十番目の愛

夜宮 咲

文字の大きさ
74 / 84

真実(3)

しおりを挟む
「返す…?」

"名前"というのは、おそらく"十和"のこと。


「そうだよ、お姉様の名前は十一歌の名前なの」

「つまり、本来はあなたが十番目になるはずだった…」

「そうなのっ!なのに、お姉様が現れたせいで十一歌は十番目どころか、お父様の子どもにもなれないところだったんだよ?」


十一歌は頬を膨らませて怒った様子で言った。その間、ゼロは黙ってこちらの会話を耳にしている。十一歌は手に持っているナイフをひらひらと回しながら話しを続けた。


「でも十一歌はお父様の子どもになれると思っていたから、すっごく悲しかったの。だって、十一歌が貰うはずだった位置を突然他の誰かに奪われちゃったんだよ?だから、必死にお願いしたの。十番目じゃなくてもいいから、私を捨てないでって」


私はゼロに視線を向けた。彼は何も喋らず、座っているイスに背をあずけ、後ろにある窓から外を眺めている。


「それでね、十一歌は十番目にはなれなかったけど、十一番目としてお父様の子どもになれたんだぁ~」


十一歌はにこにこ笑い嬉しそうに言った。


「でも、やっぱり気になったの。十一歌の十番目を誰が奪ったのか」

「…どうしてそこまで十番目にこだわるの?」

「だって!本当は十一歌のだったんだよ!?それをお姉様が取ったの!!」


十一歌は私を睨みつけてそう言った。


「それに、お父様がお姉様を特別扱いしてるのは見ててわかるもん。みんなもそう思ってたよ。だから、みんなお姉様のこと嫌ってたんじゃないかな?十一歌もすごく嫌だった。だって、本当なら十一歌が可愛がられるはずだったんだもん」


どうやら十一歌は、十番目になることでゼロから愛情を受けることができる、という考えを持っているようだ。

ゼロが私を特別扱いしていたのは、私がゼロの娘の子、つまりゼロと血縁関係があるからだ。だから、数字は全く関係ない。この事実を十一歌は知らないから十番目に執着する。

私は、十一歌が書斎に来てから思っていたことを口にした。


「ところで、その格好は何?」

「気づいてくれたのぉ?お姉様を意識したんだぁ」

「どうして血がついてるの?それに、そのナイフも……あなた、何をしていたの?」


私の問いかけに対して十一歌は満面の笑みを浮かべた。


「十一歌ね、お姉様になればいいんだ!って思ったの」

「私に…」

「十番目にはなれなかったけど、お姉様みたいに振る舞えばお父様が十一歌のことも可愛がってくれると思って!だから、顔も髪色も服も…お姉様に似せてみたんだけど、どうかなぁ?結構頑張ったんですよぉ?その、青い目は真似できなかったけど、それ以外は似てるでしょ?」


十一歌はワンピースの裾を軽く持ち、その場でくるくると回ってみせた。
おかしいとは思っていた。今までほとんど関わりがなかった十一歌が急に私にくっついてくる時があった。あれは、私を間近で観察していたんだ。私になるために。


「私を真似てもあなたの名前は変わらない。私という人間は、私しかいないんだから」

「そう……そうなの…」


十一歌は少し俯きながつぶやいた。


「容姿を似せてもダメ……じゃあ、何もかも同じにすればいい」


十一歌は顔を上げた。その顔には薄く笑みが浮かんでいる。


「十一歌ね、さっき見ちゃった」


ナイフの刃先をゆっくりこちらに向ける。


「お姉様が、お兄様を刺したと・こ・ろ♪」


十一歌の口角が上がる。私を見ながら楽しそうに笑う。

書斎の空気がどんどん重くなっていくような気がした。

この状況でもゼロは平然とし、ただ外を眺めていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

処理中です...