Love Potion

煉彩

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真実 9

 情報?どこからそんな……。

「ねぇ。今日の話は本当?私がカフェメニューの監修をするって。説明なんて全く受けてないんだけど!」

「ホント。これからしばらく俺の会社が経営しているカフェで働いてもらう。新メニューに悩んでるって話は事実だしな。それに、これで出かける理由ができただろ?」

「えっ」

「これで俺が美月を呼び出しても、不自然ではない。さっき、連絡先も旦那の前で正式に交換しただろ」
 彼の口角が少し上がった。
 悪い顔。確かに仕事に行くって家を出ても、特別不自然じゃなきゃ怪しまれることもない。

「監修と偽って、また私を呼び出すの?」

「それが一番の目的だけど。監修はあくまでその次」
 彼の返事は即答だった。
 
 彼がチラッと時計を見た。
「もうこんな時間だな。今日は疲れただろ?早く休めよ」
 そう言って玄関に向かった。

「待って!」
 私は加賀宮さんのあとを追う。
 すると彼が振り返り、私の両肩を掴んだ。

「明日の十六時。俺のアパートに来て。久し振りなんだ。覚悟しとけよ」
 唇が耳に当たるんじゃないかと思うような距離で囁かれた。

「えっ!ちょっと!」

「じゃあ、おやすみ」
 玄関の扉がパタンと閉まった。

「なによ、それ……」
 
 寝室に戻り、孝介の様子を確認する。
 いびきをかいて寝ていた。

 急展開すぎて、考えることが多すぎて。頭がパンクしそう。加賀宮さんと出逢ってから、そんなことが増えた。

 シャワーを浴びた後、リビングのソファで一人今日の出来事を振り返る。
 加賀宮さんって、どんな人なの?
 九条グループがお願いするほどの会社の社長だっていうことがわかった。それ以外何も……。
 孝介の言葉を思い出した。洋服のサブスク、カフェ、BARの経営。
 ネットで検索すれば、何か手がかりがあるかもしれない。

 私はスマホを取り出し、彼の苗字と孝介が言ったワードを入れ、検索した。

 すると――。

「あった!」
 思わず声を出してしまった。

 「加賀宮……じん……。代表取締役社長……。会社名は、シリウス」
 
 私は、会社概要を食い入るように見た。
 わかったことは、会社シリウスのこと。
 私が知りたかった彼の情報については、名前くらいしかわからなかった。

「かがみや……。じん。かがみやじん。かがみやじん……」

 加賀宮さんは前から私を知っている。初対面ではないと言っていた。
 小学校や中学校、高校、大学、同級生の名前や何か手がかりはないか一生懸命思い出す。
 下の名前を聞いたら、わかると思ったのに。
 
 加賀宮迅かがみやじん

 彼は一体、誰なんだろう。
 気付いたら、ソファで寝ていた。

「寝ちゃったんだ」
 ベッドで寝るより、よく眠れた気がする。

 自分の身なりを整えていた時だった。
 孝介のスマホのアラームが鳴っている。
 寝室を見に行くと、彼が上半身を起こし、目を擦っていた。

「おはよう。朝食はどうしますか?」

 朝食って言っても、美和さんが作ってくれたものは何もないけれど。

「朝食は要らない。俺、昨日……」
 昨日のことを思い出したみたいだった。

「おい、加賀宮さんは何か言ってたか?お前はなんで起こさないんだよ!」

 朝から怒鳴られ、その声にビクっと反応してしまう。

「加賀宮さんは、あの後すぐ帰りました。特に何も言ってませんでしたけど。何度か起こしたけど、あなたが起きなくて」

 私の言葉を聞き、彼はバッと布団を跳ね除けた。
 ヤバい、また殴られる。
 身体が萎縮してしまったが――。

 孝介はスマホを持ち、誰かに電話をかけている。
 たぶん相手は……。

「あっ。おはよう。父さんに聞いてほしいことがあるんだ。昨日、加賀宮さんとなってさ、実は美月を……」
 
 昨日の出来事を父に報告していた。
 仲良くなったって、変なところでプラス思考なんだから。お義父さんは、何て言うんだろう。
 
 私はリビングに戻ったが、寝室から聞こえてくる孝介の声はとても明るく、笑っている。

「うん!これで会社もまた大きくなる!俺、頑張るからさ?とりあえず、父さんに報告。今日、加賀宮さんと会うんでしょ?俺のこともよろしく伝えておいて」

 声が大きくてほとんど聞こえていた。お義父さんの反応も良いみたいだ。
 
 電話が終わった後、彼は私には何も言わず、シャワーを浴びるため浴室へと向かった。

 あっ。今日、加賀宮さんに呼び出されていること、伝えなきゃ。もしかしたら孝介より帰るのが遅くなるかもしれないし。加賀宮さんの自宅に呼び出しとは言えないけど、カフェメニューのことでって、伝えれば良いよね。
 
 孝介が出勤の準備を終え、カバンを持った。

「あのっ」
 私から話しかけようとしたが
「おい。絶対に失敗するんじゃないぞ。たまたま加賀宮さんに気に入られたからって、あんな粗末な料理、来客に出すなよ。恥ずかしい。彩りも悪かった。まぁ、今回のことは父さんも喜んでくれたし、プラスに動いたけど、今度からあんな出しゃばったマネするなよ。それと、加賀宮さんの会社に迷惑だけはかけるな。俺の評判まで落ちる。今日は帰らない。父さんと今後のことについて話し合うから、実家に泊まる」

 長い嫌みと脅しを交えた言葉を私に伝え、出て行こうとした。
 
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