熊ちゃん配達員を食べたい腹ペコな私 清純なのは見た目だけ!とにかくおとなしく食べられなさい!

あさひれい

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初デートということになったらしい

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俺はうっかり口を滑らせたことに、内心とても焦っていた。
橘さんがにこにこと俺の車に乗ってきてくれたことが嬉しくて、柄にもなく相当はしゃいでしまった。
助手席に座っているだけなのに、なんだかとても近くに感じる。2人だけでここにいるからだろうか…
かなり意識して雑念を捨てようとしないと、つい橘さんの綺麗な横顔や、すらりと伸びた脚に目がいきそうで、とてもやばかった。

そして、頭が無駄に動いていたせいで、初めてだなんて、言わなくてもいいようなことを口にしてしまった。
慌てて取り繕ったけど、そんなの苦しすぎるだろ…と我ながら思っていた。

橘さんがはっとしたように押し黙り、ぽかんと前を見つめているから、俺はしょっぱなから、とんでもない失敗をしたとハンドルを握る手に力を込めた。

ロクにデートもしたことないヤツだなんて、知られたくなかった。
でも、自分を隠すことはやめようと誓ったじゃないか、と心の中で俺の考えがせめぎ合っている。


すると、突然橘さんが、俺のほうを向いたなって感じた瞬間

「やり直しましょう!」

と結構大きめの声で、とてもはっきりと言ったので、思考が止まった。


こ、これは、デートをやめたいという意味だろうか…と、どくどくと心臓が早鐘を打っている。


「今日が、初めてのお出かけということにしましょう!」

ちょうど赤信号で止まったから、橘さんのほうを見てしまった。
冗談を言ってるようではなく、とても真剣な表情だ。
ぎゅっと握り締められた手がかわいい…

「この前、何も記録に残るようなことしなかったですよね?」

「記録ですか…?」

「そう!写真も撮らなかったし、何かを買ったりすることもなかったし…」

「あぁ…なるほど…」

なるほどとは言ったものの、デートの定義をよくわかっていないので、何をどう反応すればいいのかいまいちわかっていない。

ただ、うっかり至近距離の真正面から見てしまった橘さんのかわいらしさにしみじみと見惚れてしまって、ほぼ上の空だ。

「私、今日、いっぱい熊野さんの写真も撮ります!」


そう高らかに宣言されて、はっと笑に戻った。

「え、いや、俺のは別に」

「じゃあ、2人で撮りましょう!いっぱい!」

にっこりと笑顔で言われて、俺はぐきっと首の骨が鳴る勢いで前を向いた。
青信号になったから、アクセルを踏んだ。ハンドルを握る手が痛い。

だめだ。だめだ。浮かれるな。
橘さんが、モテない俺の話を聞かされて、ものすごく同情してくれて、年上としての手ほどきを…

だからっ!よこしまなイメージを持つんじゃない!!

いつもは何も考えなくても簡単にできる運転が、今はブレーキ踏むのさえ確認しないとできないくらい混乱している。

煩悩をとにかく消さないと。こんな状態で、1日どころか、1時間もいたら、俺の下心が見透かされて、告白どころじゃなくなってしまう!

橘さん、どうかもう少しだけ、その可愛らしさの猛攻を抑えてください。
俺がちゃんと告白できるまで、このなけなしの理性を保てるように。
いえ、もちろん、告白したからって、もし、万が一、OKをもらったとしても、理性を保ちたいので、どうか、もうこれ以上俺の煩悩を刺激しないでください。


「私、熊野さんに楽しんでもらえるようにがんばります!」


橘さんが俺のほうに体を向けた拍子に、肩から羽織っていた柔らかそうな布がするすると滑り落ちる。
その布を思わず目で追ってしまって、橘さんの細い脚に目がいく。
はっとして、前を向いた。やばい、だめだ、俺、想像するな、見るな!見たら止められないからな!
…もう頭から氷水かぶらせてください…


橘さん…無理です…拷問です…
かわいい…好きだ…好きすぎる…
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