欠片の軌跡・外伝

ねぎ(塩ダレ)

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対極線の友情(幼馴染コンビ)

対極線の友情(後編)

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古城につくと、俺達は入り口を探した。

「ガスパー!こっちだ!!」

足が速く俺より先に城についていたイヴァンが叫んでいる。
声の方に向かうと、管理用の入り口のドアの鍵が空いていた。
間違いない。
マックが祖父の家から鍵を借りたか持ち出したかして、中に入ったのだ。
俺達は急いで中に入った。
少し進むと、管理室として使っている様な部屋があった。
イヴァンは素通りしようとしたが、俺は中に入ってそこの書類などを引っ掻き回した。

「ガスパー?!何してるんだ?!」

「馬鹿野郎!!闇雲に向かったって、同じ末路をたどるだけだ!!」

そうだ。
ガキ二人で後を追ったって、ミイラ取りがミイラになるだけ。
少しでも情報が欲しい。

「……あった!!」

俺は書類の中から、比較的新しい地図を見つけた。
それは危険箇所をチェックしているもので、崩れている場所などの記載があった。
他に何かないか一応、目を通すが必要そうな情報は無さそうだ。
待っている間にイヴァンもその辺を漁っていたようで、まだここが公開されていた頃のパンフレットのようなものを見ていた。
俺はそれを横目に落ちていたチョークを2本手に持った。
地図があるからと言って、俺達も迷わないとは限らない。
印をつけながら進むべきだ。
そうすれば後から来る捜索隊も俺達を見つけやすいだろう。

「行くぞ!イヴァン!!」

「うん!」

俺達は中へと進んで行った。




はじめは何となくの痕跡があった。
長い間、立入禁止にされていた場所だ。
埃が新しい侵入者の事を教えてくれる。
だが、段々、あちこちにその痕跡が溢れてしまって、方向がわからなくなってきた。

「クソッ!どっちに行こうか迷ったり、戻ったりしてやがる……っ!!」

声や物音が聞えれば良いのだが、マック達に近づいていないのか、それも聞こえない。
目的地があればまだ良いが、ただ探索しているのだろうから方向が掴めない。

「なぁ。」

「あぁっ?!」

必死に考えているのにわからなくて、声をかけてきたのだイヴァンにキツく当たってしまった。
だがイヴァンは全くそれを気にしなかった。

「俺、思うんだけど、マック達はここに行こうとしてるんじゃないかな??」

ふと見ると、イヴァンはさっきのパンフレットみたいなものを持って来ていて、それを眺めている。
俺はそれを覗き込んだ。

「どこだよ?!」

「ここ。」

パンフレットの簡易的な地図の一部をイヴァンが指差す。
そこには可愛らしいハートマークと天使が書かれていた。

「……何、ここ??」

「吹き抜けになってる祭壇みたいだ。パンフレットによるとここで城の持ち主が結婚式を上げたらしい。とても綺麗で公開されている時は目玉になっていたみたいだな。」

「は??祭壇??何でそんな所に向かうんだよ??」

「マックって、パロマが好きなんだよ。だからここで告白でもしようってんじゃないのかな??」

「…………は??」

俺はきょとんとしてしまった。
マックがパロマを好きなのは何となくわかる。
だが、何でわざわざこんな危険を冒して、そんな場所で告白するんだよ??
訳がわからないと言った顔の俺を見て、イヴァンはため息をついた。

「好きな子の前では格好つけたいだろ?一緒に冒険してドキドキして、そして祭壇の前で告白する。」

「吊橋効果ってことかよ??」

「ん~、それもあるけど、ロマンスだよ。」

「………は??」

俺は物凄く酷い顔をしていたと思う。
イヴァンがぽかんと俺の顔を見た後、爆笑した。

「あはははっ!!ひでぇ顔っ!!ガスパー!面白すぎるっ!!」

「うるせぇなっ!!笑ってる場合じゃねぇだろうが!!」

「ガスパーは好きな人はいないのか?!」

「いねぇっ!!」

「だよなっ!!だからそんな面白い顔するんだもんな?!」

ゲラゲラ笑うイヴァンに何か無性に腹が立って、俺は持ってきた図面の束で頭を引っぱたいた。

「うるせぇっ!!いなくて悪いかっ!!」

「わ、悪くないんだけど、うん。ガスパーにもいつか素敵な恋が訪れる事を祈るよ。」

「祈らなくていいわっ!!」

本当、偽善者のハリボテを脱いだイヴァンは、礼儀正しさなどどこに行ったんだか、失礼極まりない奴だ。
あまりにもゲラゲラ笑うので、俺は真っ赤になった。
好きな奴がいるのがそんなに凄い事なのかよ?!

「いい恋しろよ~?ガスパー?」

「うるせぇっ!!そういうお前はいんのかよっ?!」

「え~??いないよ~??……ぷぷぷ。」

「笑うなっ!!自分もいないくせに笑うんじゃねぇっ!!」

そう怒鳴ってやると、イヴァンは少し落ち着いて、深呼吸している。
そして何故か、少しだけ寂しそうに笑った。

「いないよ。うん。いないんだ……。」

何となくその顔をされると強く言い返せない。
イヴァンの心には、誰にも触れさせない真新しい傷がある。
まだその傷は血が滲んでいるから、触ったら駄目なのだと思えた。

「………で、祭壇にはどうやって行くんだよ?」

「この地図だとここをこう……。」

「こっちの地図で言うと……駄目だ、この道は塞がってる。」

「そうか……だからマック達も戻って来たんだ……なら、ここをこう抜けて……ここに出るルートは?」

俺達は互いの地図を比較しながら、彼らの足取りの予測を立てた。
埃の示す方向と目的地を鑑みて俺達は進む。
やがて近づいてきたのか、物音が聞こえる事があった。
俺達は顔を見合わせて先を急いだ。






ある程度来ると、何やら騒いでいる声がする。
そしてこちらに走ってくる音。

「ケリー?!」

暗い廊下の向こうからかけてくるその人物を見て、イヴァンが声を上げた。
お前、本当に目が良いな?!
よくこの暗がりでこの距離でわかったな??

「ガスパー!イヴァンっ!!何でここに?!」

息を切らせて近づいてきたケリーがそう言った。
俺達を見つけてホッとしたのか、その場にヘタレ混んでしまう。

「入るのが見えて追ってきたんだ!!」

「全員無事かよ?!」

俺達の質問にケリーはハッとして顔を上げた。
その顔を見る限り、あまり良い答えは聞けなそうだ。

「マックとナンシーが変な場所に落ちて!上がってこれないんだ!!」

「怪我をしたのか?!」

「いや!擦りむいたりはしてるけど、動けなくなってるんじゃないよ!!ただいきなり壁が滑り台みたいになって落ちてこっちからはもう見えない!!坂を上がろうにも上がってこれないんだ!!」

俺とイヴァンは顔を見合わせた。
この城の迷路は、いわゆる防犯用だ。
侵入者を落として迷わせる為のもので、おそらくそこに落とす仕掛けに二人は引っかかったのだ。
ただでさえ、崩れ落ちる恐れのある城で、そんな迷路に落ちたらどうなるかわからない。

「落ちたのはマックとナンシーだけか?!」

「うん!」

「このまま進めばそこに出るか?!」

「そう!まっすぐ行って左に曲がったあたりにいる!!」

「ケリーはこのままここを動くな!先生には伝えてあるから、じきに救助が来る!」

「一人で?!」

「馬鹿野郎!仕掛けを見たんだろ?!下手に動いたら助からねぇぞ?!ただでさえ、崩れかけてる城なんだからよ!」

基本的にはイヴァンが話していたが、俺は口を挟んだ。
ケリーはヒッと声を上げると動かなくなる。
本当、馬鹿だな。
後先考えずに行動すっからこうなるんだよ。

「大丈夫、落ち着くんだケリー。ここで待っていれば大丈夫だから。」

「本当?イヴァン……??」

「下手に動かなきゃな。」

「ガスパー、脅すなって……。」

ここに来て俺とイヴァンは無意識に役割分担をした。
イヴァンは優等生らしく指示を出し相手を落ち着け、俺はへそ曲がりらしく脅す事で釘を差す。
互いに顔を見て頷いた。
そしてケリーをその場に残して残りのメンバーの元に向かった。



「ナディム!パロマ!!」

「イヴァン君!ガスパー君っ!!」

「え?!どうして二人がここに?!」

「お前らが入っていくのが見えて、止めに来たんだよ!!馬鹿野郎!!ここがなんて言われてるか知らねぇのかよ!!罠まで作動させやがって!!」

俺が口悪く言うと、イヴァンがまあまあとなだめてくる。
そしてさり気なく、罠をのぞき込んでいる二人をそこから遠ざけた。

「二人はここを動かないで?廊下の真ん中にいて、何も触ったりしたら駄目だよ。先生には知らせてあるから、じきに救助が来るから。」

「ケリーは?!」

「先であったよ、動かないよう言ってある。」

そう言われて二人はホッとした様だった。
俺はイヴァンが二人を落ち着かせている間に、慎重にその穴と周囲を調べた。
ポケットから蛍光石を取り出して中を照らす。
なるほど、ここの燭台がスイッチになっていて、壁の一部がひっくり返り、その先の傾斜につながるようになってるのか……。
滑り台になっている先は見えず、角度もそれなりにあるので、登ってくるのは難しいだろう。

「おい、聞こえるか?!」

「……ガスパー?!君なのか?!」

「何だよ、マック。元気そうじゃねぇか。」

「元気じゃないわよ!真っ暗で怖いわ!血も出てるし……。」

反響しながら、遠くで二人の声が聞こえた。
ナンシーは泣いているのか、鼻を啜る音も聞こえた。
何にしろ良かった。
落ちた場所から動かないでくれたのは助かった。
動き回られたら、それこそ本当に出ては来れなくなっていただろう。

「とにかくそこから動くなよ??じきに救助が来る。下手に動き回るな。お前らのいる所は迷路になってっから、出れなくなるぞ?!」

その瞬間、わっと泣き出す声がした。
多分、ナンシーが恐怖に耐えきれなくなって泣き出したのだ。
やべぇ、怖がってるところに追い打ちをかけちまった。

「ナンシー!落ち着いて!!」

「もうヤダ!!マックのせいじゃないっ!!帰りたいよ!!」

いつの間にか来ていたイヴァンが、苦笑して俺を見た。
全く、泣くくらいなら、こんなところにのこのこついてくるなっての。
俺は苛ついて頭を掻くと、もう一度呼びかけた。

「落ち着けよ、ナンシー。今、明かりを落としてやるから。それ持ってそこでじっとしてろ。」

「大丈夫だよ、ナンシー。先生には知らせてある。じきに救助が来るからね。そこで動かないでじっとしてるんだ。いいね?」

俺に続き、イヴァンが優しい声で語りかけた。
何かこいつ、他人を落ち着かせる系の声が出るな??
ナンシーはしゃくりあげているが、もう、声を上げて泣いてはいなかった。

「なら、明かりを落とすぞ。」

俺はそう言って、蛍光石を滑り台の上を滑らせた。
無事に渡ったようで、嬉しそうな声が聞こえた。
まぁ、これでなんとかなるだろ?
俺とイヴァンは顔を見合わせて笑った。

だがその時だった。

「キャーッ!!」

突然、悲鳴が上がった。
その瞬間、俺は自分の失態に気づいた。

暗い場所に光を落とせば目立つ。
そこに獣でもいたら、襲われる危険が出てくるのだ。
敵を迷わす為の仕掛けだ。
そういったものがいてもおかしくない。
もうずっと使われていなかったのだから獣だって死んでいると思っていたが、それがモンスターの類だったらそうとは限らない。

「しまった!!」

「待て!ガスパー!!」

俺は咄嗟にその滑り台を滑り降りた。
何ができるとかは考えていなかった。
反射的だったのだ。
イヴァンが俺の手を掴もうとしたが、間に合わなかった。

「二人はここにいて!!絶対、動かないで!!」

背後でそんな声がした。
そして俺は長い下り坂を転げるように落ちていき、ドスンと下に落っこちた。
さらに……。

「……ギャーッ!!痛てぇっ!!」

「あ、ごめん。ガスパー。」

落っこちた俺の上に、イヴァンが落ちてきた。
ヤツは俺がクッションになり、無傷でノーダメージだ。
何てムカつくヤツなんだ!本当に!!

俺は打ち身と擦り傷を擦りながら立ち上がった。
そこに見たのは、壁に追い詰められているマックとナンシーだった。
蛍光石は下に落ちていて、彼らを追い詰めているものを背後から照らしていた。
いや…照らしてるって言うか……突き抜けてるって言うか……。
そのモンスターは新たに現れた俺とイヴァンをゆっくり振り向いた。

「……あれって、目は見えてんのか??目玉ないけど?」

「ガスパー…こんな時にくだらない冗談、言わないでくれ……。」

そこに居たのは、一体の骨格標本だった。
モンスターで言うと、スケルトンって言うのか?
要するに骨だ。
なるほどなぁ、ここで迷って死んだ敵兵がこうなる訳か。
だとしてもかなり年代がたっていて、霊体的にはあまり強くない。
もう、この世への未練も恨みもほとんど忘れている残り火に過ぎない。
これぐらいなら俺も怖くねぇ。

「スケルトン…いや、スケルトンメイルか??」

「だとしても強くねぇ。こいつの魂はもう消えかけてる。1回崩せば、再生できるほどのエネルギーもねぇよ。」

「……そう言うのわかるのか?ガスパー?」

「ちょっとだけな。」

「冒険者とか探求者に興味ない??」

「そんな不安定で疲れる職業には興味ない。」

「何だ、もったいない。」

イヴァンはそう言ったが早いが、錆びたボロボロの剣を構えるスケルトンに、何の躊躇もなく向かっていった。

「は?!お前?!何やって?!」

4対1だし、これだけ弱いなら逃げながら子供でも石とかそのへんのものを投げつけてれば、いずれ倒せるだろうと思っていた俺の考えとは裏腹に、イヴァンは素早い動きでスケルトンに攻撃を仕掛けた。

あ~、そうか。
小さくともこいつはイニス家の男だ。
しかもセカンドネームが一つだけ。
つまり、領主として北の国と交流し見張る役割ではなく、ロイヤルソードとなれるトップレベルの戦士にする為に育てられてきた筈だ。
しかもこいつには、初めてあった時に感じたあの戦闘好きな野生動物のような本性がある。
そこから考えれば、当然、嬉々として戦闘を選ぶだろう。

ヤツは武器は持っていないが、優れた体術でスケルトンを翻弄していく。
もう、バッキバキに骨を折りまくっている。
見てて気持ちがいいというか、スケルトンが成すすべもなくて可哀想に思えてくる。
自分より大きな骨を相手に、まるで遊んでいるようにズタボロにしていく。

「………怖いわ…。」

ナンシーが呟いて、マックの背中に隠れた。
まぁ、これを見たらな?怖いよな?
スケルトンがじゃなくて、イヴァンが。

弱肉強食、野生動物の世界。
その姿、まさに小さな白熊。
北欧の王者だ。

カラン、と音を立てて、スケルトンの骨がすべて床に落ちた。
ふーとばかりに汗を拭うその姿は、無駄に爽やかで逆に怖い。

「もう、大丈夫だよ?ガスパーが言うには、再生しないらしいから。」

にっこり笑ってマックとナンシーを振り返ったイヴァンだったが、二人にめちゃくちゃ怯えられて、キョトンとしていた。
俺は後ろから近づき、頭を書類でポカンと叩いた。

「本気出しすぎだ、お前。怖えよ。」

「え?ええっ?!」

「いくら将来、ロイヤルソードになるからって、張りきりすぎなんだよ、お前。」

「え?イヴァン君て、ロイヤルソードになるの??」

「あ、うん。うちの家、皆、ロイヤルソードになるよ??」

「だからそんなに強いのか~!びっくりした!!」

怖がっていた二人も、こいつが将来のロイヤルソードの卵だと知って、ホッと笑顔を見せた。
イヴァンだけがよくわからず、きょとんとしたままだった。

そんな事をしているうちに救助隊が来て、俺達は外に出る事が出来たのだった。
当然、マック達はお叱りを受け、俺達も大人に任せるべきだったと軽く怒られた。








あれから、やっぱり俺達は必要以上に関わらなかった。
ただイニス家は代々ロイヤルソードを出す家なので、代々宰相を出しているうちとは親同士が交流があって、同級生なのだからと、度々親が単身でこちらに来ているイヴァンを招いて食事をしたり顔を合わせたりもした。
だからうちに遊びに来ては、俺が構わないもんだから、イヴァンはナルヒェンを可愛がっていた。

つかず離れず必要以上に関わらず。

お互いの事がわかるから、相手がどうしようと特に何か言ったりもしない。
俺が不良とつるむようになってもどんなバカをやっても、イヴァンは他の人間とは違い、相変わらずだった。
離れもしないし、必要以上に関わってくる訳でもない。

でも、何かある度に俺達は視線を合わせた。
それで何故か殆どの場合は会話が成り立ってしまい、わざわざ言葉に出して話す必要がなかった。

ただ、なんとなくの交流はずっと続いた。

困っていたり行き詰まっていたりすると、お互い何となくわかって何となく会う。
話す事もあれば、何も話さない時もある。
一方的にどっちかが話して、どっちかは聞いているだけだったりもした。

「……そうか。ナルヒェンもとうとう大往生か~。」

「あぁ。最後まで里親が見つかんなかったわ。」

「お前、まだそれ言うんだ??」

イヴァンが可笑しそうにゲラゲラ笑った。
本当、このハリボテの下の顔はいつまでたってもガキみてぇなままだ。

ナルヒェンというのは猫の仮名だ。
ちなみに意味は「お馬鹿ちゃん」だ。
バカ猫だからそう呼んでいた。
俺は生き物があまり好きではなかったから、ずっと里親を探していたのだが、結局、死ぬまで見つからなかった。

「寂しいか?」

「全く?」

「ふ~ん??」

イヴァンはニヤニヤ笑った。
本当に癇に障る男だ。

「そう言えば、あれはどうなったんだ??」

「あれって何だよ??」

「会うたびにギャンギャン話していた人がいただろ??平民上がりの魔術師の騎士だっけ??」

その瞬間、俺は言葉に詰まってしまった。
かあっと顔に血が登るのは、あいつがムカつく奴だからだ。
そんな俺の顔を見て、イヴァンはうんうんと意味有りげに笑う。

「何だよ!その反応はっ!!」

「いやぁ、ガスパーがそこまでねぇ~。いつもは早々に泣き寝入りするのに……。どんな人なのかな~。」

「だからスゲームカつく奴だって言ってんだろうがっ!!」

「はいはい。いつもそうだよな、お前。好きな人できるとさ。」

「俺はあいつなんか好きじゃないっ!!大嫌いだっ!!本当にムカつくっ!!」

「ん~。突っかかってばっかりだと、今回も誤解されたままになるぞ?」

「誤解なんかねぇよっ!!」

「傍から見てると凄いわかりやすいのになぁ。何で毎回、相手は気づかないんだろうなぁ~。まぁ、そういうタイプが好きなんだろうけどさ。」

「うるせぇぞ!イヴァンっ!!」

いつか弁当を取り合った時のように、俺達はたいてい木の下にいた。
別宮の庭園の木の下でたいていは顔も合わさず、木を挟んで背中合わせに話をする。
近くても、並んで、と言う距離じゃない。
微妙に離れて座る。
そんな関係なのだ。
俺とイヴァンは。

イヴァンがあまりにもくだらない事を言うので、俺は付き合ってられないとばかりに立ち上がった。
何、訳のわからない事を言ってるんだ。
俺はあいつなんか好きじゃない!!
変な誤解をされたせいで、顔から火が出そうだ。

「いい恋しろよ~??」

怒って立ち去る俺に、イヴァンはそう声をかけてきた。
お前もなと言ってやりたかったが、言葉が出なかった。





幼馴染、とは少し違うのかもしれない。

正反対で、好きか嫌いかで言えば、別に好きじゃない。
友達かと言われれば、友達とも言いきれない。

それでも、あの幼い日。

俺達は互いに互いを理解した。


そう、言うなれば、俺達の関係は、

「幼馴染」と言うより「理解者」なのかもしれない。
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