚式で着ていた正装をしている。
ちなみに俺もあの日と同じく着物を着ていた。
流石に今回は袴も義父さんに頼んで送ってもらった。
だって王様主催のパーティーだし、正装するなら本当きちんと正装しないとまずいし。
そう、俺がにやにやしてしまいそうなのはそのせいなのだ。
ウィルのこの正装衣装は思い出深い。
あの結婚式の日はウィルにスイッチが入っちゃってて物凄かったからさ~。
ちなみにちゃんと魔術で綺麗にしたので、シミとかはない。
ん~。駄目だ、ニヤけてしまう……。
そしたら思い切りデコピンされた。
「痛いっ!!」
「いい加減にしろっ!!」
とうとう怒られた。
ウィルは耳まで赤くしている。
だって仕方ないじゃんよ~。
あんな積極的なウィル、中々見られないんだからさ~。
そしてあの日の熱い思い出は、やはりこの部屋で……。
俺は部屋を見渡した。
俺がこの国に逃げて来て、仕事が決まって住み始めたこの部屋。
正直、感慨深いものがあった。
部屋を見つめる俺の目の色を読取って、ウィルが言った。
「……寂しいか?」
「うん。寂しいよ。ここにはたくさん思い出があるから……。ウィルともはじめて一緒に生活した場所だしね。」
少し感傷的になった俺に、そっとウィルが寄り添ってくれる。
添えられた手を俺は握った。
ウィルと暮らす為に家を買うと決めた時は、その未来を追うのに必死だったけど、いざその時が目の前に現実味を持って姿を表すと、途端に過去に思いを馳せるようになる。
人間の感情って面白い。
いつでも現実から遠い方に惹かれて引っ張られるのだから。
「そろそろ行こう、サーク。」
「うん。」
ここを離れる日ではないのだから、感傷に浸るのはまだ先でいいだろう。
それでも、この場所との縁が薄れてきているのをどこかで感じていた。
「うわ!やっと実物が見れました!」
会場に入り、一番始めに出会ったイヴァンがそう言った。
そんなに着物が見たかったのかよ??
写真見た時は何故か爆笑した癖に??
ちなみにウィルは早々にファンのご令嬢ご子息の集団に捕まってしまい、ここにはいない。
婚約を泣かれてそれをなだめている。
一緒にいようかと言ったが、俺がいると皆の涙が止まらなそうだったので後で落ち合う事になった。
イヴァンと一緒に他の警護部隊員もいて、しげしげともの珍しげに俺を見てくる。
「これが噂の着物か~。」
「何か、ちょっと聞いてたのと違うな??」
「あ~。今日は国王主催の場だから、本当に正装して袴も履いたからな。」
「……帯はどこだよ??」
「ここから見えんだろ?帯はここ。」
なんで帯なんか見たいんだろうと思いながら、羽織を退けて横から袴に隠れている帯を見せてやった。
物凄く真剣に、そして少し怪訝そうにそれを見ている。
何なんだ?いったい??
「これ……どうやるんだ??」
「何だ?着物着てみたいのか??」
「いやそうじゃなくて、あれがさ。」
「あれ??」
「あ~れ~って。」
「……は??」
真剣な顔で聞くから真剣に受け答えしていたのが馬鹿らしくなる。
て言うか、着物って本当、そのイメージしかないのかよ?!
俺は頭を抱えた。
「あのな……着物はそういうものじゃない……。それに、あ~れ~があったとしてもあれは女性の着物での特殊なくだりでだな……。」
何の説明をしているんだ、俺は??
話しながら頭が痛くなった。
イヴァンがゲラゲラ笑っている。
お前……見た目、好青年の癖に、爆笑してんなよ。
そんなイヴァンは北欧の正装なのか、一部動物のファーのついた服を着ていた。
何となくそのもふもふに触る。
「何の毛だ?これ??」
「これは北欧地域にしかいないラピットフッドの一種アンゴレンの毛です。北の国では養殖をしている部族もいて、うちの家が仲介をして輸出もしているんですよ。繁殖力も強いし、肉も毛皮も使えるので北の国の外貨獲得のメインになってますね。」
「流石に詳しいな。」
「そりゃね。」
ちょっと皮肉気味にイヴァンは笑った。
北部方面はウィルを探す旅でちょっとだけ立ち寄っただけで、まだ行った事がない。
北の国に無限に広がると聞いている氷原を想像し、いつか行ってみたいなと思った。
「あっ!!」
後ろからそんな明るい声がかかる。
振り向くとライルがにこにこ笑って小走りに駆けて来た。
ライルは普通に燕尾服を着ている。
「今日の主役っ!!天駆ける竜を頂きに持ち、右手に武の豹、左手に知の蛇を従える男、話題沸騰中のアズマ・サーク男爵じゃないか!!」
「おいっ!嫌味か!!それはっ!!」
満面の笑みでライルは言った。
俺は恥ずかしさで真っ赤になって睨みつける。
ゲラゲラ笑うイヴァン。
本当、ムカつく。
ムカムカ腹を立てる俺の横で、ライルとイヴァンが何故か感慨深げに頷いている。
何なんだよ、お前ら??
「それにしても……とうとうそうなりましたか……。」
「うん。涙無しには語れないよな、俺達。」
「何の話だよ?何の??」
「なんか俺、娘を嫁に出す気分~。」
「わかります。僕も妹が苦労の果にやっとそれを実らせたのを見届けた気分です。」
「何の話をしてんだよっ!おいっ!!」
俺はまた顔を赤くして怒鳴った。
何となく、こいつらの言いたい事がわかったからだ。
「とうとうガスパーもサークのお妾さんの仲間入りか~。良かったような悪いような……。」
「いいじゃないですか、どんな形でも。それがあいつの望みだったんですから……。」
そしてスンスンと泣き真似をしだす。
こいつら、許すまじ!!
完全に頭にきた俺は地団駄を踏んだ。
「いつ俺がガスパーを妾にしたって言うんだよ!!してないしっ!!俺は妾なんて取らない!!ウィル一筋だから!!それにガスパーは!別に俺が従えてないっ!!」
「……俺が何だって?」
突然そんな声がかかり、ぎょっとする。
振り向けば、少し顔を赤くしたガスパーが、物凄く不機嫌そうに立っていた。
ちょっと凝ったデザインで体のラインに合った細身のタキシードを着ている。
なんかここの所常に眼鏡をかけてるけど、とうしたんだろう?
側にいた隊員たちが何故か「おぉ…」と小さな感嘆の声を上げて興奮気味にガスパーを見つめている。
当のガスパーは無言のままカツカツ歩いてくると、ライルとイヴァンの頭を思い切り叩いた。
「何するんだよ?!痛いだろ!ガスパー!!」
「変な事抜かしやがるからだ!!」
「でも事実だろ?」
「張っ倒すぞ!イヴァンっ!!」
イライラしながら真っ赤になって怒鳴りつけている。
こうして見ると今まで通り普通なんだけどな~。
俺は微妙な気分になってそれを見ていた。
この一件で、おそらく一番関係が変わったのはガスパーだと思う。
裁判の後も仕事の役割で俺と一緒にいたもんだから、俺が従えてるとか言われる様になってしまって……。
あの時すぐに否定してれば良かった……。
うっかり「私の参謀」なんて言っちゃったせいで、こんな事になってしまって申し訳ない。
「ごめんな、ガスパー。俺がうっかり言い間違えた上に、すぐに否定しなかったばっかりに……周りに誤解されて妙な事言われるようになっちまって……。」
申し訳なくて、ちょっとしゅんとしてそう言うと、ガスパーは何かもごもご口篭って明後日の方を見た。
ライルとイヴァンがきょとんと顔を見合わせる。
「ガスパー……もしかしてさ……。」
「うるさい。言うな。何も言うな。一生。」
なんかこんな感じの事、前にもあったな??
確かその時はシルクに言っていた。
何なんだ??意味がわからん。
ガスパーとの間に、他になんかあったっけ??
ガスパーの言葉を聞いて、二人は全てを悟ったように頷いた。
「……ガスパーって、やっぱりガスパーなんだな~。なんか安心した。」
「ん~。多分、言わない限りわからないでしょうしね……。」
「なぁ、何なの?!この前から何な訳?!俺が寝てる間に、ガスパーとなんかあったのかよ?!」
何だか妙な雰囲気に耐えきれず俺は聞いた。
ライルとイヴァンはわかりやすく視線を反らせる。
こいつら、絶対、面白がってやがるな……。
俺はぐりんとガスパーに顔を向けた。
こう言うのはちゃんと本人から聞いた方がいい。うん。
俺に見据えられ、ガスパーは若干、あわあわしていた。
「ガスパー、何があったんだ?!」
「う、うるせぇな。何もねぇよ。」
「なくないから!変な感じになってんだろ?!いいからはけっ!!」
俺はガスパーに詰め寄り、逃げようとしたガスパーを後ろから腕を回して首を締めた。
ガスパーがジタバタ暴れる。
「おいっ!止めろっ!苦しいっ!!」
「何があったのか白状しろよっ!!」
「…………てめぇがっ!今日なら俺の横で死んでやるっつったのに…っ!!結局、ウィルの腕の中で死のうとしやがったからっ!!頭にきて!死にかけのお前を引っぱたいたんだよっ!!」
「ふぁっ?!」
俺はそう言われ、慌てて腕を離した。
ガスパーは噎せながら、真っ赤になっている。
俺もカーッと赤くなった。
あ、うん。
そんな約束したわ。
なのにウィルの腕の中で死にかけたわ、確かに……。
「そっ…それは………ごめん……。」
「……別に?俺も死にかけてる奴をひっぱたいたんだし、言うつもりはなかったんだけどよ……。」
ガスパーも分が悪い部分があるせいか、ゴニョゴニョとしどろもどろになっている。
なんかいたたまれなくてオロオロする俺を、ライルとイヴァンが白い目で見ている。
「うわぁ……そんな事、言ってたんだ……サーク……。」
「それを言っといて、あれか~。流石にそれは最低ですね……サークさん……。」
返す言葉もありません……。
俺は項垂れて反省した。
これからは色々、迂闊な事は言わないようにしないとな……。
そんな俺をライルとイヴァンがにやにや見ていたのも、ガスパーがちょっと申し訳なさそうに不貞腐れていたのにも俯いていた俺は気づかなかった。
そんな中、隊員たちが何でだかがっくりと肩を落としている。
「……女神がしばらくいなくなるってのに…俺達には希望は残されてないのかよ……。」
「何で皆、サークなんだよ……何で……。」
「俺らと変わらない平凡顔なのに……。」
なんかよくわからんが俺はディスられてるようだ。
何なんだ??いったい??
俺はよくわからなくて、がっくりと項垂れる彼らを不思議そうに見つめるしかなかった。
「ん。これでよし。」
「ありがと。」
俺はそう返事をしながらウィルを見つめ、にやにやしそうなのを必死に堪えた。
でも見抜かれたのか、ウィルの頬が薄っすら紅色に染まり、ツンとそっぽを向かれた。
「……変な事、考えるの止めろ。」
「あ、うん。ごめん。」
ウィルはライルとサムの結婚式で着ていた正装をしている。
ちなみに俺もあの日と同じく着物を着ていた。
流石に今回は袴も義父さんに頼んで送ってもらった。
だって王様主催のパーティーだし、正装するなら本当きちんと正装しないとまずいし。
そう、俺がにやにやしてしまいそうなのはそのせいなのだ。
ウィルのこの正装衣装は思い出深い。
あの結婚式の日はウィルにスイッチが入っちゃってて物凄かったからさ~。
ちなみにちゃんと魔術で綺麗にしたので、シミとかはない。
ん~。駄目だ、ニヤけてしまう……。
そしたら思い切りデコピンされた。
「痛いっ!!」
「いい加減にしろっ!!」
とうとう怒られた。
ウィルは耳まで赤くしている。
だって仕方ないじゃんよ~。
あんな積極的なウィル、中々見られないんだからさ~。
そしてあの日の熱い思い出は、やはりこの部屋で……。
俺は部屋を見渡した。
俺がこの国に逃げて来て、仕事が決まって住み始めたこの部屋。
正直、感慨深いものがあった。
部屋を見つめる俺の目の色を読取って、ウィルが言った。
「……寂しいか?」
「うん。寂しいよ。ここにはたくさん思い出があるから……。ウィルともはじめて一緒に生活した場所だしね。」
少し感傷的になった俺に、そっとウィルが寄り添ってくれる。
添えられた手を俺は握った。
ウィルと暮らす為に家を買うと決めた時は、その未来を追うのに必死だったけど、いざその時が目の前に現実味を持って姿を表すと、途端に過去に思いを馳せるようになる。
人間の感情って面白い。
いつでも現実から遠い方に惹かれて引っ張られるのだから。
「そろそろ行こう、サーク。」
「うん。」
ここを離れる日ではないのだから、感傷に浸るのはまだ先でいいだろう。
それでも、この場所との縁が薄れてきているのをどこかで感じていた。
「うわ!やっと実物が見れました!」
会場に入り、一番始めに出会ったイヴァンがそう言った。
そんなに着物が見たかったのかよ??
写真見た時は何故か爆笑した癖に??
ちなみにウィルは早々にファンのご令嬢ご子息の集団に捕まってしまい、ここにはいない。
婚約を泣かれてそれをなだめている。
一緒にいようかと言ったが、俺がいると皆の涙が止まらなそうだったので後で落ち合う事になった。
イヴァンと一緒に他の警護部隊員もいて、しげしげともの珍しげに俺を見てくる。
「これが噂の着物か~。」
「何か、ちょっと聞いてたのと違うな??」
「あ~。今日は国王主催の場だから、本当に正装して袴も履いたからな。」
「……帯はどこだよ??」
「ここから見えんだろ?帯はここ。」
なんで帯なんか見たいんだろうと思いながら、羽織を退けて横から袴に隠れている帯を見せてやった。
物凄く真剣に、そして少し怪訝そうにそれを見ている。
何なんだ?いったい??
「これ……どうやるんだ??」
「何だ?着物着てみたいのか??」
「いやそうじゃなくて、あれがさ。」
「あれ??」
「あ~れ~って。」
「……は??」
真剣な顔で聞くから真剣に受け答えしていたのが馬鹿らしくなる。
て言うか、着物って本当、そのイメージしかないのかよ?!
俺は頭を抱えた。
「あのな……着物はそういうものじゃない……。それに、あ~れ~があったとしてもあれは女性の着物での特殊なくだりでだな……。」
何の説明をしているんだ、俺は??
話しながら頭が痛くなった。
イヴァンがゲラゲラ笑っている。
お前……見た目、好青年の癖に、爆笑してんなよ。
そんなイヴァンは北欧の正装なのか、一部動物のファーのついた服を着ていた。
何となくそのもふもふに触る。
「何の毛だ?これ??」
「これは北欧地域にしかいないラピットフッドの一種アンゴレンの毛です。北の国では養殖をしている部族もいて、うちの家が仲介をして輸出もしているんですよ。繁殖力も強いし、肉も毛皮も使えるので北の国の外貨獲得のメインになってますね。」
「流石に詳しいな。」
「そりゃね。」
ちょっと皮肉気味にイヴァンは笑った。
北部方面はウィルを探す旅でちょっとだけ立ち寄っただけで、まだ行った事がない。
北の国に無限に広がると聞いている氷原を想像し、いつか行ってみたいなと思った。
「あっ!!」
後ろからそんな明るい声がかかる。
振り向くとライルがにこにこ笑って小走りに駆けて来た。
ライルは普通に燕尾服を着ている。
「今日の主役っ!!天駆ける竜を頂きに持ち、右手に武の豹、左手に知の蛇を従える男、話題沸騰中のアズマ・サーク男爵じゃないか!!」
「おいっ!嫌味か!!それはっ!!」
満面の笑みでライルは言った。
俺は恥ずかしさで真っ赤になって睨みつける。
ゲラゲラ笑うイヴァン。
本当、ムカつく。
ムカムカ腹を立てる俺の横で、ライルとイヴァンが何故か感慨深げに頷いている。
何なんだよ、お前ら??
「それにしても……とうとうそうなりましたか……。」
「うん。涙無しには語れないよな、俺達。」
「何の話だよ?何の??」
「なんか俺、娘を嫁に出す気分~。」
「わかります。僕も妹が苦労の果にやっとそれを実らせたのを見届けた気分です。」
「何の話をしてんだよっ!おいっ!!」
俺はまた顔を赤くして怒鳴った。
何となく、こいつらの言いたい事がわかったからだ。
「とうとうガスパーもサークのお妾さんの仲間入りか~。良かったような悪いような……。」
「いいじゃないですか、どんな形でも。それがあいつの望みだったんですから……。」
そしてスンスンと泣き真似をしだす。
こいつら、許すまじ!!
完全に頭にきた俺は地団駄を踏んだ。
「いつ俺がガスパーを妾にしたって言うんだよ!!してないしっ!!俺は妾なんて取らない!!ウィル一筋だから!!それにガスパーは!別に俺が従えてないっ!!」
「……俺が何だって?」
突然そんな声がかかり、ぎょっとする。
振り向けば、少し顔を赤くしたガスパーが、物凄く不機嫌そうに立っていた。
ちょっと凝ったデザインで体のラインに合った細身のタキシードを着ている。
なんかここの所常に眼鏡をかけてるけど、とうしたんだろう?
側にいた隊員たちが何故か「おぉ…」と小さな感嘆の声を上げて興奮気味にガスパーを見つめている。
当のガスパーは無言のままカツカツ歩いてくると、ライルとイヴァンの頭を思い切り叩いた。
「何するんだよ?!痛いだろ!ガスパー!!」
「変な事抜かしやがるからだ!!」
「でも事実だろ?」
「張っ倒すぞ!イヴァンっ!!」
イライラしながら真っ赤になって怒鳴りつけている。
こうして見ると今まで通り普通なんだけどな~。
俺は微妙な気分になってそれを見ていた。
この一件で、おそらく一番関係が変わったのはガスパーだと思う。
裁判の後も仕事の役割で俺と一緒にいたもんだから、俺が従えてるとか言われる様になってしまって……。
あの時すぐに否定してれば良かった……。
うっかり「私の参謀」なんて言っちゃったせいで、こんな事になってしまって申し訳ない。
「ごめんな、ガスパー。俺がうっかり言い間違えた上に、すぐに否定しなかったばっかりに……周りに誤解されて妙な事言われるようになっちまって……。」
申し訳なくて、ちょっとしゅんとしてそう言うと、ガスパーは何かもごもご口篭って明後日の方を見た。
ライルとイヴァンがきょとんと顔を見合わせる。
「ガスパー……もしかしてさ……。」
「うるさい。言うな。何も言うな。一生。」
なんかこんな感じの事、前にもあったな??
確かその時はシルクに言っていた。
何なんだ??意味がわからん。
ガスパーとの間に、他になんかあったっけ??
ガスパーの言葉を聞いて、二人は全てを悟ったように頷いた。
「……ガスパーって、やっぱりガスパーなんだな~。なんか安心した。」
「ん~。多分、言わない限りわからないでしょうしね……。」
「なぁ、何なの?!この前から何な訳?!俺が寝てる間に、ガスパーとなんかあったのかよ?!」
何だか妙な雰囲気に耐えきれず俺は聞いた。
ライルとイヴァンはわかりやすく視線を反らせる。
こいつら、絶対、面白がってやがるな……。
俺はぐりんとガスパーに顔を向けた。
こう言うのはちゃんと本人から聞いた方がいい。うん。
俺に見据えられ、ガスパーは若干、あわあわしていた。
「ガスパー、何があったんだ?!」
「う、うるせぇな。何もねぇよ。」
「なくないから!変な感じになってんだろ?!いいからはけっ!!」
俺はガスパーに詰め寄り、逃げようとしたガスパーを後ろから腕を回して首を締めた。
ガスパーがジタバタ暴れる。
「おいっ!止めろっ!苦しいっ!!」
「何があったのか白状しろよっ!!」
「…………てめぇがっ!今日なら俺の横で死んでやるっつったのに…っ!!結局、ウィルの腕の中で死のうとしやがったからっ!!頭にきて!死にかけのお前を引っぱたいたんだよっ!!」
「ふぁっ?!」
俺はそう言われ、慌てて腕を離した。
ガスパーは噎せながら、真っ赤になっている。
俺もカーッと赤くなった。
あ、うん。
そんな約束したわ。
なのにウィルの腕の中で死にかけたわ、確かに……。
「そっ…それは………ごめん……。」
「……別に?俺も死にかけてる奴をひっぱたいたんだし、言うつもりはなかったんだけどよ……。」
ガスパーも分が悪い部分があるせいか、ゴニョゴニョとしどろもどろになっている。
なんかいたたまれなくてオロオロする俺を、ライルとイヴァンが白い目で見ている。
「うわぁ……そんな事、言ってたんだ……サーク……。」
「それを言っといて、あれか~。流石にそれは最低ですね……サークさん……。」
返す言葉もありません……。
俺は項垂れて反省した。
これからは色々、迂闊な事は言わないようにしないとな……。
そんな俺をライルとイヴァンがにやにや見ていたのも、ガスパーがちょっと申し訳なさそうに不貞腐れていたのにも俯いていた俺は気づかなかった。
そんな中、隊員たちが何でだかがっくりと肩を落としている。
「……女神がしばらくいなくなるってのに…俺達には希望は残されてないのかよ……。」
「何で皆、サークなんだよ……何で……。」
「俺らと変わらない平凡顔なのに……。」
なんかよくわからんが俺はディスられてるようだ。
何なんだ??いったい??
俺はよくわからなくて、がっくりと項垂れる彼らを不思議そうに見つめるしかなかった。
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