可愛かった弟は私への恋心を拗らせてインキュバスになってしまいました〜弟の甘い責めで快楽堕ち

べーこ

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番外編

弟淫魔とバレンタインとお仕置き(前編)

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 気がつけば綾人は高校を卒業し、私を追って帝北大学に進学していた。それからもうすぐ1年近くが経とうとしていた。月日の流れは早いものである。
 2月に入り、大学の期末試験とレポート地獄を終えて春休みに突入した。

 今日は綾人に誘われて——正確に言えば半ば強制的に綾人の住むアパートに遊びに来ていた。
 綾人の部屋は男子学生のものとは思えないほどに綺麗でスッキリしている。

「すず、いらっしゃい。好きなとこに座ってていいよ。今お茶とお菓子用意するから」

 綾人はそう言ってお茶請けの準備を始める。

 綾人が住むのは学生向けのワンルームのアパートだ。
 綾人は学生寮には入らず、普通の賃貸で1人暮らしをしている。綾人曰く「男子寮なんて死んでもヤダ。すず連れ込めないし、色々面倒臭そう」
 そして綾人は両親を言いくるめて寮を借りずにアパート住まいを勝ち取ったのだ。

「お待たせ。飲み物はホットチョコレートでいい? ゆっくりしていってね。俺としてはずっとここにいてくれてもいいんだけど」

 綾人はにっこりと笑ってテーブルにマグカップを置く。
 湯気が立ったホットチョコレートが並々と注がれている。

「ずっとは無理でしょ。美味しい」

 綾人が用意したホットチョコレートは優しい甘みと温かさですごく美味しかった。
 それは私好みの甘さと温度で用意されていた。
 我が弟ながら勉強ヨシ、運動ヨシ、顔ヨシ、気遣いヨシとハイスペックである。
 性格は少々問題ありだがその欠点を大いに上回るスペックだ。

「サンキュー。まあ俺はすずと違って器用だしね。で、試験の結果はどうだったの? 俺としては全然ダメでもいいよ。すずが留年したら一緒にいる時間増えるからね」

 綾人の口元は綺麗な弧を描いている。こいつ、私の試験結果が悪いの期待してやがる。

「多分必修は大丈夫だから、留年はないかな。自信の無い講義はいくつかあったけど」
「なあんだ。それは残念。キャンパスライフをすずといっぱい過ごしたかったのに」

 綾人はクスクスと妖艶に微笑む。
 淫魔になってから見せるようになった綾人のこの微笑みは少しだけ苦手だ。
 色っぽい笑みは魔性そのもので綾人に引き摺り込まれそうになってしまう。
 綾人は可愛かった弟じゃなくてなんだって気がついてしまう。

「で。綾人アンタが家に呼んだ理由は何? 何か理由あって家に誘ったんでしょ?」
「さすがすず。姉弟だけあって俺の事わかってるね。バレンタインデーのチョコレート今のうちにおねだりしておこうと思って」
「アンタ、毎年山ほど貰ってるじゃん」

 この弟は昔からアホみたいにモテる。毎年バレンタインは綾人は紙袋にチョコレートをぎっしりと入れて持って帰ってくる。

「すずから貰わないと意味ないの。せっかくだからゲームしようか」
「ゲーム?」
「そう。簡単なゲーム。すずは俺が1番欲しいチョコレートを用意する。俺がすずに1番求めているチョコレートなら、ホワイトデーになんでも好きなもの買ってあげる。これでも色々バイトしてて金はあるからね」

 この優秀な弟は家庭教師のアルバイトをしている。
 綾人は帝北を首席で入学した実績を買われ裕福な子供がいる家と個人契約を結んでいるらしい。
 時給も相当なものらしく大学生とは思えないほどの賃金をもらっているそうだ。
 間違いなく私よりも潤った生活を送っている。

「じゃあ、もしかしてツイッチの新作のゲームも、憧れのデパコスも!?」
「もちろん。すずが気になってるゲームもコスメも好きなだけ買ってあげる。ただし、俺が1番欲しいチョコを用意できればだけど」

 綾人が綺麗な目を細めて不敵に笑う。

「綾人のお眼鏡に敵わなかったらどうなるの?」
「もちろん、可愛い弟の気持ちがわからない悪~い姉ちゃんにはお仕置きだよ。とっても気持ちいいお仕置きですずの身も心もチョコレートみたいにトロトロにしてあげる」

 綾人の手が私の頬のラインを滑り、顎をクイッと持ち上げる。
 淫魔である綾人の気持ちいいお仕置きは拷問だ。
 淫魔の肉体と魔力を使った責めで全身が溶けてしまうくらいの快楽を綾人の気が済むまで与え続けられる。
 綾人のお仕置きはそれこそチョコレートよりも甘くてドロドロしていて胸焼けしそうなものだ。
 綾人にお仕置きされると全身が熱って快楽で身体が蕩けてしまいそうになる。
 全身がバラバラになり、昇天しそうな快楽を思い出してしまう。
 
「すず、顔真っ赤。もしかして俺とのエッチ期待してる?」
「違う! ヒント! ヒントちょうだい」
「焦るすずもかーわいい。ヒントはなし。すずの小さい頭でよーく考えてね。すずのチョコレート期待してるよ」

 綾人は笑って、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 そしてその日は何事もなく綾人と別れた。

 女子寮に戻ってから私は頭を抱えた。

「綾人の喜ぶチョコって何⁉︎」

 綾人は普通に甘いものを食べるが特別好きな甘味は無かった筈だ。
 なんとしてでもゲームには勝ちたい。だってツイッチのゲームもコスメも欲しい。
 何よりも綾人の欲しいチョコレートをあげられなければ快楽拷問が待ち受けている。綾人の快楽拷問は本気で頭がおかしくなるほどなのだ。
 とにかくバレンタインまでに私は無い知恵を絞る事になった。

***

 綾人は昔からよくモテた。
 クセなく綺麗に整った容姿と文武両道でなんでも器用にこなす上に社交的な性格で女子からアホほどモテていた。
 私が中2で綾人が中1の時だった。

「ただいまー」

 すっかり日が暮れる頃に綾人はいつも帰宅していた。
 部活動を終えた綾人は両手にパンパンに紙袋を持っていた。

「おかえり~。綾人この紙袋どうしたの?」
「バレンタインで女子から貰った。邪魔で鬱陶しいだけだけど」

 綾人はうんざりとしたように紙袋をどさっとリビングの床の上に置く。
 
「姉ちゃん食べる? こんなに貰っても食べきれないし」

 綾人は紙袋から無造作にチョコレートを取り出して私に投げる。
 チョコレート色の包装紙に包まれ、ピンクのリボンでラッピングされたそれはとても手の込んだものであった。
 きっと綾人のために想いを込めて用意した物だ。

「綾人、これはないんじゃない? アンタのために作ってくれた物でしょ」

 あまりにも思いやりのないぞんざいな扱いが目についてつい咎めてしまう。

「勝手に机の上に置いてあった送り主がわからないチョコにいちいち気をかけてられないよ。それに好きじゃない人からチョコレート貰ってもメーワクなだけだし」

 コイツには人の心ってものが無いのか!? 

「アンタねえ」
「捨てるくらいなら姉ちゃんたちに食べてもらった方がチョコも喜ぶし。そうそう手作りのは食べない方がいいよ。何が入ってるかわかんないから」

 コイツ、女の子の心をビックリするほど理解していない。
 結局綾人が貰ってきたチョコレートの7割は母さんと父さんと私が毎年食べていた。
 綾人が学校で大量にチョコを貰ってくるから、私や母さんはバレンタインにチョコではなく違うお菓子をあげるようになっていた。

***

 綾人との思い出を振り返っても綾人の欲しいチョコレートの手がかりは一切無かった。

「全くわかんない! 綾人のやつヒントもくれないし。……そうだこういう時こそ!」

 私はスマホを手に取り、ベッドに寝っ転がる。そして『彼氏 バレンタイン チョコレート』で検索をかける。
 綾人とは恋人ではないけどあいつが求めているのは本命チョコだ。

 検索ページを見るとおすすめの市販品がまとめられているサイトと手作りのレシピが纏められているサイトに分かれていた。

 だけど手作りはすぐに選択肢から消えた。
 綾人は過去の発言から考えると手作り信仰者では無い。
 それにやっぱり市販品の少々お高いチョコレートの方が見栄えも味もいい。

 綾人が気に入りそうなチョコレートをスクショしてオンラインショップを開いた。

 これでバレンタインはバッチリなはず……
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