20 / 64
真実 9
しおりを挟む
情報?どこからそんな……。
「ねぇ。今日の話は本当?私がカフェメニューの監修をするって。説明なんて全く受けてないんだけど!」
「ホント。これからしばらく俺の会社が経営しているカフェで働いてもらう。新メニューに悩んでるって話は事実だしな。それに、これで出かける理由ができただろ?」
「えっ」
「これで俺が美月を呼び出しても、不自然ではない。さっき、連絡先も旦那の前で正式に交換しただろ」
彼の口角が少し上がった。
悪い顔。確かに仕事に行くって家を出ても、特別不自然じゃなきゃ怪しまれることもない。
「監修と偽って、また私を呼び出すの?」
「それが一番の目的だけど。監修はあくまでその次」
彼の返事は即答だった。
彼がチラッと時計を見た。
「もうこんな時間だな。今日は疲れただろ?早く休めよ」
そう言って玄関に向かった。
「待って!」
私は加賀宮さんのあとを追う。
すると彼が振り返り、私の両肩を掴んだ。
「明日の十六時。俺のアパートに来て。久し振りなんだ。覚悟しとけよ」
唇が耳に当たるんじゃないかと思うような距離で囁かれた。
「えっ!ちょっと!」
「じゃあ、おやすみ」
玄関の扉がパタンと閉まった。
「なによ、それ……」
寝室に戻り、孝介の様子を確認する。
いびきをかいて寝ていた。
急展開すぎて、考えることが多すぎて。頭がパンクしそう。加賀宮さんと出逢ってから、そんなことが増えた。
シャワーを浴びた後、リビングのソファで一人今日の出来事を振り返る。
加賀宮さんって、どんな人なの?
九条グループがお願いするほどの会社の社長だっていうことがわかった。それ以外何も……。
孝介の言葉を思い出した。洋服のサブスク、カフェ、BARの経営。
ネットで検索すれば、何か手がかりがあるかもしれない。
私はスマホを取り出し、彼の苗字と孝介が言ったワードを入れ、検索した。
すると――。
「あった!」
思わず声を出してしまった。
「加賀宮……迅……。代表取締役社長……。会社名は、シリウス」
私は、会社概要を食い入るように見た。
わかったことは、会社のこと。
私が知りたかった彼の情報については、名前くらいしかわからなかった。
「かがみや……。じん。かがみやじん。かがみやじん……」
加賀宮さんは前から私を知っている。初対面ではないと言っていた。
小学校や中学校、高校、大学、同級生の名前や何か手がかりはないか一生懸命思い出す。
下の名前を聞いたら、わかると思ったのに。
加賀宮迅。
彼は一体、誰なんだろう。
気付いたら、ソファで寝ていた。
「寝ちゃったんだ」
ベッドで寝るより、よく眠れた気がする。
自分の身なりを整えていた時だった。
孝介のスマホのアラームが鳴っている。
寝室を見に行くと、彼が上半身を起こし、目を擦っていた。
「おはよう。朝食はどうしますか?」
朝食って言っても、美和さんが作ってくれたものは何もないけれど。
「朝食は要らない。俺、昨日……」
昨日のことを思い出したみたいだった。
「おい、加賀宮さんは何か言ってたか?お前はなんで起こさないんだよ!」
朝から怒鳴られ、その声にビクっと反応してしまう。
「加賀宮さんは、あの後すぐ帰りました。特に何も言ってませんでしたけど。何度か起こしたけど、あなたが起きなくて」
私の言葉を聞き、彼はバッと布団を跳ね除けた。
ヤバい、また殴られる。
身体が萎縮してしまったが――。
孝介はスマホを持ち、誰かに電話をかけている。
たぶん相手は……。
「あっ。おはよう。父さんに聞いてほしいことがあるんだ。昨日、加賀宮さんと仲良くなってさ、実は美月を……」
昨日の出来事を父に報告していた。
仲良くなったって、変なところでプラス思考なんだから。お義父さんは、何て言うんだろう。
私はリビングに戻ったが、寝室から聞こえてくる孝介の声はとても明るく、笑っている。
「うん!これで会社もまた大きくなる!俺、頑張るからさ?とりあえず、父さんに報告。今日、加賀宮さんと会うんでしょ?俺のこともよろしく伝えておいて」
声が大きくてほとんど聞こえていた。お義父さんの反応も良いみたいだ。
電話が終わった後、彼は私には何も言わず、シャワーを浴びるため浴室へと向かった。
あっ。今日、加賀宮さんに呼び出されていること、伝えなきゃ。もしかしたら孝介より帰るのが遅くなるかもしれないし。加賀宮さんの自宅に呼び出しとは言えないけど、カフェメニューのことでって、伝えれば良いよね。
孝介が出勤の準備を終え、カバンを持った。
「あのっ」
私から話しかけようとしたが
「おい。絶対に失敗するんじゃないぞ。たまたま加賀宮さんに気に入られたからって、あんな粗末な料理、来客に出すなよ。恥ずかしい。彩りも悪かった。まぁ、今回のことは父さんも喜んでくれたし、プラスに動いたけど、今度からあんな出しゃばったマネするなよ。それと、加賀宮さんの会社に迷惑だけはかけるな。俺の評判まで落ちる。今日は帰らない。父さんと今後のことについて話し合うから、実家に泊まる」
長い嫌みと脅しを交えた言葉を私に伝え、出て行こうとした。
「ねぇ。今日の話は本当?私がカフェメニューの監修をするって。説明なんて全く受けてないんだけど!」
「ホント。これからしばらく俺の会社が経営しているカフェで働いてもらう。新メニューに悩んでるって話は事実だしな。それに、これで出かける理由ができただろ?」
「えっ」
「これで俺が美月を呼び出しても、不自然ではない。さっき、連絡先も旦那の前で正式に交換しただろ」
彼の口角が少し上がった。
悪い顔。確かに仕事に行くって家を出ても、特別不自然じゃなきゃ怪しまれることもない。
「監修と偽って、また私を呼び出すの?」
「それが一番の目的だけど。監修はあくまでその次」
彼の返事は即答だった。
彼がチラッと時計を見た。
「もうこんな時間だな。今日は疲れただろ?早く休めよ」
そう言って玄関に向かった。
「待って!」
私は加賀宮さんのあとを追う。
すると彼が振り返り、私の両肩を掴んだ。
「明日の十六時。俺のアパートに来て。久し振りなんだ。覚悟しとけよ」
唇が耳に当たるんじゃないかと思うような距離で囁かれた。
「えっ!ちょっと!」
「じゃあ、おやすみ」
玄関の扉がパタンと閉まった。
「なによ、それ……」
寝室に戻り、孝介の様子を確認する。
いびきをかいて寝ていた。
急展開すぎて、考えることが多すぎて。頭がパンクしそう。加賀宮さんと出逢ってから、そんなことが増えた。
シャワーを浴びた後、リビングのソファで一人今日の出来事を振り返る。
加賀宮さんって、どんな人なの?
九条グループがお願いするほどの会社の社長だっていうことがわかった。それ以外何も……。
孝介の言葉を思い出した。洋服のサブスク、カフェ、BARの経営。
ネットで検索すれば、何か手がかりがあるかもしれない。
私はスマホを取り出し、彼の苗字と孝介が言ったワードを入れ、検索した。
すると――。
「あった!」
思わず声を出してしまった。
「加賀宮……迅……。代表取締役社長……。会社名は、シリウス」
私は、会社概要を食い入るように見た。
わかったことは、会社のこと。
私が知りたかった彼の情報については、名前くらいしかわからなかった。
「かがみや……。じん。かがみやじん。かがみやじん……」
加賀宮さんは前から私を知っている。初対面ではないと言っていた。
小学校や中学校、高校、大学、同級生の名前や何か手がかりはないか一生懸命思い出す。
下の名前を聞いたら、わかると思ったのに。
加賀宮迅。
彼は一体、誰なんだろう。
気付いたら、ソファで寝ていた。
「寝ちゃったんだ」
ベッドで寝るより、よく眠れた気がする。
自分の身なりを整えていた時だった。
孝介のスマホのアラームが鳴っている。
寝室を見に行くと、彼が上半身を起こし、目を擦っていた。
「おはよう。朝食はどうしますか?」
朝食って言っても、美和さんが作ってくれたものは何もないけれど。
「朝食は要らない。俺、昨日……」
昨日のことを思い出したみたいだった。
「おい、加賀宮さんは何か言ってたか?お前はなんで起こさないんだよ!」
朝から怒鳴られ、その声にビクっと反応してしまう。
「加賀宮さんは、あの後すぐ帰りました。特に何も言ってませんでしたけど。何度か起こしたけど、あなたが起きなくて」
私の言葉を聞き、彼はバッと布団を跳ね除けた。
ヤバい、また殴られる。
身体が萎縮してしまったが――。
孝介はスマホを持ち、誰かに電話をかけている。
たぶん相手は……。
「あっ。おはよう。父さんに聞いてほしいことがあるんだ。昨日、加賀宮さんと仲良くなってさ、実は美月を……」
昨日の出来事を父に報告していた。
仲良くなったって、変なところでプラス思考なんだから。お義父さんは、何て言うんだろう。
私はリビングに戻ったが、寝室から聞こえてくる孝介の声はとても明るく、笑っている。
「うん!これで会社もまた大きくなる!俺、頑張るからさ?とりあえず、父さんに報告。今日、加賀宮さんと会うんでしょ?俺のこともよろしく伝えておいて」
声が大きくてほとんど聞こえていた。お義父さんの反応も良いみたいだ。
電話が終わった後、彼は私には何も言わず、シャワーを浴びるため浴室へと向かった。
あっ。今日、加賀宮さんに呼び出されていること、伝えなきゃ。もしかしたら孝介より帰るのが遅くなるかもしれないし。加賀宮さんの自宅に呼び出しとは言えないけど、カフェメニューのことでって、伝えれば良いよね。
孝介が出勤の準備を終え、カバンを持った。
「あのっ」
私から話しかけようとしたが
「おい。絶対に失敗するんじゃないぞ。たまたま加賀宮さんに気に入られたからって、あんな粗末な料理、来客に出すなよ。恥ずかしい。彩りも悪かった。まぁ、今回のことは父さんも喜んでくれたし、プラスに動いたけど、今度からあんな出しゃばったマネするなよ。それと、加賀宮さんの会社に迷惑だけはかけるな。俺の評判まで落ちる。今日は帰らない。父さんと今後のことについて話し合うから、実家に泊まる」
長い嫌みと脅しを交えた言葉を私に伝え、出て行こうとした。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに恋愛指南します
夏目若葉
恋愛
大手商社の受付で働く舞花(まいか)は、訪問客として週に一度必ず現れる和久井(わくい)という男性に恋心を寄せるようになった。
お近づきになりたいが、どうすればいいかわからない。
少しずつ距離が縮まっていくふたり。しかし和久井には忘れられない女性がいるような気配があって、それも気になり……
純真女子の片想いストーリー
一途で素直な女 × 本気の恋を知らない男
ムズキュンです♪
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
お見合いから本気の恋をしてもいいですか
濘-NEI-
恋愛
元カレと破局して半年が経った頃、母から勧められたお見合いを受けることにした涼葉を待っていたのは、あの日出逢った彼でした。
高橋涼葉、28歳。
元カレとは彼の転勤を機に破局。
恋が苦手な涼葉は人恋しさから出逢いを求めてバーに来たものの、人生で初めてのナンパはやっぱり怖くて逃げ出したくなる。そんな危機から救ってくれたのはうっとりするようなイケメンだった。 優しい彼と意気投合して飲み直すことになったけれど、名前も知らない彼に惹かれてしまう気がするのにブレーキはかけられない。
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
逃げる太陽【完結】
須木 水夏
恋愛
黒田 陽日が、その人に出会ったのはまだ6歳の時だった。
近所にある湖の畔で、銀色の長い髪の男の人と出会い、ゆっくりと恋に落ちた。
湖へ近づいてはいけない、竜神に攫われてしまうよ。
そんな中、陽日に同い年の婚約者ができてしまう。
✩°。⋆☆。.:*・゜
つたない文章です。
『身代わりの月』の姉、陽日のお話です。
⭐️現代日本ぽいですが、似て非なるものになってます。
⭐️16歳で成人します。
⭐️古い伝承や言い伝えは、割と信じられている世界の設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる