Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第十話 系統外魔法

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「どうした?」
「──酔い止め、持ってないか?」
「一粒六十ガレスだ」
「おう、取り敢えず五十粒頼む」
 いや、どんだけ飲むつもりなんだよ。

 ノアと薬の取引を済ませ、今度こそ彼と別れて荷馬車組合へと向かう。時間が切羽詰まっていることもあり、移動は自然と早歩きになっていた。

 馬車に揺られること五時間、事前に宿には手紙を送っており、さらには御者の人に急いでもらったこともあったため、何とか宿のチェックインが間に合った俺たちは、一度それぞれの部屋に戻る。
 部屋に戻るなり、一先ずは部屋に備え付けられた風呂に入った。

 風呂から出た後は多少の疲れもあったため、ベッドにダイブし、そのまま寝転がる。
 俺が横になったまま五分程仮眠をしていると、扉のノックする音が聞こえた。

「はい」
「ルシェフさん……?」
「レオナか?」
「うん」
 ベッドから降りて扉を開けると、丁度風呂上がりだと思われる、少し頬の赤いレオナが、自身の枕を抱きながら扉の前にいた。

「入ってもいい?」
「あぁ」
 レオナを部屋に入れて【四次元空間】から取り出した珈琲豆を取り出し、二人分の珈琲を淹れることにする。レオナは自身の枕をそれとなく俺の枕の隣に置いていた。

「それで、どうかしたのか?」
 何となくレオナが部屋を訪ねてきた理由は察していたが、珈琲を淹れる片手間に、そう聞いてみる。

「一緒にいたかっただけ……迷惑だった?」
「まさか、そんなわけないだろ」
「なら良かった」
 俺の言葉を聞くや否や、レオナは優しい声でそう言いながら、そっと後ろから抱きついてきた。

「……」
 夜だからか、今はサラシを巻いていないようだ。

 お湯が沸いたことを確認し、事前に豆を入れていた紙製のフィルターに何回かに分けてお湯を注ぐ。

「そういえば、本当のところ、ルシェフさんって【精霊の加護】は持ってるの?」
 なるべく後ろには気を回さないように留意しながら、紙製のフィルターごしにカップが液体に満たされるを眺めていると、レオナが唐突にそう切り出してきた。

「……アリスたちには言わないと約束できるか?」
「うん」
「持っている」
 レオナがしっかりと頷いたことを確認してからそう告げる。

「そんなんだ……それが判明したとき、色々なところから引っ張りだこにはならなかったの?」
「ならなかったよ。判明してすぐにその町から離れたからな」
「そっか」
 俺の口ぶりから何となく事情を察したレオナが少し腕の力を強くする。事情を察することが出来たのは、《厄災の魔女》の名を持つレオナだからこそだろう。

「レオナ」
「ありがと」
 珈琲が淹れ終わったところで、その一つをレオナに渡した。

「レオナ、君の方は良かったのか?」
「何が?」
 珈琲もできたので、二人でベッドに腰掛ける。

「パーティーメンバーのことだよ。結局、連絡とれなかったろ」
「落ち着いたら連絡とるから良いよ。ノアさんも皆に会ったら事情を話してくれるって言ってたから」
「そうか……」
 レオナは思いの外あっさりとしていた。俺が気にしすぎなだけなのだろうか?

「そんなに不思議だった?」
 俺の考えを読んだと見えるレオナが、少しため息混じりにそう聞いてきた。

「あぁ。彼女たちはずっと行動を共にしてきた仲間だろ?」
「……ルシェフさん」
 珈琲を手近のテーブルに置いたレオナが、甘えるように抱きついてくる。さすがに珈琲を飲めるような状況ではなさそうだったので、俺も珈琲をテーブルに置いた。

「何回も話したよ。私はルシェフさんと一緒にいられれば良いって。──もしかして、もっと分かりやすい方法で伝えた方が良かった?」
 俺の目を真っ直ぐに見つめながら、レオナは少し照れるような笑みを浮かべた。

◇ ◇ ◇

 翌日、空腹だった為か、まだ日が昇り始める頃に目を覚ました。
 まだ少し頭が働かないが、ゆっくりと起き上がり、ベッドから降りる。

「──ルシェフさん?」
 どうやら、レオナを起こしてしまったようだ。

「悪い、起こした」
「ううん、気にしないで」
 寝ぼけ眼を擦りながら、レオナが身を起こす。

「……腹減ったな」
「うん……」
 昨日は夕食を食べ損ねていたこともあり、かなりの空腹感があったが、さすがにこんな朝早くに都合良く空いている店などないので、外食は不可能であった。

 一度ベッドから降りると、ベッドから少し離れた机の上に置いたバックの所まで向かい、中から保存食として残しておいた燻製肉を取り出す。

「──食べるか?」
「ありがと」
 バックの中に手を入れると、【四次元空間】から小型のナイフも取り出し、一度ナイフの刃を洗ってからベッドへと戻る。ベッドに腰かけると燻製肉を一口大に切った。

「……魔剣をこんな使い方するなんて、ルシェフさんくらいだよ」
「悪いか?」
「ううん。あれ以外の魔剣を持ってるのに少し驚いただけ」
 俺たちが燻製肉を食べようとしていたところで、誰かがかなりの強さで扉を叩いてきた。
 朝早くから何かあったのだろうか?

「誰だ?」
「私です、オリビアです。開けて下さい!」
 彼女の様子から、ただならぬ事態だと予測した俺が急いで扉を開けると、彼女は慌てて部屋に入ってきた。

「どうかしたのか?」
「こっちの台詞ですよ!私だけ仲間外れにして燻製肉食べるなんてズルいです‼︎」
 ──まさか、燻製肉の臭いを嗅ぎ付けてきたのか?

「悪い。忘れてた」
「忘れてたじゃないですよ!だから、ルシェフさんは……」
「悪かったって」
 オリビアの頭を軽く撫でて宥め、燻製肉の待つテーブルの方へと戻る。

「……美味しい」
「やっぱり、冒険飯と言ったらコレですよね」
「あぁ」
 どうやら、この燻製肉は当たりだったようだ。燻製肉を一口食べると、それ特有の塩味が口一杯に広がり、噛むとほんのりと肉特有の甘さも感じた。

「何だか、飲み物が欲しくなってきたね……」
「そうだな」
 燻製肉を食べ進めていると、体が水分を求め始めた。
 それは他のメンバーも同じようで、オリビアが部屋の中にあるコップを見つけて三つ持ってくると、レオナが魔法で両方のコップに水を入れてくれた。

 ──の説明をするなら、今が好機か。

 コップの一つを受け取って半分ほど水を頂いた後、俺が素知らぬ顔をしながら魔法でブロック状の氷をコップの中に作って見せると、二人が目を見開いた。

「──今、何したんですか?」
「氷を作っただけだが?」
「そんなこと、分かってます!どうやったら、氷なんて作れるんですか⁉︎」
 オリビアが半ば興奮気味にそう叫ぶ。中々に予想通りの反応を見せてくれた。
 俺としては、出来ちゃったものは仕方ないとしか言えないが。

「この氷だが、純粋な魔法ではなく、俺の固有スキルだ。そのスキルがあるから、一部系統外魔法が使えるんだよ」
「そうですか…」
 オリビアが片手で額を押さえ、大きくため息を吐く。彼女にも少し考えを整理する時間が必要なようなので、他のものに関してはおいおい見せながら説明していくとしよう。
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