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鏡月 五希の愛は空っぽで(7)
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心地よい風が吹く今日、
一人の少女は屋敷から旅立とうとしていた。
「…では、今までお世話になりました」
宮本 夢乃は感謝の気持ちを込めてお辞儀した。
「本当に行ってしまうのですね…」
「はい、後悔はありません」
見送りに出ていた切島は少し寂しそうな表情で立っていた。
「守屋さんと川村さんも寂しがっていましたよ」
「嬉しいですね……そう思ってくれていることが、とても」
「…旦那様は、なんと?」
「了承してくれました。それに、あの写真もお渡ししましたから…」
少し沈黙がながれる。
「五希さん………五希様は、今も自室に?」
「えぇ、お見合いの話しもなくなって…それからずっと部屋に閉じこもっています」
「そうですか…」
夢乃は荷物を持ち上げて改めて切島と向き合う。
「でも、この恋に後悔はありません!夢のような時間を過ごせて、幸せでした」
「そう…あなたがそう言うなら、私は何も言わないわ」
「どうして、あの写真を私の部屋の前に置いたんですか?」
夢乃は真っ直ぐな目で見つめながら切島に問う。
切島は口元を手で少し隠して何かを考える。
そして微笑みながら言った。
「浮気をしている人なんて、誰だって嫌じゃない」
「ふふっ……そうですね」
「愛する人は一人だけでいい」
「切島さんも愛する人がいるのですか?」
「そうですね……私の一方的な気持ちですけど、心から愛しています」
「へぇ~…どんな方なんですか?」
「神様のような存在、でしょうか」
「会ってみたかったなぁ~…」
「実は、その方にあの写真を宮本さんに届けるよう指示されたんです」
「えっ?」
「だから私はその指示に従っただけで、何もしていないのですよ……全てはあの方のおかげ。あの方があなたを救ったのです」
切島は祈るように手を握りしめ、うっとりした表情で言った。
「そうだったんですね……その方にお礼を言うべきですね」
「私からお伝えしておきましょうか」
「はい、お願いします」
夢乃はもう一度切島に頭を下げ、
そして旅立つ。
「…お元気で」
誰が、
何に対して言ったのか。
夢見るメイドは魔法と恋を置いて屋敷を後にした。
メイドが旅立つ姿を窓から眺める人物がもう一人。
メイドの姿が見えなくなるまで外を眺めていた。
しばらくするとドアの音がした。
「どうぞ」
部屋に招き入れる。
「今、屋敷を出ました」
「そうみたいね」
「感謝を伝えてほしいと…」
「感謝だなんて、私はただ目的のために利用しただけなのにね」
「いいえ、あなた様が彼女を救ったのです!」
声量を大きくして訴えるメイド ー 切島は、
目の前で座っている神に言った。
「私は、あなた様のお力になれて嬉しいのです…!私を使ってくれるだなんて、こんな光栄なことはありません」
「……そうね、今回はあの写真のおかげで果たせたから。あなたのおかげよ、ありがとう」
「お役に立てて光栄です…!」
切島は神に膝まずき、
忠誠を誓う。
その姿を神は頬杖をついて見下ろしていた。
一人の少女は屋敷から旅立とうとしていた。
「…では、今までお世話になりました」
宮本 夢乃は感謝の気持ちを込めてお辞儀した。
「本当に行ってしまうのですね…」
「はい、後悔はありません」
見送りに出ていた切島は少し寂しそうな表情で立っていた。
「守屋さんと川村さんも寂しがっていましたよ」
「嬉しいですね……そう思ってくれていることが、とても」
「…旦那様は、なんと?」
「了承してくれました。それに、あの写真もお渡ししましたから…」
少し沈黙がながれる。
「五希さん………五希様は、今も自室に?」
「えぇ、お見合いの話しもなくなって…それからずっと部屋に閉じこもっています」
「そうですか…」
夢乃は荷物を持ち上げて改めて切島と向き合う。
「でも、この恋に後悔はありません!夢のような時間を過ごせて、幸せでした」
「そう…あなたがそう言うなら、私は何も言わないわ」
「どうして、あの写真を私の部屋の前に置いたんですか?」
夢乃は真っ直ぐな目で見つめながら切島に問う。
切島は口元を手で少し隠して何かを考える。
そして微笑みながら言った。
「浮気をしている人なんて、誰だって嫌じゃない」
「ふふっ……そうですね」
「愛する人は一人だけでいい」
「切島さんも愛する人がいるのですか?」
「そうですね……私の一方的な気持ちですけど、心から愛しています」
「へぇ~…どんな方なんですか?」
「神様のような存在、でしょうか」
「会ってみたかったなぁ~…」
「実は、その方にあの写真を宮本さんに届けるよう指示されたんです」
「えっ?」
「だから私はその指示に従っただけで、何もしていないのですよ……全てはあの方のおかげ。あの方があなたを救ったのです」
切島は祈るように手を握りしめ、うっとりした表情で言った。
「そうだったんですね……その方にお礼を言うべきですね」
「私からお伝えしておきましょうか」
「はい、お願いします」
夢乃はもう一度切島に頭を下げ、
そして旅立つ。
「…お元気で」
誰が、
何に対して言ったのか。
夢見るメイドは魔法と恋を置いて屋敷を後にした。
メイドが旅立つ姿を窓から眺める人物がもう一人。
メイドの姿が見えなくなるまで外を眺めていた。
しばらくするとドアの音がした。
「どうぞ」
部屋に招き入れる。
「今、屋敷を出ました」
「そうみたいね」
「感謝を伝えてほしいと…」
「感謝だなんて、私はただ目的のために利用しただけなのにね」
「いいえ、あなた様が彼女を救ったのです!」
声量を大きくして訴えるメイド ー 切島は、
目の前で座っている神に言った。
「私は、あなた様のお力になれて嬉しいのです…!私を使ってくれるだなんて、こんな光栄なことはありません」
「……そうね、今回はあの写真のおかげで果たせたから。あなたのおかげよ、ありがとう」
「お役に立てて光栄です…!」
切島は神に膝まずき、
忠誠を誓う。
その姿を神は頬杖をついて見下ろしていた。
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