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まさちち

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3章

勇者 その9

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 ケヴィンさんがテレポートしてから他の人達を見回すと、ドイルさんやマローマさんそれにキャリーさんも特に気負った感じや緊張しているようには見えなかった。

 さすが場を踏んでいる人達は違うのだと感心しているとザルドさんが話しかけてくる。
「おいおい、ヒデ随分落ち着いてるじゃないか。頼もしいな」
「え?俺が?そんなことないよ内心ドキドキしてるよ。そう言うザルドさんは流石に落ち着いてるね」
「ハハハ、まあ、今回の俺はお前の横についてるだけだからな」

そう笑っているが疫病の事も聞いているはずなのに、この落ちつきようは凄い。だけどこれだけはきちんと言っておかないと。
「ザルドさん、向こうで調子が悪くなったり身体に数字が表れたりしたら必ず話してくださいね」
「ん?ああ、そのことか。わかっている、その時は頼むぜヒデ」


そんな話をしているとケヴィンさんが現れた。
「確認してきた。間違いないだろう。みんな行けるか?良ければすぐに飛ぶぞ」
ケヴィンさんのその一言に勇者PTの人とキャリーさんがケヴィンさんの周りにすぐ集まる。

守護獣のライジン、フウジン、ミズチが俺の周りにやって来る。
「ヒデ君とキャリーさん、それとザルドさんだったね?PTを組むから」
そう言うケヴィンさんはいつものふざけた調子でなく素の方のケヴィンさんだ。
俺の目の前にYES/NOの文字が浮かぶ、急いでYESを選択する。

そして子供達や若様、シオンさん、ギルマス、ママさんに向かって挨拶をする。
「じゃあ、行ってきます。ミラ、診療所を頼むな。ゲンにトラン、ハルナにベンテンもよろしくな」
ミラが笑顔で答えてくる。
「うん、こっちは任せてね。ヒデ兄師匠は疫病の治療に専念してね」
その後にゲン、トラン、ハルナが続く。
「任せとけって」
「キチンとやっておくから」
「そうよ。全然平気なんだから」

 そんな四人の反応に少し驚いた。まだ連れて行けと言い出すかと思ったのだが‥‥‥

 初めてあった時より成長しているのだ。少し寂しい感じだが成長を喜ぼう。
そんな感慨深い気持ちになっていたらケヴィンさんから再度確認がきた。
「もういいかな?飛ぶよ?」
「あ、ハイ大丈夫です」
そう言ってみんなに向けて手を振る。


 次の瞬間目の前に兵隊の格好をした人が目に入った。

若様とテレポートの経験があるけど突然風景が変わるのはいまだに慣れないな。

そんな事を考えていたらケヴィンさんが目の前の兵士に声をかけていた。

「病状の出た人を一か所に集められたかい?」
「まだ、全員ではないですが集会所の方に動かせる者のみ集まっています」

俺はその兵士に急いで訪ねる。
「身体に番号が現れている人はいますか?」
俺の問いにすぐさま答えてくれる。

「はい、調子の悪い者はほぼ全員現れています」
「その中で一番小さな数字の人は何処にいますか?」
「数字が二、と三になっている者が一名づついます。高熱のため動かせられないので自分の家にいます」
「わかりました。直ぐにそこに連れていってください」

俺がそこまで言うと兵士はケヴィンさんの方を見ている。
ケヴィンさんが兵士に向かって鋭い声で言う。
「この人は回復師だ。病人の事はこの人の指示に従ってくれ」
その言葉に敬礼で答えるとこちらですと速足で進んで行く。

その道中ケヴィンさんが話しかけてきた。
「ヒデ君、病人たちの事は頼む。僕らは病魔を追う。奴がこの森にいる事は間違いない。元凶を倒さないと広まる一方だからね」

「わかりました。こちらは任せて下さい」
俺がそう言うと満足そうに頷いてから俺だけに聞こえる様に小声で話す。
「あまり気負わない方が良い。ダメな時は俺がやるから」
「させませんよ。絶対」

 俺は根拠など無かったが、ケヴィンさんにそれだけはさせてはいけないと思った。

俺のそんな言葉を聞いてケヴィンさんが驚いた顔になりその後直ぐにニヤリと笑うと言い直した。
「そうだな。ヒデ君、頼む絶対治してくれ」
「はい、必ず」
笑顔でそう答える。

患者さんが居る家に着くとケヴィンさん達は森に向かって行った。


患者さんは猟師をしている親子だそうだ。きっと森で感染したのだろう。

兵士さんが猟師の奥さんに事情を話してくれて、俺とザルドさんは直ぐに奥で寝ている患者さんの部屋に通された。

 普段は猟師夫婦の部屋なのだろうか?並んで置いてあるベッドには年配の男性と若い男の人が熱にうなされながら寝ていた。年配の男性の首筋に四と数字が浮かんでいる。

俺はすぐさま年配の男性の隣にいきスキルを発動させる。

「診断」

そう唱えると目の前にコンソールが現れこの男性の詳細が表示される。

俺はいつもの様に心の中で問いかける。
《どう?ビャッカさんが言っていた疫病で間違いないと思うんだけど》
『はい、間違いないと思います。もう少し時間をください。解析に時間がかかっています』

え?こんな時間かかった事ってあったっけ?いや、初めてだよね?
そう思ったがしばらく待っていると返事が返って来た。

『マスター詳細がわかりました。この病気は呪いとの併用で発症しています。いえ、呪いが強すぎて高熱や意識不明になってしまうようです』
《呪い?やっぱり。数字が表れたりするからもしかしたらとか思ってたけど。それで呪いなら俺の解呪で何とかなるよね?》
『はい、結論から言うと出来ます。ただ、数字が大きくなると段々と呪いが強くなります。五や四の状態ならたいして魔力を使わなくてもマスターなら解呪出来ます。しかし、三でマスターの三分の一の魔力を消費します。そして、二の状態ですとマスターの魔力をほぼ全部使わないと解呪できません』

《な?え?え?それって、どうすれば?この人を助ける為に倒れるまで魔力を使ったら他の人は助けられない。どうすればいい?何か他に手は無いのか?》

そう問いかけながら目に魔力を込めて患者さんを見ると身体から伸びている糸と言うには太すぎるモノが見えた。

俺は解呪の呪文「ブレイクスペル」と唱えてから糸を切断してみる。一瞬だけ切れたがまた何事無かったようにつながる。

今度はもっと魔力を込めようとした時診断スキルが答えてきた。

『解決する方法はあります』
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