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異世界転生((笑))

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 俺は、気づくと、街の中にいました。

 俺の視界には、中世からルネサンス期にかけての、石造りの街並みが見えます。そして、そこを行き交う大剣やら杖やら装備をした人々も見えます。しかも、活気があふれていてそこかしこから幸せそうな笑い声が響いてきます。

 俺はこの街並みを知っている……。そう俺は! 異世界に転生したのだ!

「きゃっふうううううううううううううううううう!」

 と雄たけびを上げていると、周りが奇異な目で俺を見てきました。これはもう完全に俺は頭がおかしい人です。

「あっ、すみません……」

 あぶないあぶない。また、罪を重ねるところでした。

「さて、じゃあ、まずはチートを使ってハーレムでも――」

 って、自分はなぜか、服すらもありませんでした。

「は!? おい! つか! 俺の着ている服だってなんも無いじゃねえかよ!」

 そう、俺は街のど真ん中で真っ裸だったのです。これではハーレムどころではありません。真っ先に警察に捕まってしまいます。というより、この世界に警察がいるのでしょうか? なんなら問答無用で殺されたりしないでしょうか?

 あの女神が記憶を保持するなと言ったのはこういうことだったのでしょうか? 分かりません。

 ちなみに、服も無いので、お金もありません。まさに俺は真の貧乏人ってやつです!

「いや! 俺もうただのホームレスだよ! こっからどうやって成り上がるんだよ! もう、詰みじゃねえかよ! 住所なかったら誰も雇ってくれないよ!? だから、ホームレスとか這い上がるの大変なんだよ!?」

 そう叫ぶ俺の肩を叩く二人の男がいました。

「君? ちょっと良いかな?」
「はいー。なんの御用でしょうか?」

 そこには黒づくめの怖そうな人が二人いました。そして、俺は殺され、無事リセマラができたのでした。めでたしめでたし――。

 なんてことはなく、俺は牢屋に閉じ込められ、すっかり自害する方法すらも失ってしまったのでした。
 しかし、幸運なことに、奴隷が着るようなボロボロの麻の服だけはもらえました。これで素っ裸ではありません! これで、晴れて俺も文明人の仲間入りです!

「いや! 待って! このままじゃ文明人として恥をかいて死ぬ!! 俺はこんなところで一生を終えたくはない!!」

 途端に、ガン! と檻を叩かれ、委縮した俺はすっかり涙目になってしまいました。というより、なんでみなさん日本語を喋っているのでしょうか?

「いつ俺は出られるんですか?」

 俺は看守に問いかけます。

「そのうちな」
「ああ。そのうちですか……」

 すっかり、俺は意気消沈してしまいました。

 ああ……。経営学の大学まで出たのに、社会に出たらとんと役に立たない学問だもんな。俺の人生って本当に報われねえ……。だって、経営学なんてみんなやりつくしてるから、日本で稼げることなんて何も無いんだもの。そもそも俺には商業センスがなかったので、本当に無駄な学問でした。本当にクソありがとうございました!!

「さて、じゃあ気を取り直して、餓死するまで寝てましょうかね」
 今まで頑張ったご褒美に、俺は永遠に眠れるようになるまでしっかりと休もうとします。

 しかし、数日が経つと実に牢屋暮らしは実に良いものに感じてきました。勝手にご飯は出てくるし、働かなくても良いし、ずっと寝てればいいので、天国といえる状況なのです。すっかり俺はもうここをマイホームだと思い、ここに永住しようと思ったところ、

 そんな俺の贅沢暮らしを破壊しようと変な宝飾品のついた豪勢なローブを羽織った人がやってきました。どうやらここの偉い人のようでした。

「おい変態。起きろ」
「ふあっ!!」

 なんと、俺は変態呼ばわりされるようになったみたいです。俺が変態だとすれば、世の中の真の変態たちに失礼だと思わないのでしょうか?

「お前はあそこで何をしていたのだ?」
「いや、無一文になって放り出されたんです」
「そうか。だからといって、服まで手放すな。じゃあ出ろ」
「え? 出て良いんですか?」
「当たり前だ。ここにはスラムの人間を養うような場所ではないからな。短期間の拘留に過ぎん」

 と、言われて放り出された俺は、さっそくリセマラをしようと手ごろなロープと木を探そうとしました。

「うーん。まさか牢屋からも追い出されるとはな……。あの木はちょっと弱そうかなー。おっ! あの木は中々高くて良いな」

 とまあ、俺は白昼堂々服を脱いでロープ代わりに捩じって木にかけようとします。

 そのまま、輪っかを首にかけてさあ! レッツ! チャレンジ!

 それから勢いよく飛び跳ねようとしたところ、可愛らしい15歳くらいの女の子が、必死に俺の体を引っ張って止めようとしてきました。

「あんた! やめなさい!」

「まあ、落ち着けってすぐ済むからさ!」

「あんたね! こんなところで死なれたら後片付けが面倒なのよ! 他でやりなさい!」

「分かったって!」

 女の子が凄い剣幕で怒るので、渋々俺は服を解いて街の外を目指しますことにしました。

「あんた! なんで自殺なんてするのよ!」
「お嬢ちゃん。人生ってのはね。時として救いは死ぬことでもあるんだ。散々酷い目に会えば分かってくるよ」

 俺は遠い目をして言います。全てを悟った俺の目に映るのは、遠い遠い雲だけです。

「生きてりゃ良いことなんて沢山あるわよ! 自殺したらそれで人生終わりなのよ!」

「うーん。はいはい。さて、最後に楽しい会話だったよ。それじゃあね」

 と手を振って去ろうとすると、また女の子が俺の体を引っ張って引き留めてきました。いいかげんしつこくないですか?

「いいかげん服を着なさい!」

「ああ。忘れてた」

いけない。つい、死ねると思うと全てがどうでもよくなってしまっていました。というより、この女の子は俺のパオーンを見てもなぜ平気なのでしょうか? もしかして、あまりの小ささに気付かれていないとか? だとしたら悲しすぎます……。

「あんた! しっかりしなさい!」
「りょりょりょのりょうかーい!」

 俺がそう茶化すと、女の子がマジギレして飛び蹴りをくわえてきました。

「おい! なにしがんだメスガキ!」
「あんたが茶化すからよ! さっさと服を着なさい変態!」
「へいへい」
 もうここまで来るとしつこすぎです。

 俺が下半身を隠している間も、女の子は、何やら考え込んだ様子です。さて、その隙に……。
 そーっと、俺が逃げようとすると、女の子が何かを言いたげな様子でいました。

「あんた何で死のうとするの?」
「ん? 単純に共同体というものを理解してしまったからさ」
「共同体?」
「人間が猿と違う共同体という概念を理解してしまったことが理由さ」
「は? 意味が分からないんだけど……」
「おや? お嬢ちゃんには難しかったかな? さて、じゃあねー」
「あんた! ちゃんと話くらいしようとしなさい!」
「うーん? お金もくれて、服もくれて住める場所をくれるなら考えないこともないけどお? というより、なんで俺のち●こ見ても平気なのお?」
「あんたのが小っちゃくて目に入らないからよ」
「え? まじ?」

 ますます死にたくなってきました! これはリセマラがはかどりそうです!


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