可愛かった弟は私への恋心を拗らせてインキュバスになってしまいました〜弟の甘い責めで快楽堕ち

べーこ

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インキュバスのアイラブユー(綾人視点)

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 夜の涼しい空気が頬を撫でる。すずに会いたい一心で旭川から札幌まで空をかけていく。
 街から少し外れると真っ暗だ。目印も何もない空を俺は翔けていく。最初に飛ぶ方角を決めて一直線ですずの住む寮へと向かう。
 空を飛ぶスピードはかなり早く20分足らずですずの住む大学寮へ俺は着いた。
 夜も遅いのでおそらくすずは眠っているだろう。
 インキュバスになってから不思議な魔法を俺は使えるようになった。魔法を使って窓をすり抜けて、すずの部屋に侵入する。物音を立てないようにベッドで眠るすずにこっそり近づいていく。

 部屋の灯りはすでに消えている。だけど夜目がきくのか、俺には昼間と変わらずに部屋が鮮明に見える。すずはベッドの中で布団にくるまり、胎児のように丸くなって眠っていた。
 すずの眠る姿勢は昔から変わらなかった。

「すずの夢にお邪魔するね」

 俺はすずの耳元で囁く。すずの額と俺の額をくっつける。
 俺の意識が溶けていく不思議な感覚に襲われる。意識が落ちて、眠るに近い感覚だ。
 俺はすずの夢に侵入した。
 すずの夢は何もない真っ白い風景だった。その空間の真ん中ですずが丸くなってすやすやと眠っている。
 俺は尻尾や翼といった悪魔のパーツは全て隠していつもの綾人の姿をとる。
 俺が近寄るとすずは目を覚ます。少し寝ぼけた顔でこちらを見つめる。

「綾人……?」
「すず、寂しいから会いに来ちゃった。最近ライン送ってくれないし、俺からライン送ってもなかなか既読つかなくて寂しいよ。そんなに大学は楽しい? 俺のおかげで大学に受かったのに俺を蔑ろにするのってどうなの?」

 すずに伝えたいことが溢れてくる。何を言ってもすずは夢の出来事としか処理をしないだろう。だから普段言えない本音も全部ぶつける。
 すずはバツが悪そうな顔をして目を逸らす。俺の事を放置していた罪悪感はあったみたいだ。

「綾人ごめんね。そうだよね、綾人も無視されたら気分悪いもんね」
「そうだよ。わかってくれればいいんだ」

 俺はすずを抱き寄せる。すずの身体は柔らかくて甘い匂いがする。とても美味しそうな匂いだ。
 抱き寄せるとイチゴのように顔を赤くして照れるすずが可愛くてつい見つめてしまう。少しするとすずは恥ずかしそうに手で顔を覆って隠してしまう。可愛いすずの顔を見たい俺は優しくすずの手を顔からどかした。

「すず、顔を隠さないで。キスしよう。顔真っ赤だね。可愛い」

 俺はすずの柔らかくて触り心地のいいほっぺを手で押さえてすずの唇と自分の唇を重ねた。その瞬間に甘くて温かいものが俺の中に流れ込んでくる。今まで生きてきた中で感じたことのない最高の快感だ。
 欲望の赴くままにすずの唇を舐める。そして舌を使ってすずの口腔内を掻き乱す。すずの唾液も極上の甘露で本能のままにすずの唾液を飲み、代わりに俺の唾液を流し込む。

 キスをするのは初めてだが淫魔になったせいかどうすればすずを悦ばせる事ができるのかが手に取るようにわかるし、キスも自分で驚くほど手慣れているようにできる。
 すずの舌の動きは慣れていなくて俺に翻弄されるままだ。おそらくはまだこういった深いキスは未経験なのだろう。むしろ経験していたら相手の男を2度とすずの前に現れないように殺してしまったかもしれない。

 俺が夢中ですずの唇を貪っていると胸をドンドンと叩かれる。目を向けると苦しそうな顔をしたすずがいた。1度すずの唇を解放してあげる。
 すずはゼエゼエと苦しそうに荒く呼吸する。

「すず、キスしている時は鼻で呼吸するんだよ」
「うっうるさい! 綾人はなんでそんなに慣れているのよっ!」

 すずは顔を真っ赤にして俺に抗議する。そりゃあ淫魔だし、人間の快楽を食事とする悪魔だからそういった性的な事が上手いのは当然だ。

「秘密」
「あっそ。綾人のそういう余裕ぶってるとこムカつく」

 すずはジトッとした瞳で俺を睨む。でもやっぱり俺から視線を逸らしたり逃げようすることはない。この様子だと嫌じゃなかったって事だろう。すずの反応に思わず笑みが出る。

 次会うときはキスだけで腰砕けになるようにしてあげたいな。せっかくエッチな悪魔に生まれ変わったのだ。その力を最大限に活かしてすずを気持ちよくしてあげたい。最終的には俺なしでは満足できない身体に作り替える予定だ。

 でもこれが現実だったらすずはきっと全力で俺の事を拒絶するのだろう。このまま夢が覚めなければいいのに。ずっとずっとこの時間が続けばいいのにと願ってしまう。
 もうすぐ夜明けだ。すずはもう少ししたら目を覚ますだろう。その前に俺は帰らないと。

「すず相手に焦る理由ないし。じゃあまた今度会いにくるね」 

 俺はそう言ってもう一度すずの唇を奪った。夢の中といえすずと別れるのが惜しくてずっと唇を貪り続ける。すずの柔らかくて甘い唇は最高でずっとこうしていたかった。

 そしてすずに魔力を流し込んで夢に干渉しやすくするようにしておく。これでこれからはわざわざ札幌まで飛んでくる必要もない。

 少しずつこうやって俺の身体ですずを堕としていくための準備を始めた。
 インキュバスに生まれ変わったのだからインキュバスのやり方で俺はすずを手に入れる。
 すずが手に入るのなら俺は手段を選ばない。ゆっくりとすずの身体を開発してすずの方から俺を求めるようにすればいい。夢に俺の存在を刷り込み、徐々に身体を開発する。時間はかかるがすずを堕とすにはそれが最善だろう。

 夢は俺の方である程度はコントロールできる事もわかった。それを知ってからは俺は度々すずの夢に入り込むようになった。

 夢の中だけなら俺はすずに恋人のような振る舞いが許された。すずも夢の中だから違和感がないのか俺が恋人のような振る舞いをしても何も疑問には思っていなかった。

 夢の世界で俺とすずは色々な所に行った。動物園や映画館にも行って楽しいデートをした。童話のような世界を創り上げ、お菓子の家や白亜の城、はたまた海底の街など現実には存在しない場所でもデートをした。どこも昔すずが行ってみたいと言っていたところだ。
 ただひとつ不満なのは、どれだけイチャイチャしてもすずが目覚めてしまえばこの時間が終わってしまう事だ。

 目が覚めて、視界に入るのは殺風景な自分の部屋だ。そこにすずはいない。

 目覚めた時の喪失感はとても大きい。
 すずと過ごす幸せな時間に終わりがあるのが辛い。もっと長くこの幸せを感じたい。そう思っても朝は必ず来るし時間は止められはしない。
 夢の中で何度もすずに愛を囁き口づけを贈るがそれでも現実のすずの口から好きだと言われたわけじゃない。あくまでも夢の世界の俺だけが一方的に言っている言葉だ。それがもどかしい。早く本当のすずに会いたい。早く俺も高校を卒業してすずと同じ大学に進学したい。

***

 今日も俺はすずのSNSのアカウントを覗いていた。特に鍵垢はすずの赤裸々な感情が書いてあるしプライベートも沢山載せているのですずの現状を把握するには1番便利なツールだった。

『来週初めての合コン楽しみ! 彼氏できるといいなあ。彼氏いない歴イコール年齢だからこの合コンに全てを賭ける! メイク練習したからあげてみるね!」

 すずの最新の投稿だった。その呟きと共にアップされた写真は合コンに行くために気合いを入れた化粧姿のすずだ。実家にいた時には考えられない姿だった。少し派手目なメイクだがすずによく似合っている。だけどこんな風に変わっていくすずを見ると寂しくて、そしてすずを変えた都会が憎くなる。

『めっちゃ似合ってる! すずちゃんめちゃかわ♡』

 そしてすずと仲のいい男がリプライを送っている。この男はすずの大学の先輩だ。確か名前は栗川とかだった気がする。
 前からすずに気があるらしく事あるごとに粉をかけている。すずは鈍いからこの男が下心を持っている事に気がつかない。だけどすずも満更ではなさそうで、きっとこのままだとこの栗川って男とすずは恋人同士になるだろう。

「……なんで俺じゃないんだろ」

 すずを好きになってから幾度となく考えた事を思わず口にしてしまう。弟に生まれただけで叶わない恋。すずが恋愛の話しをするたびに胸がナイフで刺されるようだった。

 すずの事は何でも知っていると思っていた。どんな事が好きで何が嫌いか、友人関係、趣味の全てを把握していたつもりだ。でも違ったのだ。それはすずが今までは目に見える所にいただけだからわかる事だったのだ。

 こうして少し離れると俺の知らないすずがいる。その事実にどうしようもなく腹が立ち、そして悔しかった。
 俺以外の誰かがすずの隣に立ち、すずは俺ではない人間を選んでいつか結婚するのだろう。 そんな未来を想像すると胸が締め付けられる。この想いを捨て去れば俺は普通の弟としてずっと側に居られるのだろうけどどうしても諦めきれない。

 だから決めた。インキュバスの力を使って絶対に俺のものにする。俺が悪魔に生まれ変わったのもきっとこの力ですずを手に入れるためなのだろう。

 姉弟という時点ですずに好きになってもらうのはほぼ無理だろう。ならばすずを自分の元に縛りつけるには人間の本能を利用するしかない。俺は快感という麻薬ですずを縛りつける選択をした。

 インキュバスとなった俺と交わればすずはおそらく俺以外のセックスでは満足できなくなるだろう。インキュバスの身体は女を悦ばせる事に特化している。
 心が手に入らないならせめて身体でもいいから欲しい。そして快楽という檻に閉じ込めて俺がずっとすずを愛してやるのだ。誰にも渡さない。俺だけのものにして、絶対離さない。


 そうと決めたら行動に移したのは早かった。
 計画の決行日は週末に決めた。俺もすずも学校は休みだ。夜が明けるまですずを可愛がる予定だから次の日は土日のどちらかがいいだろうという理由だ。
 家族には友人の家に泊まりに行くと伝えてある。
 計画の決行日、俺は悪魔の姿に変身して、翼はためかせる。そして夜空を翔ける。吹き抜けていく風は冷たくも心地いい。
 
 すずの住む女子寮に着くと俺は宙に浮いたまますずの部屋へと向かう。すずの部屋はカーテンから明かりが漏れておりまだすずが起きている事を示していた。
 俺はすずの部屋の窓にゆっくりと近づく。そして窓をコンコンとノックした。しかし、ノックをしても反応がない。すずがそこにいるのはわかっているので再び窓を叩く。それでも反応はない。

「姉ちゃん、無視しないでよ。俺だよ、綾人だよ」

 そう呼びかけるとすずの部屋のカーテンが音をたてて開く。窓の向こうには会いたくてたまらなかったすずがいた。
 窓の外で宙に浮かび、悪魔の姿をした俺をすずは口をぽかんと開けて呆然とした顔で見ていた。

「綾人っ、あんたその格好どうしたの? そもそもなんで空を飛んでるの?」

 少しすると堰を切ったようにすずが質問責めにしてくる。そうだよね。旭川にいるはずの弟が変な格好して目の前で宙に浮いていたらそういう反応になるよね。

「ちゃんと話すから。まずは入れてよ」

 すず自身に生まれ変わった俺を受け入れて欲しくて窓を三度ノックした。本当はこんな窓なんか俺には何の意味もない。入ろうと思えば簡単に侵入できる。
 だけどすずは不安そうに眉尻を下げ、所在なさげに視線を俺から逸らし窓を開けてくれる様子がない。その姿は悪魔に生まれ変わった俺をすずが受け入れるのを拒否するように見えた。すずのその態度は小さいけれど間違いなく俺の心に傷をつけた。

「可愛い弟が入れてって言ってるのに入れてくれないなんてハクジョーな姉ちゃんだなあ。いいもん!姉ちゃんが入れてくれないなら俺から入っちゃうもんね」

 俺は明るい笑顔を作り、窓へと手を伸ばす。俺の身体は窓をすり抜けてすずの部屋に入り込む。鉄筋とコンクリートでできた壁やガラスでできた窓など俺には何の意味もない。
 すずの目の前で俺は重力を無視して宙に浮いたままだ。
 物理法則を無視した俺の姿にすずは呆然とした表情を浮かべていた。すずの目は困惑と恐怖を如実に表していた。

「綾人、あんたそれ何のマジック?」
「これはマジックでもなんでも無いよ。俺、すずと結ばれたくてインキュバスになったんだよ」

 すずに言い聞かせるようにゆっくりと告げる。俺が生まれ変わったのはすずにあると暗に責めるようないやらしい言い方だと我ながら思う。

「アンタなに巫山戯たこといってんの? インキュバス?」
「そう。インキュバス。姉ちゃんと結ばれたくて俺エッチな悪魔になっちゃった♡ すず、責任とってね♡」
「は? アンタ流石にふざけた事言うと怒るよ」

 すずは唇をプルプルと震わせたまま強い口調で俺に言う。だけどすずの表情は怒りよりも戸惑いの方が強く全く怖くない。すずの強い口調なんて数年前に兄弟喧嘩した時以来だなと俺は懐かしくなっていた。

 すず、今言った言葉におふざけなんて一欠片もないよ。この姿はすずに対する俺の本気の証だ。インキュバスに生まれ変わったのは本当に偶然だ。でもきっとすずに恋心を抱かなければ俺はあの悪魔の書でインキュバスに変身する事はなかっただろう。

「姉ちゃんこそ俺がおふざけで人間やめると思ってるの? 本当にすずは何もわかってないな。その前に防音処理しないと。この寮ボロいから隣の部屋に物音が聞こえそうだし」

 俺は手のひらに魔力を集中させる。目と同じ色の淡い緑の光が球のように集まってくる。そしてその光はすずの部屋を包み込むように広がった。この魔法は防音効果と後は対象を閉じ込める効果もある。部屋の物音は一切聞こえなくなるし、すずの部屋のドアも開くことは無い。完全に密室へと変化した。
 これで後戻りはできない。今日で俺はすずの弟をやめるのだ。

「綾人、本当にアンタなの? それで今何したの?」
「そうだよ。本物の綾人だよ。さっき言ったじゃん。防音処理♡後、誰もこの部屋に入ってこれない。すず2人きりの時間過ごそうね♡」

 俺はすずに迫り、ベッドへと押し倒し馬乗りになる。すずの顔がすぐそばにある。それだけで全身の血の巡りが速くなり、心臓が高鳴る。

 悪魔になったおかげか身体能力も人間であった時よりも上がり一瞬ですずとの距離を詰める事ができた。
 ギシギシと音が鳴るベッドのスプリングは安物である事が一目瞭然だ。本当はもっとロマンチックな初夜にしたかったけどこれはこれで生活感があって背徳的かもしれないなんて俺は不謹慎にも思ってしまった。

 可愛い可愛いすずの身体を俺は尻尾で撫で回す。パジャマの上から柔らかい肉付きの良い太腿、きゅっと引き締まったふくらはぎから程よい大きさのお尻とすずの様々な部分を尻尾で堪能する。
 くすぐったそうにすずは表情を歪める。

「ねえすず、俺はずっとすずとこういうことをしたかった。すずに嫌われたくなくて普通の弟を必死で演じてた。でもそれも今日でおしまい。だってただの弟じゃすずの唯一にはなれない」

 そして俺はすずの唇を奪った。すずは抵抗して俺の身体を押し退けようとするけどそんなのは全く抵抗にならない。俺は強引にすずの口内に侵入し、蹂躙していく。唾液を流し込みすずの舌を捕まえると絡ませる。すずは戸惑っているのかキスに慣れていないのか俺に為されるがままだ。俺が初めての相手だといいなと僅かな願いを込める。

 俺はすずの唾液を求めて啜る。それと引き換えにこれでもかというくらいにしつこく俺の唾液をすずに流し込む。

 初めてのディープキスに最初は驚いていたが徐々に力が抜けたすずの瞳は熱を帯びた色を灯していた。
 すずのその表情が可愛くて、綺麗で俺の理性を溶かすのには充分だった。

 そして本能のままにすずの首筋へ顔を埋めて、白い肌を吸い上げる。それだけじゃ飽きたらず、すずの鎖骨へも舌を伸ばし、鎖骨のラインをねっとりと舐め上げる。持ち物に名前を書くように俺のものだという証を刻みつける。すずは誰にも渡さないという俺の強い独占欲の表れだ。


「あんたおかしいよ! こんな事姉弟でしていいはずないじゃない」

 そういうすずは顔を真っ赤にし、快楽で目がとろんと蕩けている。実の弟の責めで快楽を得ているのに正論を振りかざすすずの姿は俺には滑稽でしかなかった。


「姉弟か……俺は一度たりともすずのことを姉として見たことはないよ。ずっと女として見てた。諦めようと思った事もある。でも諦める事は出来なかった。だからね俺は諦める事を諦めたんだ。そして俺はインキュバスになった」

 俺はもう我慢の限界だと言うように、今度は自分の欲望を満たす為に、俺はすずの衣服に手をかけた。すずは俺の伸ばした手を思い切り振り払う。

「ちょっと!どういうつもりか説明しなさい!そもそもどうやってアンタ人間やめたのよ!」

 すずに拒否され、怒りの炎がゆっくりと灯る。目的はさっきからずっと丁寧に説明している。それに今この時は俺が人間をやめた方法なんてどうでもいい事だ。

「どうもこうも言葉のままだよ。俺はすずと姉弟の関係じゃなくて男と女の関係になりたいって言ってるの。それに好きって気持ちはどうして姉弟だとダメなの? たまたま好きになった相手が姉だけなのにね。そして俺がインキュバスになった理由なんて今はどうでもいいじゃん。それはいつか気が向いたら教えてあげる」

 物分かりの悪いすずに俺はゆっくりと説明をする。できるだけ明け透けにおバカなすずにでも分かるように噛み砕いて教えてやる。


「恋人ならほか探してよ。綾人なら引くて数多でしょ? それに姉弟で結ばれるのはやっぱりおかしいと思う。それに私同じサークルの栗川先輩が好きなの」

 そりゃあ俺はモテるさ。だけど誰だってすずの代わりはできはしないのだ。栗川か……SNSですずによく絡んでいる男だ。そして自分のアカウントではすずに想いを寄せるような発言をしている。

 両想いだよ。おめでとう、すず。だけどそんなハッピーエンドは俺が許さない。俺の愛でお前らのハッピーエンドなんかどろどろのぐしゃぐしゃにして踏み躙ってやる!

 童話の王子様になれないのならば俺は魔女でいい。お姫様を永遠に閉じ込める悪の魔女に喜んでなろう。だけど童話と違うのは王子なんかに絶対負けない事だ。

「それが出来ないからこんな姿になったんじゃないか! あははははは! いいよ。すずが受け入れてくれないなら実力行使だ。快楽でいっぱいいっぱい嬲ってあげる。あーあこんな事ならすずの受験に協力しなきゃ良かったなあ。すずの喜ぶ顔が見たくて受験に協力したのに。なのにすずは俺に冷たくするんだから」

 笑いが込み上げてくる。声を出して俺は狂ったように哄笑する。きっと今の俺はひどい顔をしているのだろう。

 本当、人間だった時の俺の努力はなんだったんだろうな。すずに喜んで欲しくて勉強を教えたのに、俺がいなければすずは帝北のキャンパスに足を踏み入れる事は叶わなかったのに。
 恩を仇で返された気持ちだ。

 俺はすずの体を押さえ込み自分の体ですっぽりと包み込む。姉だからか年上ぶるけどすずの身体は俺よりもずっと華奢で抱きしめたら折れてしまいそうだ。どこもかしこも俺より細いし小さい。すずの香りがとても心地いい。

「すずじゃないと意味がないんだ。だから堕ちて」

 すずを抱きしめたまま俺は耳元ですずに囁く。

「ああダメ……怖い。綾人やめて……」

 すずはか細い声でそう言った後に、思い切り俺の身体を突き飛ばす。俺の身体はすずから離れベッドから転がり落ちてしまう。

「綾人大丈夫!」
「いったあ」

 すずの抵抗に燻っていた俺の怒りは頂点に達した。すずの事を思い切り睨みつけてしまう。なぜ俺を受け入れてくないのかという怒りと悲しみの感情を込めて。

「ははっ。そっか。すずはどうあっても俺を受け入れてくれはないんだ。でも俺はすずを諦めたくない。すずと結ばれるならなんだってする。俺はずっと何年もすずを愛している。どうして俺たちは姉弟なんだろう?姉弟じゃなかったらと願わない日はなかった。万が一義理の兄弟だったらいいなって思って戸籍も調べた。実は個人用の遺伝子検査キットも買って調べた。でも調べれば調べるほど俺とすずは本当の姉弟だって事実が突きつけられた。この胸が潰れそうなくらいにすずが好きなのに姉弟だからって理由だけで許されないんだよ! もし俺とすずが血の繋がってない他人だったらすずは俺を好きになってくれたのかな? ねえどうして俺たちは姉弟に生まれちゃったんだろう? 兄弟じゃなかったら栗川なんかじゃなくて俺の事見てくれた?」

 気がつけば俺はすずに想いをぶちまけていた。本当はもっとスマートに決める筈だったのに。もし俺たちが姉弟なんかじゃなくて赤の他人だったらこの恋はもっと上手くいったのだろうか。

「綾人ごめん、私綾人とそういう関係になるのは想像できない。綾人の事はどうしても弟にしか見えないよ」

 すずは申し訳無さそうに俺に告げる。

「ここまで言ってもすずは俺を受け入れてくれないのか。だったらどんな手を使ってでも俺のものにしてあげる」

 すず、インキュバスの本気をこれから見せてあげるね。俺の全てですずの身体を快楽漬けにしてあげる。俺なしではいられないように全部全部作り替えてあげるからね。
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