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まさちち

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1章

アオちゃん日記 その1

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 お嬢様、いえ隊長のシオン様より命令を受けてこの街に来た。若様より友人を頼むと言われて気合を入れて頑張ろうとしていた矢先に、シオン様と副隊長のセバス様が瀕死の状態で若様が運んできた。あの時は流石に飛び出してしまいそうになった。

 ここに着任してから、護衛対象であるヒデ様の驚くべく治療術は拝見していましたが、患者さんが知り合いだからなのか?いや、それも含めてなのだろうか?とにかく失った手や足を再生して見せた魔法は凄かった。
 まあ、その後の隊長の変貌ぶりにはもっと驚いたのだが……

 その日から数日後もう一人同じ任務に就く人が増えた。三つ子の姉のアカちゃんが来た。何でも隊長より命令が追加されたらしい。一つ護衛対象を死ぬ気で守れ。一つヒデ様の自由を奪うものは徹底的に排除するように、必要ならば私の持っている権限を使っても構いません。最後にヒデ様に近づく女の詳細を私に報告する事。

「前の二つはわかるけど、最後の何?」
「うーん?わかんないよ?でも凄い強調してたよ、こまめに連絡するようにってキイちゃんを隊長専属のそば付きにさせてたし」

「え、キイちゃん平気なの隊長のそばにずっといて」
「まあ、誰か残らないとこっちからの念話受け取れる人いなくなっちゃうし。私が残ろうか訊いたんだけど知らない街行くのは嫌なんだって」
「めんどくさがりなキイちゃんらしい」
 キイちゃんは私達の妹、ものぐさであまり外に出たがらないからな。


 私たちは元々、隊長のシオン様の家に代々お仕えするのお庭番。ただシオン様の代からお庭番というより部下の色合いが濃くなった。

 私達は特有のスキルで念話が出来た。三つ子で小さい時から出来ていたので私たちの間では普通にしていたのだけど、普通の念話とは違って三人でしかつながらない代わりに距離に関係なく話す事が出来るのです。

 なので基本誰かが本拠地にてあとの二人はばらけさすのが普段のスタイルなのだけど、こんな片田舎の街にアカちゃんと私が二人も来ていていいのだろうか?
 まあ王様から直々に護衛をせよと命令が来るくらいなんだからいいのかな?

 まあ、いいや、実際アカちゃんと任務に就けるのは楽しみだ。

「アオちゃん、この対象のヒデ様ってどんな方なの?」
「武術の心得がないから基本は危ない事はしないんだけど……危険の中にでも平気で入っていっちゃうような人かな?」

「何その護衛泣かせな体質」
「まあ、そうなんだけどね普段から護衛が付いてるから、そこまで注意することも無いけどね」
「ん?どういう事?」

「子供の冒険者達なんだけどその子達がなかなか腕が立つのと後、ヒデ様の二番目の弟子の人がランクBの冒険者で凄く腕が立つ人が大体一緒にいるから」

「なるほど、皆ヒデ様の性格なんかも知っているから警戒はしてるって感じ?」

「うんそんな感じ。後、今言った人たちがいない時は近くに行っても全然平気よ、隣にいても気づかれもしないよ。ただキャロラインさんがいる時は気を付けてね凄く勘が良い人だから。初日に近づきすぎて気付かれそうになったの」

「了解、了解、アオちゃん今日は私が代わるから休んでいいよ。ずっと休みなかったでしょ?」
「そう?別にそんな大変じゃないから平気だけど?」

「まあまあいいから、様子見も兼ねてやるから」
「フフ、ありがとう。まあ近くにはいるから何かあったら呼んでね」

「ハイハイ、いってらっしゃい」

 本拠地にしてるギルド裏に借りている家から出る。

「どこ行こうかな?」
 独り言を言いながらギルドの酒場に向かう。あまり離れるのも心配だったし、酒場のグレプのジュースを飲んでみたかったからです。

「グレプのジュースください」
「はーい、あら見ない顔ね?最近来たのかしら?」
「あ、はい、冒険者です。最近こっちにきまして」

「そう?んー?貴方どこかであったかしら?」
「いえ?初対面ですよ?」

「……そう、詮索してごめんなさいね。私の事はママって呼んでね」
「あ、はい、私はアオと言います」

 ハッ、何で名乗ってるの?おかしい?こんな事を口にするなんて。
「フフ、良かったわ良い子で。ヒデちゃんの周りにいた子ね?護衛してたみたいだったから放っておいたけど悪さしちゃダメよ?」

「え?まさか気付いてたの?」
「んー、私だけじゃないけどね。ほら」
 言われて後ろの気配に気付く。

「やっと会えましたわ」
 わわっ、どうしよ?キャロラインさんがいつの間に?……んー、別に秘密にする必要ないかな?一番は護衛だからいいか。ここで騒ぎを起こす方がまずいよね?
 シオン様に話して了承をもらえればこの二人なら話してもいいかな。

「えっと、ちょっと待ってもらえます?」
「あまり時間が無いですから手短にお願いしますわ」
「そんな時間かかりませんから」

 そう言うと念話をキイちゃんに繋げて話す。
≪キイちゃん聞こえる?≫
≪ん?アオちゃん?どうしたの?≫
≪シオン様そこにいる?≫
≪いるよ。シオン様に話?≫

≪うん、ヒデ様の護衛の件でヒデ様の近くにいる人達に協力してもらう許可が欲しいの≫
≪わかった、聞いてみる≫
 そんなに待たずに返事が来た。

≪ヒデ様の安全が一番だから信用できる様なら取り込みなさいって。後、男か女かきいてるよ?≫
≪ん?えっと、性別で言うと男と女かな?≫
≪女は誰だって訊いてる≫

≪えっと、ヒデ様のお弟子さん≫
≪後で詳しく報告する様にだって≫
≪ん?この件の事かな?わかった、今は無理だから後で報告します。切るね≫


「お待たせしました。私はヒデ様の友人である若様に頼まれて、ヒデ様を護衛してました」

「あら、やっぱり護衛してたのね?」
「殺気がこもって無かったので放置してましたが、納得ですわ。お師匠様やお姉様に危害が及ばないのであればいいですわ」
 そう言うと診療所の方に歩いて行った。


「うわー!チョット落ち込む、まさか気付かれていたなんて」
「ホホ、まあ、ヒデちゃんのそばにいて注意深く探らないとわからないぐらいよ?気付いた私達が凄いんだから」
「自分で言いますそれ?」
「ホホ、まあ、愛の力かしら?」

 その時キイちゃんから念話が来た。
≪アオちゃん。シオン様がまだかって言ってるけど≫
≪え?報告の件?≫
≪うん≫

≪いや、さっき切ったばっかりなのに?≫
≪だって、何かシオン様イライラして怖いし、早く報告して≫
≪ハイハイ、わかりました。拠点に戻ってから連絡する≫
≪早くしてね≫

「あら?もう帰るの?」
「はい、上が早く報告しろってせっついてきたので」

「そう?また来てね。今日のは私のおごりにしとくから」
「ごちそうさまです。ママさん」
 お礼と挨拶を済ますと急いで拠点に戻った。

「お帰り、アオちゃん念話聞いたよ。早めに連絡した方がいいかも」
「わかってる。今するよ」
≪キイちゃん、シオン様いる?≫
≪いるよ。と言うかずっと待機して待ってる≫

≪ヒッ、ゴホン、先ほどの女性はキャロラインさんと言ってヒデ様のお弟子さんになった方です≫
≪年齢と背格好、どんな格好していて何者なのかーだって?≫
≪え?えーっと、年齢は確かヒデ様の二つくらい上だったかな?後どこかの国の没落貴族みたいです。ただ、ヒデ様を政治的に利用しようとかは考えてないようですよ?≫

≪そんな事よりどんな容姿をしているか訊いてる≫
≪へ?容姿?えーっと、元貴族だからなのか縦ロールで金髪で、顔だちも整っていて綺麗な方ですよ、チョットきつそうな感じしますけどってこんなこと関係ないかな?≫
≪もっと詳しくだって≫

≪え?そうなの?でもそんな事くらいしか分かんないですよ?≫

 キイちゃんの困惑した気持ちが流れてきた。
≪えっとね?シオン様がヒデ様はお嬢様っぽいのが好みなのか訊いてるんだけど≫
≪……いや、どうだろ?よくわかんない≫
≪今度そこら辺を探って来いって≫

≪え?それが任務なの?≫
≪……最重要だそうです≫
≪……了解しました≫


「ねえ、アオちゃんもしかしたらシオン様ヒデ様のこと好きなんじゃない?」
「あー、まあ、あのシオン様を見た私でも信じられないんだしなー」
「ん?何か心当たりあるの?」

「えっと、シオン様とセバス様が大怪我をして運ばれた時に、治してもらったシオン様が真っ赤な顔をして”キャッ”とか”ヒデ様”とか言ってたの、怪我のせいで何かおかしくなってるのかと思ってたけど……」

「やっぱりそうなのかな?でもなーシオン様が真っ赤な顔ってるとか、戦闘中の嬉々とした顔をしか浮かばないよ」

 二人して首をかしげながら考えていたけど答えは出なかった。

 この数日後、白いドレスを着たシオン様を目にしてその回答が分かったのだが、それはまた別のお話で……
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