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たすけてくれたひと
しおりを挟む「っはぁ、うっ ゲホゲホッ、ゴホッ」
流石に叫びすぎたのか、息切れの途中で喉が詰まり咳が出てその痛みと 凄いスピードで流れる景色への恐怖で目に涙が滲む。ジェットコースターどころか観覧車にも乗ったことないのに!
それに 疲れて、ねむ...い...
「ぅわっ!?」
急な浮遊感に霞みがかっていた意識を引き戻される
えっ、ここどこ、ってデジャブ!まだ鹿の上でした...!ここで寝ようとするって私 案外神経図太いのね!?
新しい発見に悲しむべきか変わらぬ状況に嘆くべきか考えつつ、「低い所に枝か蔦があればそれに捕まって慣性の法則で降りられるのでは」と思いつき辺りを見回していると、左前方に何かキラキラと反射する光が見えた
何だろうと注視していると鎧を着て馬に乗った集団だと気付くが、その非現実さに今度こそ意識を手放したくなった
何でしょう、あの鎧を着た集団..."イタイ人"と言うのでしたっけ...でも森の中にそんな人たちがいる理由がありませんし、よく見ると剣持ってませんか?!何で!!?原住民の方!?でもよく見ると二人くらい色の派手なスーツを着てる??
もしかすると鹿を狩るために私ごと切られてしまうかもしれない、という恐怖と状況を受け入れられない混乱で再び涙が滲んでくる
鎧の集団に一番近付いた時 ええいままよ!と ぎゅっと目を閉じようとした寸前、鎧を着てない二人のうち、金色の頭の人と一瞬目が合った気がして、もう一度目を開く
今の人、目をまん丸くして驚いてた?もしかして後ろに私が乗ってるのに気付いてなかったのかしら...?
後ろが気になりちら、と目をやると金色の人が追いかけて来ていて、それにもう1人の鎧を着ていない赤い服の人が続き、そのまた後ろからガチャガチャと鎧の集団が追いかけてきている
そのあまりの迫力に ひっ、と声が漏れる
もう後ろは見ない、怖い人が沢山...!と、自分に言い聞かせるも、しかし現状に助けが欲しいのも確かなので「敵だ」と断定はしないでおいて今は観察に徹しようと決める
すると私が乗っている鹿の左側に金色の人が乗っている馬を併走させてきた
どうしよう...
一先ず助けを求めてみる
「ぇ...へぇ、ぷ...むぃ...」
しかし、口から漏れたのは言葉とも呻きとも取れない何とも頼りない声だった。舌足らずなのがまた哀れな様子を引き立てている。が、意味はちゃんと分かるはず。世界万国大体の人はわかるフレーズ、のはずです。余程森の中にこもっていたり孤島に住む少数民族でなければ意味は分かる...多分ですが
だが帰ってきたのは舌打ちと、私が覚えている言語のどれでもない詩を詠むような言葉
美しい言葉、と感動する間もなく金色の人が再び言葉を紡ぎ、右手を私から自分の懐へと跳ねるようなジェスチャーをする
...もしかして"跳べ"という事でしょうか、きっとそうなのでしょうね。分かってます、この状況から脱する為にはそれくらいしか方法がありませんものね...
金色の人に軽く頷きを返し、蹲るようにして膝を曲げ跳躍の準備をする。うぅ、怖い...
幸いな事にうたた寝をしていたお陰で気持ちは落ち着き、スタミナもジャンプくらいなら回復している。よくやった、わたし
そして鹿が前後の脚を地面から浮かせて 着地の振動が来る前に、 跳ぶ!
しかしこの幼い身体に脚力を望んだのが早かったのか、あまり高さが出なかった。首にしがみつくくらいにしたかったのに金色の人の胸にタックルする形になってしまった。大丈夫かな...?!
恐怖からの解放と緊張状態からの緩み、あと人の体温という安心感に包まれ、その暖かさに涙が出て止まらなくなる
そんな痴態を命の恩人(仮)に晒してはいけないと思うのと、より多くの安心感を欲して顔を伏せるようにその胸に額を押し付ける。独りぼっちだった寂しさが埋められていく心地良さに荒波だっていた心も落ち着いてゆく。あ、ちょっと汗まじりだけどいい匂い
人という存在を直に感じてまた涙が溢れそうだ
しかしずっと目を合わせないというのも人としてダメな気がして、深呼吸をして今にも飛び出してきそうな嗚咽を黙らせ、恩人の顔を見上げる
金色の頭の人と呼称したように、その頭はキラキラと色の薄めなサラサラの金髪を後ろで束ねていますが、猫っ毛なのかちょっと癖がついていてそのお陰か愛嬌があるように見える
目はピンクに近い深めの赤色というちょっと派手な色ですが、それが肌の白さをより引き立て、その顔を彩っている
白人らしい白磁の色に少しピンクがかった肌はきめ細かくてそばかすもなく、肌から30cmもない距離だと言うのに毛穴ひとつ見えない女泣かせの肌であることが分かる
石膏像なのではないか、と疑う程美しい顔立ちをした男性が眉尻を下げ腕に抱えた私を覗き込んでいました
いや、そんな顔しないでくださいお兄さん。というかいつの間に姫抱っこに持ち替えたんですかイケメンポイント高いですね、そこら辺経験皆無な私は固まるしか方法がありません
内心大混乱でお兄さんから目を離せないでいると、もう一人の赤い服の人が何事かを話しかけながら近付いて来ました
恩人のお兄さんと同じくらいの年齢でしょうか、髪は恩人さんの髪に赤色絵の具を霧吹きしたらこうなるでしょうか、赤みがかった金髪をしています
今はまさに色男というような垂れ目ですが、先程追ってきていた時の血鬼迫るような顔はキリッとしていて雰囲気がだいぶ違っている。切り替えの早い人なのでしょう、その分 末恐ろしい。さっきの顔は忘れません
その目は深い蒼に薄くグレーがかっていて冷たく見えますが色っぽい印象と相まってミステリアスさを演出している
こちらもハリウッド男優顔負けの面立ちです
しかし相手は帯剣していて、その骨格の良さから鍛錬を怠らずきちんと剣の技術を、筋肉の付き方から柔術などの徒手格闘も習得しているのが伺える。
私の首なんてちょっと力を入れるだけでぽきっといってしまうのでしょう
そんな人が近付いてきたのですから、服を掴む手にも力が篭ってしまいます
...? " 服を掴む手 " ...?
私は何も持っていなかったはずだと思いながらも嫌な予感に 恩人さんの肩越しの景色を見るのを一旦やめて、戦々恐々としながら私の手元に視線を下ろします
そのモミジのようにかわいらしい手は肌触りの良い、いかにも高級そうな服を握り締めていました
慌てて服から手を離そうとしますが、手の力が抜けずふるふると震えるばかりでより焦ってしまい、収まり始めていた涙がぶり返してしまいます
「うっ...ふぇ...っ」
「!?」
恩人さんは私の様子を見て慌てたのか、何事が話しかけたり頭を撫でたりしてくれますが、私の涙は中々止まらない
でも 歌うように紡ぐ言語は少しずつ心を落ち着かせてくれる。震えも止まり、手を離すことが出来た
申し訳ないな、弁償しなきゃでしょうか、と目まぐるしく流れる思考とは裏腹に、皺を伸ばそうと必死に服を撫でる手は止めない
そこで私が何に泣いていたのか察してくれたのか、私の右手にその白い手袋に包まれた手を上から重ね、もう片方の手で頭から背中までをゆっくり撫でられる。意味はわからないけれど、「大丈夫だよ」、「気にしないで」と言うように言葉をいくつも重ねられ、私に安らぎを与える
いつの間にか私はその温もりに身を任せ、微睡みへと意識を落としていた
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