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アイラブユーと伝える事すら許されない(綾人視点)
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すずの笑った顔を見ると嬉しくなる。すずの泣いた顔を見ると慰めて悲しみを和らげてあげたくなる。彼女が自分以外の異性といると何か面白くない。とにかくずっとすずと一緒にいたい。気がつけば頭の中はすずで埋め尽くされている。
俺の初恋は自覚した瞬間に諦めなくてはいけないものだと気付かされた。
姉が好きだと気がついたのは小学生の高学年になってからだった。そしてそれがおかしい事も知っていた。どうして俺とすずは姉弟なのだろうか。他人だったら「好き」の一言が容易に伝えられたのに。どうして姉弟だと許されないのだろう。
『弟』というだけでこの想いがタブーになってしまうのだろうか。
「綾人はさー、うちのクラスの女子で誰が一番イケてると思う?」
当時小学6年生の俺たちは可愛い女子の話でよく盛り上がっていた。
今日も昼休みに仲のいい友人が教えろよーって茶化してくる。
俺の心ではクラスの女子なんか比べものにならないくらいに姉が1番可愛くて綺麗だとも思っている。だけどそれは質問の答えとは逸れるし、弟が姉を恋愛的な意味で好きなのはおかしいという事は世間の常識だ。だから俺は適当にクラスで1番人気のある女子の名前を出した。
小学生の俺は姉に対する暴れ狂う想いをどう抑え込むかずっと悩んでいた。側にいれば耐えきれずにきっと姉にこの想いをぶつけてしまう。だから俺は姉の側を離れる決断をした。この恋心は一時の気の迷いだ。きっと時が経てばこの想いは薄れてすずの事を姉として見ることができるだろう。
そう考えた俺は姉とは別の学校に通うために地元の附属大の中学を受験した。受験を決めたのは6年生の12月だったけど勉強が得意だった俺はあっさりと合格した。さらに新入生代表挨拶も務めるというオマケつきだった。
そして中学に進学した俺は姉への想いを吹っ切るために学業に部活動といった学生生活に全力で打ち込んだ。姉と同じ時間を作らないようにするために練習の厳しい剣道部へ入部した。
姉への想いを捨てるために彼女も作った事がある。だけど剣道に学業と忙しい俺は彼女との時間をほとんど作ってやれずに振られた。
「綾人くんっ私の事好きじゃないよね。私を綾人くんの好きな人の代わりにしないで。さようなら」
別れる時に彼女にそう言われた。それは図星だった。彼女といる時俺はいつもすずのことを考えていた。
中学生の時は多忙だったお陰で姉と顔を合わせることはほとんどなかった。
離れる事で姉の事を諦められると思ったがそれは大きな間違いだった。それどころか姉への想いをさらに強くなった。会えなければ会えないほどその想いは風船のように膨れ上がって破裂しそうになる。
中学2年生になる頃には姉と別の中学へ進学した事を大きく後悔していた。
思春期に入った俺は姉の事を性的な目で見つめるようになっていた。
俺が中2の夏のある日の出来事だった。
「綾人~アイス食べよ~」
ノックして俺の部屋に入ってきた姉はとんでもない格好をしていた。
長い髪の毛をポニーテールに結んでいて、水色のキャミソールに薄いサマーカーディガンを羽織っていて白いホットパンツに裸足だった。姉ちゃんの白い脚を見てごくりと喉を鳴らす。今すぐに押し倒したい。姉の薄着を脱がしてその身体にむしゃぶりつきたい。そんな獣のような欲望が込み上げてきた。
エロい事を知った中2の俺には刺激が強すぎる。
「食べる食べる……って姉ちゃん、その格好はどうなの? いくら暑くて家とはいえその格好ちょっと下品だよ」
「アンタ、下品ってもっと他に言い方あるでしょ? これ友達と一緒に買いに行ったのに。今度友達とお揃いで遊びに行くんだから」
「まさか、これで外に出るの?」
そんなの絶対ダメだろ。こんなの犯してくださいって言っているようなものだ。
「そうだけど? 今度これで遊びに行くって約束したんだもん!」
「マジかー。やめておいたほうがいいよ。姉ちゃんみたいな寸胴短足だと笑い物になるだけだって!」
「綾人ひどいっ! まあ弟ってそんなもんだよね。むしろ綾人が素直に褒めてくれたらちょっと怖いかも」
姉は頬を膨らませる。その怒った顔がすっごく可愛いなと思ってしまう。
嘘に決まってる。本当はすごく可愛いと思っている。だけどそれを言葉に出すのは憚られた。
その日の夜、俺は昼間の姉の姿を思い浮かべながらずっと自分のペニスを扱いていた。
あの姉の姿を思い出すと陰茎から透明な液体がダラダラとでて、天に向かって勃起してしまう。
「あっっ、姉ちゃん、好き……出ちゃうっ」
姉へ抱いた劣情は白濁となって溢れた。
それから俺は定期的に姉で自慰をするようになっていた。
そしてある日俺は気がついたのだ。
この想いを断ち切る事は絶対に無理だと。むしろ俺は姉を愛するために生まれてきたのではと思っている。姉——すずは俺の全てだ。すずが望むのならば俺の全てを差し出してもいい。この腕も足も彼女が望むのならば差し出そう。そしてすずが望むのならば命だって差し出してもいい。
姉弟というだけでどうして炎のように燃えたぎる想いを諦めなくてはいけないのだろう。この想いは諦めきれない。だからどんな手を使ってでもすずを俺のものにする。
そう決意してから俺は行動に移した。
まずは実の姉弟ではないかもしれないという奇跡にも近い可能性を信じたくて市役所に行って戸籍謄本を取り寄せた。戸籍謄本を確認した結果俺たちは全員血の繋がった家族だった。
僅かな希望をかけて貯金をはたいて遺伝子の検査キットを購入した。万が一という可能性もある。
こっそり姉の髪の毛を採取し、検体を送った。結果は俺とすずはほぼ確実に姉弟であるという結果だった。
こうして俺とすずは実の姉弟である事が明らかになったがそれで諦めるつもりは毛頭にない。
言い方を変えよう諦めたくても諦めきれなかったのだ。
高校はすずの通っている所を受験した。俺の本来の偏差値より1ランクも2ランクも落とした学校だ。周りからはもっといいところに行けると驚かれた。
1度すずと離れて後悔したのだ。もう後悔はしたくなかった。
「頭いいのに勿体ない。綾人ならもっと良いところ行けたのに」
「家から近いから。それに俺頭いいからどこいっても変わんないし」
「綾人ったら生意気!」
すずは呆れたように俺に言っていた。
それからの学生生活は楽しかったし順風満帆だった。すずの事をずっと観察していられた。そしてこっそりとすずのスマホにGPSをつけた。
そのおかげですずの様子は手に取るようにわかった。
手を回して彼氏は作らせなかったし、様々な理由をつけて登下校もずっと一緒だった。
顔は似ていないから一緒に街を歩けば恋人同士に間違えられる事もあった。その時は嬉しかった。
ただしすずが「姉弟だからあり得ないに決まってんじゃん~」と即座に笑って否定していたが。
すず、俺たちは確かに姉弟だけど俺はお前と恋人になりたいよ。すずのバージンロードを見送る弟じゃなくて一緒にバージンロードを歩く伴侶になりたい。
***
「綾人~、お願いがあるの」
すずはそう言って俺の部屋で顔の前に手を合わせる。
現在俺は高校2年生、すずは高校3年生だった。
「何さ」
「私、帝北大に行きたいの! アドバイスちょうだい。綾人頭いいから勉強の方法だけでも教えて欲しいの」
帝北大学は道内で最も有名な国立大学だ。国内でも五本の指に入る広々としたキャンパスに多彩な学部、そして著名な教授に優れた設備や施設で志望者が非常に多い大学だ。俺たちの住む旭川からはそれなりに遠い札幌にある。
引き受けたく無い。だってすずがそこに合格したら間違いなく家を出るだろう。そして俺の事など忘れてキャンパスライフを楽しみ、恋人を作るに決まっている。
俺の理想としては家の近くの国公立大学の幼稚園教諭育成コースに進学して欲しい。比較的簡単にすずの様子を探る事ができるし、俺だって寂しくない。教職課程ならば単位取得や実習で忙しいから要領があまり良くないすずはきっと遊んでいられない。
そもそもすずが帝北大に受かる可能性は0に近い。中堅進学校で中の下をウロウロしているすずの成績では到底受かりはしないだろう。
「はっきり言うけど姉ちゃんの成績じゃ帝北は絶対無理。だから勉強を教えるだけ時間の無駄だよ」
ぴしゃりと俺が言うと姉ちゃんは項垂れる。姉ちゃんに諦めてもらうためにあえて厳しい口調で俺は言った。
「そうだよね。先生もそう言ってたからわかってる。でもどうしても帝北に行きたいの! 父さんと母さんも帝北受かったら行かせてあげるっていってた! 私本気で頑張るからお願い! 絶対に帝北大行きたいの! お願い勉強教えて! 綾人しか頼れないの!」
俺に縋るような目ですずは懇願する。本当にすずはずるい。だってそんな顔されたら俺は断れないじゃん。好きな女に縋られたら断るなんてできないだろう。「綾人しか」って言い方がずるい。きっとすずの事だから誰にでも言っているんだろうな。
俺は小さくため息を吐く。
「はあ。わかったよ。参考になるかはわからないけど俺の勉強方法教えてあげるよ。でもさ俺姉ちゃんより学年下だよ。学年1個下の俺に勉強教えてってのも変な話でしょう?」
「そんな事ないよ! だって綾人中学の時からずっと成績トップだし、今だって高校で創立以来の天才って言われているじゃん。帝北模試だっていつもA判定だしさ」
たしかに教えようと思えば姉の勉強の面倒も見られるだろう。俺の学力は下手な高校3年生よりもあるし、国内トップの大学でも全ての模試でA判定を取っている。
「まあそうだけど。でも教えられない事もあるかもしれないからそこは自分で頑張ってね」
「綾人、ありがとう! 絶対絶対頑張るね」
それから俺とすずの勉強会が始まった。
引き受けるからには俺だって本気だ。自分の勉強しながらすずに勉強を教えるための勉強をする。万全の体制ですずをレクチャーするのだ。
「綾人、ここはどうやって解くの?」
姉ちゃんの部屋で勉強を教えていると姉ちゃんが顔を近づけてくる。するとふわっとシャンプーのいい香りがする。俺と同じものを使っているはずなのになんですずだとこんなにいい匂いがするんだろう。そしてものすごく近い。
「ここはこの公式を使ってから—–」
俺は平静を装っているが内心では心臓がドキドキとしていた。そしてすずに触れたい、そしてキスしたい、髪の毛に触りたいと欲望が溢れてくる。そして何よりも俺の分身が勃ち上がりそうだった。
「そっか! そうだったんだね。さすが綾人! わかりやすい説明だった!」
「どういたしまして」
無邪気に笑うすずは俺の劣情なんか何も知らないのだろう。
あれからすずは猛勉強して無事に大学に合格した。結構ギリギリだったらしいがそれでも合格は合格だ。すずは嬉しそうな顔で俺に報告しに来た。
知ってるよ。だって俺はすずの名前が無いことを祈って合格発表を見ていたんだから。
本当は合格しないで欲しかった。だってすずは俺を置いて家を出てしまう。
俺はこんなに寂しいのにすずは嬉しそうにしている。そして新天地での生活を楽しみにしている様子を隠さない。
だからちょっと意地悪してしまう。
「姉ちゃんバカだからすすきので悪い男に引っ掛けられそう。それに騙されてヤリサーとかに入りそうだし。だから絶対実家から通った方がいいよ。首都圏だと通勤に2時間かける人もいるから平気だって」
ああ、どうして俺ってこんな事ばかり言ってしまうのだろう。でもすずが実家から通ってくれないかという僅かな希望を込めて言った。
「そんなわけないでしょ! 綾人アンタっ、仮にも姉に対してその言い草はどうなの?」
すずは頬を膨らませて俺に抗議する。
「本当の事だから仕方無いだろう! 大体俺と離れて寂しくないのかよ⁉︎」
すずはすぐに騙されるし調子いいし、楽しい事に流れやすいから心配だ。そして少しでも俺との別れを惜しんで欲しくてこんなことを言ってしまう。
「大丈夫だって綾人。会おうと思えばいつでも会えるでしょ」
すずにはその気があるの?と問いたいのをグッと堪える。いくら近くにいても会おうと思わなければ数年会わない事もザラにあるのだ。
「できるだけ帰ってきてね。俺姉ちゃんと離れて寂しいよ」
すずに抱きついてダメ押しのように寂しいと伝える。
弟という立場は忌々しいけれど便利でもある。こうやってすずに抱きついても寂しがっている弟と認識されている。すずは俺の頭に手を触れてゆっくりと撫でる。その感触が心地いい。
本当は今すぐにでも縛り付けて家から出したく無い。
「姉ちゃんとあんまり会えなくなるからもう少しこうしてもいい?」
「仕方ないなあ」
すず、俺はずっとお前の事が好きだよ。俺はすずの体温を記憶に刻みつけた。
***
すずが札幌に進学して数ヶ月が経った。
「俺のラインには返信にはできないくせに自分のSNSは更新できるのかよ」
俺は自室ですずのSNSのアカウントを覗いてぼそりと呟く。ちなみにこれはすずの鍵アカで俺はすずの友人のアカウントを乗っ取って覗いている。
アカウントを乗っ取られているのにそれに気がつかないなんて馬鹿だなと思いつつもこのおかげですずの鍵アカを怪しまれずに覗けるので感謝はしている。
スマホの画面に映るのは新しくできた友人たちと楽しそうに札幌で学生生活を送るすずだった。その写真にはたくさんの男女が映っておりすずも眩しい笑顔を浮かべている。
俺はすずが家を出て毎日寂しい思いをしているのにすずは何も知らずに楽しく過ごしている。
家を出た最初の頃は毎日ラインを送ってくれたし俺からのラインの返信もちゃんと返ってきてた。しかし数ヶ月するとあっという間にラインは来なくなり俺から連絡しても返信はほとんどなかった。
「彼氏が欲しい!」
すずの投稿を見ていると彼氏が欲しいと載せていた。好みのタイプまでご丁寧に書いてある。
『好みのタイプは年上で抱擁力がある人! 身長が高いと点数アップ』
俺とは真逆をいくタイプの男だ。俺は年下だし結構冷めている方だ。何よりも身長はあまり高くない。すずの理想とかけ離れていた事を知り、愕然とする。
すず、お前に勉強教えてやったの俺じゃん。俺のおかげで大学合格したのにこれは酷いだろう。
イライラする気持ちを心の奥に閉じ込めて、次にすずのサークルの先輩のアカウントを覗く。すずの先輩である栗川という男は間違いなくすずに気がある。よくSNSですずと思われる女子とヤりたいと呟いていた。
俺が札幌まで飛んで行けたら真っ先にこいつに牽制をかけてやりたい。
「俺の方が絶対いいじゃん」
思わず本音が溢れる。はっきり言ってこの栗川よりも俺の方が数倍いい男だ。
俺は勉強もできるし、運動だって剣道で全道大会優勝した。ルックスもいい方だ。言っておくが俺は学校ではめちゃくちゃモテるのだ。すずのために努力してなんでもできる男になった。すずのためなら何だってできる。料理だってすずの好物をいっぱい作れるように密かに頑張った。
それでも『弟』というだけで俺の欲しいものは手に入らないのだ。
何もかもが妬ましくなる。
すずが手に入るなら俺は何でもするだろう。犯罪だってできるし、きっと人だって殺せる。悪魔に魂を売ってもいい。
***
「悪魔の書?」
古本屋で購入した漫画をしまうために部屋の本棚を整理していた時の事だった。
本棚の端っこに古ぼけた小さな本があった。
買った覚えのないそれは英語のようだけどよく見ると英語ではない見たことのない言語で書かれていた。
『悪魔の書——色欲』
何故かタイトルが読める。
つい本を開いてしまう。内容も表紙と同じく見たことのない言語で書かれていた。
だけれども俺は何故か内容がわかった。
『おめでとう。この文字が読めると言う時点で君は悪魔に生まれ変わる才能を持っている。悪魔に生まれ変わって心の奥底に秘めていた欲望を叶えたまえ。』
「意味わかんないや。大体悪魔になって今の現状を変えられるのか? すずの事を手に入れる力が手に入るのかよ」
胡散臭すぎる言葉に不信感を持って俺は本を閉じようとした。その時持っていた本が光りだす。
青い光を放ったそれは勢いよく俺の胸に飛び込んできた。そして俺の身体を変えていく。
「なんだこれっ!」
部屋に置いてある鏡が俺の変化をはっきりと映し出している。全身に電流が流し込まれたような感覚と共に俺の身体は変化を遂げた。
肩甲骨のあたりが盛り上がる感触に襲われるとコウモリのような黒い翼がシャツを突き破って生えてきた。次に尾てい骨のあたりに似たような感覚が現れる。そしてじゅるんと粘度を持った液体を纏った尻尾がこれまたズボンを突き破って生えてきた。最後に側頭部に瘤みたいなのができるとそこから黒い角が生え始める。そして茶色の瞳からいつの間にか鮮やかなエメラルドグリーンの瞳に変化していた。
今の俺は悪魔そのものの姿だった。
「マジかよっ。俺人間じゃなくなったの?」
悪魔の書とやらに目を通すと読める文字が増えている。
『おめでとう。君はインキュバスという悪魔に生まれ変わった。
せっかく悪魔になったんだ。その力を好きな風に使い思うままに生きるがいい。この世界でハーレムを作るもよし、気に入らない存在を殺すために利用するもよしだ。世界を支配するのもいいだろう。
君はインキュバスだ。人間の快楽のエネルギーを摂取しないと弱ってしまうので定期的な性的接触は必須だ。それだけは忘れるな。後は自分の心が思うままに、好きにするが良いさ。ではまた逢おう。良き日々を…… 』
最後までページをめくると悪魔の書は黒い炎に包まれて燃えてしまった。
ハーレムとか世界の支配は全く興味がない。
俺は開放感に包まれ、その快感をゆっくりと噛み締めた。そしてもう一度鏡を見る。やはり鏡の向こう側に見えている自分の姿は変わり果ててしまった事を示していた。
全身に不思議なエネルギーが満ちているのを感じる。今ならばなんだってできるだろう。
それほどの充実感がそこにはあった。
何故か悪魔としての能力が手にとるようにわかる。おそらく人間が手足を動かすのと同じ感覚だ。悪魔の持つ能力はきっと人間でいえば手足と同じような存在なのだろう。
「すず、今から逢いにいくね」
俺は翼をはためかせて自室の窓をすり抜ける。そしてすずのいる札幌へと飛び立った。
俺は生まれ変わったこの姿ですずを手に入れると決めた。
俺の初恋は自覚した瞬間に諦めなくてはいけないものだと気付かされた。
姉が好きだと気がついたのは小学生の高学年になってからだった。そしてそれがおかしい事も知っていた。どうして俺とすずは姉弟なのだろうか。他人だったら「好き」の一言が容易に伝えられたのに。どうして姉弟だと許されないのだろう。
『弟』というだけでこの想いがタブーになってしまうのだろうか。
「綾人はさー、うちのクラスの女子で誰が一番イケてると思う?」
当時小学6年生の俺たちは可愛い女子の話でよく盛り上がっていた。
今日も昼休みに仲のいい友人が教えろよーって茶化してくる。
俺の心ではクラスの女子なんか比べものにならないくらいに姉が1番可愛くて綺麗だとも思っている。だけどそれは質問の答えとは逸れるし、弟が姉を恋愛的な意味で好きなのはおかしいという事は世間の常識だ。だから俺は適当にクラスで1番人気のある女子の名前を出した。
小学生の俺は姉に対する暴れ狂う想いをどう抑え込むかずっと悩んでいた。側にいれば耐えきれずにきっと姉にこの想いをぶつけてしまう。だから俺は姉の側を離れる決断をした。この恋心は一時の気の迷いだ。きっと時が経てばこの想いは薄れてすずの事を姉として見ることができるだろう。
そう考えた俺は姉とは別の学校に通うために地元の附属大の中学を受験した。受験を決めたのは6年生の12月だったけど勉強が得意だった俺はあっさりと合格した。さらに新入生代表挨拶も務めるというオマケつきだった。
そして中学に進学した俺は姉への想いを吹っ切るために学業に部活動といった学生生活に全力で打ち込んだ。姉と同じ時間を作らないようにするために練習の厳しい剣道部へ入部した。
姉への想いを捨てるために彼女も作った事がある。だけど剣道に学業と忙しい俺は彼女との時間をほとんど作ってやれずに振られた。
「綾人くんっ私の事好きじゃないよね。私を綾人くんの好きな人の代わりにしないで。さようなら」
別れる時に彼女にそう言われた。それは図星だった。彼女といる時俺はいつもすずのことを考えていた。
中学生の時は多忙だったお陰で姉と顔を合わせることはほとんどなかった。
離れる事で姉の事を諦められると思ったがそれは大きな間違いだった。それどころか姉への想いをさらに強くなった。会えなければ会えないほどその想いは風船のように膨れ上がって破裂しそうになる。
中学2年生になる頃には姉と別の中学へ進学した事を大きく後悔していた。
思春期に入った俺は姉の事を性的な目で見つめるようになっていた。
俺が中2の夏のある日の出来事だった。
「綾人~アイス食べよ~」
ノックして俺の部屋に入ってきた姉はとんでもない格好をしていた。
長い髪の毛をポニーテールに結んでいて、水色のキャミソールに薄いサマーカーディガンを羽織っていて白いホットパンツに裸足だった。姉ちゃんの白い脚を見てごくりと喉を鳴らす。今すぐに押し倒したい。姉の薄着を脱がしてその身体にむしゃぶりつきたい。そんな獣のような欲望が込み上げてきた。
エロい事を知った中2の俺には刺激が強すぎる。
「食べる食べる……って姉ちゃん、その格好はどうなの? いくら暑くて家とはいえその格好ちょっと下品だよ」
「アンタ、下品ってもっと他に言い方あるでしょ? これ友達と一緒に買いに行ったのに。今度友達とお揃いで遊びに行くんだから」
「まさか、これで外に出るの?」
そんなの絶対ダメだろ。こんなの犯してくださいって言っているようなものだ。
「そうだけど? 今度これで遊びに行くって約束したんだもん!」
「マジかー。やめておいたほうがいいよ。姉ちゃんみたいな寸胴短足だと笑い物になるだけだって!」
「綾人ひどいっ! まあ弟ってそんなもんだよね。むしろ綾人が素直に褒めてくれたらちょっと怖いかも」
姉は頬を膨らませる。その怒った顔がすっごく可愛いなと思ってしまう。
嘘に決まってる。本当はすごく可愛いと思っている。だけどそれを言葉に出すのは憚られた。
その日の夜、俺は昼間の姉の姿を思い浮かべながらずっと自分のペニスを扱いていた。
あの姉の姿を思い出すと陰茎から透明な液体がダラダラとでて、天に向かって勃起してしまう。
「あっっ、姉ちゃん、好き……出ちゃうっ」
姉へ抱いた劣情は白濁となって溢れた。
それから俺は定期的に姉で自慰をするようになっていた。
そしてある日俺は気がついたのだ。
この想いを断ち切る事は絶対に無理だと。むしろ俺は姉を愛するために生まれてきたのではと思っている。姉——すずは俺の全てだ。すずが望むのならば俺の全てを差し出してもいい。この腕も足も彼女が望むのならば差し出そう。そしてすずが望むのならば命だって差し出してもいい。
姉弟というだけでどうして炎のように燃えたぎる想いを諦めなくてはいけないのだろう。この想いは諦めきれない。だからどんな手を使ってでもすずを俺のものにする。
そう決意してから俺は行動に移した。
まずは実の姉弟ではないかもしれないという奇跡にも近い可能性を信じたくて市役所に行って戸籍謄本を取り寄せた。戸籍謄本を確認した結果俺たちは全員血の繋がった家族だった。
僅かな希望をかけて貯金をはたいて遺伝子の検査キットを購入した。万が一という可能性もある。
こっそり姉の髪の毛を採取し、検体を送った。結果は俺とすずはほぼ確実に姉弟であるという結果だった。
こうして俺とすずは実の姉弟である事が明らかになったがそれで諦めるつもりは毛頭にない。
言い方を変えよう諦めたくても諦めきれなかったのだ。
高校はすずの通っている所を受験した。俺の本来の偏差値より1ランクも2ランクも落とした学校だ。周りからはもっといいところに行けると驚かれた。
1度すずと離れて後悔したのだ。もう後悔はしたくなかった。
「頭いいのに勿体ない。綾人ならもっと良いところ行けたのに」
「家から近いから。それに俺頭いいからどこいっても変わんないし」
「綾人ったら生意気!」
すずは呆れたように俺に言っていた。
それからの学生生活は楽しかったし順風満帆だった。すずの事をずっと観察していられた。そしてこっそりとすずのスマホにGPSをつけた。
そのおかげですずの様子は手に取るようにわかった。
手を回して彼氏は作らせなかったし、様々な理由をつけて登下校もずっと一緒だった。
顔は似ていないから一緒に街を歩けば恋人同士に間違えられる事もあった。その時は嬉しかった。
ただしすずが「姉弟だからあり得ないに決まってんじゃん~」と即座に笑って否定していたが。
すず、俺たちは確かに姉弟だけど俺はお前と恋人になりたいよ。すずのバージンロードを見送る弟じゃなくて一緒にバージンロードを歩く伴侶になりたい。
***
「綾人~、お願いがあるの」
すずはそう言って俺の部屋で顔の前に手を合わせる。
現在俺は高校2年生、すずは高校3年生だった。
「何さ」
「私、帝北大に行きたいの! アドバイスちょうだい。綾人頭いいから勉強の方法だけでも教えて欲しいの」
帝北大学は道内で最も有名な国立大学だ。国内でも五本の指に入る広々としたキャンパスに多彩な学部、そして著名な教授に優れた設備や施設で志望者が非常に多い大学だ。俺たちの住む旭川からはそれなりに遠い札幌にある。
引き受けたく無い。だってすずがそこに合格したら間違いなく家を出るだろう。そして俺の事など忘れてキャンパスライフを楽しみ、恋人を作るに決まっている。
俺の理想としては家の近くの国公立大学の幼稚園教諭育成コースに進学して欲しい。比較的簡単にすずの様子を探る事ができるし、俺だって寂しくない。教職課程ならば単位取得や実習で忙しいから要領があまり良くないすずはきっと遊んでいられない。
そもそもすずが帝北大に受かる可能性は0に近い。中堅進学校で中の下をウロウロしているすずの成績では到底受かりはしないだろう。
「はっきり言うけど姉ちゃんの成績じゃ帝北は絶対無理。だから勉強を教えるだけ時間の無駄だよ」
ぴしゃりと俺が言うと姉ちゃんは項垂れる。姉ちゃんに諦めてもらうためにあえて厳しい口調で俺は言った。
「そうだよね。先生もそう言ってたからわかってる。でもどうしても帝北に行きたいの! 父さんと母さんも帝北受かったら行かせてあげるっていってた! 私本気で頑張るからお願い! 絶対に帝北大行きたいの! お願い勉強教えて! 綾人しか頼れないの!」
俺に縋るような目ですずは懇願する。本当にすずはずるい。だってそんな顔されたら俺は断れないじゃん。好きな女に縋られたら断るなんてできないだろう。「綾人しか」って言い方がずるい。きっとすずの事だから誰にでも言っているんだろうな。
俺は小さくため息を吐く。
「はあ。わかったよ。参考になるかはわからないけど俺の勉強方法教えてあげるよ。でもさ俺姉ちゃんより学年下だよ。学年1個下の俺に勉強教えてってのも変な話でしょう?」
「そんな事ないよ! だって綾人中学の時からずっと成績トップだし、今だって高校で創立以来の天才って言われているじゃん。帝北模試だっていつもA判定だしさ」
たしかに教えようと思えば姉の勉強の面倒も見られるだろう。俺の学力は下手な高校3年生よりもあるし、国内トップの大学でも全ての模試でA判定を取っている。
「まあそうだけど。でも教えられない事もあるかもしれないからそこは自分で頑張ってね」
「綾人、ありがとう! 絶対絶対頑張るね」
それから俺とすずの勉強会が始まった。
引き受けるからには俺だって本気だ。自分の勉強しながらすずに勉強を教えるための勉強をする。万全の体制ですずをレクチャーするのだ。
「綾人、ここはどうやって解くの?」
姉ちゃんの部屋で勉強を教えていると姉ちゃんが顔を近づけてくる。するとふわっとシャンプーのいい香りがする。俺と同じものを使っているはずなのになんですずだとこんなにいい匂いがするんだろう。そしてものすごく近い。
「ここはこの公式を使ってから—–」
俺は平静を装っているが内心では心臓がドキドキとしていた。そしてすずに触れたい、そしてキスしたい、髪の毛に触りたいと欲望が溢れてくる。そして何よりも俺の分身が勃ち上がりそうだった。
「そっか! そうだったんだね。さすが綾人! わかりやすい説明だった!」
「どういたしまして」
無邪気に笑うすずは俺の劣情なんか何も知らないのだろう。
あれからすずは猛勉強して無事に大学に合格した。結構ギリギリだったらしいがそれでも合格は合格だ。すずは嬉しそうな顔で俺に報告しに来た。
知ってるよ。だって俺はすずの名前が無いことを祈って合格発表を見ていたんだから。
本当は合格しないで欲しかった。だってすずは俺を置いて家を出てしまう。
俺はこんなに寂しいのにすずは嬉しそうにしている。そして新天地での生活を楽しみにしている様子を隠さない。
だからちょっと意地悪してしまう。
「姉ちゃんバカだからすすきので悪い男に引っ掛けられそう。それに騙されてヤリサーとかに入りそうだし。だから絶対実家から通った方がいいよ。首都圏だと通勤に2時間かける人もいるから平気だって」
ああ、どうして俺ってこんな事ばかり言ってしまうのだろう。でもすずが実家から通ってくれないかという僅かな希望を込めて言った。
「そんなわけないでしょ! 綾人アンタっ、仮にも姉に対してその言い草はどうなの?」
すずは頬を膨らませて俺に抗議する。
「本当の事だから仕方無いだろう! 大体俺と離れて寂しくないのかよ⁉︎」
すずはすぐに騙されるし調子いいし、楽しい事に流れやすいから心配だ。そして少しでも俺との別れを惜しんで欲しくてこんなことを言ってしまう。
「大丈夫だって綾人。会おうと思えばいつでも会えるでしょ」
すずにはその気があるの?と問いたいのをグッと堪える。いくら近くにいても会おうと思わなければ数年会わない事もザラにあるのだ。
「できるだけ帰ってきてね。俺姉ちゃんと離れて寂しいよ」
すずに抱きついてダメ押しのように寂しいと伝える。
弟という立場は忌々しいけれど便利でもある。こうやってすずに抱きついても寂しがっている弟と認識されている。すずは俺の頭に手を触れてゆっくりと撫でる。その感触が心地いい。
本当は今すぐにでも縛り付けて家から出したく無い。
「姉ちゃんとあんまり会えなくなるからもう少しこうしてもいい?」
「仕方ないなあ」
すず、俺はずっとお前の事が好きだよ。俺はすずの体温を記憶に刻みつけた。
***
すずが札幌に進学して数ヶ月が経った。
「俺のラインには返信にはできないくせに自分のSNSは更新できるのかよ」
俺は自室ですずのSNSのアカウントを覗いてぼそりと呟く。ちなみにこれはすずの鍵アカで俺はすずの友人のアカウントを乗っ取って覗いている。
アカウントを乗っ取られているのにそれに気がつかないなんて馬鹿だなと思いつつもこのおかげですずの鍵アカを怪しまれずに覗けるので感謝はしている。
スマホの画面に映るのは新しくできた友人たちと楽しそうに札幌で学生生活を送るすずだった。その写真にはたくさんの男女が映っておりすずも眩しい笑顔を浮かべている。
俺はすずが家を出て毎日寂しい思いをしているのにすずは何も知らずに楽しく過ごしている。
家を出た最初の頃は毎日ラインを送ってくれたし俺からのラインの返信もちゃんと返ってきてた。しかし数ヶ月するとあっという間にラインは来なくなり俺から連絡しても返信はほとんどなかった。
「彼氏が欲しい!」
すずの投稿を見ていると彼氏が欲しいと載せていた。好みのタイプまでご丁寧に書いてある。
『好みのタイプは年上で抱擁力がある人! 身長が高いと点数アップ』
俺とは真逆をいくタイプの男だ。俺は年下だし結構冷めている方だ。何よりも身長はあまり高くない。すずの理想とかけ離れていた事を知り、愕然とする。
すず、お前に勉強教えてやったの俺じゃん。俺のおかげで大学合格したのにこれは酷いだろう。
イライラする気持ちを心の奥に閉じ込めて、次にすずのサークルの先輩のアカウントを覗く。すずの先輩である栗川という男は間違いなくすずに気がある。よくSNSですずと思われる女子とヤりたいと呟いていた。
俺が札幌まで飛んで行けたら真っ先にこいつに牽制をかけてやりたい。
「俺の方が絶対いいじゃん」
思わず本音が溢れる。はっきり言ってこの栗川よりも俺の方が数倍いい男だ。
俺は勉強もできるし、運動だって剣道で全道大会優勝した。ルックスもいい方だ。言っておくが俺は学校ではめちゃくちゃモテるのだ。すずのために努力してなんでもできる男になった。すずのためなら何だってできる。料理だってすずの好物をいっぱい作れるように密かに頑張った。
それでも『弟』というだけで俺の欲しいものは手に入らないのだ。
何もかもが妬ましくなる。
すずが手に入るなら俺は何でもするだろう。犯罪だってできるし、きっと人だって殺せる。悪魔に魂を売ってもいい。
***
「悪魔の書?」
古本屋で購入した漫画をしまうために部屋の本棚を整理していた時の事だった。
本棚の端っこに古ぼけた小さな本があった。
買った覚えのないそれは英語のようだけどよく見ると英語ではない見たことのない言語で書かれていた。
『悪魔の書——色欲』
何故かタイトルが読める。
つい本を開いてしまう。内容も表紙と同じく見たことのない言語で書かれていた。
だけれども俺は何故か内容がわかった。
『おめでとう。この文字が読めると言う時点で君は悪魔に生まれ変わる才能を持っている。悪魔に生まれ変わって心の奥底に秘めていた欲望を叶えたまえ。』
「意味わかんないや。大体悪魔になって今の現状を変えられるのか? すずの事を手に入れる力が手に入るのかよ」
胡散臭すぎる言葉に不信感を持って俺は本を閉じようとした。その時持っていた本が光りだす。
青い光を放ったそれは勢いよく俺の胸に飛び込んできた。そして俺の身体を変えていく。
「なんだこれっ!」
部屋に置いてある鏡が俺の変化をはっきりと映し出している。全身に電流が流し込まれたような感覚と共に俺の身体は変化を遂げた。
肩甲骨のあたりが盛り上がる感触に襲われるとコウモリのような黒い翼がシャツを突き破って生えてきた。次に尾てい骨のあたりに似たような感覚が現れる。そしてじゅるんと粘度を持った液体を纏った尻尾がこれまたズボンを突き破って生えてきた。最後に側頭部に瘤みたいなのができるとそこから黒い角が生え始める。そして茶色の瞳からいつの間にか鮮やかなエメラルドグリーンの瞳に変化していた。
今の俺は悪魔そのものの姿だった。
「マジかよっ。俺人間じゃなくなったの?」
悪魔の書とやらに目を通すと読める文字が増えている。
『おめでとう。君はインキュバスという悪魔に生まれ変わった。
せっかく悪魔になったんだ。その力を好きな風に使い思うままに生きるがいい。この世界でハーレムを作るもよし、気に入らない存在を殺すために利用するもよしだ。世界を支配するのもいいだろう。
君はインキュバスだ。人間の快楽のエネルギーを摂取しないと弱ってしまうので定期的な性的接触は必須だ。それだけは忘れるな。後は自分の心が思うままに、好きにするが良いさ。ではまた逢おう。良き日々を…… 』
最後までページをめくると悪魔の書は黒い炎に包まれて燃えてしまった。
ハーレムとか世界の支配は全く興味がない。
俺は開放感に包まれ、その快感をゆっくりと噛み締めた。そしてもう一度鏡を見る。やはり鏡の向こう側に見えている自分の姿は変わり果ててしまった事を示していた。
全身に不思議なエネルギーが満ちているのを感じる。今ならばなんだってできるだろう。
それほどの充実感がそこにはあった。
何故か悪魔としての能力が手にとるようにわかる。おそらく人間が手足を動かすのと同じ感覚だ。悪魔の持つ能力はきっと人間でいえば手足と同じような存在なのだろう。
「すず、今から逢いにいくね」
俺は翼をはためかせて自室の窓をすり抜ける。そしてすずのいる札幌へと飛び立った。
俺は生まれ変わったこの姿ですずを手に入れると決めた。
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