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水泳の時以来、僕は春近に目を付けられ
ている。僕が靴箱で上履きに履き替えて
いると、後ろからランドセルを叩かれた
り、提出物のプリントやノートを日直が
回収する時にはわざと僕のを回収されな
いようにしたり。嫌がらせ、というかほ
ぼいじめだ。でも、まわりは何も言わな
い。僕を庇えば同じように春近から嫌が
らせをされると思っているから。春近が
してくることは僕からすれば面倒くさい
な、と思うだけで別に弱音を吐きたくな
るようなことではない。それに、紘希や
他の人は普通に話をかけてくれるし、嫌
がらせ以外はいつも変わらないから別に
苦ではない。
「そういうところが気にくわねぇって思ってるんだろ」
体育館でバスケットボールの試合をして
いる最中、待機中のステージの上で紘希
は言った。
「気にくわない?僕が?」
「都会から来た転校生で頭が良い、苦手と言いつつスポーツもできる」
「だからあれはたまたまだって」
「それに俺ほどじゃないけど顔もいい」
「確かに紘希はかっこいいよね」
「おっ、サンキュー」
「はぁ~面倒くさいんだよなぁ、春近の嫌がらせ…」
「助けてやりたいのはやまやまだけど、俺も春近に歯向かうの勇気いるんだよなぁ~。あいつの親、偉い人だし」
紘希によると、春近の父親はこの町の町
長。つまり、この町で1番偉い人だそう
。だから先生も春近が少々悪いことをし
てもあまり追求はしないらしい。ようは
まわりから甘やかされているってことか
。ドラマとかでよくいる金持ちの悪役み
たいだな。
「あと、お前かっこいいじゃん」
「かっこよくはないけど…別に、それは関係なくない?」
「いやぁ~お前って結構モテるんだぞ?クラスの女子がいっつもコソコソ話してるの聞こえるもん」
「それが嫌がらせとどう繋がるんだよ」
「春近はな、小1からずっ……と!片思いしてる奴がいるんだよ」
授業が終わって体操服から着替え終えた
僕達は教室に戻り、先生が来るまで話し
ながら待っていた。そこへ春近がズカズ
カとやって来る。春近は僕の席の前に来
るとジロジロと僕を見て、それから机に
置いてあった筆箱を取るとチャックを開
けて中の物を全部出した。僕の席のまわ
りに物が撒き散らかる。
「拾えよ」
春近はニヤニヤしながら僕を見た。
僕はそんな彼を見て溜息をつき、落とさ
れた物を拾う。拾っていると、視界に手
がはいってきた。顔を上げると、クラス
の女子が一人、落とされた物を一緒に拾
ってくれていた。
「はい、これ」
彼女は拾った分を僕に渡してくれた。
そして、後ろに立つ春近の方を振り返る
。
「春近くん、どうしてこんなことするの?」
「こいつがムカつくからだよ!」
「人の物を乱暴に扱うなんて最低」
「うるっせぇなぁ!関係ないだろ!?」
「先生に言うからね」
「はっ!言っても意味ねぇよ。おい、もう帰ろうぜ」
春近は鼻で笑うと仲間を引き連れて教室
から出て行ってしまった。
「ちょっと!まだ先生来てないでしょーっ!」
彼女の名前は香織(かおる)。
真面目でしっかり者、友達も多い。
クラス内の決め事も率先して前に出てま
とめるタイプ。
そして、春近の好きな人。
結構キツい口調で話していたけど、あれ
は照れ隠しなのか…?小1の頃から片思い
をし続けているってことは相当香織のこ
とが好きなはず。
「優人くん大丈夫だった?」
「うん」
「なんかあったらあたしに言ってね!あたし春近くんのことあんまり怖くないし、強いから!」
香織は自信満々にそう言った。
頼もしい、とは思うけど……。
「うん、ありがとう」
香織に頼ったら嫌がらせが悪化しそうだ
な、と思った僕はとりあえず笑ってそう
答えた。
ている。僕が靴箱で上履きに履き替えて
いると、後ろからランドセルを叩かれた
り、提出物のプリントやノートを日直が
回収する時にはわざと僕のを回収されな
いようにしたり。嫌がらせ、というかほ
ぼいじめだ。でも、まわりは何も言わな
い。僕を庇えば同じように春近から嫌が
らせをされると思っているから。春近が
してくることは僕からすれば面倒くさい
な、と思うだけで別に弱音を吐きたくな
るようなことではない。それに、紘希や
他の人は普通に話をかけてくれるし、嫌
がらせ以外はいつも変わらないから別に
苦ではない。
「そういうところが気にくわねぇって思ってるんだろ」
体育館でバスケットボールの試合をして
いる最中、待機中のステージの上で紘希
は言った。
「気にくわない?僕が?」
「都会から来た転校生で頭が良い、苦手と言いつつスポーツもできる」
「だからあれはたまたまだって」
「それに俺ほどじゃないけど顔もいい」
「確かに紘希はかっこいいよね」
「おっ、サンキュー」
「はぁ~面倒くさいんだよなぁ、春近の嫌がらせ…」
「助けてやりたいのはやまやまだけど、俺も春近に歯向かうの勇気いるんだよなぁ~。あいつの親、偉い人だし」
紘希によると、春近の父親はこの町の町
長。つまり、この町で1番偉い人だそう
。だから先生も春近が少々悪いことをし
てもあまり追求はしないらしい。ようは
まわりから甘やかされているってことか
。ドラマとかでよくいる金持ちの悪役み
たいだな。
「あと、お前かっこいいじゃん」
「かっこよくはないけど…別に、それは関係なくない?」
「いやぁ~お前って結構モテるんだぞ?クラスの女子がいっつもコソコソ話してるの聞こえるもん」
「それが嫌がらせとどう繋がるんだよ」
「春近はな、小1からずっ……と!片思いしてる奴がいるんだよ」
授業が終わって体操服から着替え終えた
僕達は教室に戻り、先生が来るまで話し
ながら待っていた。そこへ春近がズカズ
カとやって来る。春近は僕の席の前に来
るとジロジロと僕を見て、それから机に
置いてあった筆箱を取るとチャックを開
けて中の物を全部出した。僕の席のまわ
りに物が撒き散らかる。
「拾えよ」
春近はニヤニヤしながら僕を見た。
僕はそんな彼を見て溜息をつき、落とさ
れた物を拾う。拾っていると、視界に手
がはいってきた。顔を上げると、クラス
の女子が一人、落とされた物を一緒に拾
ってくれていた。
「はい、これ」
彼女は拾った分を僕に渡してくれた。
そして、後ろに立つ春近の方を振り返る
。
「春近くん、どうしてこんなことするの?」
「こいつがムカつくからだよ!」
「人の物を乱暴に扱うなんて最低」
「うるっせぇなぁ!関係ないだろ!?」
「先生に言うからね」
「はっ!言っても意味ねぇよ。おい、もう帰ろうぜ」
春近は鼻で笑うと仲間を引き連れて教室
から出て行ってしまった。
「ちょっと!まだ先生来てないでしょーっ!」
彼女の名前は香織(かおる)。
真面目でしっかり者、友達も多い。
クラス内の決め事も率先して前に出てま
とめるタイプ。
そして、春近の好きな人。
結構キツい口調で話していたけど、あれ
は照れ隠しなのか…?小1の頃から片思い
をし続けているってことは相当香織のこ
とが好きなはず。
「優人くん大丈夫だった?」
「うん」
「なんかあったらあたしに言ってね!あたし春近くんのことあんまり怖くないし、強いから!」
香織は自信満々にそう言った。
頼もしい、とは思うけど……。
「うん、ありがとう」
香織に頼ったら嫌がらせが悪化しそうだ
な、と思った僕はとりあえず笑ってそう
答えた。
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