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第八章③「帰国裁判」
帰るまでが何とやら
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その時、会場が俄に揺れた。
王族の誰かが来たのだろうか?
ちょうど2階のテラス階段の辺りにいたので、反射的に皆で下を見た。
「え?!」
そこに居たのは、ギルとシルクだった。
いつも通り黒の軍服に近い形の立派な正装をして、ギルはシルクをエスコートしている。
「あぁ!女神様っ!!お美しい……っ!!」
「眼福!これぞ眼福っ!!生きてて良かった!!」
女神信者の隊員達がそれを見て祈りだす。
お前ら、そろそろそのギャグから遠のけよ。
スッと柵の側により、イヴァンが黙ってそれを眺めていた。
「……本当に綺麗だ。シルクさん……。」
なんとも言えない顔をしている。
俺はかける言葉が見つからなくて、その横に並んでトントンと背中を叩いてやった。
シルクはクリーム色の異国の踊り子の正装をしていた。
ユニセックスな衣装なのだが、派手ではないのにきらびやかで、魅力的に謎めいていてとても綺麗だった。
何よりその表情だ。
柔らかく微笑み、少し高揚していて色っぽい。
優しい目で、パートナーのギルを見上げて寄り添っている。
ギルもギルで、あんな顔見たことないと言う柔らかな笑みを浮かべて、シルクをエスコートしている。
誰もがひと目で二人の関係を理解し、そしてその雰囲気に飲まれて自然と祝福した。
「……あれが、王国の武術指導を引っ張っている武術士だとは誰も思わないよな……。」
思わずちょっと的外れの事を言ってしまった。
皆がきょとんと俺を見る。
ヤベ、空気読まない発言をしてしまった。
だがその瞬間、イヴァンを含めて皆が吹き出して笑った。
「確かに。あれが噂の武術指導者だとは皆、思わないだろうね~。」
「指導してる時のシルクさん、滅茶苦茶鬼だしな……。」
「そうそう、すぐ「別宮一周して来いっ!」って言うし……。」
「第一警護部隊から視察に来た副隊長の大男をあっさり投げ飛ばして「体幹が甘すぎる!」って怒鳴ってたし……。」
「僕もまだシルクさんに勝てた事ないんですよね……。結構、自信あったのになぁ。」
「いやお前、シルクは演舞の踊り手だぞ?!あいつに武術で勝てんのは師匠のレオンハルドさんぐらいだろうよ……。」
「と言うか、どうりで強い訳だよな。宮廷内で死神と恐れられるレオンハルド・ドイルの愛弟子だったんだからよ……。本当、どこで拾ってきたんだよ?お前??」
「だから西の国の道端に行き倒れてたんだって。俺だってまさかそれが演舞の踊り手だと思わなかったよ……。」
「サークさんの引き寄せ能力って、半端じゃないですよね……。」
そんな事を話しながら上から眺めていると、二人がこちらに気づいた。
シルクが嬉しそうに笑って手を振ってくる。
俺はそれに軽く手を上げて応えた。
「にしても、あいつあんましああいうの着たがらないのにな?どうしたんだ??」
「ああ、今日、ダンスが始まる前の余興で踊る事になってんだよ、シルク。」
「え?!聞いてないぞ?!」
「秘密にしてたらしいよ?何でも主を称える踊りをするからって。」
「サークさんて本当、罪深いですよね~。」
ここに来てはじめてそれを知って俺は赤面した。
ちょっと待て、何だそれは?!
言い様のない気持ちになって、俺はあわあわしてしまった。
「主~っ!!」
そこにちょうど2階に上がってきたシルクが小走りに駆け寄ってきて、どーんと俺に抱きついた。
おいおい、さっきまでのギルとの雰囲気は何だったんだよ?!
「おいっ!やめなさい!シルク!また俺が誤解されるだろうが?!」
「誤解じゃないも~ん。俺、主の愛人でもあるし~。」
「だからやめて!それっ!!人格を疑われるから!俺っ!!」
猫のようにすりすりしてくるシルクを慌てていなす。
シルクは少しぶーたれて、それでも俺の腕に絡みついた。
「それより主!俺、今日主の為に踊るから!ちゃんと見ててねっ!!」
「それ!それな!!お前、それで良いのかよ?!国王主催のパーティーだぞ?!王を称える踊りとかにした方が良くないか?!」
「ちゃんと王様に許可取ったもん!大丈夫だよ!!」
「えええぇぇ~?!」
いつの間にそんな許可取ったの?!
そしてそんな許可出すって、本当、王様もアバウトだよな~。
普通、そんな事許されないぞ?!
「シルク!皆!」
俺がシルクに絡みつかれていると、そんな声がした。
振り向くと俺の格好良くて可愛い俺の婚約者が立っていた。
「ウィルっ!!」
俺が声を上げる前に、シルクがそう言った。
そしてどーんと俺を押しのけると、ウィルの方にすっ飛んで行って、ゴロゴロと甘え出した。
おい、何なんだよ、お前はっ!
「シルク!凄く綺麗だ!とても似合ってるよ!!」
「ありがと、ウィル。ウィルもいつも通りとっても可愛いよ!」
そう言ってシルクはウィルのほっぺにチュッとキスをする。
ガタンと音がしたので振り返ると、女神信者の隊員達が声も出せずに卒倒し、泣いて祈っている。
ヤバイな、お前ら……。
ちょっと引いた。
でもま、確かにこれは……目に余るな??
男装の麗人みたいなウィルとセクシーな踊り子の衣装のシルクが絡んでるんだからな……。
完全に背後に花が咲いてんもん。
周囲にいた人達までアラヤダって顔赤らめてるし、この二人が揃うとヤバイと感じるのはほぼ男集団の警護部隊の連中だけじゃないんだな……。
恐るべし、女神効果……。
「ヤバイな……。」
「そうだな……。」
いつの間にかギルが隣りに居てそう言った。
ちらりと横目で見る。
「……お前、今日、化粧とかしてんのか??」
「いや?何故だ?」
「聞いてみただけ。」
ふ~ん、なら妙にキラキラしてんのは、幸せオーラってやつか。
俺も幸せオーラとか出て、少しは格好良く見えたりしないのかなぁ。
やっぱりそう言うのも美形特権なのだろうか??
狡すぎる……。
「……何、不機嫌になってるんだ?」
「美形に苛ついてんだよ。平凡顔にも何か特権つけろよ……。特権つーかむしろ補正特例予算が必要だ……。」
「何を言っているんだ?お前は??」
俺の訳のわからない返答に、ギルは怪訝な顔をしている。
シルクとウィルがにこにこしながらこちらに来た。
そしてお互いのパートナーの横につける。
「主と何、話してたの?ギル?」
「特例予算がなんたらと言われたんだが、さっぱりわからん。」
「何それ??」
シルクが完全に頭の中を疑問符でいっぱいにしている。
まぁな、いきなりそこだけ言われてもな?
ウィルは話はわからなくとも、それが本当に予算の話ではないだろう事は感じたらしくくすくす笑っている。
腕を組まれ、俺は笑いかけた。
「ファン達は大丈夫?」
「うん。サーク相手じゃ勝てないって諦めてくれた。でもこれからもファンでいてもいいかって言うから、周りの迷惑になるような事は困るから、程々にお願いしますって言ってきたよ。」
「ふ~ん??」
「ふふふ。流石に竜の精霊以上のものは用意できないってさ。」
「あ~。そりゃね。」
あの裁判にはウィルファンの誰かも来ていたようだ。
口止めの魔法はかけられているが、悪意を持ってなければある程度融通がきくらしい。
でも「竜の精霊」なんて話が大々的に噂にならないのだから、ちゃんと口止めの魔法は効いている。
こういう所が魔法と魔術の差だよなと思う。
魔術は数式みたいに1+2=3となったらそれ以外の結果は起こらない。
でも魔法は①~③ぐらいみたいな曖昧さも出せる。
そういう加減が加えられるのは使った魔法師の能力によるっていう部分も魔術と違うなぁと思う。
「ふふっ。結婚指輪も見せて上げれば良かったかな??」
「いや、流石に槍は武器だし持ち込み禁止でしょ?」
「そうだった。」
ウィルはおかしそうに笑っている。
その笑顔を見て安心した。
ウィルはずっと、ファンから自分の望まない方向性を望まれていた。
そしてウィルは迷いながらもそれを演じ続けていた。
それが今、やっとその役目から抜け出したのだ。
逃げも隠れもせず、真正面から彼らに終わりを告げに行ったのだ。
その晴れ晴れとした顔に俺は軽く口づけた。
「サーク、何で額にするんだよ?」
「え?!ここで口チューはまずくない?!」
「まずくない。」
そしてぐいっと顔を捕まれ、唇にキスされる。
あ~もう本当、俺のお姫様は男前すぎる…。
それに応えてその体を引き寄せる。
顔を離すと、腕の中でウィルが幸せそうに笑っていた。
う~ん、美形特権発動してるけどウィルなら許す。
「ちょっと、サーク。自分が注目の男だって事を忘れてないか??」
ライルが呆れた様にそう言った。
え?!と思って周りを見ると、かなりの人が見てるけど見てないフリをしている。
うわぁ……俺はこれでもかと赤くなった。
「主、大胆~。」
シルクがケラケラ笑っている。
俺はいたたまれなくて縮こまった。
それをしてやったり顔のウィルが笑う。
「これで世間もサークが誰のものか認識したな?俺がいない間に手を出そうとする奴もいないよな?サーク?」
「元よりそんな物好きいないし、いたとしても俺はウィルしか愛せないから。」
「わかってないな、本当。サークはもう少し、周りが自分をどう思っているか意識してくれないと。」
何を言ってるんだ?ウィルは??
それはこっちのセリフだっての。
ボーンさんのところに行くんだから心配ないとは思うけど、どこでどんな奴に見初められるともわからないんだから、ウィルこそ気を付けて欲しいよ。
そんな事を話していると、会場が騒がしくなり緊張が走った。
どうやら国王陛下と王子達が姿を表した様だ。
俺達は全体の流れに合わせて下に移動を開始した。
遠くにマダムやボーンさん達がいるのが見えた。
ちゃんと礼服を着ているのでちょっと変な感じだ。
レオンハルドさんの側にイグナスがいる。
俺やシルクに気づいてにこやかに手を上げたので、それに答える。
イグナスはあの後、俺とは違う来賓用王宮別館にいる。
本人は普通に城下町の宿とかに泊まりたいらしいのだが、胸の証拠が証拠だけに王宮は外に出せないと判断したようだ。
協力してもらったのに、可哀想な事になって申し訳ない。
でもイグナスはこう言った場にも対応できるように教育がなされているし、何より南とは違う中央王国の事が今は面白いらしく、図書館に入り浸って本を漁っているらしい。
何かウィルと気が合いそうだけど、あいつも何か惚れっぽそうだからあんまり合わせたくはないのが本音だ。
きらびやかな王宮の晩餐会。
こんなものに出席しなければならない様になるなんて、東の国を出てきてこの国に入った時の俺は考えてもなかったな。
まぁ、本音は今でも出席しなくていいなら出たくないけど。
家にかえるまでが遠足ですよろしく、晩餐会までが式典ですと言う訳だ。
とりあえず前に立って挨拶とかはないはずだけど、早く慣れないこのパーティーが終わってくれるよう、俺はちょっと祈っていた。
王族の誰かが来たのだろうか?
ちょうど2階のテラス階段の辺りにいたので、反射的に皆で下を見た。
「え?!」
そこに居たのは、ギルとシルクだった。
いつも通り黒の軍服に近い形の立派な正装をして、ギルはシルクをエスコートしている。
「あぁ!女神様っ!!お美しい……っ!!」
「眼福!これぞ眼福っ!!生きてて良かった!!」
女神信者の隊員達がそれを見て祈りだす。
お前ら、そろそろそのギャグから遠のけよ。
スッと柵の側により、イヴァンが黙ってそれを眺めていた。
「……本当に綺麗だ。シルクさん……。」
なんとも言えない顔をしている。
俺はかける言葉が見つからなくて、その横に並んでトントンと背中を叩いてやった。
シルクはクリーム色の異国の踊り子の正装をしていた。
ユニセックスな衣装なのだが、派手ではないのにきらびやかで、魅力的に謎めいていてとても綺麗だった。
何よりその表情だ。
柔らかく微笑み、少し高揚していて色っぽい。
優しい目で、パートナーのギルを見上げて寄り添っている。
ギルもギルで、あんな顔見たことないと言う柔らかな笑みを浮かべて、シルクをエスコートしている。
誰もがひと目で二人の関係を理解し、そしてその雰囲気に飲まれて自然と祝福した。
「……あれが、王国の武術指導を引っ張っている武術士だとは誰も思わないよな……。」
思わずちょっと的外れの事を言ってしまった。
皆がきょとんと俺を見る。
ヤベ、空気読まない発言をしてしまった。
だがその瞬間、イヴァンを含めて皆が吹き出して笑った。
「確かに。あれが噂の武術指導者だとは皆、思わないだろうね~。」
「指導してる時のシルクさん、滅茶苦茶鬼だしな……。」
「そうそう、すぐ「別宮一周して来いっ!」って言うし……。」
「第一警護部隊から視察に来た副隊長の大男をあっさり投げ飛ばして「体幹が甘すぎる!」って怒鳴ってたし……。」
「僕もまだシルクさんに勝てた事ないんですよね……。結構、自信あったのになぁ。」
「いやお前、シルクは演舞の踊り手だぞ?!あいつに武術で勝てんのは師匠のレオンハルドさんぐらいだろうよ……。」
「と言うか、どうりで強い訳だよな。宮廷内で死神と恐れられるレオンハルド・ドイルの愛弟子だったんだからよ……。本当、どこで拾ってきたんだよ?お前??」
「だから西の国の道端に行き倒れてたんだって。俺だってまさかそれが演舞の踊り手だと思わなかったよ……。」
「サークさんの引き寄せ能力って、半端じゃないですよね……。」
そんな事を話しながら上から眺めていると、二人がこちらに気づいた。
シルクが嬉しそうに笑って手を振ってくる。
俺はそれに軽く手を上げて応えた。
「にしても、あいつあんましああいうの着たがらないのにな?どうしたんだ??」
「ああ、今日、ダンスが始まる前の余興で踊る事になってんだよ、シルク。」
「え?!聞いてないぞ?!」
「秘密にしてたらしいよ?何でも主を称える踊りをするからって。」
「サークさんて本当、罪深いですよね~。」
ここに来てはじめてそれを知って俺は赤面した。
ちょっと待て、何だそれは?!
言い様のない気持ちになって、俺はあわあわしてしまった。
「主~っ!!」
そこにちょうど2階に上がってきたシルクが小走りに駆け寄ってきて、どーんと俺に抱きついた。
おいおい、さっきまでのギルとの雰囲気は何だったんだよ?!
「おいっ!やめなさい!シルク!また俺が誤解されるだろうが?!」
「誤解じゃないも~ん。俺、主の愛人でもあるし~。」
「だからやめて!それっ!!人格を疑われるから!俺っ!!」
猫のようにすりすりしてくるシルクを慌てていなす。
シルクは少しぶーたれて、それでも俺の腕に絡みついた。
「それより主!俺、今日主の為に踊るから!ちゃんと見ててねっ!!」
「それ!それな!!お前、それで良いのかよ?!国王主催のパーティーだぞ?!王を称える踊りとかにした方が良くないか?!」
「ちゃんと王様に許可取ったもん!大丈夫だよ!!」
「えええぇぇ~?!」
いつの間にそんな許可取ったの?!
そしてそんな許可出すって、本当、王様もアバウトだよな~。
普通、そんな事許されないぞ?!
「シルク!皆!」
俺がシルクに絡みつかれていると、そんな声がした。
振り向くと俺の格好良くて可愛い俺の婚約者が立っていた。
「ウィルっ!!」
俺が声を上げる前に、シルクがそう言った。
そしてどーんと俺を押しのけると、ウィルの方にすっ飛んで行って、ゴロゴロと甘え出した。
おい、何なんだよ、お前はっ!
「シルク!凄く綺麗だ!とても似合ってるよ!!」
「ありがと、ウィル。ウィルもいつも通りとっても可愛いよ!」
そう言ってシルクはウィルのほっぺにチュッとキスをする。
ガタンと音がしたので振り返ると、女神信者の隊員達が声も出せずに卒倒し、泣いて祈っている。
ヤバイな、お前ら……。
ちょっと引いた。
でもま、確かにこれは……目に余るな??
男装の麗人みたいなウィルとセクシーな踊り子の衣装のシルクが絡んでるんだからな……。
完全に背後に花が咲いてんもん。
周囲にいた人達までアラヤダって顔赤らめてるし、この二人が揃うとヤバイと感じるのはほぼ男集団の警護部隊の連中だけじゃないんだな……。
恐るべし、女神効果……。
「ヤバイな……。」
「そうだな……。」
いつの間にかギルが隣りに居てそう言った。
ちらりと横目で見る。
「……お前、今日、化粧とかしてんのか??」
「いや?何故だ?」
「聞いてみただけ。」
ふ~ん、なら妙にキラキラしてんのは、幸せオーラってやつか。
俺も幸せオーラとか出て、少しは格好良く見えたりしないのかなぁ。
やっぱりそう言うのも美形特権なのだろうか??
狡すぎる……。
「……何、不機嫌になってるんだ?」
「美形に苛ついてんだよ。平凡顔にも何か特権つけろよ……。特権つーかむしろ補正特例予算が必要だ……。」
「何を言っているんだ?お前は??」
俺の訳のわからない返答に、ギルは怪訝な顔をしている。
シルクとウィルがにこにこしながらこちらに来た。
そしてお互いのパートナーの横につける。
「主と何、話してたの?ギル?」
「特例予算がなんたらと言われたんだが、さっぱりわからん。」
「何それ??」
シルクが完全に頭の中を疑問符でいっぱいにしている。
まぁな、いきなりそこだけ言われてもな?
ウィルは話はわからなくとも、それが本当に予算の話ではないだろう事は感じたらしくくすくす笑っている。
腕を組まれ、俺は笑いかけた。
「ファン達は大丈夫?」
「うん。サーク相手じゃ勝てないって諦めてくれた。でもこれからもファンでいてもいいかって言うから、周りの迷惑になるような事は困るから、程々にお願いしますって言ってきたよ。」
「ふ~ん??」
「ふふふ。流石に竜の精霊以上のものは用意できないってさ。」
「あ~。そりゃね。」
あの裁判にはウィルファンの誰かも来ていたようだ。
口止めの魔法はかけられているが、悪意を持ってなければある程度融通がきくらしい。
でも「竜の精霊」なんて話が大々的に噂にならないのだから、ちゃんと口止めの魔法は効いている。
こういう所が魔法と魔術の差だよなと思う。
魔術は数式みたいに1+2=3となったらそれ以外の結果は起こらない。
でも魔法は①~③ぐらいみたいな曖昧さも出せる。
そういう加減が加えられるのは使った魔法師の能力によるっていう部分も魔術と違うなぁと思う。
「ふふっ。結婚指輪も見せて上げれば良かったかな??」
「いや、流石に槍は武器だし持ち込み禁止でしょ?」
「そうだった。」
ウィルはおかしそうに笑っている。
その笑顔を見て安心した。
ウィルはずっと、ファンから自分の望まない方向性を望まれていた。
そしてウィルは迷いながらもそれを演じ続けていた。
それが今、やっとその役目から抜け出したのだ。
逃げも隠れもせず、真正面から彼らに終わりを告げに行ったのだ。
その晴れ晴れとした顔に俺は軽く口づけた。
「サーク、何で額にするんだよ?」
「え?!ここで口チューはまずくない?!」
「まずくない。」
そしてぐいっと顔を捕まれ、唇にキスされる。
あ~もう本当、俺のお姫様は男前すぎる…。
それに応えてその体を引き寄せる。
顔を離すと、腕の中でウィルが幸せそうに笑っていた。
う~ん、美形特権発動してるけどウィルなら許す。
「ちょっと、サーク。自分が注目の男だって事を忘れてないか??」
ライルが呆れた様にそう言った。
え?!と思って周りを見ると、かなりの人が見てるけど見てないフリをしている。
うわぁ……俺はこれでもかと赤くなった。
「主、大胆~。」
シルクがケラケラ笑っている。
俺はいたたまれなくて縮こまった。
それをしてやったり顔のウィルが笑う。
「これで世間もサークが誰のものか認識したな?俺がいない間に手を出そうとする奴もいないよな?サーク?」
「元よりそんな物好きいないし、いたとしても俺はウィルしか愛せないから。」
「わかってないな、本当。サークはもう少し、周りが自分をどう思っているか意識してくれないと。」
何を言ってるんだ?ウィルは??
それはこっちのセリフだっての。
ボーンさんのところに行くんだから心配ないとは思うけど、どこでどんな奴に見初められるともわからないんだから、ウィルこそ気を付けて欲しいよ。
そんな事を話していると、会場が騒がしくなり緊張が走った。
どうやら国王陛下と王子達が姿を表した様だ。
俺達は全体の流れに合わせて下に移動を開始した。
遠くにマダムやボーンさん達がいるのが見えた。
ちゃんと礼服を着ているのでちょっと変な感じだ。
レオンハルドさんの側にイグナスがいる。
俺やシルクに気づいてにこやかに手を上げたので、それに答える。
イグナスはあの後、俺とは違う来賓用王宮別館にいる。
本人は普通に城下町の宿とかに泊まりたいらしいのだが、胸の証拠が証拠だけに王宮は外に出せないと判断したようだ。
協力してもらったのに、可哀想な事になって申し訳ない。
でもイグナスはこう言った場にも対応できるように教育がなされているし、何より南とは違う中央王国の事が今は面白いらしく、図書館に入り浸って本を漁っているらしい。
何かウィルと気が合いそうだけど、あいつも何か惚れっぽそうだからあんまり合わせたくはないのが本音だ。
きらびやかな王宮の晩餐会。
こんなものに出席しなければならない様になるなんて、東の国を出てきてこの国に入った時の俺は考えてもなかったな。
まぁ、本音は今でも出席しなくていいなら出たくないけど。
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