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36話
翌日。
わたくしはエドガー様と庭を眺めながら、昨日ロイドお兄様が宣言した『市場案内』を思い返していた。
「市場デート、ですね……」
「デートと言い切ったね、ミリアン」
「だって、あれはどう見たって……でしょう?」
エドガー様は苦笑しつつ、わたくしの頭をぽんと撫でる。
そんな穏やかな午後だったが、その頃、当の二人はというと。
ーーーー
ロイドとソニアは、朝の王都市場へ向かっていた。
大通りには、威勢のいい商人たちの声が響き渡る。
「思ったより賑やかな場所なのですね」
「王都の心臓だからね。辺境の市場と比べると、だいぶ雑然として見えるかもしれない」
「いえ……とても活気があって、素敵ですわ」
ソニアの瞳は楽しげに輝いていた。
魚の匂い、焼き菓子の甘い香り、そして香辛料の刺激的な香り、市場には色々な魅力がある。
「ソニア嬢、これなんかどうだい?」
ロイドが手にして差し出したのは、鮮やかな柑橘の果物。
店主が胸を張って言う。
「お嬢さん、美人だから今日は特別におまけするよ! どうだい?」
「まあ、わたくしが美人だなんて……」
「本当のことだよ」
ロイドがさらりと言うものだから、ソニアは一瞬きょとんとし、すぐに頬がほんのり色づいた。
「あ、ありがとうございます」
その照れた声を聞き、店主は大笑いしながら果物の代金を少しまた、まけてくれた。
もしかしてこれは順調に仲が深まっているのでは?
ーーーー
二人は市場の奥へ進む。
香辛料の店でソニアがくしゃみをし、ロイドがハンカチを差し出す。
小さな花屋で、ソニアが迷っていた白い花をロイドが買う。
端から見れば、完全に恋人同士のような光景が続いていった。
「こんなに……こんなに王都が楽しい場所だとは思いませんでした」
「案内した甲斐があったよ。ソニア嬢の笑顔を見られた」
「ロイド様。あなたは、女性を喜ばせるのがお上手なのですね」
「誰にでもするわけではないよ。それより、辺境伯家の令嬢がこんなに人付き合いが良いなんて僕は驚いているよ」
「わたくしは……ただ、あなたが話しやすいだけですわ」
その言葉にロイドは一瞬固まり、次いで照れ隠しのように頭をかいた。
「それは……光栄だ」
その瞬間、周囲の喧騒がふっと遠のいたように感じた。
目が合い、頬が赤らむ二人。
市場のざわめきの中、小さな世界がそこだけ別に存在しているようだった。
ーーーー
「なあ、ミリアン。ロイド殿は……ソニア嬢のことをどう思っているんだろうね?」
「見たままではなくて? 完全に心奪われているわ」
「はは、そうか」
エドガー様は微笑み、そっとわたくしの手を握った。
わたくしは胸の奥が温かく満ちていくのを感じた。
「そういえばエドガー様、このまま上手くいけばロイドお兄様は次男ですわよね。それでソニア様は一人娘、ロイドお兄様が辺境伯家に婿養子に入れば周りは皆安泰ですわね」
「おいおい、随分と気が早いな」
エドガー様が隣で苦笑する。
わたくしは思わず伯父様の顔が浮かんでニンマリしていた。
すると隣でアンがいつもの笑顔を向ける。
「お嬢、いえ奥様、そのお顔とても淑女とは思えません」
いつものアンがそこにいた。
わたくしはエドガー様と庭を眺めながら、昨日ロイドお兄様が宣言した『市場案内』を思い返していた。
「市場デート、ですね……」
「デートと言い切ったね、ミリアン」
「だって、あれはどう見たって……でしょう?」
エドガー様は苦笑しつつ、わたくしの頭をぽんと撫でる。
そんな穏やかな午後だったが、その頃、当の二人はというと。
ーーーー
ロイドとソニアは、朝の王都市場へ向かっていた。
大通りには、威勢のいい商人たちの声が響き渡る。
「思ったより賑やかな場所なのですね」
「王都の心臓だからね。辺境の市場と比べると、だいぶ雑然として見えるかもしれない」
「いえ……とても活気があって、素敵ですわ」
ソニアの瞳は楽しげに輝いていた。
魚の匂い、焼き菓子の甘い香り、そして香辛料の刺激的な香り、市場には色々な魅力がある。
「ソニア嬢、これなんかどうだい?」
ロイドが手にして差し出したのは、鮮やかな柑橘の果物。
店主が胸を張って言う。
「お嬢さん、美人だから今日は特別におまけするよ! どうだい?」
「まあ、わたくしが美人だなんて……」
「本当のことだよ」
ロイドがさらりと言うものだから、ソニアは一瞬きょとんとし、すぐに頬がほんのり色づいた。
「あ、ありがとうございます」
その照れた声を聞き、店主は大笑いしながら果物の代金を少しまた、まけてくれた。
もしかしてこれは順調に仲が深まっているのでは?
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二人は市場の奥へ進む。
香辛料の店でソニアがくしゃみをし、ロイドがハンカチを差し出す。
小さな花屋で、ソニアが迷っていた白い花をロイドが買う。
端から見れば、完全に恋人同士のような光景が続いていった。
「こんなに……こんなに王都が楽しい場所だとは思いませんでした」
「案内した甲斐があったよ。ソニア嬢の笑顔を見られた」
「ロイド様。あなたは、女性を喜ばせるのがお上手なのですね」
「誰にでもするわけではないよ。それより、辺境伯家の令嬢がこんなに人付き合いが良いなんて僕は驚いているよ」
「わたくしは……ただ、あなたが話しやすいだけですわ」
その言葉にロイドは一瞬固まり、次いで照れ隠しのように頭をかいた。
「それは……光栄だ」
その瞬間、周囲の喧騒がふっと遠のいたように感じた。
目が合い、頬が赤らむ二人。
市場のざわめきの中、小さな世界がそこだけ別に存在しているようだった。
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「なあ、ミリアン。ロイド殿は……ソニア嬢のことをどう思っているんだろうね?」
「見たままではなくて? 完全に心奪われているわ」
「はは、そうか」
エドガー様は微笑み、そっとわたくしの手を握った。
わたくしは胸の奥が温かく満ちていくのを感じた。
「そういえばエドガー様、このまま上手くいけばロイドお兄様は次男ですわよね。それでソニア様は一人娘、ロイドお兄様が辺境伯家に婿養子に入れば周りは皆安泰ですわね」
「おいおい、随分と気が早いな」
エドガー様が隣で苦笑する。
わたくしは思わず伯父様の顔が浮かんでニンマリしていた。
すると隣でアンがいつもの笑顔を向ける。
「お嬢、いえ奥様、そのお顔とても淑女とは思えません」
いつものアンがそこにいた。
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