Love Potion

煉彩

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対決 4

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 迅くんを見送った後、一人ホテルへ入る。

「広い」

 一人なのに、こんなに広い部屋に泊まっていいのかな。
 ふかふかのベッド。アメニティもしっかりしている、冷蔵庫に飲み物も入ってる。

「必要なものを買って」と現金まで預かってしまった。できるだけ使わないつもりだけど。

 
 スマホを見ると、孝介からメッセージが届いていた。

<お前、どこにいるの?>
<どこかで保護でもされて、恥をかかせるなよ>
<帰ってきたら、覚えておけ>
<父さんと母さんにはもう相談したから>
<自分が迷惑かけてるっていう自覚ある?>


「見たくない。これも一応、モラハラとかの証拠になるよね」

 スクリーンショットに保存して、メッセージもそのままにしておいた。返信はしない。

 迅くんは今でも仕事頑張ってるのに。
 仕事も忙しいのに、私のことまで。
 感謝……しないと。
 急な展開で頭が働かず、その日はシャワーを浴びて寝ることにした。

 
 次の日、ホテルに迎えに来てくれた亜蘭さんと荷物を取りに行くため、自宅マンションへ向かった。

「亜蘭さんも本当にありがとうございます。巻き込んでしまって、すみません」
 
 亜蘭さんも通常業務に加えて、私の面倒も見なきゃいけないから大変な役割だよね。

「いえ。俺が加賀宮さんについて行くって決めた時点で、加賀宮さんのやりたいことは俺のやりたいことでもあるので。それに、美月さんと再会した後の加賀宮さん、とても活き活きしてて。眉間にシワ寄せてる社長より、俺も仕事がやりやすくて助かります」
 
 仕事の時は物腰柔らかって感じだけど、厳しいところは厳しいんだ。
 
 鍵を開け、自宅へ入る。
 リビングに行くと――。

「うわっ。なにこれ……」

「一日でこんなに……。ですよね?」

 目の前の光景に亜蘭さんと二人で絶句する。
 イスは倒れているし、机は横になっているし、ゴミは散乱している。イライラして、物に当たった後みたい。

「飯田美和にはフラれて、家政婦としての契約も解消するみたいです」

「そうなんですね」

 他の家政婦さんを雇うまで、孝介一人で家事をするんだ。それか実家に帰るのかな。

「寝室とか大丈夫ですか?美月さんの物とかも確認した方が良いですね」

 冷静に考えてみると、そうだ。
 リビングがこんな状態だったら、寝室とかどうなっているんだろう。

 寝室はベッドの上の布団が荒れていたくらいだった。が、私のクローゼットを見ると……。

「あっ!なにこれ!」
 悲鳴ともとれる声を上げてしまった。

「これは酷いね」
 亜蘭さんが珍しくタメ口で呟くほどの。

 ハンガーにかけてあった、ワンピースなどの洋服が切り刻まれていた。バッグもスッと鋭利な刃物で切った後がある。生地の切れ端が床に散乱している。

「着ることができる洋服、残ってるかな」
 
 結婚してからほとんど洋服は買っていない。
 孝介にお金を全て管理されていたから。
 カラーボックスに入っている下着とかは無事っぽいな。

「美月さん。こんなこと言うのは大変申し訳ないんですが、写真に残しておいてください。これも離婚する時に有利な証拠になると思いますので。孝介あの人の行動、隠しカメラには映っているかと思いますが、念のため」

「あっ。はい。わかりました」

 私が写真を撮ったり、下着や小物を整理している間、亜蘭さんは室内に取り付けてあった隠しカメラを回収してくれた。

 孝介に隠してあった、通帳は無事だ。
 良かった。このお金があったから、あんな出逢い方だったけど、迅くんと再会することができたから。通帳をギュッと握り締める。

 キャリーバッグに、無事だった下着と洋服を入れた。

「あとは、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」

<さよなら>
 心の中で声をかけ、家を後にした。

「美月さん、買い物に行きましょうか?洋服とか」
 亜蘭さんが洋服のことを気にかけ、提案をしてくれた。

「数枚は大丈夫そうな物があったので平気です。なんとか……」

「遠慮しなくて良いんですよ。加賀宮さんからお金、預かってますよね」

「それは、加賀宮さんのお金だから」

 フフっと彼は笑って
「わかりました。社長に相談しておきます」
 そう言った。

 
 ホテルに帰り、明日孝介に伝えたいことを考えていた。上手く言えるだろうか、いや、言わなきゃいけない。

 そんな時――。
 電話が鳴っている。

 相手を見ると――。
 迅くんだ。

「もしもし?」

<もしもし。今、ホテル?>

「うん。そうだよ」

<亜蘭から聞いたけど。洋服とか、大丈夫か?>

 亜蘭さん、もう迅くんに伝えたんだ。

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

<金、渡してあるだろ?使えばいいのに>

 そう言ってくれると思ったけど、私が働いて稼いだお金じゃない。迅くんが頑張っているからこそのお金だ。

「そんなわけにはいかないよ」
 電話越しで、彼は<はぁ>と息を吐いたかと思うと
<美月ならそう言うと思った。本当は美月に会いたいんだけど、忙しくて。ちゃんと飯だけは食べろよ。じゃないと、怒るからな。明日は精神的にも大変だし、体力だって消耗すると思う。しっかり食べておけよ>
 念を押された。

「うん。わかった。ありがと」

<じゃあ、明日は俺が近くに居るから。言いたいこと、しっかりと伝えろよ>

 最後に<何かあったら連絡して?>と彼が言ってくれ、電話を終えた。

 明日は孝介とお義父さんと闘わなきゃ。
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