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それぞれの行方 10
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「美月さんに<大好き、愛している>って言われたいんなら、まず自分が行動しないと。相手からの愛情を求めてばかりいてはダメですよ」
真っ当なことを言われ、何も言い返せない。
「<迅くんの隣に居ても自信が持てるような女性になるまではダメ>って言われたらヘコむ」
過去に美月にそんなことを言われた。
俺は美月が居てくれれば何も要らないのに。
「プロポーズ、フラれるのが怖いんですか?仕事は完璧なのに。本当、プライベートは普通の人なんですね」
仕事だって普通の人間だけどな。
「俺が知っている加賀宮さんは、弱音なんて吐くような人じゃなかったから、なんだか新鮮で面白いです。高校の時に、あんな人数相手にケンカ吹っ掛けてた人だとは思えませんよ」
アハハっと亜蘭は昔を思い出したかのように笑った。
「そんなこともあったよな。あの時の俺は、今の俺なんて想像してなかった」
誰かに愛されたいなんて感情はなかったから。
「九条孝介が居なくなってからしばらく経ちましたし、告白してみたらどうですか?」
孝介が東京から離れて、接近してくる可能性もほとんどなさそうだ。
「あぁ。考える。美月が断らないような告白を」
「どうしてそんなに強引なんですか。嫌われますよ」
ふぅと亜蘭が息を吐いたのがわかった。
…・――――…・―――
今日は急に迅くんの希望で、二人で住むマンションの内見に行くことになった。
仕事が終わってからそのまま知り合いの不動産会社に行きたいと言うので、私は迅くんの会社近くのカフェで時間を潰している。
彼から<もうすぐ帰る>という連絡が来たため、会社のエントランスに移動しようと思い、カフェの席を立つ。
間取りとかそういうことは全然相談してないけど、大丈夫なのかな。
迅くんってどんな部屋に住みたいんだろう。
そんなことを考えていた時だった。
「お待たせ」
振り返ると迅くんがいた。
もう社長モードはやめているのか、メガネはしていないし、ネクタイも外している。
「迅くん、お疲れ様」
「会社の駐車場に車を停めているから、行こうか?」
「うん」
案内され、歩いていた時だった。
迅くんの動きが止まる。
「どうしたの?」
不思議に思い、顔を覗き込む。
とても冷たく、何かを睨みつけている。
その方向を見ると――。
「えっ……。どうして……?」
私も驚きの余り、動けなくなってしまった。
「どうして孝介がここにいるの?」
「久しぶりです、加賀宮さん。まさか、そういうことだったんですね。あなたが必死に俺を美月から離そうとする理由がやっとわかりました。ただの知人じゃなかったわけですね。俺はあんたらに騙されたわけだ」
久しぶりに見る孝介は、この前よりもかなり痩せていた。眼は充血しており、顔色も悪い。
「お久しぶりです。こんなところで何をしてるんですか?もう美月さんには関わらないでほしいと九条社長を通して何度もお伝えしたはずですが」
迅くんは私を庇うように前に立っている。
「父さんはもう関係ない。本当にイライラする。まさか美和だけじゃなく、美月にまで手を出していたんだな。俺が相当羨ましかったのか?九条グループの次期社長だった俺がそんなに妬ましかったのか?だから回りくどい方法を使い、俺を引きずり落として……」
孝介の言葉は異常だった。
考え方がおかしい。
そして怒りからか、手が小刻みに震えている。
「なぜそんな発想になるのか理解できません。あなたを一度でも羨ましいと思ったことなどない。バカな人だとは思いましたけど」
ちょっと!
迅くん、ケンカ売ってるの?
間違ったことは言ってない。けれど、今の孝介にそんな言葉をかけたら余計興奮するじゃない。
「はっ!そもそも俺が不倫とか言う前に、お前らはもうとっくにデキてたわけだ。クソ!!全部、全部、全部、お前が悪いんだ!!お前のせいで!!」
孝介はカバンから何か取り出した。
「美月、俺から離れて。警察を呼んで」
孝介が取り出したのは、ナイフだった。
まさか、本当に!?
「うんっ!」
私は震える手でスマホを取り出し、通報しようとした。
が――。
「お前も美月も一緒に殺してやるよ!!」
孝介が私たち目掛けて走り出した。
「美月、離れろ!」
私は迅くんの指示に従い、走り、二人から距離を取った。早く通報しなきゃ。
その時「キャー!!」という悲鳴が聞こえた。
迅くんを見ると、孝介との距離がとても近い。
迅くんは、お腹を押さえているように見える。
「加賀宮さん!!」
亜蘭さんが走ってくるのが見えた。
「やめろ!」という声と共に、亜蘭さんは孝介を蹴り飛ばした。
その反動で孝介は転倒するも、迅くんは立ったままだった。
「迅くん!!」
彼に駆け寄る。
孝介は周りの通行人が取り押さえてくれている。
脱力しているようで、特に反抗はしていない。
「迅くんっ!だいじょう……」
そう声をかけ、迅くんが押さえている腹部を見た。
えっ。嘘……。でしょ……。
真っ当なことを言われ、何も言い返せない。
「<迅くんの隣に居ても自信が持てるような女性になるまではダメ>って言われたらヘコむ」
過去に美月にそんなことを言われた。
俺は美月が居てくれれば何も要らないのに。
「プロポーズ、フラれるのが怖いんですか?仕事は完璧なのに。本当、プライベートは普通の人なんですね」
仕事だって普通の人間だけどな。
「俺が知っている加賀宮さんは、弱音なんて吐くような人じゃなかったから、なんだか新鮮で面白いです。高校の時に、あんな人数相手にケンカ吹っ掛けてた人だとは思えませんよ」
アハハっと亜蘭は昔を思い出したかのように笑った。
「そんなこともあったよな。あの時の俺は、今の俺なんて想像してなかった」
誰かに愛されたいなんて感情はなかったから。
「九条孝介が居なくなってからしばらく経ちましたし、告白してみたらどうですか?」
孝介が東京から離れて、接近してくる可能性もほとんどなさそうだ。
「あぁ。考える。美月が断らないような告白を」
「どうしてそんなに強引なんですか。嫌われますよ」
ふぅと亜蘭が息を吐いたのがわかった。
…・――――…・―――
今日は急に迅くんの希望で、二人で住むマンションの内見に行くことになった。
仕事が終わってからそのまま知り合いの不動産会社に行きたいと言うので、私は迅くんの会社近くのカフェで時間を潰している。
彼から<もうすぐ帰る>という連絡が来たため、会社のエントランスに移動しようと思い、カフェの席を立つ。
間取りとかそういうことは全然相談してないけど、大丈夫なのかな。
迅くんってどんな部屋に住みたいんだろう。
そんなことを考えていた時だった。
「お待たせ」
振り返ると迅くんがいた。
もう社長モードはやめているのか、メガネはしていないし、ネクタイも外している。
「迅くん、お疲れ様」
「会社の駐車場に車を停めているから、行こうか?」
「うん」
案内され、歩いていた時だった。
迅くんの動きが止まる。
「どうしたの?」
不思議に思い、顔を覗き込む。
とても冷たく、何かを睨みつけている。
その方向を見ると――。
「えっ……。どうして……?」
私も驚きの余り、動けなくなってしまった。
「どうして孝介がここにいるの?」
「久しぶりです、加賀宮さん。まさか、そういうことだったんですね。あなたが必死に俺を美月から離そうとする理由がやっとわかりました。ただの知人じゃなかったわけですね。俺はあんたらに騙されたわけだ」
久しぶりに見る孝介は、この前よりもかなり痩せていた。眼は充血しており、顔色も悪い。
「お久しぶりです。こんなところで何をしてるんですか?もう美月さんには関わらないでほしいと九条社長を通して何度もお伝えしたはずですが」
迅くんは私を庇うように前に立っている。
「父さんはもう関係ない。本当にイライラする。まさか美和だけじゃなく、美月にまで手を出していたんだな。俺が相当羨ましかったのか?九条グループの次期社長だった俺がそんなに妬ましかったのか?だから回りくどい方法を使い、俺を引きずり落として……」
孝介の言葉は異常だった。
考え方がおかしい。
そして怒りからか、手が小刻みに震えている。
「なぜそんな発想になるのか理解できません。あなたを一度でも羨ましいと思ったことなどない。バカな人だとは思いましたけど」
ちょっと!
迅くん、ケンカ売ってるの?
間違ったことは言ってない。けれど、今の孝介にそんな言葉をかけたら余計興奮するじゃない。
「はっ!そもそも俺が不倫とか言う前に、お前らはもうとっくにデキてたわけだ。クソ!!全部、全部、全部、お前が悪いんだ!!お前のせいで!!」
孝介はカバンから何か取り出した。
「美月、俺から離れて。警察を呼んで」
孝介が取り出したのは、ナイフだった。
まさか、本当に!?
「うんっ!」
私は震える手でスマホを取り出し、通報しようとした。
が――。
「お前も美月も一緒に殺してやるよ!!」
孝介が私たち目掛けて走り出した。
「美月、離れろ!」
私は迅くんの指示に従い、走り、二人から距離を取った。早く通報しなきゃ。
その時「キャー!!」という悲鳴が聞こえた。
迅くんを見ると、孝介との距離がとても近い。
迅くんは、お腹を押さえているように見える。
「加賀宮さん!!」
亜蘭さんが走ってくるのが見えた。
「やめろ!」という声と共に、亜蘭さんは孝介を蹴り飛ばした。
その反動で孝介は転倒するも、迅くんは立ったままだった。
「迅くん!!」
彼に駆け寄る。
孝介は周りの通行人が取り押さえてくれている。
脱力しているようで、特に反抗はしていない。
「迅くんっ!だいじょう……」
そう声をかけ、迅くんが押さえている腹部を見た。
えっ。嘘……。でしょ……。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
コメントありがとうございます😊
続き、読んでくださり嬉しいです✨
亜蘭くんも私の中で好きなキャラで、迅くんとのやり取りは好きなシーンです^^
先が気になってしまって、真実6まで拝読しました。
加賀宮さんがいらっしゃって。その正体は、まさかな方でした……!
たまたま、なかったそうですが。
それでも一生懸命美月さんは作られて。どんな反応をなさるのか、つぎのお話が楽しみです……!
本当に大好きな作品なので、一票入れさせていただきました。
感想ありがとうございます✨嬉しいです😊
同じ作家さんから一票入れていただけるなんて……!作家冥利に尽きます……!
最後まで読んでいただけると幸いです。
ありがとうございます😊