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1章
side ギルマス
しおりを挟む俺が奴に初めて会ったのは、いや、聞いたかな?
「ギルマス、少し良いですか?」
何時もは、冷静で落ち着きのあるオファンがあわてた様子で話しかけて来た。
「ん、どうした?」
「下のボードの前で回復魔法を使った者がいまして」
「は?回復魔法くらい使えるの普通にいるだろ?」
「そうなんですが、新顔なのであの話しに丁度良いかなと思いまして」
「回復師を雇う、あれか?」
「はい、何というかその、実に世間知らずな感じでして、ザルド様の怪我を治して報酬いらないとか言ってましたし」
ザルドは今調子崩して一人でやってるはずだ。
「いやいや、あり得ないだろ、パーティーメンバーでも無いのに!」
「ですからそれも含めての世間知らずな感じなのです」
「教会の押し売りって訳でもないのか」
どこかの貴族の三男坊とかか?とりあえず会ってみるか。
「よし、会って見よう」
「はい、冒険者登録をすると思いますのでその時に客室に通しておきます」
「うまく誘えたら連絡くれ」
「わかりました」
こっちの言い値で働いてくれる回復師とか、そんなうまい話があるとは思えんがな。
ドアがノックされる。
「ギルマス、サブギルマスが呼んでましたが」
「あいよ、わかった」
どれどれ、顔でも拝みに行くか。
一応ノックをしてドアを開く。
オファンの前に座っている、一七いや、成人してるのかも怪しいぞ?後、初見だよな?なんか物凄い残念な顔してるんだが?ホントにこいつが回復魔法を?確かに魔力は持ってるけど
「この子が報告のあった子かな」
「そうです彼が回復の」
オファンの回復のセリフに男の子の眉がピクリとした。
「ここのギルドマスターをしているウスベルだ」
右手を出しながら自己紹介をする。ヒデも握り返してきた。ふむ、落ち着いたもんだ。見た目よりしっかりしているかもな。
「ヒデです宜しくお願いします」
ギルドの登録を済ませてから話しを切り出してみた。
「実はヒデにちょっとお願いしたいことがあるんだよ、ヒデ回復魔法が使えるよな?」
「はい、さっきの書類にも書きましたが」
ぼんやりした、見た目と違って切り返しが早いな。
「ギルドの専属になってくんないか?」
「は?専属?ギルドの職員になれってこと?」
あれ、言い方悪かったか?
「いやいやそうじゃねえよ」
なんて言ったらいいのか
考えてるうちにドアがノックされて、オファンが戻ってきた
カードや規則など簡単に説明していく
「さて、ギルマスの話では要領がつかめなかったと思いますので私がお話しますね」
うるせえ
オファンが説明をしていく
「銀貨1枚でお願いしたいのです。治療した人はギルドカードで管理出来ますので、日払いでギルドがお支払いします」
ん、銀貨1枚?危なかったが何とか顔には出さなかったはずだ、当初の予定では銀貨10枚のはずだが、オファンの奴吹っかけて交渉するつもりか。
ヒデの奴何やら考えて話しているが金額の交渉はしてこない?
「そちらの条件はわかりました。こちらからも少し条件を言ってもいいですか?」
きたか、さてさて、どんな条件と金額を吹っかけてくるつもりだ?
「まず、契約の更新は7日ごとに行うこと、診察するのにギルドの入り口近くに衝立みたいので良いので外から見えない診察室が欲しいです」
ん?金額の交渉はないのか?
「契約更新はわかりました。後、診察室の方はここを使ってもらって構いませんが?」
「いや、出入り口付近がいいです。街の人たちも希望者がいたら診察したいのです。もちろん、街の人の診察料の管理はこちらでやります。あ、不公平が無いように料金は一緒にします。」
は~?こいつ、バカかギルドの連中を治してる分には教会も何も言ってこないだろうが、しかも銀貨1枚でだと……
ワザと脅すように言ってみた。
「間違いなく教会がうるさそうだぞ」
ビビるようならうちの専属にして使ってやる。望む所だなどと言うなら切る事も考えないとな。
「そのためのギルドでしょ」
カードをひらひらさせている。ハハ、合格だこいつは臆病でなく、慎重で共存共栄が出来る奴だ、教会も無くてはならない物だし、正面衝突は避けなきゃな。これは、良い拾い物をしたかな。
この後、教会を見に行くらしい。少し気合い入れて診療所を造ってやるかな。
夕方近くにマナの声が玄関前から聞こえた。
「誰か、お願いポーションを、必ず返すから誰かポーションを譲って、カルナが、カルナが死んじゃう」
「どうしたー」
急いで駆け付けると血塗れのカルナが倒れていた、何度も見た光景だ助からないだろう。今からポーションで傷口をふさいでも直ぐにはふさがらない。
「取りあえず診療所に」
ヒデは諦めてはいないらしい。回復師が諦めて無いのなら、俺が勝手に諦めてはいけないな、若い冒険者が死ぬのは見たくないしな、カルナを横向きに抱いて診療所に連れて行く。
ヒデはマナに話しを聴きながら、カルナを凝視している。
カルナの腹の傷を見てヒールを唱える。
「クソ、取りあえず傷をふさぐ、《ヒール》」
なんて顔しやがる。今にも泣きそうな顔でヒールを唱えてる。
もう一度ヒールを唱えるとカルナを凝視していた目を閉じ小さな声で
「うん、大丈夫だね。よかった」
最後の方は聞き取れなかったが、表情がいつもの緩いものに変わっていた。
この時は、こんなんで回復師なんてやっていけるのか心配だったが、ゴブリンとオークの襲撃にこいつが居なかったら、如何なっていたかと思うと今でも冷汗が出るぜ。
最近、またややこしい事してるようだ……
こないだ、診療所の前に立っていた大男、マントで隠していたが振り向いた時に見えた紋章、あれ王国親衛隊の紋章だ。
何かあったら力及ぶまでは、助けてやらないとな。全く手のかかる息子……いやいや、手のかかる弟くらいだな。うん、まだまだ、若いぞ俺は。
孤児のチビ共や酒場のゴンザレスいや、ママって呼ばないと怒るんだっけ、奴が来てからなんか楽しそうだ。
教会に行って祈るのはごめんだが、誰も居ないこの部屋なら祈っても良いな。
奴をこの街に、いやこの世界にヒデが居たことに女神様に感謝を
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